ありふれた異世界で魔獣は笑う   作:富竹14号

2 / 14

 続きを求められたのでとりあえずGO…それはそれとしてこれ続けるならタイトルとかあらすじ変えた方がいいんですかね?


何もかもが始まる前

 

 

──なんてことのない日のはずだった。

 

 

 

 それは、ふとした朝の教室の中で起こった。

 

 彼、少年こと『対馬 湊』は自分の席の上で大きく欠伸をしながらがやがやと騒ぐ一団を見つめていた。

 

 一人は湊の友人の『南雲ハジメ』、一言で言うならばオタクだ。

 

 オタクと言ってもキモオタと呼ばれる人種ではない、髪はキチンと切り揃えられているし言動も至極まとも、受け答えにも大した問題はない、単に映画やアニメやゲームのような創作物が好きなだけの普通の高校生だ。

 

 そして、そんな普通の高校生の周りにいるのが、いわゆるカースト上位に位置する人間達だ。

 

 まずはハジメに対してとてもフレンドリーに話しかけている少女、学校で二代女神と呼ばれている『白崎香織』とその白崎香織の様子に若干苦笑い気味なお姉様だのヴァルキュリアだの呼ばれている『八重樫雫』。

 

 あとは思い込みが激しくて最近若干鬱陶しい『天之河 光輝』と筋肉でガサツでバカと三拍子揃った脳筋マンの『坂上龍太郎』…他にも五人ほど存在するがそんなの知らんと言わんばかりに湊は思考を打ち切った、どうやら毛程も興味が無いらしい。

 

 

 そんな自分の友人と彼と彼女達の様子がやいややいやとしている光景を、湊はただただ眺めていた。

 

 

(なんであんな風にさも当然の様に下に見れるかねぇ…)

 

 

 ぼんやりと眺めながら、湊はふとした時にそんなことを考えた。

 

 切っ掛けとしては簡単で、光輝が何気なくハジメに言ったとある言葉が原因だ。

 

 

(…甘えてるのはどっちなのやら)

 

 

 先程光輝が言った言葉、ハジメが何時までも態度を直さず香織の優しさに甘えている…端折って聞こえたその言葉が耳に入った時に湊は思った、こいつに人のことが言えるのかと。

 

 毎度毎度何かしらの事件を起こしては周りを巻き込み、その度に幼馴染の雫に後始末及び尻拭いをさせる、しかも本人にその自覚は無いから質が悪い。

 

 正義感があって正しくないことを許せない…言葉にしてみれば正義漢の鏡のような人間だが、その実何も考えていないだけとも言える…少なくとも湊はそう考えていた。

 

 

(そもそも、前提からして違うんだよなぁ)

 

 

 そもそもの話、香織がハジメに構っているのは純粋な優しさなどではなくハジメに対して恋愛感情を抱いているからだ、光輝の言うような普段の香織がばら撒いている優しさなどでは断じてない。

 

 更に言ってしまえばハジメは他のクラスメイトとは違って既に職への伝手が存在している。

 

 父がゲームクリエイターで母は少女漫画家、プロ二人の職場で既にバイトをしていてその腕は既に即戦力に数えられる程だ。

 

 つまり、ハジメには今の環境やら習慣やらを変える必要性がまるで無い、何せ既に下積みも土台も存在している。

 

 この事実がある時点で周りの人間の言葉などただの負け犬の遠吠にしかならないのだ、特にハジメにちょっかい出してる四人組に関しては特に。

 

 趣味の合間に人生…ハジメが公言して憚らない座右の銘、それを体現する為の努力をした上での今なのだ、その結果として申し分ない成果を既にハジメは手にしている。

 

 であれば少なくとも今のハジメを否定出来る者はこの場にはいないだろう、それを知る者がこの場にいるならの話だが。

 

 

(…まぁ、暫くはこのままかな、よしんば関係性が崩れたとしても、それは白崎さんがハジメに告白した時くらいか)

 

 

 その時が楽しみだなと湊は口角を上げてクツクツと静かに笑う、笑い方がまんま悪役染みていることは言ってはいけない。

 

 

 

 そうこうしている内に始業のチャイムが教室に響き、教師が教室へと足を踏み入れてくる、そしてそのまま教室の空気のおかしさなんてなんのその…とでも言わんばかりに朝の連絡事項を伝え、そして何時も通りに授業が始まった。

 

 その間にハジメは何時もの様に夢の世界へと旅立ち、そしてそれを見た香織が微笑みを浮かべ、そんな二人に雫は苦笑い気味だった…ちなみに湊はクツクツと悪役笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって昼休憩、ざわざわとざわめく教室の中で学生鞄から徐ろに弁当を取り出した湊は席を立つ。

 

 そして、未だにすやすやぐ〜ぐ〜と眠りこけている自分の友人に向けてこれまた徐ろに手を振り上げ───

 

 

「ぐっも〜に〜んぐ〜♪」

 

 寝息を立てるハジメの頭にチョップを繰り出した。

 

 ゴスぅという重い音と共にハジメの「アイタァ!?」という痛みの声が上がった。

 

 

「よっす寝坊助! 飯を食おう!」

「…あれ? もうそんな時間?」

 

 「何時もだったらすぐ起きれるのになぁ」とハジメは小さく呟き、頭を擦りながら身体を起こして大きく欠伸をする。

 

 ん〜と気持ちの良さそうに身体を伸ばし、若干責めるような目をして湊へと視線を向けた。

 

「湊くん、幾らなんでもチョップはないよチョップは」

 

 そう言って流石に痛かったよとジトッとした目を何時も通りのそれへと戻し、苦笑いしながら差し出されていた弁当を受け取る。

 

「普通に起こしたところで起きんだろ?」

「起きるよ、居眠り常習犯の体内時計を舐めないでいただきたい」

「胸張って言うことかそれ?」

 

 互いに雑談を交わしながら、湊とハジメは弁当へと手をつけ──

 

 

「珍しいね南雲くん、教室にいるなんて…お弁当?」

 

 ようとした二人の前に、私も一緒にいいかなと弁当袋を持った香織がまさかのインターセプト、教室を不穏な空気が満たし始める。

 

 そんな空気に気がついたハジメはなんとかその誘いを断ろうと抵抗を試みる。

 

「あ〜…ごめんしらさきsa「良いとも良いとも、おいでませ香織さんや」んんん!?」

 

 しかし湊、ここでまさかの裏切り、笑顔で香織を自分達の輪へと招き入れる、ハジメは湊に何をやってんだお前ぇ!? と言いたげな表情を見せている。

 

 その返答に香織は嬉しそうに…それはもう嬉しそーーうににぱーと笑顔を浮かべ、失礼しますと一言置いて席に座った、周囲からの視線が殺到した。

 

 「なんでアイツが」「南雲の癖に」「対馬は…別にいいや…」と恨みつらみ+αの声と高まっていく圧力にハジメは戦々恐々も、湊はヘラヘラとしながら、香織はニコニコとしながらそれぞれ弁当へと手をつけていく。

 

 食べている途中で光輝がハジメと香織になんやかんやと言ってきはしたがそこは我等が女神様、素知らぬ顔で「なんで?」と色々言ってきていた光輝へ天然前回のダイレクトアタックを繰り出して撃退していた。

 

 その様子に雫はブフッと大きく吹き出し、湊に至ってはあ〜あと言いたげに薄く笑みを浮かべていた、因みに傍から見たそれは何処からどう見ても人を煽って楽しんでいる少年のそれだ、非常に楽しそうである。

 

 そんな様子の三人組への視線の圧力は弱まることはなく、むしろ更に強くなっていく…その事実にハジメは深く溜息を吐き、湊はその様子を見て小さく笑い、ふと考えた…なんか、ここの奴等って異世界に飛ばされそうだよなぁ…と。

 

 主人公はハジメでヒロインは香織、雫は香織の友人キャラ的な立ち位置で光輝はヒロインは狙う男キャラ、異世界に飛ばされた彼等は様々な困難を乗り越え、次第に人間的に成長していく。

 

 そして最後に主人公とヒロインは幸せを手にして終了する類の王道的な異世界ラブコメファンタジー。

 

(…あったらあったらで面白そうだなぁ)

 

 湊は何気無しに、そんなことを考えていた。

 

 

 そんなことを考えていたのがいけなかったのかそうでなかったのか………唐突に、世界が凍りついた。

 

 

 湊とハジメの眼前に光り輝く円盤と共に紋様のような物が現れる、香織や雫と言った周りの生徒達もその異変に気がつく。

 

 全員が金縛りにでもあったように光り輝く紋様を…魔法陣を注視する中、湊だけは別のことに注視していた。

 

 

(何だ、何かに見られてる気がする)

 

 

 視線を感じるのだ、ここに居ない誰かが自分へと向けている視線を嫌という程に感じてしまう。

 

 ただ見られているだけならここまで敏感にはならない、しかし視線の中に様々な感情が入り混じっていることを湊は半ば直感的に理解してしまう。

 

 故に感じてしまう、人ではない何かの視線を…明確なまでに。

 

 そしてその視線は、今なお光り輝き続ける魔法陣から発せられていた。

 

 

 魔法陣は更に輝きを増していき、ものの数秒もしない内に一気に教室全体をすっぽりと満たすほどの大きさへと拡大する…が、湊はそんなこと気にも止めずに思考を働かせ続けた。

 

 

(なんだこの感じ、前に何処かで似たようなことがあった気がする…何時だ? 何処でだ?)

 

 自分の足元にまで迫ってきた異常、その事実を認識したことでようやく硬直が解け、次々に悲鳴を上げる生徒達へ偶然生徒達と談笑していた教師の『畑山愛子』はとっさに生徒達に外に出るように指示しようとするが…全てが遅かった。

 

 

 光が爆ぜる、ハジメや香織を含む生徒達の視界いっぱいに純白の光が広がっていく。

 

 湊もその状況になってようやく現状を認識したのか、唐突に眼前に広がる純白に目を見開き──

 

 

(やっべ…考えすぎた)

 

 そう呑気な一言を内心で呟いた。

 

 

 

 

 

『いらっしゃい…私の愛しい人』

 

 不意に、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目を開いた時、湊はその光景に愕然とした。

 

 まず目に飛び込んだのは巨大な壁画だった、壁画には後光を背負った長い金髪を靡かせた中性的な顔をした人物が薄っすらと微笑みを浮かべている様子が描かれている。

 

 背景には山や湖や草原と言った自然的なモノが描かれており、それ等全てを包み込むかの様に両手に広げている…まるでそれを抱きしめるかのように。

 

 綺麗な壁画なのだろう、素晴らしい壁画なのだろう…しかし湊はその壁画を認識した瞬間、目の前で壁画を微塵も残さず壊してやりたい気分になった。

 

 そんな気持ちを抑える様に周囲を見渡してみれば、どうにも自分達が大きな広間にいることが分かった。

 

 素材は恐らく大理石、美しい光沢を放つ白い石造りの建物で彫刻を掘られた巨大な柱に支えられている、上を見上げてみればどうやら天井はドーム上になっているらしい。

 

 湊及びその隣方向に居たハジメはその最奥に位置する台座の様な場所の上にいるらしかった、見渡す限り他の場所よりも位置が大分位置が高いと湊は感じる。

 

 周囲には湊やハジメと同じく呆然と周囲を見渡しているクラスメイト+教師が居た、あの光に全員巻き込まれたらしい。

 

 湊はちらりとハジメへと視線を向ける、そこにはぺたんと座り込んで呆然としている香織の姿にホッと胸を撫で下ろすハジメの姿があった、どうやら香織が無事であったことに安堵しているらしい。

 

 

 そんな友人の姿に笑みを浮かべ、しかし直ぐ様周辺に存在する人間への警戒に意識を切り替えた。

 

 そう、この場に居るのは湊やハジメ達だけではない、最低でも三十人そこらの人間が湊達の乗っている台座の前で両手を胸の前で組んで祈るように跪いていた。

 

 跪いている人間達は皆白い法衣の様な物を身に纏い、その傍らには錫杖の様な物が置かれている。

 

 その内の一人、法衣を纏った集団の中でも明らかに豪奢な装束を纏った老人が前に進み出てきた。

 

 しかし、老人と表現するには些か覇気が強すぎる、顔に刻まれた皺や老熟した芽が無ければきっと五十代と言われても湊は信じていただろう。

 

 そんな男は手に持った錫杖の様な物をジャラジャラと鳴らしながらその外見に良く似合う深みのある落ち着いた声で湊達へと話しかけた。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様方、歓迎致しますぞ」

 

「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いております『イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ」

 

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は好々爺然とした微笑みを湊達へと向けた。

 

 

 そして、そんな微笑みを向けられた湊は、直感的に悟った。

 

 

 あ、こいつすぐに殺しとかないとヤバい類のやつだ…と。

 

 

 

 

 





 目標は8000文字だけど、流石に一番最初のここじゃ書けなかったぜ。

 というか、短編って何話までが短編?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。