前回の続きになります。
それではどうぞ。
そして翌日。
「(湊さんから『みんなに話がある』って連絡が来たけど、急にどうしたのかしら?)」
そう友希那から連絡があった紗夜は、現在進行形でライブハウスに向かっていた。
「(昨日はどこか様子がおかしかったし……)」
もしかして、何かあったのだろうか……?
「……悠里さんも言ってたけど、本人に聞いてみないと分からないわね」
とりあえずライブハウスに向かうのであった。
◇
「ねぇねぇ、りんりん! 今のとこ、どうだった?」
「走りがちだったから……少し抑えた方がいい……かも……」
あこと燐子は早めにスタジオに入っており、例の曲を練習していた。
「わかった! それじゃあ……こんな感じでどうかなっ」
「うん……さっきよりも、よくなってる……」
「やったー!! じゃあ今度は一緒に合わせてみようよ!」
「……宇田川さんに、白金さん?」
2人で合わせてみようとした時、紗夜がスタジオに入って来た。
「あっ! 紗夜さん! お疲れ様ですっ!」
「お疲れ様……です……」
「練習していたの?」
「はいっ!」
紗夜の質問にライブまで時間もないし、昨日聴かせてもらった曲が気になっちゃって!と答えるあこ。
「おっす、おはよ~。アタシ達が最後か」
「あっ、友希那さんにリサ姉! ゆうりんも……って、ええええええっ!? ゆうりんどうしたの!?」
そして友希那とリサと悠里がスタジオに入って来た……のだが、あこは悠里の目元がかなり酷い事に驚きの声を上げる。紗夜と燐子も声には出さないが驚きの表情だ。
「実はここに来る途中、アタシ達も訊いたんだけど、悠里が頑なに教えてくれないんだよ……」
「…………友希那ちゃん、本題に移って」
「…分かったわ。その代わり、終わったらちゃんと説明して頂戴」
正直、友希那としては心配なので今話してほしいのだが、悠里が『二度手間な説明は嫌だ』と顔に書いてあったので、気が進まないが本題に入る事に。
「それで今日は改めて、みんなに話しておきたい事があるの」
もちろん話すのは、昨日の曲についてだ。
「先日、みんなに聴いてもらったあの曲だけど……あの曲は、私の父の曲なの」
「ええ~っ!?」
「友希那さんの……お父さん……?」
その事実に驚くリサと悠里以外の3人。
「初めてあの曲を聴いた時、私はこの曲を歌いたいと、思った。だけど……今の私に、あの曲を歌う資格があるのか分からなかった。少なくとも資格がある、と胸をはっては言えないと思ったの」
あの曲が持つ、音楽への純粋な情熱を今の私では歌いきれないと、そう思ったのよと友希那は話す。
「曲がレベルに見合ってない、って……そういう事だったんですね」
「……そんな事情があったんですね」
ここで『曲のレベルに見合ってない』という意味を理解したあこと紗夜。
「もし……もし機会をもらえるなら私は、あの曲を歌いたい。お父さんの残した曲にもう一度命を吹き込みたい。それが、私ができる向き合い方だと思うから……」
ライブまで日がない上に、私情で申し訳ないと思ってる。でも、私は……と友希那が言いかけた時。
「ダメだなんて言ってません。ただ……少し、驚いただけです」
「あこは大大だ~い、さんせ~ですっ!」
「わ、わたしも……みんなであの曲が……演りたいです……」
紗夜、あこ、燐子がそう言った。
「だってさ、友希那?」
「……みんな、友希那ちゃんと同じ事を思ってたって事だよ」
そしてリサと悠里も友希那に向かってそう言った。
「あの曲が演奏できるの嬉しいなあ~! 頑張らなくちゃ!」
「……今以上に頑張らないとだけどね? それじゃあ、みんなに渡しておくよ。はい」
あこがそう言ったタイミングと同時に悠里は、自身のショルダーキーボードケースからある物を取り出し、5人に手渡す。
「これって……スコア?」
「うん。友希那ちゃんのお父さんの曲のやつ」
「……(悠里がお父さんの曲のスコアを持ってたって話、聞いた事ないけれど……でも、どうして5枚も?)」
燐子の疑問に悠里はそうだと答えた。ここで友希那はある事に気づく。
「ちょっとみんなのスコア見せて」
そう言って友希那は、5人分のスコアを隅々までチェックする。
「? 今井さんのスコアと私のスコア、ここのフレーズ、微妙に違いませんか?」
違和感に気づいたのは紗夜だった。そう、リサのスコアと紗夜のスコアが微妙に異なっていたのだ。次にあこの、燐子のと順にチェックするが、やはり違う部分があった……
「……(やっぱり私のも違う)」
最後に友希那のスコア。出だしやサビの部分や注意点まで、きめ細かく記されている。
「昨日の夜……かな? ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード用のスコアを
そして悠里が5人にちょっとだけ疲れた表情しながら、とんでもない事実を暴露したのだ。
「……ごめん、ちょっと外の空気吸ってくるから、先に練習しててもらっていい? 20分くらいしたら戻るから」
それだけ言い残して、悠里はスタジオを出た。
「りんりん、ゆうりんって、あこ達とチャットもしてたよね……?」
「うん……ゆうりくん、
「……息抜きの範疇を超えてると思いますが。まさか昨日のメールで送ってもらった、あのフレーズも……?」
「……もお~、悠里ったら、また昔みたいに無理して……これは後で説教かな」
昨日のやり取りを思い出すあこと燐子、紗夜の3人。リサは溜息を吐きながらも後で説教だと呆れる。
「はっ! これって今以上に頑張らなきゃいけないんじゃ……」
「当たり前でしょ。演るからには全力でやらねば、湊さんにも、湊さんのお父様にも失礼よ。それに悠里さんにも。これから本番まで練習の時間を増やして完成させるわよ」
「はいっ! ゆうりんが用意してくれたんですからねっ! りんりん、練習始めよう!」
「う、うん……」
そして曲を完成させる為、練習の準備をする一同なのであった。
余談だが、案の定、悠里はリサを中心に説教された……
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