緋弾のアリア 爆弾撃ち抜く狙撃手   作:見知らぬ人だぜ

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第01話 全てはこれが始まり

 武偵高に入学してから半年後の10月某日。つまり高1の俺は今、ビルの屋上で狙撃銃のスコープを覗いていた。

 スコープの中にあるのはビルの壁面に設置された簡素な爆弾……爆破方式は衝撃センサー&ジャイロセンサー&GPS……衝撃・ジャイロ・GPSの3点セット……こんな迷惑なお得セットは要らない。

 なにより嫌味なのは配線が裏に隠されている点だ……これでは武偵高の諜報科(レザド)の爆弾処理班どころか警察と陸自の爆弾処理班すら動けない。光センサーの有無は不明だが、箱に詰まっていない形の時点でそれは無いからどうでも良い。

 そして、なにより一番恐ろしいのはそんな物が街全体に設置されている点だ。数にしておよそ100以上……犯人からの要求などは来ていないらしい……。何がしたいのだ爆弾魔の野郎……

 そんな物を俺達(・)は処理しなければならない……今回の任務(クエスト)の担当は狙撃科(スナイプ)のナンバー1と2だ。つまり、ナンバー1の絶対半径(キリングレンジ)2051メートルの狙撃姫『レキ』と絶対半径2019メートルの俺『草薙 京介』だ。

 レキが使用するライフルは『ドラグノフ狙撃銃(SVD)』の狙撃銃。対して俺は対物狙撃銃『PGM ヘカートⅡ』だ。

 

「よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 翡翠色の髪に琥珀色の瞳……まぁ、良いや。今は任務に集中しよう……。

 

「今回の任務は何でか分からんが諜報科及び通信科のバックアップが使えないらしい……おそらくはECMでも使われてるのだろう」

「分かりました」

「で、今回の任務「あなたに任せます」……了解。

 んじゃ、説明するぞ。今回の爆弾の爆破方式は衝撃・ジャイロ・GPSと思われる。しかもご丁寧に配線は裏にあるのか見えないため諜報科の爆弾処理班は動けない。

 そのため、今回は狙撃によるセンサー類及びGPSの破壊による爆弾の無効化を行う。目標との距離は1826……街に設置された爆弾は148……恐らく長期戦になる……ここまでは良いか?」

 

 レキはコクリと頷く。

 

「じゃ、手順の説明に入る。

 まず初めに衝撃センサーの無効化を行う。多少の懸念が残るがセンサーそのまま撃ち抜く……これは威力のデカい俺が担当。センサー丸々撃ち抜く。

 その次……GPSなんだが次と言うより俺が撃った直後若しくはほぼ同時に頼む」

「了解」

「最後に……これも直後だがジャイロセンサーを撃ち抜く……多分俺が担当だな。

 処分手順は以上だが質問は?」

「特に無いです」

 

 この任務、報酬は良いんだけど難易度高いんだよな……なんでこんなの受けたかなぁ……まぁ、それはともかく。

 今回使用する弾は1爆弾につき3の148……444発。狙った?これ。今回の任務が国からの奴だから弾丸費用およびその他諸経費は国負担だから良いけどさ、もし普通の任務なら報酬が弾丸費用で吹っ飛ぶわ。

 

「さて、始めますか」

「分かりました」

 

 俺とレキはお互いの得物の二脚(バイポッド)を立てて伏射体勢を取り、1つ目の爆弾を照準する。

 

「私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。ただ――」

 

 レキの自己暗示ともとれる詠唱が聞こえる。

 息を吸って吐いて吸って……止める。

 

「……ッ!」

「――目標に向かって飛ぶだけ」

 

 俺が引き金を引いた瞬間、レキも引き金を絞った。

 俺は即座にボルトハンドルを引いて空薬莢を排出し次弾装填。すぐにジャイロセンサーを照準し狙撃した。

 俺の放った2発とレキの放った1発は見事照準した部分に直撃し爆発機能を無効化された。当たり前だ、絶対半径は狙って外さない距離を示しているのだから。

 こんなのをあと147回もやるのかよ……スナイパーは単調な作業が多いって聞いては居たが今回単調過ぎるだろ。

 俺はまたボルトハンドルを引いて次の目標を照準した。

 

※─※─※

 

 で、午前午後含め100ちょいの爆弾を処理した俺とレキは夕食を食べていた。今は午後6時過ぎた辺りで周辺は暗くなってきている。

 夕食食べた後どうするかはまだ決めていない。

 

「レキ」

「なんですか?」

 

 余談ではあるが俺とレキはそこそこ話す。何でかは分からないがそこそこ話し仲は良い。まぁ、話す内容は……狙撃に関することばかりだが。

 

「夜はどうする?夜間狙撃用スコープはもって来て居るからやろうとすれば出来るが」

「別にどちらでも良いです。私も夜間狙撃用スコープは持ってきていますので」

 

 一番困る返答だな。

 さて……どうするかなぁ……早く終わらせたい所ではあるんだが……まだ何かあるような気がするんだよな……。少し聞いてみるか。

 

「レキ。今回の爆弾処理で思った事は無いか?」

「1つ、思った事が……」

「何だ?」

「街に設置されている爆弾なんですが……あれだけでは爆発しませんよね。時限式でもない、完全なセンサー式でしたし」

 

 やっぱり感づいていたか……となると、何かしらあるんだろうか……

 ここで俺のスマホに電話が掛かって来る。相手は諜報科の知り合いだ。

 

「どうした?」

『た、大変だ!レインボーブリッジに爆弾が仕掛けられてる!』

「おいおい、笑えない冗談だな」

『ジョークなんかじゃねぇ!今、お前のPCに画像送るから見てみろ!』

 

 俺は普段から携帯しているジュラルミンケースを開けてPCを起動させる。メールボックスに新着一件。見てみるとそこには……

 

「おいおい、こりゃあ冗談じゃないぞ」

 

 レインボーブリッジの柱に設置された幾多もの爆弾……コレが全て爆発した日には……レインボーブリッジが落ちるぞ。

 しかも、よく見れば一際大きい複雑な機構を持つ爆弾が……通信部があるがあれは……

 

「……これまで処理した爆弾の詳細は?」

『爆破方式はセンサーと巧妙に隠された電波受信機による電波受信式……気付いて居ると思うがレインボーブリッジの爆弾と同期して爆発するだろう』

「……爆弾処理のプライオリティはレインボーブリッジの方が高いと考えて問題ないな?」

『ああ』

「連絡ありがとう。感謝するぜ」

 

 俺は電話を切り、カロリーメイトを頬張っているレキに言った。

 

「レキ、レインボーブリッジに爆弾が仕掛けられてる。そっちに行くぞ」

「……了解」

 

※─※─※

 

 そうしてやって来たレインボーブリッジの爆弾を狙撃出来るビルの屋上。

 俺は夜間スコープに換えたヘカートⅡのスコープを覗く。

 

「おー…………あったあった」

 中央に基幹爆発部分があり、そこから3方に分岐した複雑な構造を持つ爆弾。中央の基幹部分には街全体に設置された爆弾に電波を発信するのであろうアンテナと、爆弾魔の発信した電波を受け取るであろうアンテナが見てとれる。

 

「………………」

 

 距離は1700位か……外すことは無いか……にしても、レインボーブリッジに仕掛けられた爆弾、総数にして63……街に仕掛けられたのも含め211……これ、1人で用意出来る量じゃないから確実に複数犯だな……街まるまるぶっ飛ばすレベルの爆弾魔事件……一体何がしたいのやら……。

 

「レキ、準備は?」

「終わってます」

「そいつは結構。まずは中央のセンサー類を狙撃だ。センサー全部潰したら次は通信部。最後は中央から伸びてる爆弾の無効化。おーけー?」

「はい」

 

 にしてもこれ、レインボーブリッジの全部終わっても街の奴さっさと処理しないと駄目だろうな……

 俺は衝撃センサーを照準する。レキはジャイロセンサー……今回、GPSを後回しにしたのは撃った衝撃で爆弾がずれて爆発しないと判断したからだろう。頭良いね、レキ。

 

「私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。ただ――」

 

 俺はレキの自己暗示が途中まで来た瞬間に息を吸って止めて……

 

「………………ッ!」

「――目標に向かって飛ぶだけ」

 

 レキが自己暗示を言い終える前に引き金を引き、レキもその直撃に引き金を引き絞った。

 放たれた弾丸は見事に衝撃センサーをぶっ飛ばし、ジャイロセンサーを無効化した。

 俺とレキはほぼ同時にボルトハンドルを引き、空薬莢を排出しマガジンから次弾を装填。次は通信部……

 

「私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。ただ――目標に向かって飛ぶだけ」

 

 同時に斉射。中心部の通信部を破壊し、街の爆弾とレインボーブリッジの爆弾がこれで爆発することはない。次は中心部のGPSを俺が撃ち抜いて、後は分岐したのを無効化するだけだ。

 分岐した奴は個々に衝撃センサーを撃ち抜き、後は予備の通信部を撃ち抜いて無効化完了。

 やはり、ちっこいのちまちま撃つより大きいの解体する方が面白い。

 

俺とレキはその後、レインボーブリッジの爆弾と街の爆弾を徹夜で無効化して、ビルの屋上で一夜を過ごした。なんで寮に帰らなかったのかって……?わざわざ寮まで帰るのが怠かっただけだよ……それに、持病の偏頭痛も異常なまでに酷かったし……偏頭痛って治す方法無かったか…………無いね…………畜生……今日も今日とて偏頭痛に悩まされる日々だぜこんちくしょう……これが無ければ狙撃にもっと集中出来るのに。

 

※─※─※

 

「好きです。結婚を前提に付き合って下さい」

 

 そして、12月24日。クリスマスイブにこの俺『草薙(くさなぎ) 京介(きょうすけ)』は翡翠色の髪を持つ琥珀色の瞳の少女に武偵高の男子寮の屋上告白された。

 ああ、畜生……今朝から偏頭痛が酷かったのはこのせいか……確かに頭を混乱させる内容だ……なんでいきなりこうなった……

 

「……あ、分かった。俺の偏頭痛が見せる妄想だな」

「違います」

「え……?違うの?ドッキリ?」

「違うの?」

 

 あ~……頭がすんげー痛い……ちょっと黙っててくれないかな偏頭痛さん……

 

「じゃあ、あれだ……女子とかによくあるトランプで負けたから罰ゲーム」

「私がトランプで負ける事はありません」

「……どうしよう」

 

 偏頭痛さんがなるようになれって言うが如く頭を痛くする。もう、ここで寝たいんだけど……

 

「素直に受け取ってくれれば」

「いや、レキに聞いてないから……」

「?」

 

 その小動物のような体躯で首を傾げるな。随分可愛く見えるわ。(錯乱)

 

「風が……命じたんです」

「……レキが信じる行動原理か」

「はい」

「……それで良いのか?」

「私としては」

「……………………」

 

 まぁ、極論を言ってしまえば、レキと付き合うのは悪くない。俺としてはレキは好きだし……。

 ただ、俺の偏頭痛が告げている……『レキと付き合ったらもとの日常には戻れない』と……まぁ、それも……悪くは無いな。最近日常が日常過ぎて飽きて来た頃だし。

 

「……分かったよ……釣り合うかは知らんが……よろしく、レキ」

「はい、よろしくお願いします」

 

 まぁ、こうして俺は普通の日常を綺麗さっぱり捨て去った。

 偏頭痛さんもついでに居なくなってくれれば良かったのにな………………。

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