『ラプタ』(仮)   作:ポポアップル

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注意事項
i. 本作品は不定期に投稿されるとともに、改稿も行われます。ですので本作品に関しましては完成途上の「草稿」を見ている、という認識で読んでいただきますようお願いいたします。
 
ii. 本作品はゲーム"RimWorld"、同作品向けに有志の方々が作成されているMOD、そしてあたしほもづき氏とidatenzz氏原作の四天王シリーズの世界観を参考・前提にして執筆されています。ですので上述の作品についてある程度の予備知識が必要である場合があります。


④〜⑤

廃棄物集積所へ向かう廊下の中、キトリとクミは、一人の部下とすれ違う。

「キトリさん、クミさん。建物は制圧しました。」

ナユタは興奮を隠しきれぬ様子で二人に報告を行った。

短機関銃をもつ彼女の手が震え、顔は固く引き締まった表情をしながら紅潮していた。

「そう。それで、発着場と研究員の捕獲は?」

クミがそう問いただすと、興奮の熱とともにナユタの顔の赤みが引いていく。

「あ、そ、それは…。さ、最善を尽くし…。」

だがナユタは言葉を続けられなかった。怯えるナユタをクミはじっと見ていた。その細目から放たれる視線は、獲物の動きを封じるように、ナユタに作用した。

「しっかり伝えな。」

キトリはナユタにそう言って2人から離れ、廊下の突き当たりを曲がりエレベーターを呼んだ。

エレベーターはゆっくりとやってくる。その間、突き当たりを挟んで、ナユタの震える声が耳に、2人の影が目に入った。

ナユタが一通り、詰まりながら話し終えると、クミが「折檻」と一言、ナユタに静かに言い放った。

そして少しして鈍い音と何かが飛び散る音が突き当たりの向こう側から響いてきたが、キトリは極力、それを気に留めぬようにしながらエレベーターが来るのを待った。

カゴが来た頃にはそういった鈍い音が三度ほど響いていた。

「クミ、来たよ。」

そういうと、クミは突き当たりの向こうから姿を現した。拳には血が滴っていた。

「船の行き先を追っておけ。」

そう部下に言い捨てるとクミはキトリの待つカゴの中へと入っていった。

 

「おえ…ひどい匂いだな。」

ゴミの成れの果てが集まる場所がどのような匂いかは、ある程度覚悟していたものの、やはり堪え難い匂いが立ちこめていた。

「キトリ。」

声のする方をキトリが振り返るとそこにはドロドロに溶けたラックルの顔のようなものが目の前にあった。キトリは思わず後ずさりした。…が目が慣れてくるとその生首は恍惚とした表情をしたクミが掴んでいたのだった。

「ふ…ふふ。」

満足したのかクミはその腐った生首を捨てて引き続きごみの山を漁り始めた。べしゃりと、耳を突き抜けて、キトリの胸に不快な湿った衣がまとわりつくような音がこだました。クミは時々、こうしてぴんと張った綱がぐにゃりと弛むように笑うときがある。ラックルを撃ち殺したり、屠殺するとき、不祥事を起こした同胞のハンターを処刑したり、「影送り」にするとき、クミの口元が少しもぞもぞして、そして「弛む」。

昔のクミならそういう時に涙がこぼれていたかもしれないが、今のクミはその代わりにそういう、得体のしれない不気味な表情をするようになった。

キトリは、そういうクミの新たな一面とそれの示唆するところを脳裏から振り払おうとした。ゴミと「実験体」の成れの果ての山の表面をゆっくりと、丹念に見て回った。

以前からこの施設がラックルの人工培養の実現に向けた研究を行っていることは知っていたが、その過程や実態についてはほとんどわからなかった。だがこの「廃棄物集積所」にあるラックルの死骸や、死骸とさえ言えないタンパク質の「塊」の数々から、この施設が湯水の如くラックルの命を消費していたことが容易に想像できた。その中には鱗のかけらやラックルの牙もあった。ラックルにまつわるものを見るたびに、キトリが思い出すのは幼い頃の思い出とラックルの見せる豊かな表情…だった。

だが今はどうだろうか。そういったものは、ここの「廃棄物」同様、悪臭とともに朽ち果てたのかもしれない。今はもう、クミのあの「表情」と、先ほど見たラックルの腐乱した生首の記憶が脳裏を濃い霧のように漂うだけであった。

「あいつらに船を追わせる代わりに、この掃きだめの探索をさせればよかったかな。」

キトリがライトで足元を照らしながらそうクミに、虚しさを打ち消すように思わず悪態をついた。

「いや…あの馬鹿どもには頭を使わせる仕事をさせておきたい。戦いが始まって間もない、今のうちに。」

その言葉を聞いてキトリは歩みを止めた。

「へぇ、いつの間にそんな後輩思いになったのさ、クミ。」

「今のうちに恩を売っとけば追々倍にして返してくれるさ、特にあの小僧はね。」

キトリは笑おうとした…。が、その言葉がどうにも冗談に取れないそれに思えて仕方なく、代わりに体に冷たいものがゆっくりと程走り、広がってゆくのを感じた。

「なあ、クミ…それって…」

言葉を紡ごうとしたその時、クミは腕を横に出して、「待った」の合図をした。何事かとキトリが警戒と疑念を入り混ぜながらクミの視線をたどると、そこには幼い赤髪のラックルがいた。




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