無職童貞ニートおじさんが悪役令嬢に異世界転生した!王国から追放されたところチート能力なリーダーがいる反乱軍に祭り上げられ大奮戦!今さら王妃にしてやると言ってももう遅い!   作:卯月らいな

1 / 8
導かれし運命(さだめ)

日置籠郎(ひきこもろう)

 

これが俺が生まれてから35年間付き合ってきた名前だ。

 

こんな風変りな名前なもんだから、小学生の頃から友達にヒッキー、ひきこもりだのとあだ名されていた。

 

その名に運命が導かれるように、中年になった俺は職にも就かず、実家で寝起きする毎日を過ごしている。

 

今日もいつものように昼過ぎに目が覚める。

 

かゆみに支配された背中をボリボリと掻き、のそりのそりと小太りの体を動かして階段を降りると、居間とキッチンの電灯がオフになっているのが目に入る。

 

どうやら家に居るのは俺一人のようだ。

 

親父は、いつものように市営プールでウォーキング、母親は、生け花の習い事に行っているはずだ。

 

朝ご飯の菓子パンがされているので手を伸ばし、むしゃむしゃと食べた。

 

りんごの甘い風味が口内に広がると吐きそうになる。

 

運動していないので、食欲がわかない。

 

ジョギングくらいしたいけど体を動かすのが億劫だ。

 

焦燥感とけだるさが心の中でしばし格闘する。

 

勝ったのは後者だ。

 

何もかもやる気が出ない。

 

いつものことだ。

 

嫌になってふと見上げると写真がかざってあった。

 

中学の頃の水泳部での勇姿だ。

 

といっても、市中体で勝ち上がれるほど優れたスイマーではなかったが、腹筋がカチカチなのが写真から見てもわかる。

 

すっかり、ぶよぶよになっちまったな。

 

俺の隣に女の子の姿がいるのがふと目に入る。

 

比呂音代(ひろいんよ)

 

当時俺と付き合っていた彼女だ。

 

夏祭りの日、花火に導かれ、手をつないで歩いた。

 

未来の夢を語り合い、くだらない話をしては笑いあった。

 

そんな彼女も今は……。

 

あの頃の俺たちは輝いていたのに。

 

畜生!

 

俺の人生、いつからこんなんになっちまったんだ。

 

熱いものが頬を流れるのがわかった。

 

それが涙だと気づくのに時間はかからなかった。

 

「籠郎くん!一緒に行こう!」

 

脳裏に彼女の声が再生される。

 

音代ちゃん……。

 

ふらふらと家の外を徘徊する。

 

まるで、彼女に呼ばれている気がしたのだ。

 

彼女はどこにいるのか。

 

いや、いるはずもない。

 

なぜなら、彼女はもう…。

 

15歳の夏の日の海合宿で、彼女は水難救助をしようとしとして……。

 

そこまで思い出した俺は、土砂を運んでいる大型トラックが猛スピードで近づいていることに気づいた。

 

クラクションが鳴るが手遅れだった。

 

体に強い衝撃。

 

すべてがスローモーションになる。

 

世界は暗転した。

 

良かった。

 

ようやく、俺も彼女と同じ世界に行けるんだ。

 

待たせてごめんね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。