今回で最終回になります。
それではどうぞ。
そして迎えたライブ当日。
「もうすぐ本番だね! ん~、楽しみだなあ~! りんりん、緊張してる?」
「うん……少し……でも、友希那さんのお父さんの曲を演奏できるの……とっても楽しみ……」
あこの言葉にそう返す燐子。
「……(今日のライブ、友希那のお父さんが来てくれてるんだっけ。……いつも以上に本気でやらないと)」
「…リサちゃん緊張してる?」
「え? あれ、ホント? あはは、大丈夫大丈夫!」
そういえば、Roseliaの初ライブの時もこんな感じだったなとリサを見て思った悠里。
「そろそろね」
「ええ」
お父さん、見ていて……と心の中で思う友希那。
「友希那さん、そのアクセサリーカッコイイっ! いつもは付けてないですよね?」
「これは……大切な人からの貰い物よ」
友希那が付けてたアクセサリーを見たあこ。するとそれを見た悠里が……
「そうだよね。友希那ちゃんにとっては大切な人だもんね。これはもう安心感が段違いだよ」
「……(悠里、絶対にお父さんのアクセサリーだって知ってるわね)」
理解したとばかりな表情をしながら、意味深な事を言った。彼の表情を見た友希那はこれはもう完全にバレてるなと思った。
「Roseliaさん、お願いします」
「はい。みんな、行くわよ」
スタッフからの合図があり、いよいよ友希那達はステージに向かった。
◇
「2曲続けてお届けしました。聴いていただきありがとうございます」
ここまでお客さんがついてきてくれている。後は、ラストの曲を残すのみであった。
「次で、最後の曲になります。次の曲は……私が一番尊敬するミュージシャンの曲をカバーしたものです」
それでは聴いてくださいと友希那は歌い出した。
「……(うんうん、みんな一体感があって……良い演奏だ)」
ステージ裏で彼女達が練習していた曲を聴いていた悠里。一体感があってとても良い。
「(あっ……)」
するとお客の中に
「……(先に楽屋に行くか)」
楽屋にもモニターがあるので、そこで友希那達が演奏してるのをゆっくり聴こうかなと思った悠里は、楽屋に向かうのであった。
◇
「……(タイミング的にそろそろかな)」
楽屋で、友希那達の演奏を見ながら、ある人物の来訪を待つ悠里。そしてドアがコンコンと鳴った。
「スタッフの人かと思ったら、まさか君が出迎えてくれるとは……」
「……お久しぶりです。そろそろ来る頃かなと思ってたんで」
そう。何を隠そう、その人物は友希那の父だった。そして彼を楽屋に招き入れる。
「コーヒーとクッキーをどうぞ。……コーヒーはインスタントで申し訳ないんですが」
「ありがとう。…ふむ、この香りは……悠人が好きだったブレンドかい?」
「…あっ、流石に分かります?」
「『インスタントでも思った香りと味が出せないのは音楽と一緒だ』があいつの口癖だったからね。この香りと味は今でも憶えてるよ」
そう笑いながら答える友希那の父。
「それにしても、本当に大きくなったね。うちの妻も言ってたんだが、君のお母さん……学生時代の藍里にそっくりだと言ってたのも頷ける」
「あはは……ありがとうございます。僕も高校2年生ですからね。……好きな食べ物とかは父さんと一緒かなって思ってます」
「そうなのかい? 横顔の雰囲気は、悠人に似ているよ」
悠里としてはあんまり自覚ないのだが、友希那の父から見れば、確かな面影があるとの事。
「友希那ちゃんがあの曲を歌いたいって聞いた時、どうでした?」
「驚いたさ。友希那の部屋から懐かしい曲が聴こえたから、最初は何事かと焦ったよ」
ここだけの話、娘の部屋から10年以上前の曲が聴こえるものだから、自分の聴き間違いかと思ったよと苦笑いする友希那の父。
「今日の友希那ちゃん達の演奏、どうでした? 発端は2週間前なんですが……」
「そうだね……」
その後も悠里は友希那の父と話をしたのであった。
◇
「…あ、お帰り。一体感のある演奏で良かったよ。クッキーあるけど、食べる?」
「わーい! 食べる食べるー♪」
「紗夜ちゃんと燐子ちゃんもどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、ありがとう……」
しばらくして、友希那達が楽屋に戻ってきた。早速あこがクッキーを1つ食べる。紗夜と燐子にも勧める悠里。
「……(あれ? テーブルの上に、お父さんの曲のスコアが置いてある)」
テーブルの上に父の曲のスコアが置いてある事に気がつく友希那。悠里に視線を向けると『それ、見てみなよ』と言っていた。
「これは……!」
そこには『いいライブだった。父より』と走り書きのメッセージがあった。ちゃんと見に来てくれてたんだ……と安心する友希那。
「友希那! 何見てるの? んん? これって……!」
「……ええ。お父さんから」
リサもスコアに書かれてたメッセージを見る。そして友希那が父からだと答える。
「良かったね、友希那。それにしても、お父さんも直接言いにくればいいのにね。友希那の素直じゃないとこはお父さん譲りなのかな?」
「……リサ」
「あはは、ごめんごめん」
そんな2人を見て……
「素直じゃないというより、照れ屋さんなだけだと思うよ?
「なんか的確な言い方だね。悠里、なんか隠してるでしょ?」
「…気のせい、気のせい」
「……(もしかして、お父さんと話してたのかしら?)」
リサに詰め寄られてる悠里を見た友希那は、もしかして、さっきまで父と話してたのか?と思っていた。
「今日は、ありがとう。ほんの少しかもしれないけど、以前より前を向いて歌を歌えていたように思う」
友希那が5人に向かってそう言った。
「えっ? 前から前を向いて歌っていましたよね……?」
「今のは比喩表現よ」
気持ちが前を向けていた、という事だと意味が解ってないあこに補足する紗夜。
「ええ。その通りよ。そして……私はこの先もっともっと前へ進んでいきたい」
だから、この先も私についてきてほしいと改めて、5人に意思表示をする友希那。
「もちろんですっ!」
「当然、そのつもりよ」
「……はい……!」
「アタシも、もち友希那に着いてくよ~! パーッと打ち上げにでも行きますか! いつものファミレスだけど♪」
「混んでないといいけどね。…まぁ……僕も言うまでもないけどね」
彼女の言葉を聞いた5人の答えは言うまでもなかった。
「……ありがとう。それじゃあ、早速移動するわよ」
「あ、友希那、ちょっと待ってよ~!」
「……やれやれ。そういうところ、友希那ちゃんらしいけどね」
そう言って先に行こうとする友希那を見て、絶対にアレは照れてるなと心の中で思う悠里なのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いたら、また何か息抜きに書くかもしれません。
それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。