ちょいと無茶苦茶な展開かもーん。
「…どうしようこれ……」
目の前の破壊された壁を見て、湊はふとそう呟いた。
たかが水鉄砲程度の威力しかないはずの自分の技能がとんでもない威力にまでなっているという事実に脳が追いついていないのだ。
「……あっ、そうだそうだ、こういう時の為のステータスプレートっと」
ハッとしたようにステータスプレートを取り出して確認する、湊は固まった。
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対馬湊 17歳 男 ■■■■
天職:術師
筋力:20000
体力:55000
耐性:30000
敏捷:45000
魔力:10000
魔防:18000
技能:渇望の鼓動[+望郷ヘノ求メ][+血闘の渇望][+再開の求め]・鮮血[+躍動][+赤槍]・魔獣化[+魔天神楽]・毒性耐性・石化耐性・全属性耐性・魔力操作・焔核[+焔角][+焔爪]・限界突破[+限界突破・絶]・崩天ノ魔・言語理解
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瞳をパチクリと瞬かせる、手をブンブンとプレートの前で振ってみたりプレートのそのものを振ってみたり更にはコンコンと指先で叩いてみても反応は無し。
まぁ要するに、これが現在の湊のステータスということである。
「……えぇ〜」
ドン引きするかのように湊は顔を露骨に顰めた、しかしそれもそうだろう、一体この世の何処に気がついたら自分の能力値が100倍くらい上乗せされているという事実を受け入れられる人間がいるというのか。
「…まぁいいや」
ここにいた、あっさりと受け入れヨイショと立ち上がる馬鹿がここにいた、お前人の心とか無いんか?
「とりあえず新しく出てきた技能の詳細〜♪」
しかも新しく出てきた技能にウキウキしていらっしゃる、いやまぁ確かにそういうことにはワクワクとするものだがもっと警戒とかしなさいよと何処からともなく若干ツンデレ気味の声が聞こえてきそうなレベルで脳天気な様子を出しながら、湊は技能の部分をタッチ…しようもしたところで湊の耳がぴくりと反応した。
「んん?」
プレートを懐に戻して、耳に手を当てて深く澄ませる。
静まる意識に深まる集中、何もないぽつんとした空間でただ一人湊はひたすらに聞こえてくる音に耳を澄ませる。
そして───
『ユエ、大丈夫か?』
『ん…モーマンタイ』
声が聞こえた…少女と男の声だ、少女の声には聞き覚えがないが、男の方には非常に聞き覚えがある。
そう、それは湊がここに落ちてくる切っ掛けになった存在、自分が探しに探した親友の声。
それが、下の階層から響いてきた。
「…見つけたぁ…!」
弧を広げ、湊は凄惨な笑みを浮かべた。
下から聞こえてきたのだ、ならば階層で言うなら下の階だろう。
しかも湊の直感が訴えかけている、道のりは遠いぞと。
ならばどうするか…簡単な話だ、近道を作ってしまえば良い。
「クヒ…!」
徐ろに湊は大きく手を振り上げ、ギリッと拳を握り込み…そしてそれを地面へと叩きつけた。
一点のへの衝撃は容易く地面を抉り、更にそこから広がるようにして亀裂が奔り、最後には湊が奈落へと落ちたあの日の再現のように地面が粉々に砕け散る。
砕け散った地面は盛大に下層へと落ち、湊もそれに従い自由落下のように下層へと落ちていく。
しかし…まだだ、ここにはいないのだと湊は確信していた。
だから、今度もまた拳を地面に叩きつけた。
再び地面が割れる、砕けて落ちる。
ズドンからズガンと音を変えて放たれた拳は偶然その真下にいた魔物を容赦なく押し潰し、血潮と共に湊は更なる下層へと落ちていく。
しかしまだだ、まだ足りない、まだ遠いぞと直感が告げる。
だったら何度でも何度でも繰り返そう、だってこっちの方が早いんだから。
砕く、砕く、砕く、砕く。
砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕き続ける。
一層二層三層四層と加減を知らない子供の様に躊躇も迷いも無くただただひたすらに地面を砕いて下へと向かう。
ズドンズドンと連続して轟音が響き渡り、その音に警戒した魔物達が寄ってきては上から降り注いだ瓦礫によって押し潰されるということを繰り返す。
声を頼りに、気配を頼りに、直感を頼りに、ただただ砕いて進む、その過程に何があろうと最早問題じゃない。
だって、それが自分なんだから。
気配も近づいてきた、あと少しで辿り着くと確信出来るほどに近くにいる、だったら行かなきゃ。
…最後の一段、それを砕く。
下へと落ちて地面へと着地する、斧槍を担いで地面に手を付き、前へと目を向ける。
───あぁ…いた。
白髪に赤い瞳、全身に広がった血管のような赤、手に持った銃らしき武器にその身に纏う強い決意と絶対の殺意。
あぁ、姿形も雰囲気も若干違うが間違い無い、あぁそうとも間違おうはずなどないのだ。
ようやく見つけたのだ、ようやく親友を見つけた。
「…見〜つ〜け〜たぁ〜♪」
──ハ〜ジメ〜♪
その顔は、凄惨に歪んでこそいれど、しかしどうしようもないほどの安堵と歓喜に満ち溢れていた。
そんな湊の姿に、湊の登場に、当の南雲ハジメは───
「…どちら様ですか?」
若干の引き顔と共に、まさかの発言を投下した。
その言葉にキョトンとした様子を見せた湊はコテンと首を傾げる、あら? もしかして頭やられちゃったのかしらん? とでも言いたげな視線をハジメへと向けている。
「えっ? いや湊だけど…どした解毒ポーションいる?」
懐から颯爽とポーションを取り出し、いる? とでも言いたげにハジメへと差し出す湊に、ハジメはとんでもない物を見たかのように目を見開きぷるぷると震えた手で湊を指差す。
「お…お前…湊……なのか?」
「それ以外の何があるのさ?」
湊の即答にハジメは身体をプルプルと震えさせながら、更に恐ろしいものでも見たかのような目で湊を見つめる、隣にいた金髪少女はそんなハジメを何処か心配そうな表情で見つめていた。
「……お前の誕生日は?」
「? 8月6日」
「好きな食い物は?」
「チキン南蛮と唐揚げ、あとトンカツ」
「最近買ったゲームは?」
「エル○ンリング」
唐突にハジメから送られた意味不明な質問に、湊は何気無しに答えていく、特に隠すようなことでもないし全てハジメが知っていることだからだ。
それからも質問は続いた、やれ自分の誕生日は何時だとかやれ奈落に落ちる前の飯はなんだったかとか、とにかく当たり障りのない質問ばかりをされていた。
これには流石の湊も?マークを出さざるを得ない、何せ親友を探している三千里…というわけでこそないが、頑張って探して最短で駆けつけたのに、見つけたら見つけたで変な質問をされているのだ、疑問顔にもなるというものである。
そして最後の質問を終えた辺りで、ハジメは大きく天を仰いだ、何故かブツブツと呟いているようにも感じる。
そんな親友の様子にこれまたコテンと首を傾げた湊に、ハジメは恐る恐ると言った様子で、唐突に訪ねてきた。
「お前…自分が今どうなってるか分かってるか?」
「そりゃまぁねぇ、びっくりしたよ髪は伸びてるし手と足は変なことになってるし、しかも尻尾生えてるしで」
さも普通に答える湊に違うそうじゃないと言いたそうにハジメは顔を歪ませ、徐ろに金髪少女…ユエを呼んで何やら頼みだした。
ユエはハジメの願いにコクンと首を縦に振り、唐突に大きな氷の結晶のような物を作り出し、その前に立つよう湊に促してきた。
怪訝そうな表情のまま、湊は結晶の前に立ち…そして先程と同じように固まった。
覗き込んだ結晶には、長いロングヘアーの約半分が紅く染まった黒髪に湾曲した角が飛び出た自分が居た。
手や足は自分で確認した通りの変化が起こっており、尻尾もまた同様、強いて言うならハジメと同じように血管のような物が身体中に見えることくらいだろうか。
しかしそこではない、湊が固まった原因はそこではない。
結論から言わせてもらうと…湊の背は縮んでいた。
それはもう縮んでいた、具体的に言うと中学2年生時代レベルの身長にまで縮んでいた。
ぱっちりと開いた瞳に紅く染まった瞳、瞳孔が縦に割れておりそれがより湊の変化を実感させるがそこじゃない。
そして気付く、背が縮んだということは服のサイズが変わっているということ、視線を下に向けてみればズボンがダボダボとしていた。
手を動かしてみれば結晶に映った自分はそれと同じ動きをしている、つまり新手の悪戯では無いというわけでして…。
「う…う……ウソダドンドコドォォーンッ!!?」
その日、湊は暫くの間ハジメとユエに慰められた。
主人公くん
小さくなった、けどステータスに変わりは無し。
因みに、本人に自覚が無かっただけで、最低でも中学三年までは容姿が完全に男の娘してた。
南雲ハジメ
実は初恋が小学生の頃の湊、当時の湊は完全に容姿は声も相まって完全に女の子だった…だが男だ。