真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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アンケートの試用を兼ねて投稿の仕方についてアンケートを取ります。
まあ別にアンケートを使う予定は今のところないんですけどね。


第五十三話○

 

 ────俺こと椎名愛久愛海は、現在苦境に立たされていた。

 

 

 

 

「やあ、楽しそうだね?」

 

 

 そう口にするのは俺たちの父親である椎名夕。

 いつもと変わらぬ笑みを浮かべているが、今に限ってはそれが凄く怖い。隣にいるルビー()もそれは同じだろう。

 

 

「っ······!」

 

 

 そんなことを考えていると目が合ってしまった。

 咄嗟に逸らしてしまうが、これじゃあ先ほどまでのことを認めてるのと同義だと遅れながらに気づく。

 

 

「······?」

 

 

 だけどそんな俺の様子に父親である彼は仕方なさそうな······それこそ可愛いわがままを言う子どもを見る時のような笑顔になった。

 

 

 拒絶され、排除でもされると思っていたから正直少し困惑した。少なくとも何かしら言ってくると思ったんだが······

 

 

 しかし、次の言葉に俺もルビーも心臓が止まるほどの衝撃を受けた。

 

 

 

「────二人とも、転生者だよね?」

 

 

  ○ ●

 

 

 きっかけは······ない。

 

 いや実際にはあるが、わざわざ語るようなものでもない。

 

 こうなったのはある意味必然で、ただ俺たちが迂闊だっただけに過ぎないのだから。

 

 

 だが改めて思う。

 何でもっと自重しなかったのだろう、と。

 

 

 正確には最初は自重していた。というより自重せざるを得なかったと言うべきか。

 

 ひょんなことから転生して二度目の生を受けたはいいが、赤ん坊の身体じゃできることはほとんどない。

 厳密には二度目の人生の影響なのか物理的にはできるが、常識的に生まれて間もない赤ん坊が自由に動き回るのは不自然過ぎる。

 だから羞恥を堪えてちゃんと普通の赤ん坊を演じてたし、社会の荒波に揉まれていた頃を思い出せば赤ん坊ライフは天国のようだった。

 

 

 だが如何にそれが天国であったとしても、流石に変わり映えしない日常はどうしても飽きてしまう。

 娯楽なんてアイや彼女と話す彼の会話に耳を傾けるか、垂れ流しにされてるテレビを観るか、あるいは同類である妹としゃべるくらいだからな。

 

 

 まあそんなわけで生後二ヶ月くらいの時、夜二人が寝た後にこっそりベビーベッドから抜け出そうとしたんだが······

 

 

 

 ────おや愛久愛海、オムツかい? それともお腹空いた?

 

 ────どうしたの愛久愛海?

 

 ────最近は寝付きが悪いね愛久愛海?

 

 

 

 何故かこんな感じですぐに気づかれた······

 

 ちなみに俺と同様に赤ん坊生活に飽きていたルビーも同じように抜け出そうと試みていたが、結果は変わらなかった。

 

 

 

 いや何この人? 何ですぐに気づくの? というか俺たちのせいで夜起きて寝てを繰り返してるのに何で疲れた様子がないの? 

 

 

 いつだかアイも働き過ぎな彼にちゃんと休めているのかと聞いていたが────

 

 

『ん? 反転術式があるから大丈夫だよ。それに繁忙期の任務に比べれば全然楽だし』

 

 

 反転術式? はわからないが、そう言う彼の顔にはまったく誇張のようなものは見られなかった。

 というかそれが本当なら呪術師ブラック過ぎないか?

 

 

 まあそんなこんなで結局暇な時間を過ごすことが多かった。

 唯一の暇潰しはルビーと話すことぐらいだが、それすら時々彼は察知して起きることがあるから気が抜けなかった。

 

 

 ······いや呪術師って皆こんななの?

 

 

 だけどある日のことだった。

 基本家族第一優先の彼の帰りが遅かった日があった。いつも遅くなるなら事前にその予定を伝えていたのに、その日は本当に急に遅くなることとなったらしくなかなか帰ってこなかった。

 俺もルビーもその日はたまたま早く眠ってしまっていたが、夜中起きた時には彼は帰ってきていた······いたのだが────

 

 

(絵面だけ見れば完全に夜の営み前って感じだったよな······)

 

 

 目を覚ましたと思ったらそんな光景が飛び込んでくるから最初に思いっきり目を剥いて、ついですぐに目を逸らしたなー。

 だってアイをベッドに押し倒すようにして胸に顔を埋めてたし。

 

 でもしばらくしておかしいことに気づいた。

 いつまで経っても行為らしい行為に発展しないし、何より上手く言えないがこう······雰囲気が何か違った。

 そしてよくよく耳を澄ませば彼は寝息をたてて寝ていたのだ。

 

 

 おいテメェ······アイを押し倒しておいてそのまま寝るとか何事だぁっ!? と、普段なら思っていたが、こっそり盗み見た光景を見て俺は納得した。具体的に説明しろと言えないが、とにかく心が納得したのだ。

 

 

 そこにあったのは慈しむような、それでいてただの慈愛という言葉では言い表せない、そんな顔をしたアイが眠る彼の頭を撫でていた。

 まるで一枚の絵画のようなその光景は、どこか神聖さすらあったように思える。

 

 

 そしてその日以降、彼は夜深く眠る時が増えた。

 何だかんだで忙しなくしていたのが嘘のように彼は休むことが増えたのだ。

 

 

 それによって、夜抜け出せるようになったのだが······うん、それがいけなかった。

 最初は恐る恐るバレないように、だけどどうせバレるだろうなと駄目元だったのだが、抜け出せてしまったのだ。

 そのときは今までのことが嘘だったようにあっさりとうまくいってしまって俺もルビーも驚いたものだ。

 

 

 ······だがまずかったのはそこからだ。

 次の日も、その次も、バレないことをいいことに抜け出すことに味を占めてしまった。

 

 

 あとはまあ、おわかりだろう。

 今日、とうとう俺たちはバレてしまった。

 いつものようにネットでB小町のライブ映像を観ながらアイについてルビーと語り合ってるところ────

 

 

「やあ、楽しそうだね?」

 

 

 と、いつの間にか彼はそこにいた。

 

 

 致命的だ。

 百歩譲ってただ抜け出しているだけならともかく、流暢に喋ってるところをガッツリ目撃されてしまった。

 そう思っているところに追撃がくる。

 

 

 

 

「────二人とも、転生者だよね?」

「「ッ!?」」

 

 

 何でわかった······!?

 混乱し、頭がろくに回らない中、そんな俺たちを見た彼は苦笑し、「流石に性急過ぎたね。ちょっと待ってて」と言い、台所に向かって行った。

 

 

 

「────はい、これ飲んで落ち着こうか。まあ中身はいつも飲んでるミルクだけど」

 

 

 戻って来た彼は俺とルビーにミルクを差し出した。

 彼も俺たちに合わせるように床に胡座をかいて座り、マグカップを傾けている。

 そのまましばらく沈黙が続くが────

 

 

「······どうしてわかったの?」

「逆に気づかれないと思ったの?」

「「うっ······」」

 

 

 おかしそうに笑いながら返された答えに思わずルビーと一緒に呻いた。

 

 

「······ち、ちなみに······いつから······?」

「七月の頭あたりには確信していた」

「いや早くない!?」

 

 

 恐る恐る聞くも、その答えにルビーが叫んだ。俺も叫びはしなかったが同じ感想だ。一ヶ月も経たずにバレていたのだから。

 

 

「────ねえ、二人とも。赤ん坊の首が座るのってどれくらいかわかる?」

 

 

 すると今度はあちらから尋ねてきた。

 

 

「ええと······アクアわかる?」

「個人差はもちろんあるけど、三ヶ月から五ヶ月だな」

「へぇ~」

 

 

 答えに窮したルビーが俺に聞いてきたため答える。

 これでも一応前世は産婦人科医だからな。この程度は当たり前の知識だ。

 

 

「うん、愛久愛海の言う通り。早くても二ヶ月って言われてるね」

 

 

 鷹揚に頷いているが、この質問に何の意図があるんだ?

 

 

「いや何で不思議な顔してるの? わからない? 二人とも明らかに生後半月くらいで首が座ってたじゃん」

 

 

 俺に威嚇やらする時とか普通にわかりやすかったし。

 そう呆れながら彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······························あっ」

 

 

 うん·········うん! 納得の理由だ!

 

 

 

(·········うああっ···············あ、あああ~~~!!!)

 

 

 何が前世は産婦人科医だよッ!?

 バレた理由が一般人でもネットで調べればわかるようなレベルッッ!?!?

 

 

「むしろそれでバレないって思ったのが不思議だね。正直隠す気がないんじゃないかとすら思ったよ?」

 

 

 ごもっとも!!!

 と、僕が心の中で叫ぶ一方────

 

 

「ま、ママはこのこと知ってるの······?」

 

 

 ルビーが不安そうに聞く。

 俺も思わずその可能性に至りハッとした。

 

 

「首が座るのが早過ぎるってことは知ってるよ。でも二人が転生していることは知らないし言う気もない」

「でもおかしいって思われなかったの······?」

 

 

 まあ早々生まれ変わりなんて発想には至らないだろうが、それでも何かしら思うはずなのだが────

 

 

呪術師()の子どもだからまああり得るのかなって何故か勝手に納得された······」

 

 

 そう答える彼の表情は何とも言えないものだった。

 

 

「······実際はどうなの?」

「呪術師でもそこら辺の成長は普通の人と同じだよ。二人は非術師だしなおのことね」

 

 

 苦笑いと共に俺の疑問に彼は答える。

 

 

 俺とルビーは改めて自分たちが異物だということを認識させられ、気づけば顔を伏せていた。

 

 

 

 

 

 

「────愛してる」

 

 

 

 

 

 けど、気づけば俺たちは抱きしめられていた。

 

 

 

「嘘じゃないよ。あの日二人に、アイと一緒に伝えたこの気持ちは嘘じゃない。それは今この瞬間に至っても変わらない」

 

 

 

 この人は······

 

 

 

「ごめんね? きっとそのことでずっと二人は負い目をもって、苦しんでたよね。もっと早くこの機会を作るべきだった」

 

 

 あの日と変わらぬ暖かくて優しい眼差しだった。

 目頭が熱くなるのを感じる。

 滲む視界の先では既にルビーは泣いていた。

 そのせいで彼は少し困った顔を浮かべるも、そっと続きの言葉()を紡いだ。

 

 

 

「────愛久愛海、瑠美衣、生まれてきてくれてありがとう」

 

 

 




椎名愛久愛海
救われた人。
夕の言葉はきっと彼にとっても、ルビーにとっても何よりも救いとなった。ある意味彼ら二人の人生はこの日本当の意味でスタートしたとも言えるかもしれない。
それはそうと仮に前世のことを話す機会が今後あったとしても、前職(前世の職業)産婦人科医がすぐに信じて貰えるかは怪しい。


オマケ 納得の原因(理由)

『あくまで私も聞いた話なのですが、坊っちゃんは生後半年過ぎたくらいで歩行していたとか』


「────というお話を昔小雪さんから聞きました」
「それを考えれば二人の方もあり得る······のか?」
「あとは夕が呪術師なのも関係してるのかなー?」
「一概にあり得ないとは言えなさそうだな」
「まあどちらにしても成長が早いことは喜ばしいと思いますけどね。────ああ、ですがそうなると早い段階からそれらを踏まえた家の環境にする必要はありそうですね。そのときは私たちも手伝いましょう」
「うん、ありがとねお姉ちゃんお兄ちゃん」


実は肉体を呪力で強化したら即効で歩行ができるようになった夕(生後半年)。そのまま呪力操作の練習も兼ねて何度も歩いていたらベビーシッター(小雪の前任)に見られた。
そういう迂闊さは地味にアクアとルビーにも引き継がれたのかも?


次回は多分ルビー視点。
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