真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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生きてます。遅れて申し訳ありません。

微妙にスランプに陥ったのと、次の話の展開次第ではこの話の内容が結構変わる関係で、そこら辺の目処が立つまで投稿しませんでした。
でもそのお陰で次の話は三日以内には投稿できると思います。


それでは本編をどうぞ。


第四十九話●

 

 

 

 

「やあカミキくん────どんな人が好みかな?」

 

 

「以前お答えしたはずですよ、夕さん?」

 

 

 予想外の来訪のはずだが、慌てた様子を見せずにカミキヒカルは応じた。

 

 

「あれだよあれ、ハッピーバースデー······いや、ハッピーニューバースデーとでも言うべきかな? 生まれ変わった君に改めて好みを尋ねてるんだよ」

 

 

「ならもう一度言いましょう。僕に命の重みを感じさせてくれる人、それが答えです」

 

 

 その答えは予想通りだった。

 

 彼は変わってなかった。

 

 術師とか非術師とか、そういう問題でなく、その本質はきっと何一つ変わってない。

 

 だが彼は力を得てしまった。いや、その『力』がなかったとしても、彼は似たようなことをしていたのだろう。

 

 

 そんなことを考えながら夕は口を開く。

 

 

 

「······正直理解し難いけどさ、それをして君は満足できた?」

 

 

「何のことですか?」

 

 

「ここまで来てはぐらかさないでよ。そのために呪術師になったんでしょ?」

 

 

「お見通しですか」

 

 

 流石です、と口にしながらカミキヒカルは笑った。

 屈託なく、心底、どうしようもないほど嬉しそうに、彼は嗤う。

 

 

「────」

 

 

「そう、その目です! ようやく僕はあなたの視界に入れた! ようやく僕を見た!」

 

 

「────そのためだけに雨宮先生を殺したのか?」

 

 

 カミキは「雨宮?」と首を傾げた。

 

 

「お前が宮崎で殺した産婦人科医だ」

 

 

「······ああ」

 

 

 するとようやくカミキは思い出したらしい。

 しかしその顔は先ほどとは異なり少し不機嫌そうに歪んでいた。まるで水を差されたように。

 

 

「どうでもいいじゃないですか────そんなの(・・・・)

 

 

「·········そうか」

 

 

 もう彼が戻れないことを理解した。

 

 

「────これは呪術師としてじゃなく、ただの私怨、私心、私情だ。どこまで行っても俺の自己満足に過ぎない」

 

 

「ええ············ええッッ!! そうですよ夕さんッ!!! 今からすることにくだらない義務や倫理、正義なんていらない!! これは僕とあなたの舞台だ!!! 見せてください!! 感じさせてください!!! あなたの命の輝きをッッッ!!!!!」

 

 

 まさに歓喜に包まれるカミキヒカル。

 

 

「カミキヒカル、お前を殺す」

 

 

「開演といきましょうか、夕さん」

 

 

 舞台には二人の呪術師(演者)

 今ここで彼らは呪い合う(踊る)

 

 

 

 

 ────それを見守る観客は三人(・・)

 

 

  ○ ●

 

 

 割と見慣れてしまった光景。

 

 しかし今改めて訪れると意外と感慨深い気持ちとなった。

 

 

 その理由は以前来てからかなり時間が空いたというのもあるが、何よりも心の持ちようが違うからだと夕は思う。

 

 

 ────薨星宮。

 

 

 久方ぶりに夕はそこに足を運んでいた。

 

 

「────久しぶり、天元」

 

 

「······招いた私が言うのはあれだが軽いな」

 

 

「そりゃあ何度も来てるからね。それにしても相変わらず人外してるねー」

 

 

 人外と口にした通り、親指? のような外見になった天元を夕はそのように評した。

 ちなみに天元が今の姿になる前も彼女の不死の術式による進化が影響して微妙に人外に片足を突っ込んだ外見だったが、今ほどは人外していなかった。

 

 

「それで、何をしに来た椎名夕?」

 

 

「今日はやけに急かすねー······まあいいけど」

 

 

 肩をすくめ、夕は彼女にその事実を告げる。すなわち────

 

 

「羂索を殺した」

 

 

 

 

 

 

「······························そうか」

 

 

 長い沈黙の後、天元はその一言だけ口にした。

 その胸の内はわからない。夕の知る原作の知識は五条と宿儺の頂上決戦の中盤までであり、かつて天元と羂索が友であったらしいということぐらいしかわかっていない。

 

 

 しかし確かに天元の心を波打たせた。

 流石の天元も日本国外のことまではわからないだろうが、羂索が海外へと出向いていたことは把握していただろう。加えてタイミング良く夕もその少し前に国外に出たことを考えると、ある可能性を考えたはずだ。

 きっと夕の口からその事実を語られるまで色々な考えが巡っていたことだろう。

 

 

 だから夕はそれ以上は何も言わなかった。

 単純に自分が踏み込む話でないというのもあるが、夕にとってはどこまでいっても羂索という存在は害でしかない。故に、必要以上に煩わしい気持ちにさせられるのが癪なのだ。まして死んでいるのなら尚更。

 

 

 

 その後、夕はあることを天元に尋ねその場を立ち去るのだった。

 

 

  ○ ●

 

 

 セミの鳴き声が耳に障る。

 

 

「······っ」

 

 

 そんな気分を払拭しようと水を被るが、今度はシャワーの音が自分の頭の中を掻き乱す。

 

 

 水を止め、鏡に映る自分を見る。

 

 

 身体を拭き、服を着る。

 

 

 自販機で飲み物を買う。

 

 

 

「────」

 

 

 ────ただ座り、考える。

 

 

 ここ最近、夏油傑はずっと考え続けていた。

 しかしその度に答えは出ず、すぐに舞い込んでくる任務に向かう。

 疲弊が蓄積していくのを自覚しつつ、任務が終わると、いや、ここしばらくは任務の最中でも考えてしまう。

 

 

(······私は何のために戦う?)

 

 

 呪術師だから、最強だから、それを期待してくれる親友や先輩がいるから。

 

 だから最強の片割れ(夏油傑)は戦い、弱者を守る。

 

 けれどそれは他人()から与えられた理由(もの)に過ぎない。

 

 

 最強であるという矜持と、弱者救済という義務によって成り立っていた戦う理由、その意義の内の一つが彼の中で揺らいでいた。

 

 

 

 

「君が夏油君? ────どんな女が好みかな?」

 

 

 すると、一人の女性がやってきた。

 

 

「······先輩の······椎名夕さんのお知り合いですか?」

 

 

 聞き覚えのある口上に思わず聞き返した。

 

 

「夕は私の弟子さ」

「師弟揃って変な挨拶をするんですね······」

 

 

 呆れたような物言い、それでいて納得した様子の夏油。

 

 

「それで先輩の師匠······ええと······」

「九十九由基。しがない特級術師さ」

「! 貴女があの······?」

「お、いいね、どのどの?」

 

 

 名乗られたその名前に思わず反応すると、興味津々で九十九は自分の評判を尋ねてくる。が────

 

 

 

 

 

 

「······」

 

 

(······拗ねた)

 

 

 伝え聞いた評判そのままを伝えたら見事に九十九はへそを曲げた。

 

 

「はーあ······夕からは何も聞いてないのかい? 一応私が海外でやってることは理由があってのことなんだけど」

「そもそも椎名先輩に師匠がいること自体初めて知りました」

「あいつ······。というか今聞いた評判の半分くらい絶対夕が言っただろ」

「あはは······」

 

 

 今度会ったら覚えてろ、とぶつくさ言う九十九に夏油は苦笑する。

 

 

「······まあいいさ。それで何だったけ? あー、まあつまり────」

 

 

 そうして九十九は語り出した。自身のやろうとしていることとその目的、目指す世界のために何が必要かを。

 

 

「────」

 

 

 

 その過程で、呪霊がどうやって生まれるかも語られた。

 

 

 

「────大雑把に言ってしまうと、全人類が術師になれば呪いは生まれない」

 

 

「······じゃあもしも······もしも非術師を皆殺しにしたらどうなります?」

 

 

 その問いに九十九は「フッ」と笑った。

 

 

 

 

「────夏油君、それは「アリって言うんですか?」···おや」

 

 

「椎名先輩······」

 

 

 割り込まれたセリフ。その人物に二人は顔を向ける。

 

 

「何やってんすか九十九さん?」

 

 

 そこには椎名夕が立っていた。

 

 

「見ての通りだが?」

「なるほど。変なことを吹き込んでいたと」

「変なこととは失礼だね。アリかナシかで言えばアリ······少なくとも手段としては多分それが一番イージーだろ? 非術師を殺し────間引くことで彼らに適応を促す。間違ってはないだろう?」

 

 

(まったくこの人は······)

 

 

 確かに手段としては間違ってはない。けど────

 

 

「その方法で実現できたとしても、それは多分夏油の思い描いた世界とは違うと思いますよ? 目的と一致しないことを吹き込んでるじゃないですか」

 

 

「······どういうことですか?」

 

 

 その言葉に夏油が反応する。

 

 

「······」

 

 

 夏油へと目を向ける夕。彼は少し迷いつつ、今浮かんだそれ(・・)を実行することにした。

 

 

(────まあ多少荒療治になるかもしれないけど)

 

 

「先輩?」

 

 

 身体を翻し背を向ける夕。

 

 

「────せっかくだから実際に見てみよう。その世界が実現した先······モデルケースの一つと言えるものを」

 

 

  ○ ●

 

 

(まさか今日だったとは······)

 

 

 薨星宮からの帰り。夕は何やら聞き覚えのある声とセリフを耳にしいってみると案の定な光景がそこにはあった。

 

 

(まあ本来のあの(・・)夏油よりはずっとマシっぽいけど)

 

 

 そんなことを思いながら夕はこの場にいるもう一人を見る。

 

 

「······それにしても帰ってきてたんですね」

「ああ、ちょっと野暮用があったのと、新たな特級に興味があってね」

 

 

 それでうっかり特級の呪詛師を誕生させかねないことをしないで欲しいと夕は思った。

 

 

「それで、モデルケースと言っていたがどういうことなんだい?」

「······すぐにわかりますよ」

 

 

 現在三人は高専を出てある場所へと向かっていた。

 

 

「────ここだね······」

「ここは?」

「呪詛師のコミュニティ······いや、だった場所って言った方が正しいか」

「どういうことですか?」

 

 

 人気のない立地に建つその建物には、呪詛師の影はない。そう、一人を除いて(・・・・・・)

 

 

「ここには雨宮先生を殺した呪詛師がいる」

 

 

「·········はっ?」

 

 

 こぼれ出る声。しかしそこには確かな殺意が窺えた。

 

 

「······殺気立つな。これから下手人とっちめるのにそれじゃあ向こうにバレるだろ」

 

 

 そうは言いつつ、その殺意が少し夕は嬉しかった。夏油にはまだ確かな良心が残っているとわかるからだ。

 

 

「さて、そんなわけで今からとっちめるわけだけど────手出しはしないでね?」

 

 

 そう、これより行われるのは葬送の儀式だ。

 

 

 夕がカミキヒカルへと贈るそれは────

 

 

 

「虚構」

 

 

 

 夕にとっての始まりにして原点。

 

 

 

「仮初の舞台」

 

 

 

 ずっと踊り続けていた。

 

 

 

「夢幻泡影」

 

 

 

 一度は折れそうになった時もあった。

 

 けれど、それでも夢の先を目指し、今自分はそこに立っている。

 

 だが、今宵描かれるのはそんな希望に満ちたものではない。

 

 それはアイなき世界で自分がたどり着く場所。

 

 

 

「色即是空」

 

 

 

 故にそれに色はない。空っぽで、見てくれだけの何か。

 

 そしてそれこそがこれの本質。あり得たかもしれない椎名夕の空虚な人生の最果て。

 

 今ここに限り、そんなロクでもないものをここに描く。

 

 

 

 

 曰く、呪術を極める事は引き算を極める事。

 

 しかしそんな呪詞や掌印をあえて省略しないことで出力を増幅させる。

 

 

 

 

(────そっちの事情など知ったことか)

 

 

 舞台が整うのを待つと思うな。

 さあ、滑稽に踊るといい。

 綺麗な舞台の上()で、道化のように(美しく)

 

 

 

「極ノ番······」

 

 

 

 ────『白昼夢』

 

 

 

 これより、嘘の極みが世界を席巻する。

 

 

 

 

 

 






カミキ「えっ? ここから入れる保険があるんですか?」

投稿の仕方

  • つべこべするな! 描けたらとにかく投稿
  • モヤモヤしたくない! まとめて投稿
  • お前を信じる! これまで通り作者に一任
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