現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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四人パーティー

「え~……、天羽かおる様のご逝去に際し、心からのお悔やみを申し上げ――って、なんで生きてるの!? かおるちゃん!?」

 

 プライベートダンジョンでGMを倒した次の日、ホテルの部屋に入ってきた渋沢の開口一番がこれである。

 

「お、オバケなの!? オバケアバターとか新しく発見されちゃったわけ!? おじさん、近頃の流行は早すぎてついていけないよ……」

「いえ、私はオバケでも何でもないですから落ち着いてください、渋沢さん」

 

 かおるはベッドから立ち上がり、すっかりと元気になった姿を見せた。

 渋沢としては信じられないといった表情で、かおるの足があるのを確認したりしている。

 何とも年代を感じるリアクションである。

 

「ま~じで生きちゃってるの、これ……?」

「あ、なんか私が生きていて不都合なことでもあるんですか?」

「いや~……、生きていた方が嬉しいんだけどさ……。治療不可能なアンチチートウイルスを食らっちゃってたよね? もしかして、ボクが歳のせいで物忘れを……四十歳ってまだまだ若いと思ってたんだけどねぇ~……」

「渋沢がボケたわけじゃない。ダンジョンで治療アイテムを取ってきたんだ」

 

 この話が長く続いても無意味だろうし、京太は素直に話すことにした。

 ただし、言うのは配信でわかる範囲で、プライベートダンジョンのことは秘密にしておく。

 何かまだ渋沢を信じ切れないからだ。

 

「えぇ~っとぉ……。おじさん、信じられない話だけど、たしかにかおるちゃんが無事っていうのが証拠……だねぇ……。偶然近くにあった〝インスタンスダンジョン〟で、GM型のモンスターを倒して治療アイテムをゲット……。運スキルでも付いてる勢いだなぁ……」

 

 インスタンスダンジョンとは、一時的に生成されるダンジョンである。

 ゲームの仕様としてはよくあるもので、クリアしたら消滅して二度と挑戦できない――というのを今回のカバーストーリーとしておいた。

 運が良すぎるというのはあるだろうが、整合性は平気なはずだ。

 

「で、これからどうするんだ、渋沢。戦力的に撤退して立て直すのか?」

「戦力は京太くん、桃瀬ちゃんが前で戦って、かおるちゃんがサポートすればいけるんじゃないかなぁ。あ、ちなみにボクはパワー勝負とか苦手のよわよわおじさんだから、サポートに徹することにするね~」

「わかった、この四角江町を開放しないとな」

「うんうん、それに灰色の竜も――」

「灰色の……竜……ッ!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、京太の表情が一転した。

 幼なじみの少女の目的である祖父の弔いよりも、最愛の妹を殺した相手への復讐の醜い気持ちが膨れあがったからだ。

 善意よりも強い、根源から吹き上がる烈火のような殺意。

 

「きょ、京君……ちょっと怖いよ……」

「……」

 

 普段なら謝るところなのだが、今の京太は気遣い一つできない。

 復讐者としての表情しか見せられないのだ。

 

「早く白虎を殺しに行こう。そして灰色の竜の臓物をぶちまけさせろ」

「は、ははは……。もう白虎の寝床まではそう遠くない……出発しようか……」

 

 胃を抑えながら、渋沢はそう言ったのであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 白虎の寝床まで歩く四人。

 四人というのはゲームでは区切りの良い数字で、よくパーティー人数上限として決められていることも多い。

 国民的RPGや、有名狩りゲーも四人パーティーだ。

 

「あと少しで……妹の仇が……」

 

 もっとも、京太としてはそんなことを連想できないくらいの精神状態だった。

 かおるも桃瀬も、今の京太には口を出しにくかった。

 普段は不器用でも、根は優しい京太をここまで突き動かす衝動なのだ。

 それはまるで戦場で血を浴びたバーサーカーに近い。

 渋沢は、やれやれと思いながら京太に話しかけた。

 

「京太くん、ちょっと落ち着きなよ~?」

「俺は……冷静だ……」

「冷静じゃない人間ほどそう言うもんだよ~。おじさんの人生経験で何度もそういうことがあったからね~」

「渋沢に……俺の気持ちがわかるはずがない……」

「まぁ、わからないかもしれないね。けど、似たようなものはおじさんにもあるんだな~、これが」

「どういうことだ?」

 

 復讐に囚われていた京太だったが、少しだけ渋沢の話に興味を持った。

 渋沢としては『食い付いた!』と思うのと同時に、あまり話したくないことを話さなければいけないという気持ちもあるらしい。

 

「まぁ、それなりにみんな……この作戦に懸ける想いってのがあるわけよ。ボクは……娘のためかなぁ……」

「そういえば、娘がいると言っていたな」

「娘が笑って暮らせる未来を創るため……なーんて、むず痒くなっちゃうけどさ、そういうものをおじさんも背負ってるわけよ」

「だが、娘は生きているんだろう? そんな渋沢に俺の気持ちなんて――」

 

 その言葉を発してから、京太は軽々しい発言だったと後悔した。

 いつも飄々としているはずの渋沢の眼が、深い泥沼のように沈み込んだように見え、自分と同じ仄暗いモノを感じたからだ。

 

「死ぬより辛いことなんて、世の中にはいっぱいあるんだ」

 

 諦め、熱を失い、泣きそうで嗄れた声。

 どんなモノに晒され続ければ、こんな感情を出せるのだろう。

 京太は少しだけ我に返った。

 

「……すまない、たしかに俺は渋沢のことを全然知らなかった」

「いや、いいんだよ。白虎戦の前に緊張をほぐすための雑談だと思ったけど、想像以上に重い方向になっちゃいそうだ。おじさんのことは気にしないでな~」

 

 そんなことを話ながら、四人は坂道を登った。

 

「――んで、良い感じに到着したみたいだよ。アレが白虎だ」

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