真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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どうも、定期的に呪術の話しを描きたくなって入れてしまう作者です。


さ~て、今回の話は······


 ────嘘は、とびきりの愛なんだよ(意訳)




第六十話○

 

 

 

 

「────強くなったね二人とも」

 

 

 二年前とは比べ物にならない成長を遂げた二人に称賛の言葉を贈る。

 

 

「ゼェ······ゼェ······」

 

 

「は、はは······」

 

 

 もっとも二人ともしゃべる余裕はなく、地面に寝そべりながら息を整えているが。

 

 

「七海は······うん、何というか······とりあえず残り一年頑張って」

 

 

 主に問題児二人のあれこれをという意味でそう言う。

 

 

「ハァ、ハァ······っ! 嫌なことを···言わないで、ください······っ」

「何か言おうと思ったけど、最初に思い付いたのがそれなんだから仕方ないでしょ?」

「······不安だ」

「ま、七海なら大丈夫でしょ」

「······」

 

 

 だがそんな言葉とは裏腹に彼の顔はどこか浮かないものだった。

 

 

「────もう五条や夏油たちだけでいいって思ってる?」

「ッ!?」

 

 

 どうやら当たりらしい。

 

 

「まあ、わからなくはないけどね~······」

 

 

 でも────

 

 

「人は多分、一人じゃ生きていけないよ。それはあいつらだって同じだ。────支えが必要なんだよ、誰にでも」

「そうでしょうか······」

「少なくとも俺自身はそうだしね。それにあくまでも俺の理想だけどさ、そんな支え合いの総体が呪術師であって欲しいんだよ」

「······」

「まあ、ゆっくり考えるといいよ。何なら一度呪術界から距離を置いたっていいから、ね?」

 

 

 そう言って手を差し出し、引っ張り上げた。

 

 

「それと卒業しても気にせず連絡もしてきな。相談くらいなら乗るよ」

「······ありがとうございます。その時は是非。────卒業おめでとうございます、椎名先輩」

「うん、ありがとう七海」

 

 

 次に灰原に目を向ける。七海と話している間に息を整えたのかこちらにやってきて────

 

 

「椎名さん! 卒業おめでとうございます!」

「ありがとう灰原」

 

 

 相も変わらず溌剌とした感じの灰原に笑みがこぼれる。

 

 

「灰原は······特にないな······?」

「えー! 七海ばっかりずるいですよー!」

「いい意味でだよ。お前のその明るさは得難いものだから、そのままでいるといい。きっと七海も言葉にはしないだろうけどそれに救われてると思うよ?」

「そうなの七海?」

「は? いや、まあ······」

 

 

 そんな可愛い後輩二人のやりとりを横目に、今度は頼れる後輩へと視線を滑らせる。

 

 

「次はお前か? ────夏油」

 

 

「ええ、改めて卒業おめでとうございます────先輩ッ!」

 

 

 一気に夏油は距離を詰めてくる。

 

 

「そう思うんならっ! これ! やめ·····ないっ!?」

 

 

「無理です。諦めてください」

 

 

 突き出される拳を受け止め、弾き、隙を縫うように繰り出された足払いをサッと避け、逆にその伸びきった膝目掛け足の裏を向けるも横合いから不穏な気配を感じ飛び退く。

 

 

「······虹龍か」

 

 

 距離をとって目に映ったのは東洋の龍の姿をした呪霊である虹龍。夏油が好んで使う呪霊の一体だ。

 というか術式込みでやるのかと夏油の顔を見るが、滅茶苦茶いい笑顔で返された。

 そのためこちらも呪力を巡らせ、いつでも術式を使えるようにしておき────

 

 

 

「ッ────!!!」

 

 

 一先ず出方を窺い様子見と思ったが、夏油の次の一手を前に即座に意識を切り替え地面を蹴る。

 しかしそんな接近を妨害するのは言わずもがな虹龍。

 それに対し俺はギリギリまで接近した後、一瞬だけ速度を落とす────

 

 

『────!?』

 

 

 と、見えるよう幻術を使い、最短距離で虹龍の真下をくぐり抜け、地を這うような低い姿勢のまま夏油に迫る。

 

 

「極ノ番────『うずまき』」

 

 

 けれど想定よりも速くそれは解き放たれた。いや、厳密にはそれだけではない。

 

 

(背中に極小の『うずまき』を隠してるな)

 

 

 わかりやすく夏油の頭上にまとめられた高密度の呪力で隠すようにしれっとそれは作られていた。

 

 

(振り切った虹龍はまだこない。この距離なら俺が夏油のクロスレンジに踏み込む方が速い)

 

 

 そうすれば夏油共々巻き込む可能性があって突っ込んで来ることはないだろうから、考えるのはこの局面の後でいい。また別の呪霊に関しても今から出しても間に合わないから除外。そうなると警戒するのは二つの『うずまき』と夏油本人による攻撃のどれか······

 

 

 

「ッッッッッ!?!?」

 

 

 そう思った瞬間走る悪寒。

 

 

(ッ、虹龍······!?)

 

 

 驚愕しつつ何とか身を捻って躱す。だが完全に後手に回った。

 

 

 そこを逃さず放たれる『うずまき』。

 

 

「ちっ······!」

 

 

 舌打ちしつつそれも回避する。

 すぐ近くを通り抜ける濃密な呪力の波動。畳み掛けるように迫ってくる夏油と虹龍。

 さらに付け加えるなら────

 

 

「小器用なことを·····っ!」

 

 

「褒め言葉と思っておきます」

 

 

 殴りかかってきた夏油の周囲には一つしかなかった極小の『うずまき』が複数となり、衛星の如く旋回していた。

 

 

「っ────!? なろっ!」

 

 

 再び交錯する腕と足。しかし最初とは異なり、時折極小の『うずまき』が放たれる。

 いやらしいことに常に『うずまき』が放たれるわけでなく、いつそれが来るかを警戒しながら夏油の打撃を対処しなければならない上に、視界の端では虹龍がこちらの隙を伺っている。

 

 

(仕方ない────)

 

 

「!」

 

 

 少し強引に打撃の応酬を終わらせにいく。

 急なリズムの変調に一瞬夏油の対応が遅れるも、まだリカバリーが効く範囲。加えて万が一に備え『うずまき』を散らつかせて牽制も入れてくる。

 

 

「────!?」

 

 

 が、それを無視して無理矢理俺は踏み込んだ。

 このままいけば『うずまき』の餌食になるが、当然それは理解しているし、対策もある。

 

 

(『領域展延』)

 

 

「なっ······!?」

 

 

 もともと威力の弱い極小の『うずまき』は出力を最大まで上げて発動した展延によって無効化され、夏油から俺を迎撃する手札を奪う。

 そしてこの状態で出せる手札は体術によるものだけだが────

 

 

 

「遅い」

 

 

「っ、ギリギリセーフですッ······!」

 

 

(完全じゃないけどダメージを抑えたか)

 

 

 咄嗟に後ろに跳びつつ、殴られる箇所に呪力も集中して凌がれた。

 とはいえ、それでも堪えたらしく殴られた箇所を夏油は抑えている。

 

 

(いや違う)

 

 

 抑えている夏油の手には反転術式による正の呪力があった。

 

 

「習得したんだ? 反転術式」

 

 

「ええ、生憎とアウトプットはできませんが」

 

 

「なるほど。虹龍の変化(・・)もそれが原因かな?」

 

 

「気がつきましたか」

 

 

 先ほど、虹龍を幻術を使って一時振り切った後、俺はそのまま夏油の間合いを詰めにいった。

 その結果は先の通り、想定を超えた虹龍により阻まれたが、明らかにそれはおかしかった。

 

 

 間に合うはずがないのだ。

 虹龍の基本性能(スペック)は把握している。

 もちろん術者である夏油本人が呪力で強化しているなら話は別だが、あの時点で虹龍は強化されていなかった。

 つまり何らかの手段で虹龍の素の性能が上がったとしか考えられない。

 

 

「────呪霊操術は先輩も知っている通り呪霊を取り込み操るものです。ではそれを反転させるとどうなると思います?」

 

 

「······安直な発想かもしれないが操ることの反対だから暴走?」

 

 

「ええ、だから正直これは使い物にならないと思ってました。一応暴走させた呪霊は不完全ながら私の制御から離れる代わりに全般的に能力が増しますが、それなら普通に私自身の呪力で強化した方がよっぽどいい」

 

 

 加えて暴走させた呪霊は一定時間それを続けると命を燃やし尽くしたかのように消滅すると夏油は言う。

 だが────

 

 

 

「ですがある時気づきました。暴走し、消滅寸前の段階までいった呪霊は完全に私の支配から外れることに。そして私はその支配が外れた瞬間に再びその呪霊を取り込み直しました。その結果は······」

 

 

「暴走中に上がった能力が維持されたまま再びその呪霊が使えるようになった、か?」

 

 

「ええ、代わりに消滅ギリギリまでいってから取り込み直したせいなのか、すぐに使うことはできません。ある程度その呪霊が回復する時間が必要みたいですが」

 

 

 逆に言えばそのインターバルに目を瞑れば、夏油の呪霊は無限に成長するかもしれないということか。

 無数の可能性(手数)に無限の可能性(成長)、それは五条とはまた異なる最強の可能性。

 

 

 まだ未完成、否、そもそもある意味では完成することがない故の強さ。

 

 

 今ここに、夏油傑は示した。

 

 

 晩成だが、とびきり大きな(強さ)の可能性を、彼だけの最強の形を。

 

 

「成長し続ける呪霊を無数に持つとかマジふざけてるな」

 

 

 思わず想像して乾いた笑い声が出た。

 しかもそんな呪霊を何体も操る術者も『うずまき』を周囲に飛び回らせながら襲いかかってくる。悪夢である。

 

 

「無傷で突破された人に言われましてもねぇ」

 

 

「虹龍しか出してないから何とかなっただけだよ」

 

 

「どうだか。先輩のそういう評価は基本詐偽ですからね。何だかんだあなたはそれでも対処してしまう気がしますよ?」

 

 

「酷い言い様だ」

 

 

「真っ当な評価です」

 

 

「······解せないけどまあいいや。それよりどうすんの? 続ける?」

 

 

 できればやめてほしい、そう思っていると────

 

 

「そうですね、名残惜しいですがこの辺でやめましょう」

 

 

 意外にも夏油はそう言って退いた。

 

 

「何ですかその意外そうな顔は? 流石に弁えてますよ。────まあそれに、これ以上は文句を言われそうですしね」

 

 

 ククっと、愉快そうに夏油は笑い離れていく。

 

 

「?」

 

 

 どういうことだ? そう困惑していると────

 

 

 

「五条?」

 

 

 観戦していたあいつがゆっくりとこちらに歩いてくる。

 次はこいつかと考えているとあいつは立ち止まった。

 しかし、随分と距離が遠い。

 俯いていることで窺い知れないその表情······

 

 

「ッ!?」

 

 

 次の瞬間、俺はすべて理解した。

 

 

 

 

 勢いよく顔を上げた五条。

 

 

 三日月のように歪んだ口元。

 

 

 爛々とギラつく瞳。

 

 

 だがそれ以上に俺の目を惹いたのは彼の手元。

 

 

 

 ────吸い寄せられた視線の先、そこには胸の前で組まれた見覚えのある掌印。

 

 

 

 いや、ちょっと待て······

 

 

 そんな言葉が喉元にくるがもう遅い。もっとも仮に言葉にできていたとしてもあいつは聞きやしないだろう。

 

 

「領域······」

 

 

「ッ────!」

 

 

 それを耳にした俺も慌てて掌印を組む。

 

 

 

「「(領域)展開────」」

 

 

 

 具現化される二つの世界。

 

 

「無量空処」

 

 

「斜陽ッ······むっっ! きょ、う·····ッッ!!」

 

 

 せめぎ合う二つの領域。

 

 

 押し合いの中俺は信じられない気持ちだった。

 

 

(マジッ······か······っ!?)

 

 

 僅かに領域の展開が遅れ後手に回った。それだけ······それだけのはずなのに────

 

 

「ッ────!?」

 

 

 気を抜けば一気に押しきられる、そう思わせるほど五条の領域は洗練されていた。

 

 

 ────そもそも最強を名乗る二人が反転術式使えなかったり、領域展開すらできないってどうなの?

 

 ────あ?

 

 ─────怒んな怒んな。認めてるようなもんだぞー? ま、悔しかったら領域を使わせられるようになることだね。

 

 

 

 あの冗談半分のやりとりをしてから約半年。習得の時間だってあったはずなのに何故これ程までと思わざるを得ない。

 

 

 というかちゃっかり反転術式を習得していた夏油といい、こいつら負けず嫌いにもほどがある。

 それともあれなのか? あの言葉を実は根に持ってたのか? 

 どちらにしても────

 

 

(ホンッット!!! 自信なくすなぁぁっ!!!)

 

 

 つくづく思う。やはり最強はこの男だ。

 歯を食い縛りその事実を受け入れる一方、俺は笑っていた。

 これならもう何も心配はいらない。

 隣には夏油もいる。

 

 

 未来はきっと────

 

 

 

(だけど······!!!)

 

 

 悪いがここでは(・・・・)勝たせてもらう。

 もうしばらくだけ、こいつには······こいつらには学生でいてもらう。

 

 

(若者から青春を取り上げるのは何とやら、ってね!)

 

 

 残されたこいつらの高専での日々、それがより良いものになることを願ってせめて────

 

 

(まだ(・・)最強にはさせない)

 

 

 拮抗した領域の押し合いにより意識を向ける。

 そうすると否応にも五条の顔が目に入った。

 

 

(まったく······嬉しそうな顔しやがって)

 

 

 だけど悪いな五条······

 

 

「────この場は閉幕だ(お前の負けだ)

 

 

「!」

 

 

五条の目が驚愕で見開かれる。

 

 

 

 閉ざされた世界(五条の領域)のさらに外へと世界が広がる。

 

 

 拮抗を生むだけでいい。

 

 

 後はその時を待っていれば────

 

 

 

 

 ────ピシリ。

 

 

 

 五条の世界に亀裂が走る。

 

 

 そして────

 

 

 

 

 

 領域の外郭から(・・・・・・・)、あいつの領域は崩壊した。

 

 

  ○ ●

 

 

「五条、夏油」

 

 

 決着が着き、俺は二人に話しかける。

 旅立つものとして、二人に伝えるべきことを伝えるため。

 

 

「────また負けちゃったね」

 

 

 プークスクス、と小馬鹿にするように笑ってやった。

 さっきまでの流れはどこいったって? 知らん。

 まあ当然のようにその言葉で頬をひくつかせているけど。

 

 

「俺、勝者。お前ら、敗者」

「悟はともかく私はまだ厳密には負けてません」

「はぁぁっ!? 冗談は大概にしろよ傑。領域を使われてたらお前も負けてるっつーの!」

「おーおー、負け犬どもが何か言ってらー」

 

 

 煽る。ただひたすら煽る。

 だから辻斬りもかくやという眼を向けてくるが────

 

 

(それでいい)

 

 

 一線を退く俺ができること。

 

 

 二人にこの先のことを託す俺が唯一できること。 

 

 

 それはきっと嘘をつく(背負う)こと

 

 

「────だから、しばらくは俺が最強(・・)だ」

 

 

 演じてみせよう。

 

 

 仮初めの最強を。

 

 

 嘘まみれでも。

 

 

 その鍍金()がすべて剥がれ落ちた時にはきっと────

 

 

 

(本当の意味で、こいつらは最強になっているんだろうな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二〇〇八年 三月某日。

 

 

 ────五条悟並び夏油傑に代わり、最強の座に新たな名前が刻まれた。

 

 

 

 




五条と夏油のために最強を演じる 

→ 嘘はとびきりの愛


という訳で何かこうなりました。反省も後悔もしてません。




椎名夕
何か最強になった人。ただし表向きの最強は五条と夏油のまま。
二人がさらに強くなる上での踏み台として一時的に最強の座に付くことにした。

五条悟
閉じない領域を先取り学習した人。最強の座から一時退くことになった。
だけど多分、自分より前を歩いてくれる存在に滅茶苦茶喜んでると思う。

夏油傑
可能性を開いた人。だかふと思えば、やってることは呪霊を消滅(死ぬ)ギリギリまで追い込んだ後取り込み直して酷使を繰り返すというなかなかに人の心がない所業である。

家入硝子
二人とも負けてやんのウケルとか思ってた人。多分しばらくこれをネタに二人はいじられる。

七海建人
進路相談を夕にするようになる人。
夕の影響かこの原作よりも強くなってる五条・夏油を間近で見てモチベが下がってる。多分原作通り一度術師をやめてから再び術師をやることになるが、復帰の電話は五条ではなく最初に夕にかけた。

灰原雄
多分いい意味で変わらない人。七海が術師やめるって言っても笑顔で応援してくれて、帰ってきたら諸手をあげて喜びそう。


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