心灯   作:無者

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初のオリジナル小説です。
読みにくい箇所や分かりにくい部分等、未熟な部分はありますが楽しんで頂けると幸いです。
それでは短い文章ですがどうぞごゆっくりお楽しみください。


始まり

 蝉の声が微かに鼓膜を震わせる。

 空は晴れ渡り、憎いくらいに陽射しが強い。ジリジリと、縁側で横たわっていた僕の体を静かに灼いていった。

 そんな猛暑の中、僕は酷く喉が渇き体を起こした。

「おお、起きたか。人志。」

 声が聞こえた方を向くと長い白髪をオールバックにし、紺色の作務衣を着た僕の祖父、畠 仁弥が茶の間でお茶を啜り、みかんを口に運びながらテレビを見ていた。ちゃぶ台の上に無造作に置いてあるみかんの皮がまるで花の様に見える。

 プラスチック製の麦茶ポットが一つとコップが三つほど、籠が真ん中に置いてあり、みかんとお菓子が幾つか入っていた。

「別に寝てない。ただ横たわってただけだよ。」

 僕は立ち上がり、茶の間に置いてあるちゃぶ台の下に向かう。

「食うか?美味えぞ!」

 爺ちゃんは笑いながら籠からみかんを取り出した。

「いらない。」

 僕はそう言って麦茶をコップに注ぐ。適度に冷えた麦茶を口に含みゆっくりと飲み込む。すると体を突き抜けて行く様な心地よい清涼感に包まれていった。

「ふう。」

 コップをコトリ、と音を立てながら置いた。

 ふとテレビに目を向ける。内容は地方のグルメを紹介するバラエティ番組のようだ。

「かぁーっ!こう言うオシャレな食い物も一回食ってみてぇな。この歳になっても中々行く機会がねぇからな!」

 爺ちゃんは口元の涎をぬぐいながら、ギラギラとした視線をテレビに向けていた。まだまだ若々若々しく見え、傘寿を過ぎた老人である事を忘れてしまいそうになる。

「もう、ご飯ならさっき食べたばかりなのにまたそんなこと言って……健康診断引っかかっても知りませんよ。」

 僕の祖母、畠 恒未が台所から出てきた。白い割烹着に身を包み、白髪を肩口くらいで切り揃えている。今だに若々しい姿で二十歳後半と言われても分からない見た目だ。

 お盆を両手で持ち、お盆の上には深緑色の急須がぼんやりと湯気を立て、焦茶色の湯呑みが乗っている。緑茶のいい香りが鼻をくすぐる。

「引っかかるわけあるかよ。俺はまだまだ現役だからな!」

 そう言って大笑いしてみかんを口に放り込んだ。婆ちゃんは頭が痛そうにこめかみに手を当てる。

 そうして意味のない時間を過ごしていると家のチャイムが鳴る。台所で魚の調理をしていた婆ちゃんが「はい。今出ますよ~。」と言ってバタバタと足音を立てて向かった。

「あら、藍ちゃんじゃない!いらっしゃい。」

 婆ちゃんが藍ちゃんと言った。それは、僕の知り合いである夜星 藍の事だろう。

 彼女と知り合ったのは電車の中でだった。痴漢されていた彼女を助けて、その時にお礼がしたいからと連絡先を交換する事になり彼女との縁が生まれた。

「人志ちゃん。藍ちゃん来たよ!今日遊びに行くんじゃなかった?」

 そういえばそんな約束をしたかも知れない。

 僕はのそのそと立ち上がった。

「わかった。すぐ行くよ。」

 自分の部屋に向かい、すぐに財布と携帯をポケットに突っ込みとバッグを肩に掛けて玄関へ急いだ。

「あ、人志くん。こんにちは。」

 玄関には、夜空の様な黒い髪をポニーテールに結んだ少女が立っていた。

 白いワイシャツに深海を思わせる様な深い青色のネクタイとキャミソールワンピースと言ったシンプルな服に身を包んでいる。

 こちらを見つめる双眸はまるでサファイアの様で、けれどもサファイアよりも輝いて見える。

「おはよう、夜星。」

 そう言った瞬間、少女の頬がフグの様に膨らんんだ。

「藍で良いって言ってるじゃん!もう、何回言っても直してくれないじゃん。」

 頭の上にぷんぷん!と擬音が見える気がする。そんなあざとい姿も彼女がやれば不思議と様になっている。

「悪かったな。それじゃ、行こうか。」

 僕は靴を履いて玄関から出た。

 

「準備は整っているか?」

 とある廃ビルの一室で二人の男が密談をしていた。

 黒いスーツの男は部下であるピンクのポロシャツと短パンを着た金髪の男にそう聞いた。

「おう。武器も海外の伝手から入手した。後はあの方の命令通り騒ぎを起こすだけだぜ。」

 黒いスーツの男はそれを聞いて満足そうな笑みを浮かべる。

「さあ開演だ。偽りの平和を崩す為の序曲を奏でよう。」

 舞台役者の様に仰々しく両手をバッと広げた。




ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
気に入って頂けたならぜひ次の話も読んで見て下さい。
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