前回の続きになります。
それではどうぞ。
その日の帰り道。
「友希那さんがさっき聴かせてくれた曲、カッコよかったなあ~! でも……」
「今のわたし達には見合わない曲だって……言っていたね……」
あこと燐子は、友希那が聴かせてくれた例の曲について話していた。
「うん……でも、頑張って練習すればできるようになるんじゃないかな。あこ、あの曲に見合う演奏ができるように頑張りたい!」
「そうだね。わたしも、同じ気持ち……」
「あ……あそこにいるの、友希那さんとリサ姉とゆうりんだよね?」
すると友希那とリサ、悠里の姿を見つけたあこ。
「りんりん、もう一度友希那さんにお願いしてみようよ!」
「あ、あこちゃん……!」
「友希那さーん!! リサ姉! ゆうりーん!」
そう言うとあこは、3人の元に走っていってしまった……
◇
「ん? この声って……?」
「……あこ? 一体どうしたの?」
「なんか走ってきたっぽいけど……」
「はあっ、はあっ……追いついた……」
この様子を見るに、どうやら自分達を見つけて、走ってきたようだ。
「あ、あのっ! さっき聴かせてくれた曲……あこ、演奏したいですっ!」
「えっ……?」
あこの口から出たのは、例の曲を演奏したいとの言葉だった。突然の事に戸惑う友希那。
「あの曲、すっごくカッコイイって思ったんですっ! ライブで演奏したら絶対すっごく盛り上がります!」
「あの曲は……」
「はあ、はあ……! あこちゃん、早い……!」
「りんりんっ! りんりんもあの曲、演奏したいよね?」
そして彼女を追いかけてきたのか、燐子が息を切らしながら追いついてきた。
「う、うん……わたしもあの曲、演奏したいです……どなたの曲なのか分からないですけど……きっと……きっと、友希那さんの歌声に合う、素敵な曲だと思いました……!」
「私の、歌声に……?」
燐子に自分の歌声に合うと言われた友希那は驚く。
「わたし、友希那さんの歌声が好きです……! 繊細で、力強くて……時には音楽を求めすぎるあまり、恋焦がれているような焦燥感を感じる……そんな歌声をしています」
あの曲を聴いた時、友希那さんの歌声を初めて聞いた時のような感覚に陥りましたと燐子は話す。
「……」
「だから……その……友希那さんにあの歌を歌って欲しい……そう思います……」
「あの曲を演奏する技術が足りないなら、あこもりんりんももっともっと頑張りますっ! だから……!」
「……私の歌声は、そんなに純粋なものではないわ」
あこと燐子が懇願するが、友希那は、そんな純粋なものじゃないと答える。
「友希那? それって……?」
「私は……今の私には、あの曲を
「……(歌う資格はない……ねぇ……。僕も似た経験があるから、友希那ちゃんの気持ちは解るけど……)」
自分も似た経験をした事がある悠里は、友希那が言う『歌う資格はない』という意味が解った。
「……ごめんなさい。あなた達の熱意は受け取ったわ。ありがとう。この件に関しては、少し考えさせて」
そう言うと友希那は、先に行ってしまった。リサと悠里も2人にゴメンねと謝り、友希那の後を追いかけていった。
◇
「友希那……一体どうしたの? 歌う資格がない、なんて」
「……もしかして、あの曲の事?」
「リサ、悠里……2人なら気づいているでしょう。あの曲が、私のお父さんのものだって事」
もしや……というか、やはりあの曲の正体は、彼女の父の曲だった。
「……ん。やっぱりそうだったんだね」
「…僕もお気に入りの曲だから、聴いて直ぐに分かったよ」
「あれはインディーズ時代の曲。つまり……」
そう。まだ、友希那の父が本当にやりたい音楽をやっていた頃の曲なのである。悠里も自身の音楽プレーヤーのお気に入りリストに、友希那の父の曲を入れている。
「あの頃のお父さんの、音楽への純粋な情熱……それを、今の私が歌っていいはずがない……だって、私は……」
すると、リサがそれ以上言わなくていいと答えた。ちゃんと友希那の事、分かってるからと。
「アタシはあこや燐子がどんな事を言おうと、友希那の出した結論を大切にしたいって思う。ただ……友希那が真剣に悩んで向き合おうとしてる気持ち。それは誰よりも音楽に対して純粋だって事。忘れないで」
「僕もリサちゃんと同じ。今の友希那ちゃんは、迷ってる……というより、
「リサ、悠里……」
……向き合う、気持ち……か。2人の言葉を聞いた友希那はそう考えるのだった。
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