無職童貞ニートおじさんが悪役令嬢に異世界転生した!王国から追放されたところチート能力なリーダーがいる反乱軍に祭り上げられ大奮戦!今さら王妃にしてやると言ってももう遅い! 作:卯月らいな
宿の看板娘というのは、セクハラから身を守るのも仕事のうちだ。
マスターが助け船を出してくれることもあったが、基本的に自分で切り抜けるしかなかった。
「姉ちゃん。いい体してるね」
「もう!飲みすぎですよぉ!……ふう大変だぜ」
これまで、生きてきた人生で、男子力というものも磨かれていなかったが、女子力となると輪をかけて磨かれておらず、こういうときどうやり過ごしていいのやらわからず苦労した。
だが、村の他の女性から女の嗜みを学びつつ、徐々に酒場での生活に慣れてきた。
そんなある日のことだった。
反乱軍のリーダー、ヒロイスが酒場にやってきた。
長身でハンサムだ。
女にモテるんだろうなあ。
「いらっしゃいませ!」
「君がエミリーだね?」
「そうですけど、どちら様?」
「忘れてしまったんだね。日置籠郎くん」
脳天に雷が刺さった。
シャルロッテと言われてしまう心の準備はある程度していた。
だが、前世の男の名前で呼ばれるだなんてことはまったく覚悟してなかった。
どうしよう。
男だとばれてる。
こうなると、もはやスカートを履いているっていう事実だけで恥ずかしい。
「どうしてもじもじしてるんだい?」
「だって……」
「男だとばれ……」
「わー!わー!わー!わー!」
あまりにあけっぴろげに爆弾発言を放り込むものだから、大声で声を遮ってしまった。
「正体をばらされたくないかい?」
その脅し言葉には宿のマスターもピリっと来ていた。
シャルロッテだとばらそうとしていると思ったのだろう。
「ばらされたくなければ、反乱軍に入ってくれ」
「それはどういうこと?過去の性別はどうあれ今の私は非力な女ですし」
「君は籠郎くんであるだけでなく、シャルロッテ嬢であることも我々としては調べがついている。っていういことはつまりだ。王族のディアール公爵の娘が反乱軍にいるってことは、王国を倒す御旗として役に立ってもらえる。やつらを倒せる大義名分ができるってことだ。頼む。協力してくれ!」
「で、でも、それってとても危険な任務じゃ……。せっかくこの酒場でも生活にも慣れてきたのに……」
「君の前世はおと――」
「わーっ!分かったから!協力するから、それだけはバラさないで!お願い!」
「かわいい」
「へ?」
ちう。
唇に生暖かい感触がした。
うっとりとしたヒロイスの顔が遠ざかる。
優しい目線が突き刺さる。
俺はファーストキスを失ったのだ。
「うそ」
「君のことが好きだよ。ずーっと前から君のことだけを見ていた」