現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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幕間 ホテルで男一人と女二人……何も起きないはずもなく

 桃瀬沙保里はマジメな道場一家で育ち、本人も真っ直ぐに育ってきた。

 中学校でも皆勤賞をもらうくらいで、成績も上位とまではいかないが勤勉で常に平均以上は保っている。

 人当たりも良く、弱い者には手を差し伸べるような性格だ。

 

 同姓からの人気も高い。

 もちろん、異性からもそれなりの人気があるのだが、忘れられない人がいると言って断っていたそうだ。

 周囲からの恋愛評価は〝奥手〟となっている。

 しかし――

 

(女二人と、男一人がホテルの中で一夜を過ごす……。これは何も起きないはずもなく……!!)

 

 頭の中は妄想力抜群のピンク色だったのだ。

 桃瀬は現在、かおるの危機であった〝アンチチートポイズン〟を解除して、ホテルの部屋に戻ってきていた。

 

 部屋の中にいるのは、ベッドで横になって暇そうにしているかおる、まだ心配そうにかおるの方をチラチラと見ている京太、そしてそれをワクワクと観察している桃瀬だ。

 

 桃瀬は妄想を膨らませる。

 

(あれだけ必死に天羽さんを助けたってことは、大切な存在ってことだよね……! つまり、それは京君が天羽さんを好きってこと……! でも、天羽さんは京君へ素っ気ない……。じれったい、これは片思いってこと……!!)

 

 桃瀬は脳内相関図の矢印に興奮を覚え、身もだえするような感覚を覚えた。

 

(世界から注目される人気急上昇の超美少女お姉さんVTuberの中身――実はまだ年端もいかない少女で、それを陰ながら助けるナイトから愛情を注がれている……!!)

 

 妄想の中では異世界恋愛物のようにかおるがお姫様のような格好になり、京太はアゴが尖りまくった煌びやかなイケメンになっている。

 

(ここは私が部屋の外に出たら、京君が天羽さんにアタックをかけるかもしれない……。いや、さっき二人きりだったときにキスなんてしちゃっているのかも!? だとしたら、次の段階へいっちゃうのかな!? かな!?)

 

 ここまでいくともはや女子中学生の可愛い妄想というより、おっさんの下世話なエロ妄想になっているようだ。

 そんなおっさん状態の桃瀬はニコニコしながら、席を立って二人のお邪魔にならないように外の空気を吸いに行こうとしたのだが――

 

「あ、京太。そういえば家を出るときにガスの元栓って締めてきましたっけ?」

「締めてきたぞ。かおるは絶対に忘れると思ってな。ほら、スマホで証拠写真も撮っておいた」

「さすがにそれは病的なんじゃないですか……」

 

 京太とかおるの会話を聞いた桃瀬は、勢いよく噴き出しそうになった。

 

「う゛ぇえっ!? 二人って同棲してるの!?」

 

 その言葉に、京太とかおるは当たり前のように返してきた。

 

「ああ、少し前から居候させてもらっている」

「言ってませんでしたっけ……? 京太の奴、家に帰りたがらなくて……まったく……」

「ええええええ!?」

 

 桃瀬は驚愕の表情で、眼が飛び出し顎が外れそうになった。

 キスしているかどうかで妄想していたのに、すでに同じ屋根の下で暮らしていたのだ。

 もう一夜を共にする段階もとっくに過ぎているのだろう。そうに違いない。

 

(結婚しているも同然じゃない!? 毎日、密室でイチャついてるってことだよね!?)

 

 脳内に駆け巡るピンク色の映像。

 京太が相手にするのはお姉さん姿か、それとも少女姿のかおるのどちらなのか。

 それとも瞬時に入れ替えたりする高度なプレイなのだろうか。

 興奮で頭が爆発しそうになってしまうギリギリだ。

 

「あ、でもリスナーさんたちにはナイショにしていてくださいね」

「な、ナイショの関係!?」

 

 ヒミツは蜜をさらに甘くする。

 世間から隠れて許されない恋をする二人。

 見つかれば破滅。

 それが情欲を燃え上がらせるのだろう。

 そして、さらに求め合う京太とかおる――

 

「んふぁー!! 言いません!! 絶対に言いませんこんな美味しいこと!!」

「お、美味しい……? 何を言っているかわかりませんが、特に京太とやましいことがなくても、リスナーさんが杞憂してしまうかもしれませんからね。VTuberとしては隠し通すという配慮をしなければなりません」

「……え? やましいことはしてないの?」

 

 京太が溜め息を吐いてくる。

 

「誰がこんなガキとやましいことをするかよ……」

「あ、言いましたね! 私だって、京太みたいな陰キャはお断りですからね!」

 

 ギャアギャアといつものように言い合う京太とかおる。

 それを見てピンク色の妄想を終わらせるかと思われた桃瀬だったが――

 

(こ、これはもしかして喧嘩ップルというものでは!? 少女漫画で見たことある!!)

 

 さらなる妄想の材料を手に入れていた。

 そして欲望のままに言葉を口にする。

 

「あたしも天羽さんの家に居候しようかな! 丁度、学校も休校になってるし!」

「えっ、どうしてそうなるんですか……?」

「ヒミツを共有しちゃったので、そっちの方が都合良いでしょ!! ねっ! 京君!!」

「秘密とは……プライベートダンジョンのことか。たしかに桃瀬は知ってしまったな……。そう考えると一緒の場所に住んでいた方が都合がいいか」

「なるほどですね……」

 

 京太とかおるは納得したようだ。

 

(ヒミツの恋愛を育む二人を近くで観察できるなんて……これはとても美味しい……!!)

 

 違う方向で桃瀬も納得していたのであった。

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