現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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正義の四天王

「突然のゲリラ配信でこんて~ん! 地上へ舞い降りてきたお世話系メイド天使、天羽かおるでーす! 今日もみんなに楽しんでもらうぞー!」

 

● こんて~ん!

● 貴様ら、こんてんせよ!

● 待ってました

● かおるちゃんラブ

● 突発だったので会社のトイレから見ています

 

「トイレの中は大変そうだから、常識的なご主人様は忙しかったらアーカイブでチェックしてくださいね! それでは、今日も京太と一緒に配信です。自己紹介どぞ」

「京太だ……今日の実況を任されたプレッシャーに負けそうな京太だ……」

 

● なぜか震え声

● 男イラネ

● 京太しね京太しね京太しね京太しね京太しね京太しね

● この陰キャ童貞が喋った瞬間だけミュートするわw

 

「辛辣なコメントありがとう」

「こらこら、ご主人様たち。あまり京太をいじめないように。私が好きなご主人様たちがそんなことをすると、悲しくなっちゃいますよ~」

 

● かおるちゃんを悲しませる奴らはどいつだぁー!!!!

● 好きと言って頂けたので京太は許す

● かおるちゃんの好き度は、京太<<<<<<<<<<<<ご主人様

 

「うん、私が一番好きなのはご主人様たちですからね。私がVTuberとして存在できているのは、ご主人様たちのおかげなんですから。だからずっと、これからも、一番なんです」

 

● うおおおお!!!

● かおるちゃーん!!

● 甘々ボイス最高

● 耳が幸せ

● ASMR希望

● こんな世界になっても一生推します

 

「俺との落差」

「さて、今日はちょっと遠出してお外からの配信です! あちらをご覧ください!」

 

● おっ、カメラが違う方へ向いた

● かおるちゃんだけ映して

● うわ、廃墟ってる

● 何これ、実際の戦闘?

● 映画っぽい

● すんげー大規模ぢゃん

 

「今回はえーっと……」

 

● 視線が泳いでるw

● カンペかな?

 

「ただの資料チェックです! あったあった。房州春彦さんという方がリーダーの〝冒険者ギルド〟にお邪魔しています」

 

● 冒険者ギルドってw

● 名前が厨二病で草生える

● リアルで一度は言ってみたい言葉

● 俺も冒険者ギルドに入って酒場の入り口で新人いびりしたいわ

 

「現在、占領された四角江町を開放するために戦っているそうです」

 

● 意外とガチな場面だった

● さすがにネタにできねぇ

● でも、こういうのって国に任せた方がいいんじゃないの?

● バカだな。アバターじゃないとモンスターを倒せないだろ

● 戦闘すげーな。小さいドラゴンっぽいのと戦ってる

 

「アレはWROにいた小型飛竜。〝ファミリアワイバーン〟だな。特殊な攻撃がなくて狩りやすいが、群れで来るとなかなかに厄介な相手だ」

「解説の京太さん、ありがとうございます」

 

● 初めてマトモに喋ったw

● 存在感薄い

 

「ええい、もうコメントなんて見てやるか! 戦いの分析に集中する!」

 

 京太はぶっきらぼうに言い放ち、コメント欄から目を離した。

 そして注目するのは四方で起きている戦闘だ。

 数十人の様々なアバターが、次々と飛来する二メートルサイズのファミリアワイバーンと戦っていた。

 まず目に付いたのは、京太たちをここまで案内してきた渋沢だ。

 

「渋沢玄司。渡された資料によると、冒険者ギルド〝正義の四天王〟の一人……」

「正義の四天王……なんか名前のセンスが……いえ、立場的にノーコメントですね。コンプラ遵守も考える天羽かおるです、はい」

「名前はともかく、実力はありそうだ」

 

 戦略シミュレーションアバターらしく、続々とユニットを召喚して敵を倒している。

 同時に他の苦戦しているアバターたちを援護したりもしていて、かなりの戦略眼も持っているようだ。

 

「元々、渋沢はゲーム動画を投稿していて、戦略シミュレーションゲームの最高難易度を軽々とクリアしていくスタイルだったらしい」

「なるほど、確かに手際の良さがうかがえますね」

 

 明らかにコストの低そうな石槍の原始人ユニットで、うまく地形を考えた連携など駆使してファミリアワイバーンを倒している。

 最小で最高の戦果を上げている――かと思いきや、今度は大胆に、コストの高そうな大砲持ちのユニットで敵の中核を切り崩したりしている。

 その手腕に京太は思わず見惚れてしまうくらいだ。

 

「渋沢がいる地点は平気そうだな。次は~……」

 

 スナイパーライフルを担いだ無造作ヘアーのイケメン――いや、男装している背の高い軍服女子だ。

 その彼女がファミリアワイバーンを撃ち落としていっている。

 

「銃持ってるしFPSっていうやつですかね?」

「ああ。ファーストパーソンシューティング、略してFPSと呼ばれるゲームジャンルの古いアバターだな。名前は銃子……本名ではなさそうだ」

「銃を撃つだけで遠くの敵を倒せて楽そうですね~」

「いや、よく見ろ」

「え?」

 

 銃子はただ撃つだけではなく、確実に一発一発ヘッドショットを決めていた。

 派手さはないが、血の通ってない機械のように正確無比だ。

 

「もしかして、すごいエイム力……?」

「ああ、門外漢の俺ですらわかる。飛んでいる相手、しかも比較的頭の小さいワイバーンにヘッドショットを必中させている。並大抵の腕ではないようだ。資料によるとeスポーツ世界大会の常連……か」

 

 銃子がいる地点は勝負が付きそうなので、他の地点に目をやる。

 

「あ、京太。可愛い子がいますよ! 私でも知っているゲームのアバターです!」

「たしか……パズルゲームだったな」

「はい、女子に大人気のですね!」

「彼女の名前は……栗鼠(りす)か。パズルゲーのチャンピオンらしい」

 

 今までのいかにもバトルをしそうなアバターと違って、明らかに戦闘に向いてない雰囲気だ。

 ポップな雰囲気の衣装で、遠目に見ても小学生の女子くらいに見える。

 

「パズルゲームって、そもそもどうやって戦うんだ……?」

「うーん……。きっと、女子っぽく可愛い感じ――」

 

 ドズンッと地響きが聞こえた。

 それは栗鼠が巨大なブロックを出現させ、ファミリアワイバーンの頭上から落とした音だった。

 圧死。

 ブロックの下から染み出る血や、飛び散った肉片から見てそう推察できてしまう。

 

「……女の子っぽく可愛い感じはなさそうだな」

「……アーカイブで今のグロシーンカットしておきますね……」

「さてと、最後は――」

 

 残り一箇所の地点、そこに見たことのあるアバターがいた。

 それは京太がこの世界で初期に見た、量産型な有名RPGアバターだ。

 

「あのアバター、本当に戦えるのか……?」

「え? 有名ゲームの勇者だし強いのでは?」

「いや、誰もが使えるようなアバターだし、オフゲーRPGの場合は、そこまで一作に情熱を注げるような奴なんて――」

 

 京太はそこまで言って、とある例外に気が付いてしまった。

 ここまでの三人は、それぞれ道を究めたようなゲーマーたちだ。

 つまり、この誰もがプレイしてそうな勇者アバターを極めるゲーマーといえば――

 

「やっぱりか」

「どうしたんですか? あの勇者アバターさんやられちゃうんですか?」

「いや、資料によるとRTAを得意とするゲーマー。本名は光野雷田(ひかりのらいた)、ハンドルネームは〝ゆうしゃらいた〟というらしい」

「RTAってなんですか?」

「それは――」

 

 ツンツンヘアーの勇者アバターである雷田は、ワイバーンが迫ってきているのに微動だにしない。

 ブツブツと呟きながら立ち尽くし、ついには眼前に敵が迫り――

 

「危ない!?」

「いや、大丈夫だ」

 

 間一髪、敵がギリギリの距離で一直線になったところを、一気に雷魔法で倒して行く。

 そしてそのまま奇妙な屈伸の動きでワープして、タイミングを見計らって再び最小限の攻撃で最大限の成果を得ている。

 

「な、なんですかアレ……」

リアルタイムアタック(RTA)、ようはどれだけ効率よくゲームを攻略していくかという求道者だ。たぶん0.01秒も無駄にしないだろう。ルールによっては頭のおかしなバグワザを使用する場合もある」

「うわ~……もはや遊びじゃありませんね……」

「一つのRPGを何十、何百周もして最速を目指す……。たしかにこれなら強いアバターになるわけだ」

 

 これで戦闘が起きている四箇所を解説したことになる。

 戦局的にも圧倒的有利で、撮れ高も取れたのでかおるはホッとしていた。

 しかし、京太だけは何か胸騒ぎがしていた。

 

「なんだ、何かおかしい気がする……」

「どうしたんですか、京太?」

「いや、気のせいかもしれないが……」

 

 頭の中で現状の位置関係を再確認しておく。

 今、京太とかおるがいる公園――ここには戦闘に向かない非戦闘員などが待機している。

 その周囲四箇所でのファミリアワイバーンたちによる襲来、そして四天王による迎撃戦。

 

「妙に実況しやすいと思わなかったか?」

「どういうことですか?」

「見回さなくても四箇所が視界に入っている……」

「あ~、たしかにそうですね。戦闘場所がある程度固まってきている気がします」

「ファミリアワイバーンは、レイドボスに従属する存在。本当の脅威は四方八方からやってくるその機動力……」

 

 そう呟き、ハッと気が付いて京太は即行動に移した。

 背後へ振り向く。

 上空から大量に迫ってくるファミリアワイバーンと、それに乗っている爆弾を巻き付けたゴブリンがいた。

 

「前方は誘導するための囮、後方から奇襲をかけるつもりだ」

「えっ!? うわ、ちょっとあの数はまずいんじゃないですか!? 四天王さんたちが戦ってるのを合わせた全部くらいいますよ!?」

「しかも、乗っている爆弾ゴブリンは自爆覚悟で来るやつらだ。俺一人でやれるかどうか……」

 

 京太は頭の中で戦い方を組み立てようとするが、さすがに今回は状況が悪すぎた。

 

(どうする? 今から渋沢に応援を頼むか? いや、距離的に間に合わない。そもそも、戦略シミュレーションが得意ならこのくらいのことは想定しておくべきなんじゃないのか? ……まさか、想定していたとすると、俺たちとコイツらを戦わせて殺そうとでもしているというのか?)

 

 最悪の考えがよぎったのだが――

 

「逃げる……というわけにもいかないですよね」

「ああ」

 

 さすがにこのまま逃げて、公園にいる非戦闘員を犠牲にするという気も起きない。

 復讐心に身をやつした悪鬼羅刹のような二人だが、それでも人の心は残っている。

 

「かおるは俺の後ろへ。お前がやられると強化が切れて不利になる」

「は、はい!」

 

 京太はいつもの格好――背徳モードから、天騎士モードになった。

 これは背徳天騎士(シャドウクルセイダー)の特性で、〝背徳モード〟は両手剣での攻撃力とカウンター重視、今回の〝天騎士モード〟は片手剣と盾による守り重視となるのだ。

 

「敵の数が多すぎる。守りながら戦うにはこちらの天騎士モードの方が有利だ」

「私を守るためですね!」

「いや、今回は俺を守るためでもある」

 

 先陣を切ってきたファミリアワイバーンと、それに乗る爆弾を巻き付けたゴブリン。

 戦力としては、京太がそこまで恐れるものではないのだが――

 

「ハッ!!」

 

 片手剣で一刀両断すると、ゴブリンが大爆発を起こしたのだ。

 京太はそれを盾でガードする。

 

「うわっ!? なんですかこれ!?」

「あのゴブリンは任意のタイミングで自爆する厄介なやつだ。範囲が広いから回避も難しい」

「え、えーっと、つまり……」

 

 かおるはガタガタと震えながら、後続でやってくる数え切れないくらいのモンスターを虚ろな目で眺める。

 

「アレ、全部爆発するってことですか!?」

「そういうことだ。システム上、HPが尽きるだけではなく、相手の爆弾に直接ダメージを与えても爆発するが、かなり正確に弓矢などで狙わなければならない」

 

 京太はつい舌打ちしてしまう。

 自分たちだけなら何とかなるが、公園にいる非戦闘員を守りながら戦わなければならないのだ。

 とてもじゃないが現実的ではない。

 

「クソッ、今の爆発で正義の四天王とやらが気が付いて増援に来てくれると思ったが、やはり距離がありすぎて無理か……」

「ど、どうするんですかー!?」

 

 どうもならない、非戦闘員を犠牲にするしかない。

 そう結論が出そうになったタイミングで、その男は現れた。

 

「私が来たからにはもう安心だ」

「……誰だ」

「房州春彦、冒険者ギルドのリーダーだ」

 

 そう自信満々に言い放った男――房州春彦。

 年齢は四十代中盤くらいだろうか。

 身長は180を越えていて、筋肉のせいか体重も存在感も重そうに見えてしまう。

 短めの金髪で一見スポーツマンに見えるのだが、その格好はファンタジー世界の冒険者そのものだった。

 何よりも特徴的なのは、その異様な瞳孔だ。

 清浄なる十字架が描かれていて、人間と話している気がしない。

 それでもカリスマ溢れる笑顔を、この絶対的な窮地の中で向けてくる。

 

「これ以上、客として招いたキミたちの手を患わせるわけにはいかない」

 

 そう房州は言い放つと、笑顔のまま敵のまっただ中へ歩いて行く。

 その三歩後ろをお付きのメイドらしき女性が静々と追従する。

 

「あ、あのメイドさんはVTuber個人勢トップの水野センじゃないですか!?」

「その名前、俺でも聞いたことがあるな……」

「年齢22歳、身長160センチ、体重48キロ、胸は推定Gサイズ、利き手は右。その流れるような黒髪と、宝石のような青い瞳、特徴的な褐色肌でクールな話術を操る。人気絶頂の登録者200万人オーバーのVTuberです!」

「データ細かいな……。って、200万人オーバーってことは、つまりバフのレベルも――」

 

 房州は立ち止まった。

 まだ敵までかなりの距離がある。

 

「ああ、そうそう。キミたちにまだ言っていなかったね。私のアバターはTRPGだ。特別強いわけではないが――」

 

 いつの間にか棒きれを持っていた房州。

 キョロキョロとして地面を探し、手の平サイズの石を捜し当てた。

 拾い上げて、軽く上に放り投げ、落ちてきたところを棒きれで野球のように強打する。

 石は脆かったのか、いくつもの破片になって飛び散った。

 ――それだけですべてが終了した。

 

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「……は?」

 

 大爆発。

 閃光が走り、振動が鼓膜を揺らし、爆風が頬を撫でる。

 

「な、なにが……?」

 

 ツンとした火薬の臭い漂う中、かおるは理解が追いつかないようだ。

 京太も呆気にとられつつも、ありえないだろうが、その可能性を推測できた。

 

「丁度都合良く手頃な棒きれと石を見つけ、それを打ったら都合良く四散して飛んで行き、都合良くすべての敵の弱点に当たって倒せた……というところか?」

「な、なんですかそれ……?」

「はっはっは! ご想像にお任せするよ。私が正義だ、正義は勝つに決まっているんだからね!」

 

 房州からは何か底知れないモノを感じてしまう。

 それはカリスマと呼ばれるモノなのか、それとも――

 

「も、もしかして、私たちっていらなかったんじゃ……?」

「いや、そんなことはないぞ、天羽かおるクン。キミと京太クンが最初の一匹を倒さなければ、私も間に合わず非戦闘員たちに被害が出ていただろう。キミたちの力が彼らを救ったのだ!」

 

 そう房州は白い歯を見せながら、笑顔で言い放った。

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