真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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どうも、原作推しの子なのにガッツリ呪術の戦闘を描いた作者です。
この話でそれを終わらせようとしたら一話あたりの文字数が恐らく過去一番になりました。
まあ、次はちゃんとアイたちとの絡みを描くつもりなんで許してください。


それとこの話しに合わせて設定集というかまあ、それに近いようなものを投稿しました。
好きな人はこういうの好きじゃないかと思ってます。ちなみに作者はこういうの大好きです!←趣味丸出し
一応この話のネタバレになることもあるので、先にこちらを見ることをオススメします。


第三十三話●

 

 

 

 産土神信仰。

 文字通り産土神に対する信仰を指す。

 産土神とは人が産まれた土地を守護する神である。

 

 

 神社へと続く階段を駆け上がる夕の脳裏に、先程の補助監督の言葉が蘇る。

 

 

『任務はお察しかもしれませんが、この神社で確認された呪霊を祓うもので、派遣されたのは七海二級術師と灰原二級術師です。何でもこの神社は産土神と関係が────』

 

 

 その時点で夕は飛び出していた。

 七海、灰原の任務と産土神。

 否応なしに彼の記憶にある原作知識と結びついた。

 だが────

 

 

「早すぎるッ······!」

 

 

 それは本来、一年後の出来事のはずだ。

 そこでの灰原の死が、夏油が呪詛師になる原因の一つとして描かれていた。

 

 

 星漿体任務の失敗による最強という自負への揺らぎ。

 死んだ天内理子を見た盤星教信者たちの様子、そこから生じた非術師に対する嫌悪の種。

 一人で最強足り得るようになった五条の存在。

 九十九によって教えられた呪霊発生のメカニズム。 

 そうしてもたらされる後輩の死。

 

 

 これらが夏油の中の弱者生存という信念を、呪術師としての使命感を揺らがせ、一年かけて募りに募った非術師に対する感情との板挟みが発生した。

 そしてそんなジレンマの中にある夏油が、任務先で術師という理由だけで虐げられる子どもを見て、とうとう彼の心の天秤は傾く。

 

 

(させない······)

 

 

 だが、夕によって星漿体の任務は一応の成功を収め、ひいては天内理子は現在も生きている。

 先に挙げた理由の他にも、夏油の心を揺らがせた呪霊を祓う上で彼に生じる辛苦────負の要素の塊である呪霊の取り込み────を取り除き、先を行く五条に追いつけと発破をかけた。

 

 

 だからこそ、ここで灰原はもちろん、七海も死なせない。

 間違いならそれでもいいし、何なら間違いであって欲しい。

 そう思いながら、夕は二人の下へと駆けた。

 

 

(────見えた!)

 

 

 とうとう二人の姿を確認した夕。

 今まさに灰原に振り下ろされる死神の鎌。

 それを────

 

 

「ッ────えっ······?」

 

 

「ぶっ、なぁッ······!」

 

 

 夕は間一髪のとこでそこから灰原を引っ張り上げた。

 来るはずのものが訪れなかった灰原は呆けた顔をしている。

 

 

「悪いね灰原────七海!」

 

 

「へっ? ちょっ!? うわっ!!!」

 

 

 既にかなりの手傷を負っている彼では邪魔にしかならないと判断し、その身体を七海に向かって放り投げて後方に離脱させる。

 

 

「っ! ────無事か灰原!」

 

 

「うん······大丈夫だよ、七海。それよりも······」

 

 

 灰原を受け止め、叫び無事を改めて確認する七海。

 それに灰原も応じつつ、二人は乱入者たる夕を見やる。

 

 

「────ギリギリだったね」

 

 

 かと思えば間近でその人物の声が聞こえた。

 驚く二人。それもそのはず。

 現在進行形で夕は先程まで二人が相手にしていた呪霊と戦って────

 

 

「えっ···?」「一体あれは···?」

 

 

 戦っているはずの夕の姿はいつの間にか消えてこちらにいるのに、呪霊の方は未だに夕を相手にしているような動きをしていた。

 

 

「幻術だよ」

 

 

 ただ一言、夕は説明の言葉を口にする。

 彼の幻術は呪霊には効きづらく、一級相当にもなるとほぼお手上げと聞いていたため、二人は首を傾げる。

 二級と聞いていたが、あれは明らかに一級────それも限りなく特級寄りの────呪霊だからだ。

 しかし、今優先するのはそれではないと思い直し、指示を仰ごうとする。

 

 

「椎名先輩······」

「椎名さん」

 

 

「二人はこのまま下に······悪いけど足手まといだ」

 

 

 言ったことは事実だ。

 夕が来なければ灰原は確実に致命傷を負い、七海に関しても無事で済んだ保証はない。

 五体満足ではあるが呪力を含めた消耗も激しく、とてもではないがこのまま継戦できるとは思えない。それでも────

 

 

「それは······!」 

「いくら椎名さんでも無茶です!」

 

 

 七海と灰原は食い下がってきた。

 このまま助けられるだけ助けられて、おめおめと自分たちの先輩を置いて逃げられないと思ったのだろう。

 

 

「別に死ぬつもりはないよ。無理だったら僕も逃げてる。十分祓えるって思ったから、その判断をしたんだ。それよりも────」

 

 

 ────二人には頼みたいことがある。

 

 

「頼み······?」

「それは何ですか?」

 

 

 一先ず彼が死ぬつもりはないとわかったのか、二人とも一端落ち着く。

 

 

「もともとここに来たのはプライベート、家族(・・)とたまたま旅行に来ただけなんだ。今は多分、下にいた補助監督の人と一緒にいる。私情丸出しで悪いけど、僕が安心して戦うためにそっちと合流して欲しい。頼まれてくれる?」

 

 

「······死ぬつもりはないんですね?」

 

 

「もちろん。たかが一級(・・・・・)相手に死なないさ」

 

 

「七海······」

 

 

「······そうだな」

 

 

 灰原に名前を呼ばれ、両者顔を見合わせると、頷き合った。

 

 

「わかりました」

「ご家族の方は任せてください」

 

 

「うん頼むよ、七海、灰原」

 

 

 返事をして二人は下に向かった。

 それを見送った夕はそっと息を吐き出す。

 

 

「さてと────やりますか」

 

 

 大胆不敵で胡散臭く、椎名夕は今宵も笑った。

 

 

  ○ ●

 

 

『■■■■■■■■■■■■ッ!!!』

 

 

 意味もない奇声を発する呪霊。

 呪霊は神社らしく狐のような姿をとっているが、目が一つしかない。

 象を一回り大きくしたような巨体に、呪霊らしい禍々しい雰囲気。

 恐らく何らかの要因でその存在のあり方が反転したと考えられる。

  

 

「悪いね、何言ってるかわからない。君がこの土地の神だったとしても、今のそれだと誰かを傷つける。だから────死んで?」

 

 

 未だ夕の幻術に翻弄され続ける呪霊にそれは聞こえないだろうし、仮に聞こえてもその意味をきっと理解できないだろう。

 そう思いながら彼は呪力を練り、生得術式へと流す。

 だが、使用するのは少し意外なものだった。

 

 

「『追想』」

 

 

 

 

 拡張術式に分類される『追想』、それはしかし夕の持つ手札の内で最も彼が好んで使うものだ。

 その効果は過去の、原初の想いを思い出させること。

 想起させたものを現在に上書きすることで、夕はその都度最適な精神の状態を保つことができる。

 彼の持つ術式、夢幻呪法は一部の例外を除いて基本的にそれ自体に攻撃力はない。

 だからこそ夕には、強くなる上で自身の基礎的な戦闘技術が求められた。

 なんせ例外の一つである『霧散霧消』も発動の範囲が狭く、それを当てるための技術が求められる。

 故にまだ反転すら習得していなかった頃から、彼はひたすら自身に妥協のない鍛練を『追想』による精神の恒常化と共に課し続けた。

 そんな積み上げ続けた圧倒的な基礎の厚みは九十九由基にも絶賛され、彼女に師事してから一気に伸びた体術もそれがあってのことだ。

 

 

 長くなったが、つまるところ言いたいのは、椎名夕の強さの根底にあるのは圧倒的なまでの基礎スペックの高さということだ。

 先に挙げた体術はもちろん、呪力操作の類いに至るまでとにかく凡事徹底を続け、百錬自得でさえ足りないほど自らを高め続けた彼の技量は、その年齢にして平安を生きた呪術師にも引けをとらない。

 

 

 

 

「────」

 

 

 呪霊へと接近する夕。

 いくらこちらを正しく認識していないとはいえ、暴れているのは一級相当の呪霊。

 呪力のない兵器が通用することが前提で考えても、一級呪霊は戦車でも心許ないと言われる。

 そんな猛威を周囲に撒き散らかす呪霊の暴風圏に彼は躊躇なく踏み込む。

 

 

 それが戦闘時における『追想』の使い方。

 どんな状況でも最適な精神状態を作れることによって、どこまでも冷静に夕は戦闘を俯瞰する。

 そうして呪霊の目前にまで来ると、再び『追想』を使う。

 

 

 この世界では肉体と魂は深い相関の関係にある。

 それは原作の呪術廻戦で、特級呪霊である真人の無為天変によって魂を歪められた者の肉体の変容を見れば明らかだ。

 魂────精神に肉体は影響される。

 そして繰り返すが『追想』は過去の精神状態を再現すること。

 ならばだ。

 

 

 

 

 ────ならば、黒閃後の精神状態を再現したらどうなる?

 

 

『ッッッ!?!?!?』

 

 

 答えは呪霊の声にならない叫びが教えてくれた。

 

 

 彼の放った一撃は黒い閃光と共に空間を歪め、呪霊の横っ腹を撃ち抜いた。

 夕とは一回りも二回りも違う体格の差がある呪霊。

 しかしその巨体は何メートルもの距離を転がるほど吹き飛んだ。

 

 

 『追想』によって積み上げられた基礎と、それによる黒閃後のゾーン状態の再現。

 これらが合わさることで椎名夕はかなりの高確率で黒閃を放つことを可能にする。

 

 

「────!」

 

 

『■■■ッ!!!』

 

 

 地を蹴り、一気に祓おうと再接近する。

 呪霊も既に幻術は消え去り、今度こそ夕を認識したため、迎撃を試みる。

 

 

(······分体か)

 

 

 迎撃により生み出されたのは、呪霊をそのまま小さくしたような複数の自律存在。

 産土神は土地を守護する神で、そこの土地にて生まれた存在を守るとされるが、その守護は仮に別の場所へ移住しても変わらないとされる。

 そして産土神という考えがある神道においては分霊というものがある。

 文字通り魂などのエネルギー的なものを分けるそれは、何も生物的なものに限らない。

 例えば神社などで手に入るお守りやお札にも分霊というものは当てはまる。

 

 

 離れても守るということと、分霊という概念、これらが恐らくこの呪霊の能力の根底にはあるのだろう。

 実際、七海と灰原の受けたこの任務のそもそもの始まりは、似たような呪いの被害を受けた人間が、この土地で生まれたという点によるものであり、それにあたっての調査でこの呪霊の存在が確認されたのだ。

 ちなみに夕が旅館で耳にした不幸に見舞われた者の多くも、この神社と浅くない縁を持っていたという事実もある。

 

 

 

 

(────ちょっと多い······けど!)

 

 

 今は黒閃直後。

 どんなに確率を高めてもやはり絶対の確率で黒閃は出せない。

 そういう意味では初手で発生したのは幸いだった。

 あくまでも『追想』は自己催眠の究極で、完全なゾーン状態にはなれない。

 言うなれば擬似的なゾーンで、それは所詮まやかしでしかないのかもしれない。

 だが、まやかしでも一度黒閃が出れば、それは本物になる。

 

 

『■■■ッ!?』

 

 

 ほとんど時間をかけずに夕は分体の群れを突破する。

 必要最低限の身のこなしで躱し、どうしてもと言うものだけ払いのけ、さらに加速する。

 そうして呪霊の懐に飛び込むと────

 

 

 打撃打撃打撃、黒い火花が散る、打撃打撃打撃、黒い火花が散る、打撃打撃、黒い火花黒い火花、打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃、黒い火花、打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃、黒い火花、打撃打撃打撃打撃────

 

 

 苛烈に撃ち込まれる打撃の嵐。

 加えて断続的な黒閃の発生という異常事態。

 この光景を見ている者がいればさぞや驚愕しただろう。

 

 

 呪霊も自らの盾にするように分体を出すが、良くて数回の打撃しか防げず、場合によっては発生した黒閃により根こそぎ消滅させられた。

 しかし、それでも夕は手を緩めない。

 相手は産土神信仰由来の呪霊で、ここは最もその信仰の力が集まるであろう神社という聖域。

 万が一も考え、彼はひたすらに、それでいて機械のように淡々と攻撃を撃ち込む。

 

 

 戦いの火蓋が落とされた直後の黒閃。

 そこからの散発的に黒閃が混ざる打撃の雨。

 戦いと呼ぶにはあまりにもそれは一方的過ぎた。

 だが────

 

 

『ッ────!? ■■■■■······』

 

 

 ここで一つ夕にとっての誤算が起きる。

 

 

「何ッ!?」

 

 

 あろうことかどれが本体かわからないレベルまで呪霊は分裂し、あまつさえこの神社から逃げ出そうとしたのだ。

 必死にそれらを撃墜するが、四方八方へと飛んでいくそれをすべて対応するのは不可能。

 

 

(まずった······!)

 

 

 この呪霊は産土神由来でその土地に根ざすため、総本山的なこの神社から離れないと思っていた。

 しかし複数回の黒閃を含む幾多の攻撃によって多大なダメージを負い、それがこの呪霊の存在を弱めると共に土地との繋がりを薄くしてしまったのだ。

 結果呪霊は生存本能を優先し、いくつもの分体による離脱を試みた。

 加えて────

 

 

(ッ······呪力が······)

 

 

 夕は夕で実のところそんなに余裕はなかった。

 彼は昨日今日の二日間、多少のインターバルはあれど自分とアイに術式による認識の干渉をしていた。

 それらによる疲労は反転術式によって回復させていたが、夕は『六眼』持ちの五条ほど呪力効率は良くない。

 そんな状態を続けた終盤に至ってのこの戦闘は、正直かなり呪力的にきつかった。

 

 

(どうする······?)

 

 

 もともと七海と灰原の身に余る任務であったし、彼らを助けられたのならギリギリ最低ラインは満たしているし、件の呪霊に関しても限りなく削りはした。

 イレギュラーな事態を考えれば十分な結果を夕は出した。

 だが、万が一を考えやはりこの呪霊はここで祓いたい。

 そのために必要なのは────

 

 

(複数の対象を一気に始末する火力と手数────だけど!)

 

 

 しかし、残念ながら夕にとってそれはずっと付き纏って来た課題だ。

 歯痒かった。

 何でもかんでも自分でどうにかすることができないのはわかっている。

 

 

(それでも······!)

 

 

 問題ないと言ったのだ、後輩の前で。

 それを信じた二人は自分の大切な人たちの所に行って、後顧の憂いを断ってくれた。

 ならばそれに応えなければならない。

 何より、大切な家族の前で無様を晒す訳にはいかない!

 

 

(······不幸中の幸いだが、分体の強さ···というより耐久はそこまでじゃない。なら────)

 

 

 恐らくタフネスは三級の下より。

 動きも本体自体が弱ったからか、最初に飛ばしてきたものよりもずっと遅い。

 巡る思考、そんな引き延ばされた時間の中、夕の視界に淡い光が横切る。それは────

 

 

「蛍·········?」

 

 

 自分の周囲に現れたそれに、コンマの時間ではあるが呆ける。

 しかし、そんな地上を巡る星のような存在は、夕にこの状況を打破するインスピレーションを与えた。

 

 

 

 

「────『星の幻郭』」  

 

 

 瞬間、円環のついた球体が出現する。

 野球ボール大のそれは、そこからさらに数を増やしていく。

 まるで衛星のように周りを巡るそれは一つ一つが実体を持っている。

 

 

「────」

 

 

 手を上げ、その内の一つを呪霊の分体に向ける。

 対象へと激突したそれは────

 

 

『ッ······!?』

 

 

 爆発する。

 正確には中に込めた呪力が破裂したのだが、それは夕にとっても呪霊にとってもどうでもいい。

 重要なのはそれが分体を祓うには十分な威力を備えていたこと。

 跡形もなくなった分体がそれを物語っている。

 

 

「もう少し、抑えても·····祓、える······」

 

 

 威力と結果を見て、込める呪力を調整、浮いた分でさらに星を増やす。

 かつてないほど冴えつつ、ギリギリまで酷使している頭はズキズキと痛むが、今はそれがまったく気にならない。

 ただこの呪霊を祓う、それだけを目指し夕は動く。

 

 

「────いけ」

 

 

 その声に従い、いくつもの星が夜空の下を駆ける。

 分体一つにつき一つ、固まっている分体があるならうまく巻き込むようにして一つと、状況に合わせて星を巡らせる。

 

 

『■■······■■■■■ッ······!』

 

 

 次々と消されていく分体に恐怖を覚え、露骨と言えるほどの変化が起きた。

 まるで夕の周囲の星と同じように分体が集まったのだ。

 しかしそれは悪手だ。

 

 

「······見つけた」

 

 

 夕は見ていた。

 他の分体とは変わらない姿だが、その個体を守るように分体がその周囲を覆った。

 そんなことしたら本体とわかるのは自明のことだろう。

 

 

「······」

 

 

 集中する星々。

 その軌跡は爆発と共に闇夜を彩る。

 そうして────

 

 

『ッ────!? ■、■■■·········』

 

 

 何度目かの爆発、それと同時に他の分体の動きは弱まり、やがて夜の闇に溶けるように消えていった。

 

 

 

 

「······終わった」

 

 

 それを確認して夕は呟く。

 彼の周囲には、彼を祝福する地上の星の光で溢れていた。

 

 

  ○ ●

 

 

「ッ! ────夕!」

 

 

 神社の階段を降り、ようやく終わりが見えて来たところ、そんな夕を目にしたアイは彼に向かって駆け出した。

 

 

「ん、ただいま、アイ」

「······っ」

 

 

 その様子に息を呑みつつ、彼女は手をとって共に階段を降りる。

 いつも通りに応じる彼にアイは安堵しつつも、彼女は夕が無理していることに気づいた。

 色々聞きたいこと、言ってやりたいことはたくさんある。それでも今は夕を休ませることを優先した。

 

 

「夕······」

「·········」

 

 

 アイと同様に夕の下に向かってきた真昼と周。

 二人も今の彼にどう声をかけていいか悩んだ様子を見せた。

 

 

「ただいま、姉さん、周」

 

 

 しかし、そんな夕の言葉に二人もようやく安堵を見せ────

 

 

「おかえりなさい、夕」

「ああ······おかえり」

 

 

 そうやって彼を出迎えた。

 そのまま四人で下まで行くと、七海と灰原もいた。

 

 

「終わったよ、二人とも」

 

 

「はい······」

「無事でよかったです······」

 

 

 ようやく肩の荷を下ろしつつも、未だに浮かない顔した二人に夕は声をかける。

 

 

「七海、灰原、まだやることはある。反省はその後」

 

 

 それに二人は頷き、撤収の準備を始める。

 アイたちに色々と話すにしても、もっと落ち着いた場所と状態で話したい。

 車に乗り、移動を始める一行。

 

 

(······や、ば······っ······)

 

 

 しかし二日間の術式使用、先の戦闘により様々な消耗が、緊張が溶けた瞬間に一気に夕に押し寄せてきた。

 視界が霞み、平衡感覚が薄くなる。

 

 

(無理、し過ぎたなぁ······)

 

 

 ちょっとカッコつけのが駄目だったか、と思いながら、夕の意識は沈んでいく。

 そんな自分の名前を呼ぶ声が夕の耳に届く。

 

 

 

 けれど、その声も段々と遠くなって────

  

 

 

 

 

 




死んでませんよ! ただ疲労で意識を失っただけです。
さて次回は遂に夕が呪術師であることが明かされます。


幕の裏側を垣間見た三人。
とうとう帳の内の真実を知る。




······久しぶりに三人称で描いたけど、変じゃないですかね?
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