真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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う~ん······ちょっと雑になったかな?
でもカミキだしな~。

まあいいか。カミキだし(適当)




第五十話●

 

 

 カミキヒカルの術式は特定条件を満たすことでの自己の強化だ。

 その条件とは他者の生命を害すことで、殺害はもちろんのこと、それらの同一線上にある行為もそれに該当する。

 つまりカミキヒカルは他者の生命を奪おうとすることで際限なく自らのスペックを跳ね上げることができ、それは戦闘中常にバフがかかり続けることを意味する。

 加えてそれらのバフは術者の意思でストックに回し、任意のタイミングでそれらによる自己強化を行うことも可能。

 

 

 

『────あははは!! どうしたんですか夕さん! 僕を殺すんでしょ? 僕が許せないでしょ? ならもっと死力を尽くしてくださいよぉ!!! 貴方の力は、命の輝きはそんなものじゃないはずだッ!!』

 

 

『······』

 

 

 狂った笑い声を上げ、夕へと苛烈に襲いかかるカミキヒカル。もっとも────

 

 

 

 

「······うるせー、そんでもってうぜー」

 

 

 と、当の夕本人(・・)はその戦いを外側から観戦していた。

 

 

「けれどなかなかやるじゃないか。並みの特級呪霊なら軽く捻れそうだぞ。呪術に触れて数ヶ月でこれとは才能あるね」

「傍迷惑なことしなければ素直に称賛できるんですけどね······」

 

 

 そんなやりとりを交わす師弟コンビ。しかしカミキを称賛した九十九も「でもまあ······」と呟き────

 

 

「エグいな······お前の極ノ番。しかも詠唱こみでやるとは、何だかんだ夕も殺意高いな」

 

 

 確かにカミキヒカルの才能、そして術師としての強さは凄かった。けれど実際はこうやって文字通り手のひらで踊らされており、それを目にして九十九は苦笑を浮かべた。

 

 

「······それにそれだけじゃないですよね?」

「おや、夏油君も気がついたかい?」

「ええ······極ノ番の他に結界術も併用して使ってます」

「ああ、見事なものだ。ただでさえ術式自体がそういうことに向いてるのに結界術もうまく併用されると必中のない領域展開と変わらないだろ。実際この結界は逃走防止に役立つだろうしな」

 

 

 まあ見た感じ彼は逃げなそうだが、と九十九は付け足す。

 

 

「実際の領域展開は極ノ番(これ)と大分毛色が違いますけどね」

 

 

 そんな二人に対して夕は肩をすくめる。

 

 

「ああ、やっぱりお前だったのか」

 

 

 九十九は納得したように頷く。

 一方でそれを聞いた夏油は首を傾げた。

 

 

「どういうことですか?」

「いやなに、何ヵ月か前に海外で呪霊が近寄らない場所があると聞いてね、実際にそこに行ってみたんだが夕らしき残穢が滅茶苦茶あったんだよ」

「まあ流石に領域展開すると結構な残穢が残りますよね」

「さらっと言ってますけど領域展開できたんですね先輩······」

 

 

 もはやカミキヒカルの存在を忘れ会話に興じる三人。

 

 

「────あ」

「おや負けそうじゃないか夕」

「正確には俺が作り出した幻術の俺ですけどね。一級術師くらいの強さにしましたけどまさか負けるとは」

「どうするんですか? 椎名先輩」

 

 

 そりゃあもちろん、と夕は懐に手を入れてそれを取り出すと────

 

 

「こうする」

 

 

 パンッ!

 

 

 無表情のまま発砲するのだった。

 

 

  ○ ●

 

 

「終わりです────夕さん!!! ··················はっ?」

 

 

 遂に夕(の幻術)を手にかけようとしたその瞬間、乾いた銃声が耳朶を打った。

 

 

 膝を撃ち抜かれ、勢いそのまま地面にその身体は激突する。

 

 

「ハイお疲れー────」

 

 

 振り向くとそこには夕が立っていた。そして冷ややかな目をカミキに向け言った。

 

 

 

 ────解散解散(終わりにしようか)、と。

 

 

 

 

 

 

「·········これは、どういう······ことですか······?」

 

 

 意味がわからなかった。

 

 

「────意味がわからないのはこっちだよ」

 

 

 そんな思考を読んだかのような夕の声が響く。

 

 

「まあ別に理解しようとは思わないけどね。でもお前がしたことには腹が立った。それをしたのは俺に対する執着の暴走みたいなものだろ? だからそんなお前の執着を踏み躙った方が堪えると思ったんだよ」

 

 

「な「大体さあ────」」

 

 

 

 ────お前如きにいちいち本気になると思った?

 

 

「!?」

 

 

「······まあ腹が立ったのは本当。けどこちとら呪術師を何年してると思ってる。そこら辺はきっちり割り切ってるよ」

 

 

 ぽりぽりと頭を掻きながら「さてと」と夕は口にし────

 

 

「カミキヒカル────呪術規定に基づき、お前を処理する(・・・・)

 

  

 極めて事務的にカミキに告げた。

 

 

 

 

「···、·········る······、な······ッ!!」

 

 

 ワナワナと、カミキは震え出す。

 

 

 

 

「ふざけるなぁぁっっ!!!」

 

 

 カミキヒカルは吠え、撃ち抜かれた膝に無理矢理力を込めて飛び出した。

 

 

「ッッッ────!?」

 

 

 だが肉薄し振るわれる腕や足はすべてすり抜けていく。

 当たり前だ。彼は現在進行形で『白昼夢』の術中なのだから。

 

 

「違うッッ!! こんなのを僕は認めない!!! 僕を見ろッッ!!! 僕は!! 僕はぁぁっっ!!!」

 

 

 幻影に踊らされながらカミキは叫ぶ

 しかし夕はそれを一瞥することもない。

 それどころかそれを無視して夏油に語りかけ始めた。

 

 

「力は人を歪める。見ての通りだよ夏油」

 

 

 まあこいつはかなり特殊な例だけど、と付け足しつつ夕はさらに続ける。

 

 

「俺たちは、人間は術師かそうでないかに限らず、誰しもその身に呪いを飼っている。人は弱い存在だ······きっと何かの拍子にその呪いは、人の感情を糧に姿を現す。でもな夏油、それを否定してなくていいんだ」

 

 

 夏油傑は真面目な人間だ。故に彼は正しくあろうとしてしまい、意義を見出だそうとする。

 だが、だからこそ夕は言う。

 

 

「────正しさに絆される。人の弱さも醜さも受け入れろ。そして戦う理由を他に委ねるな。俺たちは呪術師だ。時にクソみたいな現実を直視することもあって、その度に戦って(呪って)いかなければいけない。そうして、受け入れ難いものを胸に、苦渋の選択をして、良心の呵責を苛まれることもある。そんな自らを押し潰す良心を理解し、付き合っていけ」

 

 

 時に他人の命を天秤に乗せ、切り捨てることもある呪術師。

 とくに夏油の場合、実力があるだけにその選択は負担が大きい。

 だからこそ、持ちうる力に引きずられ、突き進もうとしてしまう。そしていつかどこかで折れてしまうのだ。

 なまじ力が大きいと、人は曲がることを忘れてしまう。それが続けば続くほど、どんどん曲がることを恐れ、柔軟な思考ができなくなって(歪んで)いく。

 何かを貫く強さは大事だ。けれど立ち止まり、曲がり、他に目を向けて寄り道をすることだって大事なのだ。なぜならそうやって得た経験が、広がった視野が、器の大きさこそが、その者の強さの厚みとなる。

 夏油の強さは五条のような突き抜けた強さではなくそういった飽和的な強さ。

 

 

「生まれながらに持っていた力でさえ人を大きく歪めることだってあるんだ。それが生存戦略の過程で、強制された無理な進化で得た力ならなおさら人を歪めるよきっと。なんせ劇的な事態から降ってわいた力だ。そんな経験すれば誰だってその力を特別視して、傾倒するだろうね」

 

 

 そしていつか、それに依存し、それだけを頼りに進もうとする。

 

 

「まあそういう拠り所を持つのは悪いことじゃない。お前にとって最強であることの自負は自分を高めるための原動力だしね。でもそこに生き方すべてを乗っけるな」

 

 

 ならば、と夏油は思った。

 

 

 

「────なら先輩は、何のために戦うんですか?」

 

 

「決まってるだろ────」

 

 

 その問いに夕は笑った。

 

 

 

 ────それがどういうものかわからない。でもそれが見つかった時、心から私が『愛』をわかる時が来たら、その時は夕と一緒にいたいと思った

 

 

 ────ねえ、夕? 夕が心から笑えた時、本心を見せられる時ってどんな時? それがわかればきっと夕は取り戻せるよ、心だって、何だって······ね?

 

 

 

 そう、自分はきっと────

 

 

「────心の底から笑うため。そしてこの世界でそんな風に一緒に笑い合いたい人たちを守るため。そのために俺は戦う」

 

 

「······心の底から······一緒に笑いたい······」

 

 

 夏油傑の脳裏に自らの片割れとも言える親友の顔が浮かんだ。

 

 

 その顔を見て、夕はもう大丈夫だと感じた。

 

 

 

 

 

「────翻って君は何とも。まあ潔いといえば潔いのかもしれないけど」

 

 

 そこには倒れ伏しているカミキがいた。夏油との話の合間に夕が何度か銃撃していたからだ。

 

 

「命の重みを感じるね······意味が微妙にずれる気がするけど逆メサイアコンプレックスかな? そんなに自分の価値が低く感じるのかい?」

 

 

「······逆に貴方はご自分の価値をどう思ってるんですか? いえきっとさぞかし大きなものと思ってるんでしょうね」

 

 

「知らないよそんなもの」

 

 

「っ······どういうことですか?」

 

 

 低く唸るような声を絞り出すカミキ。

 

 

「さっきは他に理由を委ねるなっていったけど、逆に人の価値を決めるのは他人だからね。芸能界なんてその最たるものだ」

 

 

 自分に価値があるかは正直今でもわからない。自分を認めてる人が、価値があると言ってくれる人はいるだろうが、それでも迷うことはある。だが────

 

 

「少なくとも俺は背負ってるつもりだ」

 

 

「背負う、ですか。まるで僕が奪った命を背負ってないみたいにいいますね」

 

 

「······お前は(呪い)を消費されて然るべきものと考えているだろう。けどそれは違う」

 

 

「何がですか? 命が輝く時間には限りが「それが違うって言っている」······ではどう違うと言うのですか?」

 

 

「────(呪い)は廻るものだ。そして背負うというのはそれを繋ぐこと、廻していくことだ」

 

 

 もし死した者がいて、その者が残された者に何かを背負わせることができたのなら······想いを託すことができたのなら、きっとその者には確かな価値があったのだろうと夕は思う。何せ残された者にとってその想いは消えない呪いだ。呪われてしまうほど、その者にとって大きな存在だったという証左に他ならないのだから。

 

 

「だが、お前は背負ってなんかない。いたずらに奪った者の想いを理解せず、ただ自己満足に酔いしれているだけだ」

 

 

 既に動けないカミキに夕は近づいていく。

 

 

「そしてそのためにお前は無辜の命を奪った。それをしないで、ただ俺を殺しにくるだけなら、せめて真っ当に戦ってやるくらいはしたよ」

 

 

 そうなれば少なくとも夕はカミキヒカルを祓うべき呪いではなく呪術を使える人(・・・・・・・)として見たはずだった。

 

 

「けど今のお前は俺にとってただの呪い······少し邪魔な障害物でしかないよ。それこそそこら辺にある無機物と変わらない。そしてそんなものにいちいち価値なんて考えない」

 

 

「~~っ!」

 

 

 その言葉にカミキの顔は歪む。

 

 

 

 

「ただそうだね。一つだけ······一つだけお前に価値を付けよう」

 

 

 夕は笑った。かつてカミキヒカルと接していた時と変わらぬ笑みを浮かべて。

 

 

 

 

「────ありがとう、カミキくん。君のお陰で僕の後輩は前に進めそうだよ。君はいい当て馬(・・・)だった」

 

 

 

 

 果たしてその時カミキはどんな顔をしたのか。

 

 それを知るのは夕一人。

 

 なんせもう本人はこの世にいないのだから。

 

 

 




椎名夕
徹底的にカミキヒカルの心を折りにいった人。
ちなみに呪いに転じないようにとどめはちゃんと『霧散霧消』で肉体も魂も余さず消滅させた。


夏油傑
一歩踏み出せそうな人。
カミキヒカル(モデルケース)は極端な一例だったが、自分の経験も踏まえた呪術界のことを考えると、そういうのが生まれる可能性は大いにあると思った。


九十九由基
弟子の成長を目にして内心結構嬉しい人。
なのに実は結婚のこと、既に子どももいることも何も知らされていない。


カミキヒカル
十五年の人生に幕を下ろした人。最初から最後までまともに夕に相手されることなく幻術に踊らされ続け、最期には脳を徹底的に焼かれた?
なお夏油(とついでに九十九)を夕が連れてくることがなければ、潜伏していた建物の外から壁越しに閉じない領域展開をされて、文字通り何もできずに死んでいた。
どうでもいいが彼の術式に名前を付けるとしたら『命の輝き』だろうか?

投稿の仕方

  • つべこべするな! 描けたらとにかく投稿
  • モヤモヤしたくない! まとめて投稿
  • お前を信じる! これまで通り作者に一任
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