タイトルとあらすじを変え、短編から連載に変えました…それはそれとして旧題は残しといた方が良いんですかねこれ?
戦争参加を決意(半ば強制)したからには戦うす術を学ばなければならない…幾ら規格外の力を持っていようがその中身は平和主義にどっぷりと浸かりきった一般高校生、いきなり魔物やら魔人やらと戦えと言われても無理があるのだ。
しかしまぁ、そこら辺の事情は予想済みであったらしく、イシュタル曰く聖教教会本山がある『神山』の麓にある『ハイリヒ王国』で自分達の受け入れ態勢を整えているらしい。
王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神…創世神エヒトの眷属云々の時点で既に湊は話を聞いていなかった、だって興味が湧かないのだもの。
逆に考えてみてほしい、一体何処に聞きたくもない情報を延々と話された挙げ句、どこどう見ても怪しさ満点の老人の恍惚とした表情を見ようと思える人間が居るというのか…少なくとも湊は見たくない側の人間だ。
そうこうしている内に湊達は聖教教会の正面門の前にやってきていた、ここから下山しハイリヒ王国へと行くらしい。
教会はこの『神山』の頂上にあるらしく、凱旋門もかくと言わんばかりの荘厳な門を潜った先には雲海が広がっていた。
高山特有の息苦しさが無かったことも相まって生徒達はこの教会が高山にあることには気がついていなかった、恐らく魔法辺りで生活環境を整えているのだろう。
因みに、湊はちょくちょく父親に富士山とかエベレストに強制的に連れて行かれていたので気づかなかった、だってもう慣れちゃったんだもの。
太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色を見て、湊は懐かしいなぁと登山に無理矢理連れて行かれた日々を思い出すのと共に、ここに
その後は、適当に魔法っぽいのを使って下に降りて、その際に王国の『王都』を目にしてはしゃいでいる生徒達を横目に、湊は素晴らしい演出だと皮肉げに言うハジメに視線を向けた。
「…らしくないな、お前がそんなこと言うなんて」
「うん、分かってる…けど、言いたくならない?」
互いに横目で視線を向け合い、クスリと笑った。
湊もなんとなしで分かっているのだ、ハジメが何を言いたいのかを。
何せこの雲の上から下へと降りていくというこの光景そのものが『神の使徒』という構図そのものなのである。
湊達だけのことではない、聖教信者達が教会関係者を神聖視してしまうのも無理はないだろう。
ハジメと湊ははなんとなしに歴史の授業等で聞かされた戦前の日本を思い出した、政治と宗教が密接に混じり合い結びついていた時代のことだ。
それが後々になって様々な悲劇と火種をもたらした…しかし、きっとこの世界のソレはもっと歪なものなのかもしれないとハジメは感じる。
何せ、この世界には異世界に干渉できるほどの力を持った超常の存在が実在していて、それは文字通り『神の意思』というやつを中心に世界は回っているのだから。
自分達クラスメイト達の元の世界への帰還、その可能性と同じ様に世界の命運も神の気紛れ次第なのだ。
徐々に鮮明になってくる王都を見下ろしながらハジメは言い知れぬ不安を必死に押し殺し、湊はイシュタルへの殺意を波風立たぬ心境にまで抑え込んだ。
何方も自身の感情を抑え込み、出来ることをやると心に決めている、至った感情は半ば真逆でも結論はどちらも同じ。
即ち、やれることをやる…である。
王城へ着いた後、湊達一行は真っ直ぐに玉座の間に案内された。
教会に負けない程に煌びやか内装の廊下を歩く中、湊はまたもや思考の内に耽っていた。
それは即ち、どうやって光輝を説得するかに限る。
しかし考えているところ悪いがぶっちゃけて言ってしまおう、無理である。
雫や香織と言った面々ならば光輝も耳を貸すとは思うが、何の接点もない湊が相手であった場合、あの大抵のことを自分の都合の良い方向に解釈するアホンダラはまず湊の話を聞かない、よしんば聞いたとしてもまず受け入れない。
大丈夫! 俺達が力を合わせれば出来ないことなんてないさ! なんてアレなことを決め顔で平気で言いかねないのが天之河光輝という人間なのだ、説得とかそもそもからして無理である。
なんだったらこの男、下手したら苦しんでいる人達を見捨てるっていうのか!? この外道が!! とかなんとか言って周りを味方につけてパーティーから追い出すくらいのことならしてきそうなのがまた面倒なところなのだ。
そして、そんなことは湊とて分かっている、分かってはいるがそれでも何とかして説得…は無理にしても認識のすり合わせだけはしておくべきだと考えていた。
何せ、下手をすれば光輝はこの戦争において『人を殺す』どころか『人と戦う』という認識にすら至っていない可能性があるのだから。
ふと…大声が聞こえた、勇者一行を来たことを告げる大声、その声が響いた方向へと目を向けると、そこには扉があった…どうやら考え込んでいる内に目的地に着いてしまっていたらしい。
開け放たれた扉をさも当然の様に悠々とイシュタルが通っていき、それを追うようにして湊達も扉を潜っていく。
そうして扉を潜った先、そこには真っ直ぐに伸びたレッドカーペットとその奥の中央に位置する場所にある豪奢な椅子…即ち玉座があった。
玉座の前では覇気と威厳を持った初老の男が立ち上がって待っており、真っ直ぐとこちらを見つめていた。
(…? 王様なのに、立って待ってる?)
湊はその風貌と覇気から初老の男がこの王国の王であると即座に見抜くが、それと同時に疑問を覚えた…何故王が立ち上がった状態で待っているんだ? と。
隣に王妃らしき女性と王子と王女らしき少年少女が控えていたが、王が立って待っていることに関する疑問の方が重要だったのか、それとも湊的にどうでも良かったのか、王妃と王女&王子はものの見事にスルーされていた。
ある程度前へと進み、玉座の手前に着くとイシュタルは生徒達をそこへ止め、自らは国王の隣に並んだ。
そこで、イシュタルは徐ろに手を差し出し、国王はその手に軽く触れない程度のキスをした、湊的には気持ち悪いが、一連の流れからしてイシュタルの方が立場が上らしい。
(…なるほど、国を動かすのも神様ってわけだ)
その事実に気づいたのはハジメも同じだったのか、ハジメは酷くゲンナリとした顔をしていたのが目に映った。
大方、自分と同じように国を動かすのが神であるという事実に内心で溜息でも吐いているのだろうと湊は予想する、実際大当たりなわけではあるが。
その後は単なる自己紹介だ、国王はエリヒドで王妃はルルアリア、王女はリリアーナで王子はランデル、フルネームで覚えなかったのは覚えるのが面倒だったというよりも覚えたところで意味が無いからという側面が強いのだが、そこは置いておこう。
その後は香織がランデルにチラチラ見られてたり、晩餐会が開かれて料理を食べたり、ランデルが香織に懸命に話しかけていたり等の大体はどうでもいいことで終わった。
晩餐が終わって解散した後は其々の個室に案内された、天蓋付きベットに唖然としていたのはきっと湊やハジメだけではないはずだ、きっとそうだ間違いない。
そうこうしている内に夜も更けて睡魔に襲われ始める、湊は月をチラリと横目で見た後、ベットに飛び込んでそのまま夢の世界に旅立つのであった。
「……寝れない」
ふと、目が覚めた。
身体をベットから起こし、窓の外に視線を向ける。
外は暗闇、月が夜闇を明るく照らしているが、それでも暗いことには変わりない。
「…………」
再びベットへと倒れ込んでふと考える、これから一体どうしようかな? と。
とりあえず、戦わなければいけないことは確かだろう、最早クラス全員が光輝のカリスマに飲まれてしまっているし、イシュタル達自身もそれ以外を認めないだろう。
「本当に、余計なことをしてくれたよな」
口から悪態が飛び出る、当然あの馬鹿勇者(笑)に対してだ。
皆で戦おうだとか世界を救おうだとか簡単に言ってくれるけど、あの馬鹿はそれがどれだけ難しいことなのかちゃんと分かっているのだろうか?
特に戦うというのが難しいのだ、道場で剣術を習っていた俺や雫さん、そして光輝ならばまだしも、他の奴等は揉め事に対して何の耐性も無い。
いやまぁ、坂上は行けそうな気がするし香織さんは色んな意味でぶっ飛んでるから大丈夫だと思うけど…それでもクラスメイトの大半がそうというわけではない。
檜山なんかが良い例だろう、アイツはハジメに悪口やら何やらを言って散々に馬鹿にしているが、あれはそもそも絶対に反撃されないという確信を持っているから出来ることなのだ。
反撃されて痛手を負うと分かっていればそもそもあんなことしないし、よしんば分かっていたとしても別の方法を取るだろう、流石にアイツもそこまでの馬鹿ではないだろうから。
それと同じだ、攻撃するだけなら大丈夫なのだ、余程何かを傷つけることを嫌がる人間でもない限り、傷つけることくらいなら誰だって出来る。
だけど、反撃されるとなると話が違う、野生で生きてきた犬にさえ怯えるような平和な世界を生きてきたクラスメイト達が、獰猛で飢えた殺意全開の獣相手にまともでいられるだろうか?
いられるわけがない、絶対に竦むし腰も引ける、立っていられただけ満足な方なのではないだろうか?
それだけのことなのだ、それだけ危険なものなのだ、命の取り合いというのは…当然、相手が人であれば尚の事。
それに対する恐怖を、絶対に持っていなければならないであろう危機感をあの馬鹿は取っ払ってくれやがったわけだ…本当に碌なことをしない、雫さんの道場に通っといてなんでそういうことが分からないかねアイツ。
いやまぁね、流石に明日に行われるであろう訓練でそこら辺に対する対策はしてくれるんだろうけど、それでも心配だ。
俺は叶うことなら皆で生きて帰りたい、光輝みたいなこと言うのもなんだけど、自分だけとか親しい奴等だけとかじゃなくて皆で生きて帰りたい、例え嫌な奴等でも出来ることならば生きて帰ってほしい。
だって、家族が帰ってこないっていうのは、悲しいことだから。
「…寝ますか」
瞳を閉じる…結局何を考えようとその時にならなきゃ分からない、明日の訓練の内容に期待するしかないのだ。
今の俺には何も出来ない、もしかしたら明日になっても何も出来ないかもしれない。
そうなった時、俺はどうするのか…それを今考えることにも、きっと意味は無い。
ただ、それでも想像せずにはいられないのだ、何も出来ない自分の姿を、何も出来ずに死んでいく自分の姿を。
頭をかち割られ、腸を垂れ流し、血を垂らし糞を垂れ流す自分の姿を、どうしても幻視せずにはいられないのだ。
そして、きっと俺はそれを消せないままに明日に望まなければならない…それがどうしようもなく、恐ろしかった。
その日の夜、俺は結局一睡も出来なかった。
翌日の朝、早速訓練と座学が始まった。
まず、集まった生徒達には銀色のプレートが配られた。
不思議そう顔をしながら配られたプレートを見つめる生徒達に、騎士団長であるメルド・ロギンスは説明を始めた。
「よしよし、全員に配り終わったな? このプレートはステータスプレートと呼ばれている物でな、文字通り自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる便利な物だ。最も信頼のある身分証明書でもあるから、これさえあれば迷子になっても平気だ、だから絶対に失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルド、彼は豪放磊落な性格で「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と他の騎士団員達にも普通に接するように忠告していた。
湊はそんなメルドの姿を何処か冷めた心地で見つめていた。
メルドの態度は気安く接しやすい、日本の一般的な学生という身分からして年上の人間に慇懃な態度を取られては居心地が悪くなってしまう為、何方かと言うと今の態度の方がやりやすいはずだ、それは湊としても同じだった。
しかし、そんな湊の心境とは裏腹に湊の瞳は何処までも冷めきっていた、まるでこれから養豚場に行く豚を見るような瞳でじっとメルドを見つめていた。
理由は分からない、分からないがなんとなくそういう目で見ておいた方が良いんだろうなぁと湊は漠然とした考えでひたすらメルドを豚肉になる豚肉を見るような瞳で見続けた*1。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう? そこに一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される仕組みになってる。後は〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とかは聞いてくれるなよ? そんなもん知りやしないからな、何せ神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする…のを他所に湊は渡された針と自分の手を交互に見つめ、何を思ったのか渡された針をポイッとそこらに投げ捨てた。
落ちた際に小さく金属音が鳴るが生徒達はメルドの話に集中しており誰もその音に気が付かなかった、強いて言うならば近くにいたハジメだけは湊の行動を目にしておりえっ、何やってんの? と疑問符を全開にしたような顔をしている。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことでな、まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に昔から──」
そうしてアーティファクトについて説明しているメルドの話をガン無視した湊は、徐ろに親指を口へと持っていき──
──ガリッ!
音が出るほど強く、歯を親指へと突き立てた。
流石に音が出てしまったからなのか、今度は近くにいた生徒達が湊の方へと視線を向ける、そこには親指から少なくない量の血が流れ落ちる湊の姿があった。
指から血を垂らし、それを無表情で見つめる湊を生徒達は何処か唖然とした心持ちで見つめている、しかし湊はそんな視線など気にも止めず、流れる血をそのままステータスプレートへと擦りつけた。
すると───
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対馬 湊 17歳 レベル1
天職:術師
筋力:120
体力:500
耐性:200
敏捷:150
魔力:10
魔防:70
技能:渇望の鼓動・鮮血・言語理解
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ゲームの画面にあるような数字の羅列がプレートに表情された、これが湊のステータスらしい。
まるでゲームのキャラにでもなったような気分になりながら湊はステータスプレートを眺める…そしてそんな湊を周囲の人間は未だに唖然と見つめ続けていた。
視線を感じ、周囲の状況に気づいた湊はこてんと首を傾け──
「見ないのか? ステータス」
一言そう生徒達に告げた。
その言葉を受け、生徒達は我に帰ったように指を針でちょんっと刺し、ぷくっと浮き上がった血をプレートへ擦りつけていく。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示している───」
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは───」
それらの言葉を流すように聞いた湊は、自身のプレートへと再び目を向ける。
天職『術師』…具体的に何をするものなんだろうか? 術師ってくらいだから回復と攻撃どっちもやる類の天職なんだろうか? それとも別に意味合いでもあるのだろうかと湊は頭を悩ませる。
(…『鮮血』ってなんだよ、なんだよ『渇望の鼓動』って…分かるのが言語理解しかない)
しかも術師なんて如何にも魔法とか使いそうな天職してる癖に魔力が10しかない、これはお先真っ暗案件なのでは? と湊は頭を痛くなったような気がした。
「後は……各ステータスは見たままだ、大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達なら──」
(へぇ、平均的な数値が10…ってことは魔力10ってのは案外普通なのか…良かった、それならまだなんとかなりそうだ)
自身のステータスを見ながら湊はほっと安堵の息を漏らす、もしも10が最低値であった場合、湊は天職『術師』としての能力を完全に捨てて近接一辺倒でやっていこうと考えていたからだ。
平均値ならやりよう次第で幾らでもやっていける、日々の鍛錬で伸びてくれるなら幾らでも練習して伸ばせばいいのだ、というか最悪伸びなくても近接攻撃の補助になりなんなりすればいい。
(さて…となると、問題は──)
どうやって技能の詳細を調べるか…といった所でメルドがやってきた、どうやらステータスの報告の順番が湊に回ってきたらしい。
…なのだが、湊は一向にステータスを見せようとせず何だったら何か用でも? と言いたげな疑問顔でメルドを見つめていた。
そりゃそうである、何せこの男はメルドが懇切丁寧に説明している横で指の皮を噛み切っていの一番にステータスを確かめたり、そもそも話を聞いていなかったりした男だ、報告云々の話なんて聞いている訳がないのである、これには流石の団長も戸惑い顔である。
だがしかし、それでも湊はプレートにステータスを表示したままであった為、メルドは湊のプレートを覗き込むようにして確認する。
因みにメルドはつい先程まで非常にホクホク笑顔であった、恐らく湊より前の生徒達のステータスが高かったのだろう、強力な戦友が出来たと喜んでいそうな顔であった。
その顔が…ぴしりと固まった。
湊とプレートを交互に見比べ、光に当てたりコンコンっと叩いてみたりと色々やった後に、ガシッと湊の肩を掴んで──
「湊…お前術師やめろ」
と真顔で言ってくるのを、湊は何いってんだこいつと非常に残念な生き物を見るような瞳で見ていた。
因みに、ハジメの天職は錬成師でステータスもオール10という平均中の平均だった。
後に、それを知った檜山達四人組がハジメを馬鹿にしていた際にそれを煩わしく思ったのか、湊によってうるさいの一言と共に放たれた蹴りによって、檜山は頭から壁にめり込むことになった、アホである。
ありふれ小説あるある、早くオルクスに行きたくて他のが雑になる。