真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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深夜のテンションで何か筆が勝手に······


第三十六話裏○

 

 全身を包む気怠さと心地よい温もりを感じながら僕は意識を浮上させた。

 目を開けるとまず視界に入ったのは穏やかに寝息をたてるアイだった。

 

 

(······そういえばそうだったね)

 

 

 まだぼんやりと意識が微睡みの中にあったが、腕の中で眠る彼女を見てつい数時間前のことを思い出す。

 アイと身も心も通じ合った後、お互いそのまま眠ってしまったらしい。

 壁にかけられた時計を見るにまだギリギリ日付を跨いでない。

 そんは状況把握に務めながらも、人肌を恋しんでか僕は彼女のことを抱きしめる。

 起こさないように気をつけながらさらにこちらに身体を引き寄せると、より鮮明となったアイの存在を一身に感じる。

 穏やかな寝顔と寝息が、鼻腔をくすぐるどこか甘い彼女の匂い、何よりいつまでも触れていたくなるような肌、そしてそこから伝わるアイの体温が僕の心に沁みわたる。

 

 

(暖かいな······)

 

 

 まだ八月の終わり。冷房をつけていてもこれだけくっつけば多少の暑さを感じるはずなのに、腕の中の彼女の温もりは決して不快なものではない。

 もっと欲しい、思わず少し強く抱きしめたら「んぅ」と甘くかすれた声が漏れ出た。

 けれど彼女はそれでは起きず、まだ夢の中らしい。これ幸いにと僕はアイの髪に触れる。

 若干汗ばみ、額にくっついた前髪をそっと整えて、そのまま髪に指を通していく。

 肌とはまた違うが、それでもこちらもいつまでも触れていたいと思わせる感触だった。

 

 

(やばいな·········離れられそうにない)

 

 

 もともと離れるつもりはなかったが、もっとその想いが強くなった。

 より深い繋がりを経験したことで得た心の充足感は想像以上に大きかった。

 ただただアイが愛おしい。

 

 

「愛してるよ」

 

 

 そう言って額にキスを落とした。すると────

 

 

「ふふ」

「起きてたの?」

「今起きたの」

 

 

 僕の首元に顔を埋めて嬉しそうにアイは身体を寄せてくる。

 より一層密着感が増し、しっとりとした肌と肌がピトッとくっつき合う。

 

 

「······ん·········んんぅ······」

 

 

 背中に回した手で彼女の背中をなぞると甘い吐息を漏らした。

 

 

「夕」

「何?」

「私も愛してるよ?」

「·········時間差はやめてね?」

「やだ。誤魔化そうってたってそうはいかないんだから」

 

 

 油断した。聞かれた気恥ずかしさを隠そうと思ったが通じなかった。

 こちらの顔を見ようと首元から出ようとするアイを封じるように彼女の頭に手を当てて、元の場所に戻す。

 それに「わぷっ」と声を上げ、かと思えばムッとなるのが雰囲気から伝わる。

 しかし、それに対する彼女の反撃は想像以上だった。

 

 

「────ねぇ、夕·········」

 

 

 

 

 ────もう一回、する?

 

 

 

 

 ゾクゾクゾクゾクッ!!!

 

 

 一気に僕の背筋を何かが走り抜けた。

 耳元で囁かれたその言葉に身体が熱くなり、内から湧き上がった獣性が理性の支配から離れかける。

 

 

「·········からかうな」

「むぅ、からかってないのに」

 

 

 顔を上げ、そんなことを言うアイ。

 

 

「·········なお問題だ。ただでさえ初めてで身体の負担が大きいんだか────んむっ!? ·········何するんだアイ?」

「キスだけど?」

「いやそれはわかってるけど「夕」······」

 

 

 唇の次は指をあてがって僕の言葉を遮る。その顔はちょっと不満そうにしている。

 

 

「────別にいいよ?」

「アイ?」

 

 

 唇に当てられた指をどけ、頬にその手を滑らせる。

 そのまま手も使って僕の顔を固定すると────

 

 

「もっとちょうだい? 傷つけてもいいから。ううん、むしろ傷つけて? 夕のものってわかるように、私に夕を刻んで? 壊れるくらいに私のことを────」

 

 

 

 

 ────愛して?

 

 

(っっっっっ············!?!?!?)

 

 

 あまりにも暴力的な言葉だった。

 蠱惑的に微笑む彼女からの殺し文句に心揺さぶられる。

 

 

「·········どうなっても知らないよ?」

 

 

 身体を起こし、何時間か前の焼き直しのようにアイに覆い被さる。

 ただし、あの時にはなかった熱が僕の身体を支配している。

 

 

「うん、まだ身体の震えが残ってるから·········この震えを止めて、夕?」

 

 

 まるでこちらに理由を与えるように、アイはそう言った。

 それは、最後の一押しとなり、僕を解き放った。

 

 

 

 あとはただただ突き動かされるように、彼女のことを貪った。

 

 

  ○ ●

 

 

「···············死にたい」

 

 

 翌朝、鳥が囀ずる声を耳にしながら意識を覚醒させた。俗に言う朝チュンというやつだ。

 

 

「────どうしたのいきなり?」

 

 

 隣に寝転んでいるアイは僕よりも早く目を覚ましており、起き抜けの唐突な発言に首を傾げる。

 シーツで隠れてこそいるがその下は生まれたままの姿で、差し込む朝日によって明瞭となった視界には昨夜月明かりによって見た彼女とはまた違うものがあった。

 

 

「っ······」

「むぅ······」

 

 

 思わず目を逸らせば、アイは不満そうに唇を尖らせる。かと思えば────

 

 

「えいっ!」

「·········アイ、起きられないんだけど?」

「もう起きちゃうの?」

 

 

 抱きつかれ、より接近した僕の顔を覗き込みながらアイは微笑む。

 そんな彼女に体温が否応もなく上昇するのを感じる。

 

 

「! ふふ······夕、ドキドキしてるね。心臓の音聞こえるよ?」

「······そこはスルーしてくれませんかね」

「ダ~メ♪」

 

 

 あどけない子どものように楽しげに笑うアイ。

 こちらの胸の高なりに気づいて心臓付近に耳を当てる。

 

 

「────そもそもそんなに恥ずかしがる? 昨日なんて────」

「言うなあぁぁっっっ!!!」

 

 

 とんでもないことを抜かそうとしたので遮ると、またアイはクスクスと楽しそうに笑う。

 

 

「······そんなに僕をからかって楽しいか?」

「だって、夕があんな風になるなんて多分初めてだし」

「······悪かったよ」

「別に責めてないよ。それだけ私に夢中になってくれたんでしょ?」

「················································まあ」

「ふふ、嬉しい」

 

 

 朗らかに笑うアイからまた僕は目を逸らす。

 

 

(仕方ないだろ········こっちは魂レベルで初めてだったんだから·········)

 

 

 前世を含めてもこれが初めての男女の営みだった。

 最初は彼女にできるだけ負担を与えないようにしたが、第二ラウンド以降は完全にタガが外れて色々と暴走した。

 そうやって心の中で謎の言い訳をしていると、黙りぱなしだった僕の頬をアイが指で突っついてくる。

 

 

「·········」

「あ、やっとこっち向いた。もう、そんなに拗ねなくてもいいのに」

 

 

 拗ねてない、といっても彼女には通じないだろう。

 だから誤魔化すように僕はアイの背中に手を回し、強く引き寄せる。

 突然抱き寄せられ「わっ!?」と声を上げるアイはしかし、そのまま胸に顔を埋めて嬉しそうな吐息を漏らす。

 

 

「···············身体、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっと腰とかに違和感あるけど」

「そっか······」

「夕」

「何?」

「幸せだね」

「そうだね。幸せだ」

 

 

 そうやってぽつりぽつりと言葉を交わし合い、ぬくぬくとした時間を堪能する。

 そうしてしばらくそれを楽しむと────

 

 

「そろそろ起きようか」

「うん────夕」

「はいはい────」

 

 

 身体を起こし、いつもの通りのやりとりを行う。

 触れ合うだけのキスをし、僕たちの朝は始まる。

 

 

「おはよう夕」

「うん。おはよう、アイ」

 




個人的には三十六話はこう······少し重かったというか、もう少しソフトに描こうと思ってたんですよねー。
でも話の流れ的にあんな風になったんで、アマアマイチャイチャ感を前面に押し出した『裏』を投稿してみました······ハイになったテンションで······
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