現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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無人のコンビニにて

「ご、ごっめん!! あたし、戦闘になると変になっちゃって……!!」

 

 ホブゴブリンを倒したあと、誰もいなくなったコンビニで休憩中のことだった。

 緊急事態ゆえ、各自が飲食物を棚から拝借していた。

 京太は悪いと思ったのだが、実は移動ルート上の店として予測されており、房州がオーナーと交渉済みとのことで安心した。

 

 ――そんな中、脳内麻薬が薄れたのかピンキーは青ざめた顔で平謝りをし始めたのだ。

 

「礼節を重んじる道場の娘らしからぬ、お見苦しいところを見せちゃったかな~って……! ほんとごめん!」

「いや、まぁ……格ゲーだしなぁ……」

「だねぇ……格ゲーだし……」

 

 それに対して京太と渋沢は、格ゲーをやっているプレイヤーたちがどんな感じなのかを元から知っているので、ドン引きしつつも納得はしている。

 格ゲーとは、プレイしてのめり込むほどに人間であることをやめて〝野生の本能〟を発揮する世界なのだ。

 噂では野生に戻りすぎて、動物園さながらのリアルファイトが行われることもあるらしい。

 ゲームジャンルの中でも一際、殺意で煽り合い――もとい熱狂的で苛烈な世界として知られている。

 

「それにしても、桃瀬。お前ってゲームやる人間だったんだな。小学校の頃は道場一家でデジタルの『デ』の字もないアナログ人間だったのに」

「いや~……。それが引っ越したあとにハマっちゃって……。といっても気に入った一作をやり続けただけなのでニワカですが、はい……」

 

 一作だけをやり続けたと聞いて、やはり情熱を注ぎ込んだアバターが強い傾向にあるというのは裏付けが取れてきた気がする。

 たしか、この説をネットで提唱していた人間は〝房州春彦〟という名前――つまり冒険者ギルドリーダーの房州春彦なのだろう。

 あの段階でそこまで予想していたというのは、かなり頭のキレる人物だ。

 現在の地位にあるのも頷けるというものだ。

 少しだけ彼という存在に興味が出てきた。

 

「なぁ、房州ってどんな男なんだ?」

 

 京太はその場にいる、軽食中の冒険者ギルドメンバーに聞いてみた。

 最初に答えたのは、少し高いレトルト系のメニューでフルコースを作っている桃瀬だ。

 たしか小学生の頃も身体を動かすとかで大食らいだった気がする。

 

「もぐもぐ……。うーん、あたしは下っ端なんでよく知らないけど、メチャクチャ強いと思うよ! 腕っ節が一番だから、冒険者ギルドでも一番なんじゃない!?」

「強いからトップって……。さすがにそこまで単純じゃないだろ……」

 

 次に答えたのは、チータラなどのツマミ類を囓って満足げにしている渋沢だ。

 

「房州さんがどんな人……かぁ~……。胡散臭く聞こえるかも知れないけど、一言でいえば〝神に祝福された人〟っていうのが個人的な解釈」

「……神に祝福された人?」

「そう、なんて言っていいのかなぁ……。ボクぁ無神論者だから神様なんていないとは思ってるんだけど、房州さんからはそういうものを感じちゃうんだよ、これが。不思議だね~」

 

 いきなり人を神様のようだと言うのは少々おかしい。

 しかし、渋沢とはまだ知り合って間もないが、それなりに頭の良いオトナに思える。

 何かきちんとした理由があるはずだ。

 

「羽根が生えるとか、頭に輪っかが出るとか……か?」

「あはは、それだったらかおるちゃんが神様になっちゃうぜ」

「あっ、たしかに私のアバターデザインは天使の輪っかに片羽根ですね!」

 

 かおるは焼肉味のポテチとコーラを両手に抱えながら、なぜか少し誇らしげに胸を張っているが、それはスルーした。

 

「じゃあ、なぜ?」

「京太くん。神様の条件、ってなんだと思うよ?」

「世界を七日間で創る……とかか?」

「いんや~。それはそれで神様っぽいけど、ボクはこう感じちゃったわけよ。世界すべてから無条件で愛される」

「世界すべてから無条件で愛される……?」

 

 あまりに突飛な話すぎて聞き返してしまう。

 渋沢はいつもの冗談っぽい表情だが、流れ的にそれは冗談ではないのだろう。

 

「そう、房州さんはそんな人間な気がするんだ。その行動がすべて世界に愛されてるんじゃないかってくらいに輝いて見えるのさ。まっ、ボクが勝手に思ってるだけなんだけどね~」

 

 たしかにキャンプが襲われて共闘したとき、色々と運が良いとは思っていた。

 それを〝世界すべてから無条件で愛される〟と定義するのなら、世界に祝福された存在――神と言っても間違いではないのかもしれない。

 

「だからこそ、冒険者ギルドのリーダーをできる……という感じか」

「いや、それだけじゃないっすよ!」

「そうそう!」

「あの人はサイコーです!」

 

 そう言ってきたのは、まだ名も知らぬ同世代三人のメンバーたちだった。

 

「ええと――」

「自己紹介がまだだったっすね! 三人はチーム制バトロワアバターでオレは日部伯太(かべはくた)! こっちは大戸栄美(おおとえいみ)、そっちは亜門知井田(あもんちいた)!」

「あ、ああ。よろしく」

 

 勢いに少し気圧されてしまう。

 京太は謎の大剣アバターのように扱われているが、根は人付き合いが苦手な陰キャなのだ。

 知らない人間+陽キャ+自分への注目ともなればかなりの貫通ダメージを与えてくる。

 そして彼らは三段撃ちの如く話しかけてくる。

 

「房州さんはこんなオレたちにも優しいんですよ!」

「そうそう、悪い奴らとつるんでて荒れてた俺らの前に現れて、冒険者ギルドに勧誘してくれて……。一度はチー――」

「ち、チームを軽視しゲームをアカBANされたのに受け入れてくれる! まさに令和のヒーロー! それが房州春彦!」

「なるほど。随分と慕われているんだな……」

 

 グイグイとくる三人組を両手で抑えながら、京太は後ずさりする。

 どうやら嘘偽りなく彼のことをヒーローと思っているようだ。

 

「もう、三人とも! 京君が困ってるからやめてあげなよ!」

「へいへい、わかったよ」

「ピンキーが言うならやめる~」

「へへっ、ごめんなさい!」

 

 桃瀬が止めたら、意外と素直に引いてくれた。

 どうやら根は悪くない人間で、桃瀬と仲が良いようだ。

 

「桃瀬、友達なのか?」

「うん! クラスメイト! 偶然、冒険者ギルドで一緒になったんだ!」

「そ、そうか」

 

 体育会系の桃瀬は、学校でも友達が多いのだろう。

 学校でほぼ友達がいなかった京太としては驚きを感じてしまうと共に、それが普通なのだと実感させられる。

 かと言って嫉妬などするわけでもなく、懐かしい知り合いが交友関係を築いているのは好ましいことだろう。

 

「というわけで、白虎退治のメンバーは全員自己紹介をしたね! このメンバーで、誰一人欠けることなく四角江町を解放しよー!」

「「「「おー!」」」」

 

 桃瀬の呼びかけに答えて、クラスメイトの三人と、かおるは威勢良く返事をしていた。

 京太と渋沢はキャラではないので苦笑いをしてしまう。

 

「いや~、若いっていいね~」

「同類っぽく肩に手を回してきてるが、俺も若いぞ……」

「たはは。京太くんは精神年齢が老けてるからね~」

 

 あまり嬉しくない答えをもらいつつ休憩時間が終わったので、先へ進むことになった。

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