ありふれた異世界で魔獣は笑う   作:富竹14号

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 さっさと書きたいけど原神をやりたくて書けないンゴ


珍道中

 

 

 コツコツと足音が響く、湊だ。

 

 あの大熊の様な魔物を殺してから少し後、湊は道端で襲いくる魔物を時には蹴飛ばし、時には真っ二つにし、時には踏み潰しと容赦も躊躇無く進み続けていた。

 

 どれだけ経っているかは分からないが、湊はあれから下層に続く道を探し続けていた。

 

 上層へ続く階段でも探そうかと考えもした、何故なら王国には恵里が居るからだ。

 

 しかし、今戻ったところでどうせイシュタルに好き勝手されるだけだし、そもそも恵里のことだから自分が死んだかどうかを確認する手段くらい仕掛けているだろうと予測し、却下した。

 

 そもそも、何故か上層にハジメは居ないのだと直感が囁くのだ、だったら上層に戻る理由は湊には無い。

 

 ならばもう、前に進むしかないだろう。

 

 

 「…あった」

 

 一つ呟く、その視線の先には下へと続く階段がある。

 

 凸凹とした階段…というより坂道だろうか、その先にはこの場所に来るまでに大量に存在した緑光石が一欠片も無い、真っ暗だ。

 

 そんな真っ暗な階段を、湊は何でもないように降りていく。

 

 降りていく度に暗さが増しているような気さえするその道は、さながら迷宮という名の怪物の口内のようだ、一度入れば二度と出られないし逃さない…そんな意志のようなものを感じる。

 

 不気味な雰囲気、それら全てを感じながらも涼しい顔のまま湊は階段を降りていく、その顔には冷や汗一つ無い。

 

 暗闇の中をただ突き進む、コツコツと湊の靴音だけが周囲に響き渡る。

 

 

 

 そうして階段を下り終えた先にあったのはまたしても暗闇だった。

 

 

 

 何も見えない、地下迷宮である以上は当たり前とも言えることだが、少なくとも今までは緑光石が周囲を照らしてくれていた。

 

 しかしここにはそれが無い、ただ暗いだけ、何も無い。

 

 暫くその場でしゃがみ込み、ピントを合わせるようにパチパチと目を瞬かせる湊であったが、少しした後にハァと一つため息を吐いて立ち上がった、どうやら期待していたことは起きなかったらしい。

 

 ならばと湊は、そっと目を閉じた。

 

 そして一つ、拍手を一回。

 

 

 パァンと手と手を強く張り合わせた音が周囲に響き渡る。

 

「………」

 

 瞳を閉じたまま、もう一度叩く、音が響き渡る。

 

 湊の耳にカサカサと何かが這いずりながら動く音が聞こえてくる、翼が振られる音と猫のような足音が届いてくる。

 

 更に再び叩く、響き渡る…湊が瞳を開けた。

 

 

「見つけた」 

 

 一言そう言って、湊は怪しげに口元を歪めるのと同時に暗闇の中を走り出した。

 

 音を立てて、瞳を開いて、ただ一目散に目的へとひた走る。

 

 ある程度進んだ所で再び一拍手を挟み、何を感じ取ったのか唐突に進路を変更して別に場所へ走っていく。

 

 更に再び拍手を一つ…カサリと近くから物音が聞こえた。

 

 

「まずは一匹」

 

 凄惨な笑みを浮かべながら、湊は楽しげにそう呟き…その直後、唐突に斧槍で自分の右手側を斬りつけた。

 

 ガガッと壁を削るような音と肉を裂く感触、悲鳴を上げてドチャッと地面に落ちる魔物の音、それら全てを無視して湊は更に暗闇の奥を疾走していく。

 

 何一つとして映し出さない暗闇の中で、今しがたと同じように一匹、また一匹と暗闇の中に潜むナニかを殺し続けた。

 

 駆けて、殺して殺して殺して殺して、一匹また一匹と見えない暗闇の中で何を殺しているのかも知らず、それでもただただ目についた…耳に捉えた獲物を刈り取っていく。

 

 殺して、殺して、殺して、殺し続ける…どうせそれくらいしか出来ることなどないのだから。

 

 

 どれだけ経ったのだろうか? 数時間がはたまた数十時間か、時間の感覚が何処か曖昧だ…まぁ四六時中暗闇の中にいたのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

 拍手を挟んで索敵をしては殺し、近づいては殺し、また索敵しては殺しを繰り返し続けたせいで最早湊の脳内は某人型決戦兵器人造人間の射撃訓練を繰り返す少年さながらの虚無状態と化していた。

 

 拍手、斬る、拍手、斬る、センターに入れてスイッチ、拍手、斬る……そうこうしている内に、気づけば湊は階下へ続く階段に辿り着いていた、湊の腹がぐぅーぐぅー鳴っている。

 

 

「……腹減った」

 

 拍手を一回、近場に偶然居た何らかの魔物を斬りつける。

 

 悲鳴を上げてドチャっとする魔物を、湊は適当に掴み上げてずるずると引きずりながら階下へと降りていく。

 

 道中、何気なしに尻尾を千切ってガジガジと噛み切ってゴクリと()()()()()()()前へ前へと進んでいく。

 

 

 

 その階層は何処もかしこもタール一色の泥沼のような場所だった、足を突っ込むと動きを阻害されて非常に動きづらい。

 

 その代わりとでも言うべきか、この階層は先程の階層と違って明るさは普通だった、暗くないことほど良いことは無いと何処かの伝説の幼兵も言っている。

 

 因みに、何も考えずに足を踏み入れた湊の靴はドチャドチャに汚れた、おのれゴルゴム。

 

 

「………」

 

 ビチャビチャと音を鳴らしながら黒いタール状の液体の上を歩く湊、その顔は何処か晴れ晴れとしている…先程の暗闇地獄がよっぽど嫌だったらしい。

 

 ピッチャピッチャパッチャパッチャと楽しげな様子で湊は歩く、メルドが見たら怒髪天に達しそうな程の気楽さである、どれだけ先程の暗闇階層が嫌だったのかよく分かる。

 

 

 そんな気楽な様子の湊をサメのような魔物が襲う。

 

 タールの中から突然飛び出し、その鋭い歯が無数に並んだ大きな口は今にもお前を食ってやると言わんばかりに自己主張している。

 

 このまま行けば丸齧り、当然のそんなことになれば獲物は即死でお腹の中…といったことになるのだろうが…しかし、如何せんタイミングが悪すぎた。

 

「あ?」

 

 グワシとサメの牙が鷲掴みにされる、それどころかもう片方の手で閉じられようとしていた口を強制的に抉じ開けられる。

 

 サメはえっ? とでも言いたげな目線を湊へと向ける、その直後にサメの口の中に湊の足が突っ込まれた。

 

 いや、足というより非常に勢いの乗った蹴りがサメの身体の中身を容易く貫く。

 

 体内の内蔵が千切れたかの様な音がサメの体内から響く…ハッキリ言って気持ち悪い。

 

 まさかサメも口を抉じ開けられた挙げ句に蹴りをブチ込まれるとは思っていなかったらしい、何をされたのか分からないと言いたげな視線のまま、ビクンビクンと大きく痙攣した後、悲鳴を上げることすらなく絶命した。

 

 

 動かなくなったサメを尻目に、湊はサメから突っ込んだ足を引き抜く、引き抜かれた足には内臓やらピンク色のナニカやらが大量に付着しており、匂い自体も非常に気持ち悪い。

 

 ポイッとサメを投げ捨てて、再び前へと進む…ハジメはここには居ないと…そう確信しながら。

 

 理由なんて分からない、ここにはいない…どういうわけかそれだけは分かっていた。

 

 暫くしてから、湊は階下への階段を見つけ、先程と同じように何でもない風に降りていった。

 

 

 そしてその後を、シュルシュルとナニカが追いかけるように付いていった。

 

 

 

 

 その階層…なんとも不思議な様相をしていた。

 

 何も無いのだ、本当に何も無いのだ。

 

 あるのはただの壁と地面、ここにやってくる前に見た大量の緑光石の入り口とも違う、灰色で統一された遺跡のような階層だった。

 

 そして、そんな何も無いこの場所に…それはただポツンと存在していた。

 

 

 それは…灰色の斧槍だ。

 

 剣のような槍部に三日月型の斧部、更にその反対側に付いている鉤爪に中心部に嵌め込まれている赤い宝石…そんな如何にもな武器が、何も無いこの空間のド真ん中に突き刺さっていた。

 

 おかしなものである、殺意の塊とも言えるであろうこの大迷宮にあんな如何にもな武器が置いてあるのである、誰からどう見ても罠にしか見えない。

 

 

「よいしょ」

 

 しかしそんなこと知らんと言わんばかりに湊はあっさりと斧槍へ手を伸ばした。

 

 カシャンと音を立てて斧槍が引き抜かれる、引き抜かれた斧槍を湊はおぉと感嘆の声を上げながら見つめる。

 

 …何度でも言うが、ここは大迷宮である…こんな如何にもなお宝が置いてある時点でそれはもう確実に罠なのである。

 

 ……がしかし、何も起こらない、本当に何も起こらない。

 

 今までのフリはなんだったのかとツッコミを入れたくなるレベルで何も起こらない、なんだったら引き抜いた張本人が首を傾げて不思議そうにしている。

 

 しかしそれも束の間、まぁいいやとでも思ったのか湊は灰色の斧槍を手に持ったまま階下の階段へと進み、そのまま階段を降っていった。

 

 

 その様を、ソレはじっと見つめ続けていた。

 

 

 





 基本的に魔物の死に様はグロテスクな方が楽だと最近気がついだ気がしないような気もするような。
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