i. 本作品は不定期に投稿されるとともに、改稿も行われます。ですので本作品に関しましては完成途上の「草稿」を見ている、という認識で読んでいただきますようお願いいたします。
ii. 本作品はゲーム"RimWorld"、同作品向けに有志の方々が作成されているMOD、そしてあたしほもづき氏とidatenzz氏原作の四天王シリーズの世界観を参考・前提にして執筆されています。ですので上述の作品についてある程度の予備知識が必要である場合があります。
①〜②
①グライア大佐
キトリたちをはじめ、ハンター勢力が反旗を翻したその日の夜、東ラプタ最大の街にして、「ラプタ伯」を頂点とするラプタ統治機構の本拠地、「ポート・ラプタ」には多数の役人や、月面帝国使節のラビ人が姿を現した。南バァセン洋に臨むこの街は「ヒト」が、遥か遠い地球から初めてラプタに上陸した際に築かれた。それ以来この地は、名前の通り惑星ラプタ唯一の宇宙港として、また東ラプタの象徴として栄えてきた。
ラプタ軍大佐のグライアが、北方のセディオアンでの遠征作戦の視察から帰還し、副官のジェイと共に保安本部に姿を現したのは日を跨いで明け方に至る頃であった。元々、密猟者に対する要塞として作られたこの建物は、眼下にポート・ラプタと南バァセンの海を望む、岬の上に位置する。岬の頂と海に面する港町は、「とぐろ坂」と呼ばれるS字に複数回湾曲した坂道で結ばれている。坂道は6回、湾曲するが、それぞれの湾曲する地点には平地が広がり、そこには各々が独特の個性を持つ街が広がっている。
それぞれの平地には下から順に、庶民向けの品物の並ぶ市場、歓楽街、ラプタ唯一の超長距離航海船発着場を含む宇宙港、ラックル市場、ラプタ上流階級の住まう住宅街、そして官庁街が位置する。それらを越えてようやく人々はラプタ統治機構保安課総長、通称「ラプタ伯」の根城にたどり着くのだ。宇宙港に降り立ったグライアたちは馬にまたがり、その上のラックル市場に足を踏み入れた。普段ならラビ人も含めた多くのラックル商で賑わうはずであったが、昨日の事件の影響で早くも値段が高騰したラックル市場は閑散としていた。おそらく人々はここより上の官庁街か、もしくは保安本部にいるのだろう。そんな中で一人の馬にまたがるラビ人が首輪でつないだ二匹の上等なラックルを連れて宇宙港へ行こうとしていた。まだ、保安本部へむかう刻限までは余裕がある。
「お宅は景気がいいみたいだな。」
そう、グライアがラビ人に尋ねると彼女は首を横に振った。
「いいや、これは献上用にラプタ伯より預かりしものですよ。マクシミリアン様へのね。」
そう言う彼女の胸元には、ジャックラビット家の紋章をあしらったバッジがつけられていた。
「ああ、これは失礼しました。マクシミリアン様の使者でありましたか。」
そう言って頭を下げ、グライアは市場を一瞥していった。
「それにしても…、ラックル市場がこうも閑散としているとは、珍しいものだ。」
「物淋しい思いがします。」
ジェイがそれに同調するように付け加えた。するとラビ人の使者は笑った。
「いえ、毎朝ここに訪れるものからすれば、静寂な朝はあらゆる宝に勝ります。」
それを聞いた二人が笑うと、大きな音に反応したのか、俄かにラックルが尾の先端を震わせて音を鳴らしながら暴れだした。しかしラビ人が二人に向けて遠隔装置で隷属端末から電流を流すと、二匹はたちまちぴたりと静かになった。再び市場を静寂が支配した。
「…この静かさはいつまで続くのでしょうね。」
ラビ人がつぶやいたその声が静かに響く。ジェイは答えなきその問いの投げかけに、一瞬硬直した。だが間髪を入れずにグライアは言葉を紡いだ。
「我々、ラプタ統治機構が一刻も早く事態を収束させるとお約束します。その際はこの市場に再び活気が戻ることでしょう。」
ラビ人は、グライアの言葉に対して、最低限の礼辞で答えた。そしてうなだれるラックルを引きずりながらその場を後にしたのであった。グライアは再び馬を走らせた。蹄が朝日に照らされた市場の石畳を激しく響かせた。
②「森」
ぴちゃり、と額に落ちた水滴でキトリは目を覚ました。ぼんやりとかすむ視界は靄が晴れるようにゆっくりと、開けていった。それとともに、頭もはっきりとしてきたのだった。襲撃、セラ博士の死、そして…赤い髪のラックル…。そこまで思い出した瞬間、ふと右手を見た…。だがそこには牙によって穿かれたなら、あってしかるべき傷はおろか、その跡さえなかった。キトリは思わず立ち上がった。すると自分のいる場所も、奇妙であることに気づいた。天を覆い隠すほどに、木々が身を寄せ合うように生え、木漏れ日のわずかな光とともにしとしとと小雨が降り注いでいた。頭がぐらりと揺れる、なぜ自分はここにいるのか、なぜ…無数の疑問が頭の中を圧倒し始める、その時、木の陰からわん、と、犬の吠える声が響きキトリは我に返った。そこには小ぶりな灰色の犬がいた。一人と一匹が目を合わせると、犬はしっぽをふりながらキトリに近づき、めちゃくちゃに鼻をこすりつけて頬をべろべろと舐め始めた。そうだ、こいつは…、
「ラジ…なのか、おまえは…?」
すると遠くから、葉擦れの音ががさりと聞こえた。その音に吸い込まれるようにその犬は行ってしまった。
「おい、待て…」
そう言って追いかけようとすると、キトリはべたんと、派手に木の根っこに足を引っかけて転んだ。
「痛…なにやってんだか。」
そう独り言ちて自分の脚を見ると…、自分の脚は随分と縮んでいた。というよりこれはこどものそれだ。一体…。
「キトリ!」
驚いて振り返ると、そこにはさきほどの犬と、幼い少女がいた。白い髪にこげ茶の瞳ーそうだ、彼女は…。
「ク…クミ?」
「…?そうだよ。どうしたの、顔が真っ青!」
「どうして…。」
「キトリが『また』迷ったんじゃないかと思って探しに来たの!ラジを連れてね!」
その声に反応するように、ラジはわん、と吠えた。
「じゃ、じゃあここは…『灰雨林』なのか?」
「灰雨林」という言葉にクミは首を傾けた。
「はいうりん?なにそれ?どうしちゃったの、キトリ!ほら、帰ろ。日がくれちゃうよ。」
ああー、頭の中に疑問は多く残されたままだった。だが、なぜかこれから起こることは、何となくわかっていた。
感想・指摘・質問などフィードバックは大歓迎です!
誤字・脱字のような文体に関する指摘から内容に関する質問まで、ネタバレのような作品進行上の不都合がない限り、積極的に対応いたします。