現実世界でアバターまとって無双します ~モンスターが出現する過酷な世界になったけど、どうやらアバターをそのまま使えるらしく、廃ゲーマーだった俺は配信されて謎の最強存在としてバズってしまう~   作:†タック†

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三大財閥からの素材買い取り協力要請

 近くにあった喫茶店にやってきた、かおる以外の面々。

 

「美鈴……」

 

 京太はその名前に聞き覚えがあり、思わず呟いてしまった。

 桃瀬はキョトンとして聞き返してくる。

 

「みりん? お料理でもするの?」

「いや、美しい鈴と書いて美鈴だ。桃瀬もそれくらい目にしたことがあるだろう」

「美鈴……あっ、鉛筆とか、自動車とか色々作ってるところだ!」

 

 ゆるキャラ着ぐるみの鈴木真央は、器用に椅子に座りながら頷いていた。

 

「はい、グループ会社で様々な物を作っております。母体となったのは古い歴史を持つ美鈴財閥です。以前は佐藤財閥、塩村財閥、美鈴財閥の三大財閥とも呼ばれていました」

「あ、やっぱり砂糖、塩、ミリンで調味料だ!」

 

 鈴木真央はそれを咳払い一つでスルーして話を続けた。

 

「その美鈴グループの一つである、我が美鈴マテリアルはまだ有名とは言えませんが……加工技術には自信を持っております。どうか、京太様方のダンジョン素材の買い取り契約をさせていただけませんでしょうか?」

「ダンジョン素材の買い取り契約か……」

 

 京太は腕組みをして悩む。

 何を悩んでいるかというと――鈴木真央をチラチラと眺めているのが答えだ。

 

「あの、鈴木さん。もしかしてその着ぐるみは仮想変身(アヴァタライズ)した姿ですか?」

「うっ」

 

 どうやら図星のようだ。

 さすがにマジメな話をするのに、ゆるキャラの着ぐるみをかぶっている人間はいないだろう。

 

「ええと、答えにくかったらいいのですが、なぜその格好で……?」

「そ、それは……その……。これを見て頂ければ察してもらえるかと……」

 

 鈴木真央は器用にスマホを操作して、その画面を京太に見せてきた。

 そこに映っていたのはTwiitterの画面だ。

 アイコンはゆるキャラで、鈴木真央のアバター姿。

 

「うお、フォロワー数100万人もいる……」

「ええ、はい……。広報担当としてありがたいことにご好評でして、〝中の人〟の姿を晒すわけにはいかないのですよ……」

「そんな事情が……」

「そういうわけで敬語ではなく、ゆるキャラに話しかけるようにお気軽にどうぞ」

 

 ある意味VTuberのような苦悩を抱えているのだろう。

 京太もそれを踏まえて、普通に会話することにした。

 

「ええと……それはわかったが、なぜ俺たちの素材を買い取りたいんだ? 最も戦えるアバターを抱えている冒険者ギルドもあるのに」

「冒険者ギルドに関しては……その……」

 

 言いにくそうにしながら、京太の横に座っているらきめへと視線をやった。

 

「うちの冒険者ギルドはライバルの佐藤グループが先に手を付けているなの~」

「あ、あはは……その通りです……」

「佐藤グループ……。そうか、佐藤聖丸の母方が佐藤グループの関係者だったか」

 

 つまり、要約するとこういうことだろう。

 ダンジョンが発生して、その素材加工の需要が高まった。

 そこで目を付けた三大財閥グループ。

 佐藤グループは先に冒険者ギルドに取り入った。

 遅れた美鈴グループの美鈴マテリアルが困っていたところ、京太たちの話を偶然聞いて交渉しに来たということだろう。

 

「広報担当が独断で決めて平気なの~?」

「うちは美鈴グループでも小さい美鈴マテリアルなので、現場判断が結構通るんですよ。こんな千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないので」

「いや、別に俺たちが持ってる素材もそこまですごいわけでは……。これくらいだぞ?」

 

 京太は備蓄してある素材をスマホでメモしていて、それを鈴木真央に見せてやった。

 

「こ、これは……」

 

(たぶん微妙すぎて何とも言えないというリアクションか……)

 

 京太は期待に応えられなくて申し訳ないという気持ちになり、つい言い訳めいたことを言ってしまう。

 

「何というか、これは片手間で集めたもので……。今まで素材狙いでダンジョンに潜ったことがなくてだな……」

「ゴブリンキングの王冠に、サイクロプスの真眼!? それにまだまだある……。この内容で片手間なんですか!?」

「うん?」

「とても入手難度の高いものや、見たこともない素材の名前もありますよ!? それを片手間って……本格的に素材を集めたらどうなってしまうんですか……!?」

「あ~……、そうなのか?」

 

 京太は理解していなかったが、どうやらプライベートダンジョンでドロップする素材は、普通のダンジョンより特殊なものが多いらしい。

 ここまでずっと忙しく、ドロップする素材に関してはあまり調べてこなかったので初耳だ。

 

「この素材があれば、ダンジョン産の武具を作成できて、我が美鈴マテリアルの評価はうなぎ登りに違いありません!」

「ダンジョン産の武具を作成?」

 

 京太の耳は、その言葉を聞き逃さなかった。

 

「はい、直接の装備ドロップ品だけでなく、素材から加工して武具を作るんです。元々、加工技術に優れていた美鈴マテリアルの得意分野ですね」

「もしかして、アバターの銃弾に耐えられる防具なんかも作れるのか?」

「そういう特殊な物も、たしかあった気がします。しかし、なにぶん素材の確保が難しくて……」

 

 鈴木真央も、京太が何を求めているか察したのだろう。

 交渉に臨む商人の目になっている。

 

「つまり、俺たちが素材を取り引きすれば、闘魚(ランブルフィッシュ)用の防弾装備を作ってくれるということだな?」

「確約はできませんが、ご協力は惜しみません。素材確保は元より、我々が作った武具を一流のアバター様に使って頂ければそれだけで宣伝になりますので」

「わかった、契約成立だ。折を見て素材を集めてくる」

「ご決断頂き、ありがとうございます。後日、正式な書類や、防弾防具の資料などをお送りいたします」

 

 京太は、着ぐるみと契約成立の握手をしたのであった。

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