2000年前、暴虐の魔王と呼ばれた男いた、彼は魔族と人間の争いに嫌気を刺し、ある日の事、人間の世界に単独で訪れ、勇者カノンと呼ばれる者と交渉しに行った。
「こんなつまらぬ戦いにいつまで興じる必要がある、勇者カノン、・・・確かに俺達も人間達を殺し尽くしたが・・」
「暴虐の魔王アノス!、だったら今更話はなんだと言うのだ!」
「話は最後まで聞け、カノン、・・・俺を主軸とし、大魔法を発動させ、魔界、人間界、妖精界、尸魂界、虚圏の5つの世界を分け隔て、1000年は開かぬ強固な結界を張ろうでは無いか…」
アノスは5つの世界を分断し、1000年は開かず、争いが起こらないようにしようと彼なりの平和解決を提案した。
すると、彼らの前に和風の服を着た、それなりに歳を重ねていそうな立派な黒い髭が生えている男が目の前に現れ話に介入した。
「山本重國・・何故貴様が此処に……」
「正気か・・転生は約束されているとは言え、お主は自身の根源を犠牲に発動する大魔法を発動させようとしておるのじゃぞ…」
「なに、死ぬわけでは無い、ただ、肉体を失うのみ、2000年の我慢だ…」
「アノス、・・・だが俺は分かった、俺もこんなつまらない戦いにはもう・・」
「全くお主らは本当に若いのぉ、・・・・しかしそうせざる得ないのは事実じゃろうなぁ、争いは原初の時代から耐えぬかったからなぁ……」
「原初の時代を生き抜いた重國が言うと説得力のある言葉だなぁ…」
「なんじゃ?アノス、それは儂に対する皮肉か?」
世界を分け隔てようと言う時にもかかわらずアノスは山本重國とたわいもない話で笑っていた。
また、山本重國も同じく、アノスが自身を犠牲に世界を分け隔てようとしているのに、楽しく会話を進めていた。
この光景にカノンは、少し和んでいたが、心の奥隅では、自分はこのままでも良いのかと言う悩みも抱えていた。
「じゃあ始めよう、・・ミリティアとレノを連れて来てくれ、儀式を行う……」
その後、アノスは大魔法である四界牆壁を発動させるトリガーを引かせる為、自身の根源をカノンのエヴァンスマナという聖剣で貫かせ、その瞬間世界は5つに分け隔てられた。
この時、アノスは滅びる寸前に空を見上げ、自身が最も愛した者の存在を認知し、笑いながら消滅したのだった。
『アノス・・・何故お前がやらねば・・』
「ユウエン・アイッシュ様・・・仕方が無かった事なのじゃ、アノスがそうすると決めた以上儂らが止めるのは野暮というものじゃろうて…」
『分かってるよ、・・重國、ねぇどうしてかな?、どうして父上は、・・・霊王はこんな過酷な運命を世界、いやアノスに与えたのかな?』
「それは儂も分からぬ、・・・・霊王様の考えは昔から分からなかった……」
実は山本重國はアノスが言っていた通り原初の時代から生きており、霊王とは深い関わりを持っていたが、何を考えているかは当時から彼でも理解出来ない部分があった。
『父と長い付き合いの重國も分からないのかぁ・・じゃあ僕では理解するのはまだ先になりそうだなぁ……』
「アノスに会いたいと仰るなら、2000年後を楽しみに待つのが良いかと儂は思うのじゃが、如何ですかな?」
『2000年後・・・・分かった・・・待とう、会えるのを楽しみしているぞ、・・暴虐の魔王アノスヴォルディゴード……』
それから、時の流れは早いのか、アノスが転生する2000年後となり、宣言通り彼は転生を果たした。
しかし、その転生はアノスが予想したのとは違っていて、自分が純粋な魔族では無いことを理解した。
魔族ではなくなったもの、力は健在だった、とは言え転生したばかりと言う事もあり、あの頃の力はまだ無かった。
「転生したぞ・・・ユウエン、・・お前の顔を早く見たいものだ……」
アノスは自身が一目惚れし、最愛の人物として認識しているユウエンの名前を空を見ながら呟くのだった。