前回の続きになります。
それではどうぞ。
「? あこちゃんからチャットがきてる……」
ちょうど帰宅した悠里。自室で何気なくパソコンで動画を観ていると、あこからチャットが送られてきた。厳密には、燐子も一緒の3人だけのチャットなのだが。
『りんり~ん! ゆうり~ん! 今日の友希那さん、なんだか変だったよね?』
内容は、やはり今日の友希那の事だった。
『そうだね。今日聴かせてくれた曲について思い悩んでるようだったけど……』
『あこちゃんと燐子ちゃんから見た今日の友希那ちゃんって、そんな感じか……』
2人から見た今日の友希那の様子は、そんな感じらしい。なので、悠里もそう返信する。
『歌う資格がないって、どういう事なんだろう? 友希那さんはあんなに歌が上手なのに』
『友希那さんの言っている資格、ってきっとうまいへたの事じゃないんだと思う』
『それじゃあ、どういう事? ゆうりんは何か知ってる?』
話を振られたので、悠里はちょっとだけ考えた後……
『知ってるけど、あの曲は友希那ちゃんにとって大切な曲で、僕にとっても思い出深い曲なんだ。なんていえばいいだろ……歌う事自体に、覚悟があるって表現した方がいいかな』
『あこ達に、何かできる事はないのかな?』
『……こればかりは、今は見守るしかないね。その時になったら、考えよ?』
『そうだよね。友希那さんを信じて、待ってみよう』
ちなみに紗夜にもセットリストの件の現状と、例の曲の件の個人的感想をメールで送ってた悠里。
「……(やっぱり紗夜ちゃんも同じ事を思ってくれてる)」
ちょうどそのメールが届き、案の定、友希那が聴かせてくれた曲が演奏できるのなら、自分もやってみたいとの事。なので、待っててあげてくれと返信をしておいた。
「…久しぶりに、あの曲で練習してみようかな。……その前に夕飯の準備しないと」
久しぶりに友希那の父の曲を練習する前に、愛猫と愛犬、そして自分の夕飯の準備に取り掛かる悠里なのであった。
◇
「……」
自宅に帰宅した友希那は、帰りにあこと燐子に言われた事を思い返していた後、もう一度、あの曲を聴いていた。
「……お父さん……お父さんは一体、どんな思いを込めて、この曲を歌ったの……?」
「友希那? 少しいいかな?」
「お父さん?」
悩んでいると、ドアの外から父の声が。どうしたのだろうか?と思い、父を部屋に入れる。
「部屋から懐かしい曲が聴こえて、ついな。もう10年以上前の曲じゃないか」
「私、この曲を歌いたいと思ったの。でも……私には……」
「それなら歌えばいい。何を躊躇っているんだ?」
そう聞かれた友希那は、父にこの曲から感じる音楽への純粋な情熱を自身の歌声にのせて歌う自信がないと話した。
「それならその思いをのせて歌えばいい」
「え? でも……」
「それが今のお前の、この曲……それに音楽に対する思いなんだろう。だったら、それを歌えばいい」
どんな思いを抱えたっていい。それをぶつけろと父は言った。
「私が未熟でも……?」
「完成されていなきゃ演奏できない音楽なんて存在しないさ。ただ……お前がそれほどまでに技術や精神的な未完成さを思い悩んでるとしても……その思いはとっても純粋で、素晴らしいものだと思うぞ」
「……!」
その言葉はリサと悠里が言ってた事と同じ言葉だった。そう言うと父は、長く喋ってしまったなと言い残して、部屋から出ていった。その後、友希那はスマホを取り出す。あるグループ欄に電話をかける。
「もしもし、リサ? 悠里? 私よ」
『うん? どーしたの?』
『んー? 曲の事でお父さんに何か言われたとか? まだ不安?』
電話の相手はリサと悠里。
「いいえ。もう大丈夫。……今、お父さんに2人に言われた事と同じ事を言われたわ」
『『えっ……?』』
「私が音楽を思う気持ちは純粋なものだ……とね」
先程の出来事を2人に話した友希那。そして今後の事を話すのであった。
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本日はありがとうございました。