早くオルクス書きたい、早く戦闘描写行きたい。
さてさて、湊が自分の天職ガン否定されてから二週間経った…いやまぁ、天職とステータスがあり得ないほど反比例しているから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
そんな湊だが、今現在はハジメ共に王立図書館にて巨大な図鑑を読み込んでいた。
その名も北大陸魔物大図鑑、なんの捻りもクソもない非常にシンプルな名前の非常に分厚いタイトル通りの図鑑である。
ステータスオール平均値なハジメはともかく、何故湊がそんな本をわざわざ読んでいるのか…それは湊のステータスが原因だった。
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対馬湊 17歳 男 レベル1
天職:術師
筋力:120
体力:500
耐性:200
敏捷:150
魔力:10
魔防:70
技能:渇望の鼓動・鮮血・言語理解
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分かるだろうか? そう、湊のステータスはここ二週間とみっちりと訓練したはずなのに、一切合切成長しなかったのだ。
ハジメでさえ少ないとはいえ上昇したというのに、湊のステータスはうんともすんとも言わなかったのである。
因みに光輝のステータスはオール100だったが、ここ二週間でオール200になった、倍になったのだ。
そういうわけで、湊はこれ以上の訓練を無駄と判断し魔物に関する知識を集めることにした…というわけである。
因みに、訓練に参加せずに知識を蓄えるという旨をメルドに伝えた際にメルドは許可したが光輝があれやこれやと文句をつけてきたが、そこら辺は模擬戦で黙らせた。
幾らステータスが高かろうが本人が弱けりゃ意味が無いとは湊の談である、ボコボコである。
「いいよなぁ、ハジメの技能は分かりやすくてさ、錬成なんて応用し放題の良い能力じゃないか」
徐ろに湊は口を開く、それはステータスで勝っているハジメへの羨望であった。
錬成、言ってしまえば鉱物の形を変化させ、取り付け、加工まで熟す能力だ。
一見シンプルで弱々しい能力だが、湊はその力が非常に羨ましく感じた。
何せ、自分の技能と違って使いやすく、応用性も成長性も群を抜いているからだ。
「そんなことないよ、出来ることは少ないし…」
「そんなわけないだろ、出来ることで言うならお前の能力は俺達の中で言うなら断トツなんだから」
これは湊の偽りの無い本心だ、出来ることが少ない? そんな訳がないのである。
ハジメは分かってないのだ、異世界の人間が錬成師なんていう天職を持つことの意味が、本人の性格も相まってそこら辺の知識に蓋がされてしまっている。
それは無意識の内なのか、それとも恐れ故なのか…恐らく前者であると湊は推測した。
それも時間が経てば開いていくのだろうが、それはそれとしてやっぱり使いやすくて便利なものだと湊は羨ましくハジメを見た。
と、ここで湊の技能の効果を見ていこう。
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鮮血
効果:自身の血液を操れるようになる、血液が増加する。
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渇望の鼓動
効果:求めるものに近づけば近づくほどにステータスが大幅に上昇。
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これである、これなのである。
一から説明していこう、まずは鮮血。
これはその名の通りに、湊自身の血液を操る能力だ、分かりやすくて言ってしまえば某呪術な漫画の血を操る呪術のそれに非常に近しい。
詠唱は無し、強いて言うなら使用の際に名前の紡ぐ必要はある、要するにハジメの錬成と同じである。
ただし、この鮮血には魔法陣*1が必要無い。
原理はどういうものなのかは不明だが、とにかく必要ない、名称を呟いてイメージするだけで普通に撃てる、当然適性*2も関係無し、直ぐ様撃てる。
…ただし、威力が出ない。
恐ろしい程に威力が出ない、水鉄砲くらいしか威力が出ない。
メルドに見せた際には肩を掴まれて「やっぱりお前術師やめろ」と非常に哀れなモノを見るような目で諭されたくらいである。
因みにそのメルド曰く、魔力が無いから威力が出ないのではないかと言われた際、湊は無言でプレートを叩きつけた。
続けて渇望の鼓動、これもまた湊の頭痛の種である。
効果は書いてある通りなのだが、そもそもその当の求めるものというのがまるで分からない。
メルドに「無茶苦茶腹減ってる時に飯に近づいたら発動するんじゃないか?」と言われた為、わざわざ二日間程食事を抜いた後に三日目の時に食事を取る前にプレートを確認してみれば、そこには全くと言っていいほど変化の無いステータスがあった、湊はプレートを廊下に叩きつけた。
その後も色々試した結果、成果は無し…湊はプレートを地面に叩きつけた後にゲシゲシと踏みまくった。
とまぁ、そういったこともあって湊は下手したらハジメ以上に役立たずの可能性があるのだ、何せ技能が意味不明で役に立たないわけなのだから。
だから羨ましく感じるのだ、ハジメの技能は後々必ず役に立つ類の力なのだから。
「そ、そうかな?」
「そうそう、絶対色々出来る、だってお前の力はそういうものだ」
何処か空元気な様子で言葉を発するハジメに湊は自信満々と言った風に言葉を投げかける。
それを受けたハジメは照れくさそうに笑いながら一言ありがとうと口にした、湊はそれに気にすんなと笑顔で答えた。
そして、それを影から見ていたメイドさんは至福の笑顔で鼻血を垂れ流していた、どうやら薔薇色の気配を感じ取ってしまったらしい…なお、ただの勘違いであるものとする。
ポタポタと流れる血が地面に落ちる、それを偶然通りすがった女性司書さんが今にも「お前を殺す」と言わんばかりの恐ろしい形相をしている…早く血を拭いて速やかに土下座するべきであろう。
そんなことも露知らず、湊とハジメはその後も談笑しながら図鑑を読み込み続け、暫く経った後にハジメは訓練へ向かい、湊は図書館を出て何処かへ歩き去っていった。
因みに、メイドさんはハジメと湊が居なくなったすぐ後に司書さんに瞬獄殺の刑に処された、南無。
所変わって訓練場、何人もの生徒が自主練やら談笑やらをしている中、何故か湊はそこにいた。
何故かである、湊自身何故ここにいるのか分かっていない、強いて言うなら何日か前に光輝に何故か勝負を挑まれ、それを受けたは受けたが何日間もバックレるということをしていた。
その為、今日も今日とてバックレようと思っていたところ、メルドがやってきて「ちょっと来い」と言われて…今に至る。
「………団長のせいやん」
ふと呟く、何故か似非関西弁になっているがそんなことは些細なことである。
ほいほいついていくんじゃなかったなぁと溜息を吐きつつ支給された西洋剣を腰にぶら下げ、手に斧槍を持って自主練でもしようかと構えて──
──マジ弱すぎぃ、やる気あんの〜?
ふと、声が聞こえた、不快で目障りな声…つい最近聞いていないような気さえした声だ。
視線を声のした方向へと向ける、そこは訓練施設から少し離れた場所だ、施設からは丁度死角になっている。
「…あ〜あ〜」
だから嫌だったんだと、呟くようにして息を吐き出した湊は…徐ろに斧槍を逆手に持ち替え、そのまま地面を思い切り踏みしめ──
──ゴウッ!!
投げつける。
風を引き裂くような音を鳴らしながら、投擲された斧槍は一切の減速を受けることなく突き進み、進路上に存在した壁すらも轟音と共に突き破っていく。
そして──
───ギャッ
何かの潰れるような悲鳴と共に重々しくも生々しい音が、湊の耳に届いた。
「………」
悲鳴の聞こえた地点まで、湊は無言で歩いていく。
周囲から視線を送られている気がするが、それらの全てを無視してズンズンと歩いていく。
施設の死角、その地点にまで行くと、そこには腹を抑えて苦しみ悶える生徒、檜山の姿とそれに狼狽える何時もの取り巻き達の姿…そしてボロボロになっている
「懲りないよな…お前等も」
そう一言、冷めた瞳で檜山達を見つめた湊は、視線をハシメへと向けて大丈夫かと手を差し出す。
ハジメも一言、大丈夫と口に出して湊の手を取り、そのままグイッと起き上がった。
その姿はボロボロとしか言いようがなく、所々に痣やら切り傷やらが見て取れる、大方稽古とか名目付けてリンチにしたんだろうと予想する。
ハジメは昔から人と争うのが苦手だった、敵意や悪意を向けることさえ苦手だった、だから何時もの折れるのはハジメの方で、我慢するのもハジメの方だ。
喧嘩するよりずっといい…そう思えてしまうのが南雲ハジメという人間なのだ。
だからこそ、こういう奴等がこいつなら絶対にやり返されないと調子に乗るのだ、人によってはヘタレだの優しいだの言う人もいたりする。
まぁ…その分──
「何やってるの!?」
こういう人が寄ってくるから捨てたものではないのだろうと、湊は薄く笑みを浮かべた。
声を上げ、走りながらやってきたのは血相を変えた香織だ、その視線は主にハジメに注がれている。
「ごめん香織さん、ハジメのこと頼んでいい? こいつらがやり過ぎちゃって」
そう言って親指立てて檜山達を指差す湊の言葉に、香織は檜山達には目もくれずにハジメに駆け寄って治癒魔法を掛け始めた。
「…これはどういう状況?」
そのすぐ後ろから遅れて何時もの三人が駆け寄ってくる、どうやら先程の轟音に反応してきたらしい。
香織のすぐ後にやってきた雫は、倒れ伏す檜山とボロボロのハジメに治癒魔法をかける香織、そして無傷で佇む湊と檜山の側で狼狽える三人を見て、一言状況説明を求めた。
その視線は、湊にだけ注がれていた…疑っているというわけではなく、まともに話を聞けそうなのが湊しかいないだろうという考えの元での質問だった。
「分かるでしょ雫さん、何時ものやつだよ、何時もの」
そう言って、湊は戯けたように笑った。
その一言で雫はある程度のことを察し、またかと手で顔を覆いながら溜息を吐いた。
「南雲くん大丈夫? もう痛くない? 無理とかしてない? 誤魔化したり我慢してたりしてない?」
香織は香織で執拗にハジメに傷の安否を聞き込んでいた、その様はさながら恋人を心配する少女そのものである。
そんな香織に苦笑いしながら大丈夫と答えるハジメに香織は本当に? と顔をずいっと近寄らせてじ〜とハジメの瞳を注視している、どうやら目を見て判断するつもりらしい。
「南雲君、何かあったら遠慮無く言ってちょうだい、そっちの方が香織も納得してくれるから」
そんな香織に雫は苦笑いしながらハジメにそう言い、ハジメもまた苦笑いしながら雫に礼を言った。
普通ならここで綺麗に終わるものだが、そこは勇者クオリティ、相も変わらず無意味に水を差しこむ。
「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練──」
「はいはい、そういうのはまた今度ね」
だがしかし、そこで湊が急速インターセプト、何時もの自分論を展開しようとする光輝の肩を叩き、後にしろとその脳天に軽いチョップを叩き込む。
頭に響く軽い衝撃、それにほんの少し呆然とした後、何をするんだと抗議の言葉を口にしようとした光輝を、湊は徐ろに放ったデコピンで黙らせた。
脳天の次は額の衝撃、しかも痛みで言うなら先程よりも上の衝撃に光輝は僅かにたたらを踏んだ。
そんな光輝に湊はひらひらと手を振って周囲の人間にほら行こうと一人訓練施設へと戻っていき、一行はそれに続く形で同じ様に施設へと戻っていった。
ただ一人、痛みに悶えながらも憎悪の表情で湊を睨みつける檜山とその取り巻き達を、その場に置いて。
その後、訓練を終えて何時もならば夕食時までは自由時間となるはずなのだが、今回はメルドから伝えることがあると引き止められる。
そしてメルドは、野太い声でそれを告げた。
明日から実践訓練の一環として、【オルクス大迷宮】へ行くと。
それを聞いてざわめく生徒達の中で、湊は一人拳を握りしめた。
ここがターニングポイント、そこで経験する何かによって自分達の行き着く先が決まる…なんとなく、湊はそう感じた。
そして、その考えは至極正しいものであったと、後の湊は悟る。
湊が魔獣に出会うまで…あと数日。
詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなるし、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく、ついでに効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなって魔法陣も大きくなる。
RPGとかでよくある火球みたいなのを直進で放つだけでも、一般に直径十センチほどの魔法陣が必要になる。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(体内から魔力を吸い取る)の式が必要で、後は誘導性や持続時間等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなる…要するに足し算。
勇者の発言は基本的に余計なものが多い、ドラクエの勇者を見習ってどうぞ