現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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四角江町で機材調達

 PCなどの機材調達は、四角江町で行うことにした。

 もっと近くでも店はあるのだが、らきめがオススメしてきたのだ。

 四角江町の町並みを見ながら、京太は質問をした。

 

「なぁ、どうして四角江町で買うんだ?」

「いくつか理由はあるけど、たぶんその一つ目はすぐわかるなの~」

 

 らきめがそう言うと、どこからともなく人が集まってきた。

 京太は敵かと構えそうになるが、どうやらそうではないらしい。

 尊敬の眼差しが注がれている。

 

「あの、白虎を倒してくれたチームの方々ですよね!?」

「あ、ああ。そうだが……」

 

 らきめに言われて、事前に仮想変身(アヴァタライズ)しておいたので京太たちとわかったのだろう。

 あのときの配信の視聴回数は記録的なものだった。

 

「うわー! 本物だ! 京太様、握手してください!」

「かおるちゃん、サイン頂戴ー!」

「も、桃瀬さん……! 写真一枚いいですか!?」

 

 周囲の人々から黄色い歓声が飛んでくる。

 

「え……なんだこれは……?」

 

 京太は慣れないことに戸惑ってしまう。

 

「なに言ってるなの~? 京太っち、かおるっち、桃瀬っちはこの町を救ったんだよ? 人気があって当然なの~」

「それは……冒険者ギルドからの……」

 

 灰色の竜の情報を得るためにやったことで、京太が最初から救おうとして救ったわけではない。

 そこに居心地の悪さを感じてしまう。

 

「……俺を誘った渋沢の成果だろ」

「犠牲になったチームメンバーの功績を主張するなんて……。謙虚で素敵、さすが京太様!!」

「い、いや、そういうわけじゃ……」

 

 どうやら何を言っても住人たちには無駄なようだ。

 京太たちの事情はどうあれ、白虎を倒したという事実は変わらない。

 ひとしきりファンサービス――かおるは手際よく、京太と桃瀬はぎこちなく――を終えて、野次馬は警察官に解散させられた。

 

「何かドッと疲れたぞ……」

「登録者数が100万人に到達したら、もっとファンから囲まれちゃうかもですね!」

 

 個人勢で登録者数100万人というのは現実的にあり得ない数字なのだが、この前の白虎戦がバズって現在の登録者数は50万人を超えてしまった。

 再び何かでバズれば到達してしまうという恐ろしい状態になっている。

 それを考えると根が陰キャコミュ障の京太は頭を抱えたくなってしまう。

 

「俺、ファンサービスなんてできないぞ……」

「ウィンクの練習をしましょう! さっきのファンの女の子は、握手をされただけで気絶しそうになってましたし、バチコン☆ と決めれば倒せますよ!」

「倒してどうする」

 

 そのツッコミに反応して、桃瀬が頬を赤く火照らせていた。

 

「ファンの女の子を押し倒し……京君……そんなエッチなことをしようと……!? 見境なく!?」

「そういう倒すという意味なのか……?」

 

 流れ的に収拾が付かなくなりそうで溜め息しか出ない。

 

「えーっと、そんなことより」

「ファンの女の子とエッチなことをするのが、そんなこと扱いなの!? 京君!?」

「……頭まで桃色になった桃瀬はスルーしてだな。今日は機材を調達しにきたんだろう? 早く店に行かないのか?」

 

 スルーされた桃瀬はシュンとして、かおるは財布の中身を確認しだした。

 

「激安のPC三台と考えても、かなりの出費……痛い……」

「かおるっち、PU・PEXは配信だとかなり重いから最新のハイスペックPCがいいなの~」

「最新のハイスペックPCって、周辺機器一式で三桁万円いくかいかないかくらいじゃないですか!? そんなのを三人分って……うっ、胃が……」

 

 どうやらまとまった収益が入っても、大金を使うのはメンタルにダメージを食らうらしい。

 

「PCショップについたなの~」

 

 先頭を行くらきめが指差したのは、全国展開しているPCショップだ。

 そこから店員らしき男性が揉み手をしながら出てきた。

 

「どうも、どうも。お待ちしておりました! 四角江町を救った英雄チーム様!」

 

 人の良さそうな顔のふくよかな体型で、首から提げている名札を見ると店長らしい。

 

「あ、どうもご丁寧に……。って、なんで俺たちが来ることを?」

「そちらの十五月様からご連絡があったので!」

「話を通しておいたなの~」

 

 あっけらかんと言うらきめに対して、かおるが抗議をしようとした。

 

「買うのは私なのに、そんな勝手に――」

「事前に話していただいたように、ウチとスポンサー契約を結べば最新PC三台をご提供も可能です」

「……提供!? タダってことですか!?」

「はい、もちろんでございます」

 

 タダと聞いてかおるはクルッと手の平を返した。

 

「いや~、さすが上位VTuberの十五月らきめ様ですね~! スポンサーとか私には考えも及ばなかったですよ~!」

「では、詳しい説明を店内で……」

「は~い! むっりょ~う♪ むっりょ~う♪」

 

 金のことになると機嫌が良くなるかおるを見送り、残された三人は苦笑いをした。

 

「まぁ、節約できるなら節約した方がいいな……」

「そ、そうだね……」

 

 手持ち無沙汰になり、京太は周囲を見回して気が付くことがあった。

 

「そういえば、四角江町って廃墟になってなかったか?」

「それは京太っちが見た白虎方面が一番ヤバかっただけなの~」

「そ、そうか……」

 

 ICBMが落ちてきたことを思いだし、全責任を渋沢に押しつけたかった。

 

「それになぜか主要ライフラインは無事だったし、アバターによる超人的な力での瓦礫撤去や、ダンジョン素材による修復などで復興が迅速に行われてるなの~」

「なるほど……」

 

 まだ見える範囲でもすべて元通りとはいかないが、通常では考えられないスピードで復興が行われているのは感じる。

 この世界になってマイナスなことも多いが、それなりに恩恵もあるのだろう。

 

「この辺りはダンジョン素材を取り入れた商品を試作している大手の会社もあって、それが影響しているのもありそうなの~」

「ダンジョン素材か……。そういえば、結構余っているな……」

 

 あれからも武器や防具のドロップを狙って潜ったりしているのだが、現物はドロップせずに素材ばかり出てくるのだ。

 京太たちでは有効利用できないし、それをどうにかするツテもない。

 

「ダンジョン素材、余ってるって本当ですか!?」

 

 突然、近くを歩いていた着ぐるみに話しかけられた。

 ビクッとしつつも、京太は返事をする。

 

「あ、ああ。余っているが……」

「それ、うちの企業で買い取らせていただけませんか!?」

「うーん、かおると桃瀬にも相談しないと……」

「かおる!? 桃瀬!? もしかして、あなたは八王子京太様では!?」

「そ、そうだが……」

 

 着ぐるみは器用に名刺を取り出して渡してきた。

 

「大変失礼いたしました。わたくし、こういう者です」

 

 そこには、美鈴(みりん)マテリアル広報担当〝鈴木真央〟と書かれていた。

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