真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様 作:水の虎
『裏』ならちょちょいのちょいと描けると思ったのが間違いでした、はい。
『『愛してる』』
二人は本当にお互いのことを愛してるのだろう。
そしてそれは俺たちに対しても同様だ。
父親として母親として、あの二人は俺たち双子のことを愛してくれている。
その言葉で、行動で、目一杯俺たちに愛を伝えてくれる。
·········前世では得られなかった両親の愛情を二人は惜しみなく注いでくれた。
(まあそれはそれとして────)
────ところ構わずイチャつき過ぎだろッ!!
この一週間、何度甘い空気の二人を目にしたことか。
一体どれだけああなれば気が済むのだろう······。
(特に今日はなー······)
手を握ったり、身体を寄せあったりすることは何度も目にしたが、キスをしたのは初めてだった。
正確には俺たちの前ではだが。多分俺たちが寝てたりして見てないところでは普通にしていただろう。あの感じを見るに。
とはいえそのお陰で今日の朝は久しぶりに暴れてしまった。
だって推しのキスだぞ!! そんなん見せられれば俺の中のファンの心···魂が荒ぶるに決まってる!!
くうぅっっ······!! あのアイの可愛さは反則なんてもんじゃなかった······!
まあそういう訳で当初こそ色々と混乱したが、今となってはそれなりに赤ん坊ライフを堪能している。
初めはちょっと反発してしまった父である椎名くんとの距離も、一般的な父親と赤ん坊程度には縮まった。
······というより俺の場合はアイではなく椎名くんの方に頼ることが結構増えた。
とくに風呂とオムツ、そして授乳────つまり食事についてはほとんど彼に頼っている。
アイには悪いが俺の中身が中身なだけに、できる限りそこら辺は同性である彼にしてもらった方がありがたかった。
それにしてもうちの父親はなかなかにスペックがおかしかった。
まだ十代の身で既に主夫を名乗れるレベルで家事全般をこなし、俺たちの世話もすぐに慣れて、正直手際に関してはアイよりもいいだろう。
当初は椎名くんに対する複雑な(というより半ば嫌悪に近い?)感情を持っていたし、赤ん坊とはいえ異性に世話されることに抵抗を覚えていた双子の妹であるルビーも、何だかんだオムツの交換とかを今となっては普通に受け入れていた。
まあ彼女の場合、それを嫌がってアイに迷惑をかけたくないっていうのと、もしそれをすると二人が何だかんだイチャつくのを学習したのもあるのだろうが。
(······いや、というか本当にすごいな)
改めて考えると家事全般をこなしつつ俺たちの世話、さらに今は休みをとってるらしいがここに役者としての仕事もある。
今挙げた三つのうちの二つを両立するのだってかなり苦労するはずだ。
だが少なくとも現実として彼は普通にそれをこなしてるし、とくにそれを苦にしている様子もない。
(しかも率先したせいでアイにはやり過ぎって言われてたしなー······)
世間では家庭の不和の原因にもなるらしい家事分担の口論は、まさかのさせてもらえないことに関してとは······。
これにはルビーの方も「何か内容おかしくない?」って首を傾げていた。
あと最近は父親のことを認めざるを得ないみたいな顔になってきてる。
······そして何よりやばいのがうちの父親、そのあり余ってそうな能力のすべてアイに向けていることだ。
これでも前世は医者の端くれだが、アイの体調の変化には気づけなかった。
もちろん彼女が、そして俺たちが病院にいる時は出産直後とあってそれらしい様子があったが、退院してこの家に帰ってきた時の彼女はそんなそぶりを見せていない。
やはり出産後はまだまだ体調を崩す女性も多いから赤ん坊ながらも元医者として、そして近くにいる者としてそれとなく気を配っていたつもりだった。
けれどアイ本人がうまく取り繕っていたらしく、俺たちや伯母や伯父も気づかなかった。
なのにうちの父親は多分初日あたりから気づいていたのだろう。
だからあんなに率先してアイの分も色々とやっていた訳で、それは陳腐な言い方かもしれないがまさしく『アイへの愛』の賜物と言える。
(いやでも、本当に何で気づいたんだろう······?)
元医者······それも産婦人科医としては不甲斐ない限りだ。まったくもって彼女の不調に気づけなかった。
······まあアイの相手があの人で良かった。アイは男を見る目も一級品だったらしい。
何かと抜けてるところも結構あるし、そういう意味でもアイと彼の相性はいいのだろう。
○ ●
『『愛してる』』
(······むぅ)
悔しいが認めざるを得ない。
あの人······私たちの父親は確かにママのことを、そして私たち兄妹のことも愛してくれていると。
(くっ······!)
流石曲がりなりにもママのお眼鏡にかなった男。やりおる······。
しかし隙あらばママとイチャつくのは許し難しッ!
当たり前のようにママとスキンシップをするだけじゃ飽きたらず、今日に至っては私たちの目の前でキスまで······!
きぃぃっっ······! ちょっと家事全般と気遣いができてその上この家をポンって買えるくらい稼いでておまけに顔も美形なくらいでぇッッ!!
······ママの見る目は確かだった······。
それに私も学んだ。
あんまり私があの人を嫌うとママが困るだろうし、何よりそれでまたあの時みたいになる······。
だから仕方なくママの手が空いてない時はあの人にお世話されてるけど、悔しいことに文句のつけようのない手際だった。
それはそうとやはりあのキスは許せなかったから対抗心からかママのおっぱいを飲んだ後に私だけの特権だと振り向いて勝ち誇ろうとしたが、そこにあの人はいなかった。どうやら双子の兄であるアクアのミルクを用意しに一度キッチンにいっていたらしい。
······何やってんだろ私?
戻ってきたら戻ってきたらでとくに何事もなかったようにママに私のことを聞いて、一先ず様子見ってなったけどその目は私に対する心配が浮かんでいた。
うん、何かこんなことしてる自分が虚しいというか、すごいアホらしく感じた······。
だから認めざるを得ない。
────この人はママを誰よりも大切にしているのだと。
じゃなきゃママの不調になんて気づけないし、そんな人だからママもあの人が好きで、幸せそうなのだろう。
私の知らなかった推しの姿。
最初はやっぱり男の存在に絶望して、軽く呪ってやろうかとすら思ったけど、ママにはあの人が必要なんだと思う。
アイドルのアイじゃなくて一人の女の子のアイ────椎名アイはとても可愛くて魅力的な人だった。
(せんせ······)
だからからか私は前世の時に仲の良かった······ううん、初恋の男の人である雨宮吾郎のことを思い出した。
何でかはわからないけど、こうして私は椎名瑠美衣として二度目の生を受けた。
そんな私には二つの夢がある。
一つはママみたいなアイドルになること!
そしてもう一つ────アイドルになってせんせの最推しになる! そして結婚!
あっ、話が逸れた。
とりあえずあの人のことは認めよう。ママを困らせたくないしね。
た・だ・し!!!
ところ構わずイチャつくのはダメ! しようとしたら赤ちゃん特権フル活用で妨害してやる!
······まあ、二人は夫婦な訳だし? 全部が全部妨害の対象ではない。あくまでも今日みたいな私たちの目の前でキスとかをする時に限る。
私だって女の子だし、流石にそこは弁える。私もせんせとの時間を邪魔されたら怒るだろうし、馬に蹴られるのは勘弁だね。
というか今さらだけど私の父親ってちょっとおかしいよね。
帰ってくるまではママがやっていた家のことを帰ってきてからはほぼすべてあの人がやっている。それこそママがやることなくなって抗議するレベルで。
ママは「駄目人間にされる」なんてぼやいてたけど、確かに最近は私も気づけば当たり前のようにお世話されてて「······はっ!」ってなることがある。
······なるほど、これが愛か。恐るべし······。
まあ今となっては悪い人ではないということもわかったし、そこまであの人に対する嫌悪や抵抗感はない。
あくまで最初はママということは譲れないけど、その後くらいにならパパって呼ぶくらいしてもいいって思ってる。
えっ? 絆されたなって? べ、別に絆されてないし······! まあギリギリ? そうギリギリ! 合格点を出してあげなくもないけど······。
というか何そのやれやれって顔? 大体あんただって私と似たようなもんじゃない!
推しのアイドルであるママに、私と同じ立場の双子の兄、そしてパパ······。
これが今の私の家族。
まだまだ思うところはあるけど、少なくとも今の私は幸せだ。
椎名愛久愛海
色々と受け入れた人。父親にはちょっと引いた。
ふと思えばこの作品の彼は、前世の知識と経験に加え、椎名家の血と教育(駄目人間製造機?)と藤宮家の教育がなされるため、下手すれば原作以上の女たらしとなる恐れがある。
将来は激化する女の戦いにルビーも加わり頭を抱えるかも······?
椎名瑠美衣
絆されてる人。椎名家の血の力をまざまざと見せつけられた。
アクアもそうだが双子共々周りが周りなだけに異性に求める水準がバリ高そう。アクアはともかくとして、せんせ亡き今果たして彼女の水準を満たす男性はいるのだろうか? 少なくとも同年代にはほとんどいないと思う。
仮にいたとしてもあの想いの重さ的に······