真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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ふぅ···久しぶりに難産だった。 


最近は描くことは大体浮かんでるのに時間がなくて投稿できないでしたが、今回は時間があるのになんか描くことがまとまらず投稿できませんでした。


なのになぜか本編ではなく番外編のネタとかが頭に浮かぶしー······いっそしばらく番外編でいくか?

まあそんな訳で時間をかけた割に文量は少ないです。


第六十一話○

 

 

 

 

 ふと俺は半年前のことを思い出した。

 

 

 ······まず言おう。あれは卒業式ではない。

 

 

 まあそれはとりあえず置いておいて改めてあの日を振り返る。

 始まったそれは、最初は確かに目を見張るものだったが、それでもまだかろうじて理解できなくもないものだった。

 武術に詳しくない自分でもわかるほど洗練されているのがわかる動き、それを生で見る臨場感には心を動かされた。

 

 

 しかしその認識が間違いだと気づいたのはその後。

 

 

 二つの意味で見えなかったのだ。

 文字通り目で追えない速さで動き回る二人、そこに加わる不可視の何か、一秒単位で空気が弾け、地面を抉り、その跡を周囲に刻んでいた。

 一体最初はどれだけ抑えていたのだろうか? そう思わせる人智を超えたぶつかり合いだった。

 

 

 だがそれすら霞ませたのは『領域展開』と言っていたものだった。

 それが一番表面上は穏やかではあった。

 目に見える範囲ではただ掌印を組んで向かい合っているだけ。

 だけどその異様さを肌で感じとれた。

 それを裏付けるように次第に周囲に変化が訪れた。

 突如発生したノイズが走るような音と不可思議な揺れ。

 地面ではなく空間そのものが揺れているようなそれは、さながら世界の悲鳴にも思えた。

 

 

 けれど、それも何かが割れる音と共に終わりを迎えた。

 

 

 そして次の瞬間、突然景色が一変した。

 

 

 そこだけ空間を切り取って別の風景を貼り付けたような光景。

 

 

 湿原の広がる窪地と空に広がる赤と青のグラデーション。

 

 

 切なさと寂寥感を帯びた夕焼けと安堵と僅かな期待を感じさせる夜空。

 

 

 そんな中でも白く、けれど何物よりも強い輝きと存在感を放つ星があった。

 

 

 ────呼吸すら忘れ魅入らされた。

 

 

 人智を超えたなんてものではない。それが神の御業と言われてもきっと信じられただろう。

 

 

 以前聞かされた日本が終わったかもしれない未来、その意味をここでようやく実感できた。

 

 

 世界すらも文字通り塗り替えることができる。

 

 

 これが呪術。これが呪術師。そして────

 

 

 

 

 ────その頂点が俺たちの父親らしい。

 

 

  ○ ●

 

 

「ママママ」

「どうしたのルビー?」

「はいこれ」

「手紙? もしかしてルビーが書いたの?」

「ううん、パパだよ」

「夕が?」

「うん、ラブレターだって」

 

 

 俺たちが二人の子どもに生まれ変わってから一年以上が過ぎ、歩いたりしゃべったりしても問題ないくらいには成長した。

 ようやく羞恥やら何やらで色々と削られる身の上から解放され······いや、風呂とかはまだ一人で入らせてくれないから微妙に解放されてないな。むしろ意志疎通を言葉で行えるようになったせいで逆に追い詰められることもしばしばある。

 この前なんてアイと風呂に入ることを断ったら「私と一緒に入るの嫌なの?」なんて悲しそうな顔をして聞かれたよ(遠い目)

 

 

 ······まあそれは置いといて、俺たちは何事もなく平穏な日々を過ごしている。

 父親は相変わらず売れっ子の役者···というより活動の幅を考えるとマルチタレントと言ってもいいし、アイもあの人ほどじゃないけど着実に仕事を増やしてきていて、妹はそんなアイのファンの権化みたいな奴。 

 実際今もラブレターを読むアイの膝の上に······

 

 

(何を書いたんだあの人は······?)

 

 

 見るからに嬉しそうな顔をして、手紙を読み進めるほど頬の赤みは熟していく。

 ただ途中から足をジタバタとさせたりと感情表現が身体の動きにも出始めた。器用なことにそれでも膝のルビーを落とすことはなく、しまいには身体をクネクネとさせ悶えていた。

 

 

 あ、とうとう感極まったのかルビーを抱きしめた。

 

 アイ、蕩けたような顔をしながら手紙に悪態? をついても説得力がないぞ。

 

 というかルビー大丈夫か? 胸の中で苦しそうにしてるけど······あ、抜け出した。

 

 これで死ねるなら悪くないって、お前·······

 

 は? い、いや、別に羨ましくないぞ? 本当に羨ましくなんてない······ぞ?

 

 

 ······それにしても相変わらず、うちの両親は仲がいい。

 未だに喧嘩する様子など微塵もないし、新婚らしい······所謂アツアツな仲睦まじい夫婦の姿を常に見せている。

 現に父親の方は仕事でいないにも関わらず、今日も今日とて見せつけられている。

 

 

 え? そもそもなんでラブレターをあの人が書いたのかって?

 

 

 それはつい先日のことが原因だ。

 

 

  ○ ●

 

 

「────いっそ見せしめに潰すか?」

 

 

 いや突然どうした?

 その日はアイが仕事でいない日だった。

 しかし、俺もルビーもいきなり口走られた物騒な言葉に顔を見合わせた。

 

 

「あ! ごめん二人とも。口に出てた?」

「出てたね」

「何かあったのパパ?」

 

 

 まあ原因は今彼が目の前にしている大量の書類にあるのは予想できる。実際朝から俺たちの食事の用意や他の家事をする時以外はずっとそれらにかかりっきりだったから。

 

 

 

 

「────全部お見合いの釣書だよ」

 

 

 何の書類なのだろうと見ているとそれに気づいて先んじて答えてくれたが────

 

 

「え······?」

 

 

 お見合い? なぜ?

 

 

「ええぇぇぇっっっ!!??」

 

 

 だが当然、俺もルビー驚きの声(ルビーに至っては叫び声)を上げた。

 

 

「な、なんでっ!? パパ、ママ以外と結婚するの!?」

 

 

 あまりのことに動転するルビー。その顔は大きな不安が見てとれた。

 

 

「俺はアイ以外と結婚する気はないよ」

「······本当?」

「もちろん。そもそもお見合いなんて話だけでも迷惑してるし」

 

 

 抱き上げたルビーの頭を撫でながら落ち着いた様子で彼は答えた。

 

 

「······そうなったのって半年前のあれが原因?」

「いや、あくまで呪術師最強は今も五条と夏油の二人って認識だよ?少なくとも表向きそれは変わらない」

 

 

 まあだからこそと言えるんだけど、と苦笑しながらこうなっている理由を教えてくれた。

 まずこのお見合いの釣書は予想通りすべて呪術関係者からのものようだ。

 曰く自分を介して五条さんや夏油さんをうまく使いたいからこうなったらしい。

 

 

「ちょっと立ち位置の認識を誤ったね。あいつらの影響力を舐めてたよ。大方俺が卒業しても頻繁にあいつらと交流してることをどっかから知ったんだろうね」

「確かによく遊びにくるよねあの人たち」

「というより料理をたかりにきてる······」

 

 

 特に最近はよく来ていた。何でも呪術の世界にも季節によって繁忙期があるみたいだが、それが過ぎてある程度暇になったかららしい。

 ······いや割とそれと関係なく来てたような? そのせいで突然家に人が現れるのにも慣れたし。

 まあとにかく重要なのは表向き最強とされる二人と深い関わりがあり、かつその二人とは違って制御できる人間と思われたからこうして結婚という形で繋がりを得ようとしているとのことだ。

 

 

「────というわけでこれ以上お見合いの話がこないよう見せしめにいくつか潰そうかなって思ったんだよ」

「言ってることがルビーの『肝臓を捧げよ』より過激じゃない?」

「そうは言ってもね愛久愛海、このままだと俺はこうして断りの手紙を延々と書かないといけないんだよ? しかもこういう面倒なものに限ってわざわざ手書きしないといけないんだから」

「·····まあ顔を見たこともない人間からいきなりお見合いの話が来るのは確かに恐怖か」

「表向きには結婚してることは言えないしねー······はぁ···」

 

 

 確かに目の前に積まれた大量のそれを見せられると気持ちはわからないでもなかった。

 そう思っていると突然彼は「待てよ······?」と呟き、何かを考え始めた。

 かと思えば止まっていた手を物凄い速度で動かし始め────

 

 

「これでよし」

 

 

 あっという間に目の前に積まれていたものを片付けた。

 

 

「二人とも、買い物にいこうか。そろそろ食材とかも買い足さないとだし」

「それは別にいいけど······どうしたのパパ?」

「それにその言い方だと食材の買い出しがついでみたいだけど」

 

 

 それに彼は出かける準備をしながらも「ふふふ」と笑った。

 一体何を言うのかと少し身構えていたが、次に出た言葉は予想外のものだった。

 

 

「ちょっと便箋と封筒を買いにね」

「今あるのじゃ駄目なの?」

「うん、せっかくアイに渡すものだからね」

「ママに?」

「そ、手紙······アイに送るからラブレターになるのかな? とにかくたまにはそういうのもいいかなって思ってね」

 

 

 だからとっとと有象無象の(断りの返事)を終わらそうと頑張ったらすぐ終わったよ、と言うと同時に身支度が終わる。

 

 

「アイには渡すまでは秘密にしたいからね。見られないためにも早く買いにいこうか」 

 

 

 楽しそうに笑いながらそう言う父の顔は、世に知られる俳優の顔でも、とんでもない力を持った呪術師の顔でもなく、愛する人を想うどこにでもいそうな一人の青年だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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