真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様 作:水の虎
皆様は新生活をどのようにお過ごしですか?
作者は
そんな訳でしばらく投稿ができていませんでしたが、またちょくちょく投稿していきます。多分前以上に不定期になりますが、何卒よろしくお願いいたします。
とりあえずこの作品を投稿し始めたのが去年の六月なので、キリよくそこでの本編完結を目指したいですね~。多分無理でしょうけど。ま、今年中には完結しますよガハハハ(根拠のない自信)
────芸能界において必要なものは何か?
ルックス、何かしらの才能、コミュ力、あるいはコネなどと、その答えは様々と言える。
個人的には今挙げたいずれの答えも正解······少なくとも間違っているとは言えないと思う。
けれど重要なのはそれらをどう使うかだ。
結局のところそんな自分の手札をいかに使いこなし、うまく立ち回っていくかが
そしてそういう意味では自分は恵まれているだろう。
何せ芸能界においてほぼ唯一無二の才能を持っているのだから。
······まあ正確にはその才能をこういう風に使う自分が少数派なだけなのだろうが。
だが、贅沢な話をすると苦労もある。
才能が才能なだけにむやみに口外はできないし、そのせいで気を遣うこともしばしばある。
これは、嘘と呪いに溢れた芸能界の話────
○ ●
まず今さらだが芸能界は言うほどキラキラとした綺麗な世界ではない。
一見美しく見えているのは都会の夜景と一緒だ。そこにはその光を灯すための
現にほら────
『テメェふざけてんのかっ!』
『ちょっと! どうなってんのよ!?』
『ぶっ飛ばされたいのかッ!?』
このようなことは
世間の目に触れる場所以外でも多くの人間が動いていて、それらを自然になるように繋げていって、そうしてようやく綺麗でキラキラとした
だからこそミスは許されない。
自分の仕事は誰かの仕事であり、ある意味相互に誰かの生活を背負っているのに等しい。
「······まあだからこんな呪霊が湧くんだろうけど」
「? 何か言いましたか椎名さん?」
「いえ、何でも」
思わず漏れた呟きに反応されたが笑顔でかぶりを振りながら立ち上がる。
今日の現場も例に漏れずピリピリとしていた。
そこに動く誰もが恙なくスケジュールを消化できるよう、細心の注意を払っているのがわかる。
当然そんなんだからストレスが貯まれば呪霊も湧くだろう。
というわけでいつも通り仕事といこうか。まあ厳密には無給のサービス就業だけど。
「お久しぶりです。以前のバラエティ以来ですね────」
「台本のこの部分なんですけど────」
「この前のドラマ見ましたよ。ええ、いい演技でしたよ────」
「あれ、もしかして新人さんですか? ならこれを聞かないといけませんね。────どんな人が好みかな?」
カメラマン、AD、共演者やその他の関係者に話しかけていく。もちろん仕事に差し支えないように気は遣っている。
なぜこんなことをしてるのかって? 単純に円滑な仕事の進行のためというのもある。やっぱりコミュニケーションを取っておくと何かと便利だし。でも一番の理由は実のところ呪霊を祓うためだ。
世間一般で認知されている自分のキャラはそういう意味では割と便利だ。
時折出す突拍子のない行動もどこか道化師のように滑稽でオーバーなリアクション。
一見意味のない行動の中でさりげなく呪霊を祓う。幸い湧く呪霊自体は低級だし、腕を振り上げるようなリアクションをとってうまく当てれば祓うのはそう難しくない。
周囲を振り回し、場合によっては呆れ顔をされるが、「まあそれが椎名夕だから」と最後には苦笑いとなっている。
まあそのせいでこのキャラをやめれないという弊害もあるけど、この方が何かと業界でやっていく上ではやりやすくもある。変えるにしても今さら感もあるしな。
「······今度夏油から呪霊借りるか」
一年くらい前のあいつならともかく、今のあいつなら大丈夫だろう。
○ ●
「ただいま~」
そんな訳で帰ってきた我が家です! スムーズにスケジュールが消化されるようにした甲斐があったぜ!(謎テンション)
だけどリビングに三人の姿はなかった。
「お風呂かな······?」
時間的にそれだと当たりをつけながら寝室に向かい、着替えるとパソコンを立ち上げる。
パソコンの前に座り、立ち上がるまでの時間に淹れておいた飲み物を口にするが、ふと疑問が浮かんだ。
「······そういえば愛久愛海も一緒に入ってるのか? アイと入るの嫌がってたけど克服したのかな?」
どこかで愛久愛海が「普通にまだ年齢的に一人で入れないからなし崩しだっ!」とか叫んでいる声が聞こえた気がした。
ま、諦めることだね。家族なんだから気にするな。
そんなことを思いながら俺は作業を開始した。
「────なぁにしてるの?」
背中にかかる慣れ親しんだ重みと温もり。
胸の前に回された腕と視界の端で揺れる紫がかった黒髪。
遅れてふわりと漂ったシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。
「······ただいま」
「んー、おかえり~」
首に顔を埋めるように顔を擦り付けてくるから少しくすぐったかった。
そんなことは露知らず、彼女はふにゃふにゃとした声を時折漏らしながら離れようとはしない。
それよりも······
「汗臭くないの? 俺今日は結構汗かいたんだけど······」
しかし彼女は「んー?」といった風に気にした様子もなく、しまいには鼻をすんすんと鳴らし始めた。
「いい匂いだよ? 私は好き~」
「さいですか」
というか余計にくすぐったくなったんだが······
「そういえば愛久愛海と瑠美衣は? お風呂入ってたんじゃないの?」
「リビングだよ。この前やったライブの動画観てる」
「なるほど。······ところでアイ、髪が随分湿ってるけど?」
「夕が乾かして~」
タオルドライくらいしかしている感じはしなかったので聞いてみると、案の定そんな答えが返ってきた。
苦笑しながらも立ち上がり、自分の座っていた椅子にアイを座らせる。
「あ、ドライヤーはベッドだよ」
「用意がいいことで······」
この部屋に来た時にはなかったからアイが持ってきたのだろうが、何でさっきまで入浴してたのに俺が帰ってきたのがわかったのだろうか? 様子からして風呂から出てほとんど直行してきたっぽいのに。
もっとも、脳裏によぎったその考えもご機嫌な様子でドライヤーを受けるアイを見ていたらどうでもよくなった。
「はい、終わり────って、アイ······?」
ドライヤーを片付けるために離れようとするとアイが服の裾を掴んできた。
「······」
クイクイとさらに裾を引っ張るアイ。
そんな無言のアピールに対し、俺は座っているアイの背中と膝裏に手を回して抱え上げ、空いた椅子に自分が座り、アイを横抱きのまま自分の膝に座らせた。
「♪~~」
どうやらこれで正解だったらしい。
とりあえずアイを膝に座らせたまま作業を再開する。
しかし、それが不満なのか胸に頭をグリグリと押し付ける形で抗議をしてきた。
そんな攻防がしばし続いたが、やがて彼女も諦めしぶしぶ頭を離すとパソコンの画面に目を向けた。。
「······何してるの?」
「スケジュールの調整······というよりは修正かな?」
「ふーん·········やっぱりドラマとか映画の仕事が多いね」
「そりゃあ俺の活動する領域はそこだからね」
苦笑しながら残りのスケジュールの修正も済ませていく。
アイは体勢を変え、胸にもたれるように座り直してそれを見ていたが、ある部分に目が止まり「あっ」と声を上げる。
「これ知ってる。このドラマにも出るの?」
「ああ、これ? 出演しないかって話は来てて保留にしてたんだよね。まあ断るけど」
「え? 何で? これ結構有名なやつじゃなかったっけ?」
「そうなんだけどちょっと問題があるんだよね」
「問題?」
「そ。演じる役が眼鏡をかけてるんだよ」
「? 前も何かの役でかけてなかった?」
「俺が用意したものならいいんだけど、今回はむこうが用意したものじゃないと駄目みたいなんだよね」
「随分と細かいね。でもそれの何が駄目なの?」
普通ならそんな理由となるところだが、こと俺に限っていえばこれがなかなかに問題なのだ。
ネックになるのは使う眼鏡を返さなければならないということ。
つまり────
「呪術師が使用し続けた眼鏡って呪具化して、一般人でもその眼鏡越しに呪いを見れるようになるんだよね。このドラマは撮影期間が結構長いから、下手すれば撮影が終わる頃には術具化してる可能性がある」
それで呪霊を認識できるようになって、被害が出たとかまったく笑えない。この業界はそういうオカルト的な噂は結構広まりやすいし、それが世間にも広がれば視聴率も落ち······いや、ある意味視聴率は上がるか?
······とにかくその手の被害が出ないようにする必要がある。ただでさえ何もなくても呪霊が湧いている業界なのだから。
それと今度から眼鏡は場合によってはNGにした方がいいか? でも理由をどうするか······ま、適当でいいか。
「ん?」
「······」
そんなことを考えていたらまた不満そうな顔を向けてきた。どうやらそろそろ我慢の限界らしく、全身から構えとオーラが出ている。
「いかがしましょうかお嬢様?」
「頭」
「仰せのままに」
お風呂上がりでより一層艶やかな髪へと手を滑らせ、梳くように撫でる。
同時に空いた腕でアイを後ろから抱き締め、俺自身も身体をやや後ろに倒してより密着感を高めた。
背にしたリクライニングチェアに一緒に沈み込む心地よさに、少しばかり瞼が重くなるのを感じる。
「ッ────!?」
いっそこのまま寝てしまおうか? そう思ったところで浮遊感が身体を襲う。
いや、なんなら襲ってきたのは浮遊感だけじゃなかった。
原因は両方ともアイ。
身体を反転させた彼女は背もたれの角度を操作し、倒れる勢いのまま唇を重ねてきた。
ドンッ、と勢いよく背もたれが倒れた音が部屋に木霊し、そのまま水を打ったような沈黙が訪れる。
「······ん」
漏れた吐息はどちらものか、尚も重なり続ける唇の先を求めてお互いの舌が交じり合う。
秒針の音が耳に残る静けさが、ゆっくりと水音に侵食されていく。
「······また随分と強引に来たね」
「私がいる前で考え事に没頭する夕が悪いもん」
言葉とは裏腹にその顔は上気して蕩けていた。
唇こそ離れたが、未だ間近にある彼女の紅潮した顔が、吐き出される息の熱さが、自分の体温を上昇させ、鼓動を加速させる。
「アイ」
彼女の耳元で名前を呼ぶ。
そうして────
○ ●
「どどどどどどうしようアクアッ!?」
「まずお前が落ち着け」
「でもでも! こんなの見ていいのっ!? 私たち見ちゃいけないもの見てないッ!? ないッ!?」
「せめてこっちを見ながら言ったら? さっきから一切目を離させずガン見しといて言うことじゃないぞ?」
ライブ映像の鑑賞が終わって寝室に向かった私たちの目に飛び込んできたのは、今にもそういうことを始めそうな雰囲気のママとパパだった。
思わず隣にいるアクアに声をかけるも、菩薩のように悟った顔をしていて役に立たない。
「────おや愛久愛海、瑠美衣、そろそろ寝るのかな?」
「ッ!? ······え、ええと·········おかえりパパ······?」
「うん、ただいま」
どうしようかと悩んでいると、いつの間にかパパが目の前にいた。
「俺はお風呂入ってくるから二人は先に寝てな」
「う、うん·····」「······わかった」
まるで何もなかったかのようにそのまま歩き去っていくパパ。少しだけその背中を見ていたけど、言われた通り寝ようと思ってママのいる寝室に足を踏み入れる。
「あ、ルビー、アクア、ライブは観終わったの?」
「う、うん、いつも通り凄く良かったよ」
「ふふ、ありがとルビー」
笑顔で私とアクアに話しかけてくるママ。その様子はそれはそれは上機嫌だった。
「······」
でもあんな雰囲気になったのに何もしなかったパパにママは不満はないのだろうか? 普段のことを考えると少し違和感があった。
「それより二人とも、もう遅いから寝ようね」
「ママは寝ないの?」
けどその答えはすぐにわかった。
「────うん、ママはちょっともう一回お風呂入ってくるから」
いい子で寝ててね?
そう言った顔は隠しきれないほど艶を帯びていた。
無言で頷く私たちの頭を撫でるとそのまま寝室を出ていくママ。
残された私とアクアは顔を見合せる。
「······ねぇ」
「······何だ?」
「弟か妹ができたりしないよね?」
「······すぐにはないだろ。時期的に今妊娠は流石にマズイ。二人もそれはわかっている·········と、思う」
「······寝ようか」
「そうだな」
深く考えるのをやめて布団に入る。
ちなみに次の日のママの顔は凄いツヤツヤしてた。
やっぱりその内できたりしないこれ······?
おかしいな。芸能界での夕のことを描こうとしたのに気づいたらイチャついてたぞ······?
椎名夕
あまりこの話で触れなかったが実は一度テレビ局のカメラを呪具化させて呪霊が撮れるカメラにしてしまったためこっそり破壊したことがある。
なお次の日の朝はやや疲れ気味。
椎名アイ
三人目も欲しいと思っているがまだいいと思ってる。本人としてはもう少し今の家族の時間を満喫したいと考えている。
ちなみに近い内に初めてドラマの仕事をする。
椎名愛久愛海
今回あまりしゃべらなかった。
アイの入院中、時々見舞いに来てた夕とキスだったりのスキンシップをとっているところをちょくちょく目撃(偶然)してたのを思い出し、悟り(笑)を開いていた。
椎名瑠美衣
割と両親のイチャつきに慣れてきた。
ちなみに姉になるのは悪くないと思ってるし、三人目のことは未来で溺愛してる。なんなら「どいて!!! 私はお姉ちゃんだよ!!!」とか言うかも?
夏油傑
その内夕から「ちょっと呪霊貸して」と連絡が来て首を傾げる。
次回は番外編か会話集になるかもしれません。