現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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繋がれる想い

● うおおおおお!!

● すげえええええええええ!!

● 最後に超必殺技で決めやがった!

● かっけぇ……

● 最高の展開

● 興奮した

 

「えへへ、でしょでしょ。強くて可愛いピンキーちゃんは最強なのだ! ブイッ!」

 

● 興奮した。破れた衣装で激しい攻撃で揺れまくってた

● うん、最高の展開

● 強くて可愛くてエロいピンキーちゃん最強!

● エッッッッッッッッッ

 

「……うん。今気が付いた。あたし、服がボロボロだね……」

 

● 今さら手で隠しても遅い! 録画済みだぜ!

● あとで動画をあげてくれ、頼む

● 祭りだ祭りだワッショイ!

 

「……ん~、そうだな~……。頭ハッピーセットのテメェらの住所を調べて、リアルファイトでポテチの食べカスみたいに粉々にしてやろうか?」

 

● ひええ……

● 格ゲープレイヤーモードきたー!!

● マジでやりそうだから困る

● 泣いちゃった……オレが……

 

「あはは、冗談だよ~」

 

● な、な~んだ……

● さすがにそこまではしないよね

● いや、目がヤバいぞ

 

「タダでそういうの見られるのって悔しくない? せめて1プレイ分……いや、たしかスパチャって500プレイ分くらいが上限だったよね?」

 

● え?

● おいおいおい……

● じょ、冗談じゃ……

 

「蹴り殺されたくなかったら上限赤スパよろしく!」

 

 直後、コメント欄は上限赤スパ――五万円分の課金が飛び交ったという。

 

 

 

 ***

 

 

 

 配信を終了させ、二人は桃瀬が待つホテルの一室へと戻ってきていた。

 

「戻ったぞ、かおる!!」

「……」

 

 ベッドに寝ているかおるは身じろぎ一つせず、呼吸すらしていなかった。

 

「そ、そんな……まさか天羽さん……」

 

 立ちすくむ桃瀬。

 京太は無言でベッドに近付き、掛け布団をバッと取り去った。

 

「あ、バレた?」

 

 そこには息を我慢して、顔を見せないようにしていただけのかおるの姿があった。

 

「バレるっての。俺自体も忘れそうになるけど、第二職業はアサシンでスキル【気配察知】が使えるからな。生きてりゃわかる」

 

 京太は不機嫌そうな表情で、GMからドロップしたアイテム【解除コードACP】を取り出した。

 本来はプレイヤーに出回らないアイテムのためか、立体感のないアイコンで現実に存在している。

 それをかおるに向けてスプレーのように使用した。

 

「えーっと……これだけですか? ステータス見たら治っちゃってるんですが、なんかもっと派手な演出とかは? かおるちゃん復活の感動シーンですよね?」

「お前相手にそんなのいらんだろ。お、どうやらこれは消費してもなくならないアイテムっぽいな。さすがチートGMのチートアイテムだ」

「ちょっと~、もう私からそっちに興味が移っちゃったんですか~!?」

 

 いつものやり取りが戻ってきた。

 そう感じてしまう。

 桃瀬はクスッと笑い、気を利かせて部屋を出ることにした。

 

「ん~、初ダンジョンで疲れたかな~! ちょっとしばらく屋上で空気を吸ってくるね~!」

「お、おう?」

「色々とありがとうございました、桃瀬さん」

 

 手の平をヒラヒラさせながら、桃瀬は去って行く。

 その手には血で汚れた紙束が握られていた。

 少しそれが気になりながらも、京太はベッドにドスッと座った。

 

「で、身体の具合はどうだ?」

「いや~、桃瀬さんの前だからと強がってみたものの、マジでギリギリでしたね。システム的に衰弱していくというのは言葉では言い表せない恐ろしさがありました」

「……そうか、よく耐えたな」

 

 京太は、健気な表情を浮かべるかおるを――妹の星華と重ね合わせてしまった。

 たぶん、桃瀬から久しぶりに星華の話を聞いたからだろうか。

 まだ幼かった頃の星華は、風邪が治ったときに頭を撫でてやったら喜んだ。

 無意識にそれをなぞるように、かおるの頭に手をやろうとしたのだが、さすがに女子中学生相手にやるのはどうかと思って手を引っ込めようとした。

 

「今なら撫でてほしいですよ、たぶん今だけですが」

 

 京太の大きな手を、かおるがそっと導いた。

 強引に頭を撫でさせられたという形だろう。

 

「妹を思い出した」

「……そうですか。私は、年の割にませた弟を思い出しました」

 

 互いにいなくなってしまった存在の面影を見て、触れているのは違う人間だ。

 それでも不思議と暖かさを感じる。

 

「ありがとうございます、京太さん。あなたのおかげで助かりました」

「……素直すぎても気持ち悪いぞ。大体、元はと言えば俺の幼なじみの桃瀬を庇ってウイルスを食らったんだろ」

「それでもです。やっぱり頼りになるなぁって思いました。京太さんの判断は間違いないですから」

 

 そう言いながら見せてきたのは、以前ダンジョンでドロップしたアクセサリー【対9㎜弾電磁障壁発生付属装置】だった。

 

「これは……小ダメージを無効にするだけのアクセだったか?」

「オシャレだったから髪飾りとして付けてましたが、これが銃弾の物理ダメージを軽減してくれました」

「物理ダメージを軽減しても、ウイルスは貫通しているがな……」

「きっと、物理ダメージがもっと大きかったら、私は最後まで耐えられなかったでしょう。だから……この髪飾りをプレゼントしてくれた判断、間違ってないですよ」

「そういうものか……?」

「そういうものですよ。だって、待っている間に一人心細くなっていたとき、これを京太さんだと思って……ずっとギュッと握って……。いえ、今のは忘れてください。恥ずかしいので……」

 

 さすがの京太もそこまで言われると同じくらい恥ずかしく、赤面してしまいそうになる。

 

「ああ、今のはお互いに忘れよう。うっかり配信で話してしまったら大炎上確定だ」

「そ、そうですね! 炎上防止のために忘れましょう! ああ、もう恥ずかしさでヤバいです。体調は回復してきているので、早く行ってあげてください!」

「行くって、どこへだ?」

「にぶちんの大馬鹿野郎の京太! 桃瀬さんのところに行って話しかけてあげてくださいよ! そういう雰囲気でしたよ!」

「そ、そうなのか……? よくわからないが、行ってくる」

 

 普段と違って慌てた様子の京太の背中を見送りながら、かおるはクスッと笑みを見せた。

 

「まったく、ほんっと~に……にぶちんの大馬鹿野郎なんですから」

 

 

 

 ***

 

 

 

 京太は自販機で飲み物を買ってから、階段を使って屋上へと登っていく。

 電気が無事なのでエレベーターを使ってもいいのだが、途中で停電にでもなったら大変だ。

 ……というのは理由の一つで、あまり急いで行きたくない気持ちが強い。

 

「行って、桃瀬と何を話せと言うんだ……」

 

 きっと雰囲気的に話すことは決まっている。

 わかっているが、あまりわかりたくない心情だ。

 それでも引き返したらかおるに怒られるだろう。

 溜め息を吐きながらも、屋上へと続くドアノブに手をかけた。

 いっそ、いなかったら――とも思ったが、普通に彼女の気配が感じられた。

 

「桃瀬、こんなところで何を――」

 

 開けたドアの向こう側、桃瀬はうずくまって静かに泣いていた。

 

「あ」

「……ごめん、見なかったことにする」

 

 非常に気まずくなってドアを閉めようとしたが、引き留められてしまった。

 

「待って! これは何でもないの! えっと、様子を見に来てくれてありがとう!」

「そ、そうか……」

 

 女の子の涙を見てしまった京太は、なぜか平常心ではいられなかった。

 

「京君、こっち来て喋ろ」

「お、おう……」

 

 たぶん拒否権はない、従うしかない。

 そう思い込んでしまい、桃瀬の隣に移動した。

 今の彼女はピンク尽くしのピンキーではなく、学生服を着た普通の女子高生だ。

 ダンジョンと違って吹く風が気持ちよく、桃瀬本来の少し茶色がかったショートカットをサラサラと揺らしていた。

 京太はなぜかバツが悪くなり、目を逸らして風景に視線をやる。

 屋上からの景色は廃墟になっている地点も数多く見えるのに、不思議と心惹かれるような非日常の光景だった。

 

「天羽さん、大丈夫だった?」

「ああ、しばらく休めば平気だろう」

「そっか……よかった」

 

 その会話をしてから、無言が続いてしまう。

 京太はなんと話を続けて良いのかわからない。

 天気の話でも無難にするか? と覚悟を決めようとしたところで、ポケットに入っている飲み物を思い出した。

 

「これ、ホテルの自販機で買ってきた。飲むか?」

「ん、ありがとう」

 

 桃果汁が入った缶ジュースを投げて渡した。

 桃瀬はそれをパシッとキャッチした。

 

「わっ、これ好きなやつだ! 覚えていてくれたの、京君?」

「さぁな、たぶん偶然だろ」

 

 京太は無糖のコーヒーが入った缶を開けて、グイッと飲んだ。

 桃瀬も目を細めて、機嫌良さげな表情で同じように開けて飲んだ。

 一息吐いたあと、二人の目が合ってしまった。

 

「あ~、なんだ」

 

 京太は痒くもない頭を掻きながら、顔を背けながらぶっきらぼうに言い放つ。

 

「先に俺の話をしておく。こんな世界になってから、どうして俺がこんなことをしているかというと――」

 

 京太は星華の死、誓った復讐、灰色の竜を追い、かおると協力することになったというのを話した。

 それを聞いた桃瀬はショックを受けていたが、決して京太の復讐を否定しなかった。

 

「……そっか、色々あったんだね」

「まぁな。……それで、桃瀬の方はもう隠し事はないのか?」

「ん~、大体はダンジョンで恥ずかしい告白をしちゃったからなぁ」

「告白って言い方は止めろ、変な意味に聞こえるだろ」

「ふふ、ごめん。じゃあ、隠しているのはあと一つくらい」

 

 顔を下に向けて、寂しげな表情を見せた。

 

「家族はみんな無事って言ったけど、モンスターから家族を逃がすために最後までおじいちゃんが道場に残った」

「……そうか」

「うん。そのときにすごい出血してたから、もう生きていないと思う。だから、白虎のテリトリー内にある道場を取り戻すだけじゃなくて、亡骸もちゃんとお墓に埋めてあげたいんだ」

「すまない、もっと軽い気持ちで参加しているのかと思っていた」

「ううん、それでいいんだよ。心配させたくなくてウソを吐いたんだもん。だから、信じ込ませられたのなら『あたしの勝ちぃ~!』ってね」

 

 ピンキーの勝利セリフを無理やり明るく言い放つ桃瀬を見て、彼女は強いなと思った。

 

「こんなところまで勝ちたいのか、さすが格ゲープレイヤー」

「えへへ。それにね、実は死んじゃった三人もここらへんに家があったんだ」

 

 三人とは、チートアバターを使って白虎に殺されたクラスメイトだろう。

 

「みんな、家に帰りたかったんだよ。結局は、それだけだったんだよ」

「そうか……」

 

 桃瀬は悔しそうにしながら、血で汚れた紙束を強く握りしめていた。

 

「気になっていたんだが、それは?」

「三人が事前に調べていた、チートアバター関連の資料。実はこの中に【解除コードACP】の情報もあったんだ」

 

 元はと言えばチートアバターを使用していた三人が悪いのだろう。

 だが、彼らに対して自殺しろと言える者はいたのだろうか?

 生きたい、家に帰りたい、そんな誰もが持つ気持ちと、チートアバターがいつ発動してしまうかという葛藤が、その血で汚れた紙束に詰まっているのだろう。

 それらをすべて飲み込んだ上で、京太は言葉をかける。

 

「そうか。日部、大戸、亜門のおかげで助かったな」

「………………うん!」

 

 京太は無糖のコーヒーをグイッと傾けた。

 いつもより、ずっと苦く感じられた。

 それでも飲み干した。

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