現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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大会出場試験

 銃子主催のバトロワ大会、闘魚(ランブルフィッシュ)

 ルールはとてもシンプルだ。

 配信者含む三人一組のチームで、最後まで生き残ったチームの勝利。

 

 出場するためには試験を受ける必要があり、京太たちは東京ドームへやってきていた。

 出場希望者だけではなく、ただの見物人や、企業のスカウト目的だったりする人間が所狭しといる。

 京太たちは受付で名前などを記入して、試験会場へと通された。

 

(拘束されないということは、俺が渋沢を殺したことが知られていないのか……? 報道されているように、本当にモンスターの仕業になっているとでもいうのか……)

 

 罠という考えも頭によぎるのだが、そんな面倒臭いことをしなくても警察を使うか、冒険者ギルドによる私刑(リンチ)で京太を追いつめることができるだろう。

 何かの意図があって手を出せないか、本当に秘匿されているのだろう。

 それなら、その状況を利用して灰色の竜の情報を銃子から引き出すだけだ。

 

(普通に銃子と戦って話を聞き出そうとした場合は、情報を引き出す前に殺してしまう可能性もあるからな……。この大会で合法的に望みを叶えてくれるというのは助かる)

 

 ――そう思うことにした。

 渋沢の言葉に従うことは(しゃく)だからだ。

 

「わ~、東京ドームって広いね! あたし、初めて来たよ!」

 

 桃瀬の少し脳天気そうな声。

 テレビの野球中継などで見るのと違い、実際にそこにいると数倍は大きく感じる。

 巨大なスクリーンに、五万人以上は収容できるという観客席。

 まるでそこに一つの〝世界〟があると錯覚してしまうほどだ。

 京太は一瞬遅れて、それが自分に話しかけられているのだと気が付いた。

 

「ああ、そうだな」

 

 どうしても渋沢のことに引っ張られてしまっているとな、と思い気を取り直した。

 

「よし、試験へ挑むぞ」

「おー! やろうー!」

「やる気になりましたね、京太」

 

 

 

 ***

 

 

 

 回避力試験。

 FPSアバターの銃子らしい、敵からの射撃を回避する試験となっていた。

 もちろん、練習弾だが――

 

「いたっ!! いたた!! こんな速い銃弾十発なんて避けられるはずねーだろ!! もっと弾幕ゲーみたいに遅くしろよ!!」

 

 京太の前で試験を受けていたSTG(シューティングゲーム)アバターが、敵の銃弾をすべて食らって文句を叫んでいた。

 これが練習弾でなかったらHPをかなり削られていただろう。

 

「なるほど、かなり狙い(AIM)も正確なようだな」

 

 京太の番になり、試験が開始された。

 拳銃から発射される銃弾が京太に迫るのだが、それを冷静に見据えてスキルを使う。

 

「【神一重】……!」

 

 恐ろしい程の動体視力で拳銃弾を直前で回避した。

 

「う、嘘だろ!? あのアバター、銃弾を回避したってのかよ!?」

「……すげぇ」

 

 一定のリズムで十発が発射されたのだが、それをすべて回避する。

 ギャラリーが沸いているが、京太は気にしない。

 銃弾が何発来ても避け続けるだけだ。

 

(と言っても、ヘヴィマシンガンなどで連射されると面倒かもしれないな……。こちらの大剣が届かない距離で維持されると近づけない)

 

 

 

 ***

 

 

 

 次の試験は配信者による〝配信力試験〟だ。

 なぜか今回のバトロワは三人の内一人が配信者とされていて、その枠はかおるが担っている。

 

「な、なんだこりゃあ! こんなのを瞬時に判断しろってのかよ!?」

 

 かおるの前に試験をしたイケメンVTuberアバターは悪態を吐いていた。

 それもそのはず。

 設置してある五個のモニターにバラバラの映像が流れていて、その中で一番撮れ高と思われるものを瞬時にアップにしろというものだ。

 それが数秒単位で切り替えられており、かなりの難易度に見える。

 

「この登録者数30万人の企業VTuberのオレ様が失格だって!? 絶対におまえらの方が間違ってる!」

 

 イケメンVTuberは頭部に装着していたカメラを投げ捨てて、その場から去って行ってしまった。

 

(あちゃ~、あれじゃ炎上案件ですねぇ。それにモノを雑に扱うのもカメラメーカーさんからの案件が消えちゃいますよ)

 

 企業VTuberでもピンキリだなぁ、とかおるは思っていると自分の番となった。

 

(先ほどの方は、VTuberというものをわかっていませんね……。そう、大切なのは――)

 

 かおるは、ワザと撮れ高の低そうなものを選んだ。

 そして、そこで無言や悪態という対応をせずに喋った。

 ひたすらマシンガンのように喋った。

 とにかく自分の言葉を喋って、リスナーへ伝えるようにする。

 

(つまらなかったり、運悪く撮れ高がダメだったりする場合でも面白くする能力……それが実況系に必要なものです!)

 

 上位のVTuberを研究してわかったことだ。

 彼ら、彼女らはとにかく喋る。

 たとえば、ガチャでSSRを引けなくてもそれをネタにできるし、すぐに引けた場合も幸運だとアピールして――どんな状況でも面白くする話術を持っているのだ。

 結果、リスナーは魔法にかかったかのように、いつも最高の撮れ高を引き寄せる力を持っているかと錯覚してしまうのだ。

 

「やった~! 合格! やっぱり私は〝持って〟ますね! 幸運天使の天羽かおるをよろしくお願いしま~す!」

 

 かおるはカメラに手だけ写してVサインをしたのであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ひときわゴツいアバターたちが集まってきているのは〝攻撃力試験〟だ。

 これは言うまでもなく、桃瀬が出ることになっている。

 

「何というか、メチャクチャ男臭い場所だねぇ~」

 

 右を見ても、左を見ても野郎の筋肉と筋肉と筋肉と、たまに厨二病アバター。

 桃瀬は場違いな気もしてきていた。

 そんな桃瀬を見て、ガハハと笑う筋肉のアクションゲームアバターの男がいた。

 

「おいおい、お嬢ちゃん! 緊張してるのかい?」

「え、いや、まぁ……あはは……」

「まぁ、そんなほそっこい身体じゃ無理もないか! ちなみにオレ様は十秒間でダメージ500を叩き出してやった! 女のお嬢ちゃんじゃ、この十分の一も無理だろうなぁ!」

「……は?」

 

 その煽りに対して、桃瀬の格闘ゲーマーの本能が刺激されてしまった。

 売られた喧嘩は買う。

 

「このピンキーが、図体だけの木偶の坊に負けるはずねーだろ。ボケカスが」

「え? お、女の子がそんな言葉遣いしちゃダメでしょ……」

「うっせぇ、そのゲロ臭い口を閉じさせてやんよ、こっちのダメージでな!」

 

 男はここまで反撃されるとは思わず、少し引き気味だった。

 そして、桃瀬の番となった攻撃力試験を見て――

 

「あがががが!?」

 

 驚きのあまり、アゴを外してしまった。

 いきなり放たれる超必殺技〝ピンキーファイナルワイルドラッシュ〟によって、5000ダメージが叩き出された。

 実は京太のアドバイスによって、事前にゲージを溜めていていつでも使えるようにしておいたのだ。

 

「合格ぅ~! あたしの勝ちぃ~!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 最後は総合力試験だ。

 

 これに挑戦するのは、もちろん――

 

「お、おい。あの黒い大剣アバター……回避力試験で全弾避けた奴じゃないか……?」

「げっ、本当だ……」

「だけど、今回は避けるだけじゃどうにもならないはずだ……」

 

 試験会場に立った京太は、開始位置に立って確認をしていた。

 

「敵の攻撃を回避しながら、遠くにある的に攻撃を当てればいいのか」

 

 敵はゴム製の訓練ナイフを持ったダミーロボットだ。

 念のために係員に確認を取っておく。

 

「このダミーロボット、攻撃しても壊れないか?」

「あはは、またまたご冗談を。これはダンジョンで手に入れた特殊なもので、そう簡単には壊れませんよ」

「確認はしたからな?」

 

 京太は背中の大剣――ついこの間手に入れた〝白虎大剣〟を引き抜いた。

 太い刀身の見た目は、あのレイドボスの白虎のようにメカニカルだ。

 それを見たギャラリーたちが身震いをしていた。

 

「な、なんだあの大剣……何か異様な雰囲気を感じるぞ……」

「見ているだけで寒気がする……」

 

 ちなみに先日、配信で鑑定したときの能力は――

 

【白虎大剣 攻撃力388 闇属性 金属性 人類特攻 特殊スキル悪性の重圧:金属生命体となった白き虎から作られた大剣。ナノマシンによって常に鋭い刃を維持している。特殊スキル悪性の重圧は、白虎の畏怖を周囲に与えることができる。この大剣を手にした者はすでに人ではないのかもしれない。汝は虎の威を借る化け狐か? それとも……】

 

 このようになっているのだが、京太が知っているゲーム内の白虎大剣とは性能が明らかに異なっているのだ。

 そのせいで、配信ではWROプレイヤーたちがざわついていた。

 元の白虎大剣は攻撃力もここまで高くなかったし、特殊スキルもついていない。

 それに謎のフレーバーテキストも書き加えられている。

 

(これはこの世界を造り変えた〝神〟とやらが改変したのか? いや、性能が高ければどうでもいい。今はこの特殊スキル【悪性の重圧】とやらでプレッシャーに呑まれてしまっている場が問題だな。)

 

 京太はギャラリーの眼を気にせず、係員へ催促をする。

 

「どうした? 早く始めないのか?」

「は、はい。では……開始します!」

 

 係員の合図でダミーロボットが襲いかかってきた。

 本来ならこれを躱して、遠くの的へ銃撃するのがセオリーなのだろう。

 しかし、銃子の開催するバトロワ試験だからといって、全員が銃器を持つアバターというわけではない。

 少数ながら、京太のような近距離アバターもいるだろう。

 明らかに不利だが――

 

「こうすることもできるよなぁ! スキル【天撃】!!」

 

 スキル【神一重】でダミーロボットの訓練ナイフを回避したあと、カウンターで【天撃】を放つ。

 真っ二つにしないように、大剣の腹の部分でバットのように振り抜く。

 凄まじい衝撃がダミーロボットを襲い、野球のボールのように軽快に吹き飛ぶ。

 ゴシャアッと遠くの的にホームラン級の当たりを見せた。

 

「ほら、攻撃を避けて、的に命中させたぞ? 合格か?」

「えっ!? は、はい……合格……です……」

 

 腰を抜かした係員が、震え声で返事をしてきていた。

 周囲のギャラリーたちも目を大きく見開いて、驚愕の表情を見せている。

 

「マジかよ……」

「思い出した……。あいつ、〝謎の最強存在〟とか動画で話題になった八王子京太だ……」

「げっ……あの白虎を倒して、二つ目の都市も開放した奴かよ……」

「お、オレ……出るの止めるわ……」

「オレも……ちょっと急用が入ったから抜ける……」

「こんなの勝てるはずねーだろ……」

 

 そんなこととは裏腹に、京太はホッとしていた。

 ダミーロボットの強度が低すぎた場合、途中で砕け散ってしまって的に命中しない可能性があったのだ。

 

(係員の言った通り、頑丈で助かった……)

 

 直後、ダミーロボットが煙を噴いて爆発四散したのは見なかったことにした。

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