異世界種族のV転生 ~こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフ系VTuberの森焼イセルです! 今日もエルフの森を守るために配信するぞ~!~   作:†タック†

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人は見た目が九割、VTuberは見た目が……

 まずはVTuberという共通認識を作るために、イセルには他の配信を一日中見てもらった。

 最初は『見なくてもわかる、くだらないものとネットで知っているからな!』と言っていたのだが、次の日には『……自分がこれになれると思うか?』と自信をなくしていた。

 やはり実際に見てみると違ったし、一回やってみたという経験もあるのだろう。

 それを踏まえて後日、作戦会議を開いた。

 

「久しぶりに集まってもらったのは他でもない、この作戦会議で重要なことを決めようと思ったからだ」

 

 事務所の会議室に牙太の真剣な声が響く。

 それに対してイセルと秘書子のツッコミが入る。

 

「自分たち、毎日集まって顔を合わせているが?」

「作戦会議というか、企画会議ですか?」

「……すみません、俺のノリで言いました」

 

 社長は謝罪をするのも仕事なので、この謝罪もきっと大事なことなのだろう。

 牙太は無理やりそう思いながら話を進めた。

 

「機材の選定や、プロに任せられるところは任せるとして……さすがに元のアイディアは出しておかなければならない」

「元のアイディア? 自分も何か決めるのか?」

「牙太社長が仰りたいのは、プロへ伝える要望をまとめる……ということですね。具体的にはキャラ原案、OPやBGMの方向性など」

 

 さすが秘書子だ、うまく説明してくれた。

 

「その通り! とりあえずキャラ原案から作っていこう。まずは〝魂〟であるイセル、何かないか?」

「〝魂〟というのは〝中の人〟のことか」

「配信では中の人とか言うなよ……」

「キャラ原案は……VTuberの立ち絵とかの元になるやつだな。……自分が描いた絵じゃダメなのか?」

 

 イセルが描いたのは園児レベルの絵だ。

 さすがにアレを使うのはゲテモノすぎるのだが、一生懸命描いたらしいのでそれとなくフォローを入れながら諭すことにした。

 

「アレも味があっていいと思うぞ、うん! キッズやホラー(どこか)で刺さるかもしれない! しかし、イセルも活躍するVTuberさんたちの立ち絵を見ただろう!」

「見た……。たしかに……あの美麗さには一歩及ばないな……」

「……一歩か?」

「何か言ったか、牙太?」

「こほんっ! というわけで、新しくきちんとコンセプトなどを考えたいと思う。出た意見を俺がラフとしてまとめてやろう。こう見えてもオタクの道は通ったので絵に自信はある!」

 

 牙太は紙と筆ペンを用意して、まずは挙手しているイセルの話を聞くことにした。

 

「森焼イセルくん、どうぞ」

「うむ、森焼イセルだ。自分としては、強そうなのがいいな……! 強そうな鎧で、三メートルの筋肉モリモリのマッチョガール! 普段は魔力でパワーを強化しているが、やはりパワーの象徴である筋肉には憧れてしまう。自分の新しい外見にピッタリだろう!」

「……筋肉は却下」

「なぜだぁ!?」

「お前の声、全然筋肉ありそうに聞こえないし……三メートルの重低音巨人ボイスでもないだろう」

「そ、それなら頑張って低く喋る……。あ”~あ”~……おいどん、森焼イセルでごわす」

「……なぜごわす。理由としてはだな、声優さんと違って、リアルタイムで喋る時間が長いVTuberさんは声を作りすぎない方が有利だ。無理した発声だと喉に負担をかけることもあるしな」

「むぅぅ……人間風情の気遣いなど無用……!」

「……それに……ある程度〝魂〟と一致させておかないと面倒なことがある」

「VTuberなら、自分と立ち絵は別物だろう!? なぜ牙太は一致させようとする!?」

 

 牙太は言うか言うまいか迷ったのだが、異世界人エルフのイセルに対して空気を読めとはできない。

 

「〝魂〟がバレる前提で作った方が得策だ……。あまりにもそれぞれが乖離しすぎていると、バレたときの被害が大きくなる……。逆に言うと、〝魂〟と〝ガワ〟が近ければ、そこまで炎上はしない」

「え~……なんだそれ~……。堅苦しいな……VTuberって~……」

「あとはほら、オフコラボでの相手の印象を語るとき、あまりにも違うとそこでもウソを吐かなければならない。イセルは相手にウソを吐かせたいか?」

「うっ……。騎士たる者、そういうのは心が痛む……」

「というわけで騎士道精神に則って、ある程度はイセルと外見を合わせるのがいい。いや、むしろイセルそのままでも、見た目可愛いし、エルフだし……いけるか?」

「なっ、自分が可愛いだと!?」

「秘書子くん、どう思う?」

 

 秘書子は照れ顔のイセルを見てから口を開いた。

 

「そうですね。外見は基本的に男性受けすると思いますし、女性から見ても小さくて愛でたくなるような、もしくは友達になりたくなるような印象を受けます」

「よし、俺からはよくわからないけど、良い感じの意見も聞けた!」

「ま、まてまてまてまて! 自分は認めないぞ!」

「イセル、何を認めないんだ? かなり褒められているじゃないか」

「……恥ずかしいし」

 

 意外と押せばいけそうだ。

 というか押しに弱すぎるような気もする。

 

「見た目はイセルだが、今の鎧よりも強そうな装備を付けてやろう」

「強そうな装備!? それなら仕方がない……牙太、特別だぞ!」

「チョッロ」

「何か言ったか?」

「いいえ」

 

 ほぼイセルと変わらない外見でデザインすることが決定した。

 そこから牙太が、カソウシン#サラマンダーを強化するような装備を描き足していく。

 ただそのままではどうもしっくりこないと思っていたところ、秘書子がアドバイスをしてくる。

 

「2D、3Dで動かす場合を考えて、ここを干渉しないように修正しましょう。あとは配信で映るのは上半身がメインなので、そこを見栄えするように――」

「さすが秘書子くん……! 俺なんて、背面翼の増加ブースターパーツが巨大マニピュレーターとして展開して、大剣を掴んで必殺の超高速斬とかしか考えていなかった!」

「おぉ! いいな牙太! カッコイイぞ!」

 

 

 

 

 そんな精神的に子ども二人、大人一人というような状況でVTuber森焼イセル案が完成した。

 素体は140センチの小柄なイセルを使い、衣装としてカソウシン#サラマンダーをさらに見栄え良くしたものを着せた。

 

 少女にゴツい鎧というギャップが男子に受けるだろう。

 立ち絵が場所を取ってしまうときのために、ある程度のパーツを取り外しても平気にしておいた。

 数々のVTuberを見てきた牙太からしても、これはいけると確信できてしまう。

 

「っしゃー! 完成だ!」

「お疲れ様です」

「に、人間共……テンションがやけに高いな……。もう深夜……いや、早朝だぞ……」

「元社畜にとっちゃ徹夜が普通だからな!」

「絶対に早死にするぞ、貴様……。ところで今まであえて突っ込まなかったのだが、牙太のその絵はなんだ?」

 

 イセルは怪訝そうな顔で、牙太が高く掲げているVTuber森焼イセル案の紙を指差す。

 

「絵だが?」

「何か独特じゃないか……?」

「これは日本画ですね」

「……自分の顔、そんな感じだったか? 上手いのはわかるのだが……」

 

 筆ペンで描かれた、達筆すぎる日本画タッチのイラスト。

 葛飾北斎風の〝えるふ〟と言った感じだ。

 

「い、いいだろ別に! 実家が道場で、じーちゃんばーちゃんに教えてもらったのが色々と和風だったんだよ!」

「私は好きですよ」

「ひ、秘書子くん……!」

「自分としては不安だ……もしかして、このまま〝ガワ〟というやつになるんじゃ……」

 

 日本画VTuber、それはそれで面白いかもしれない。

 

「ご安心ください。これをイラストレーターのAに送り、そこから三面図に起こすので」

「イラストレーターのAさんだって!?」

 

 徹夜テンションも相まって、牙太は思わず叫んでしまった。

 イラストレーターAといえば、あの伝説のVTuber神凪ナルをデザインしたことでも有名だ。

 Twiitterでイラストをあげれば数万RTされ、イラストサイトでは常にランキングトップを走り続けている。

 しかし、そのどれもが無言投稿。

 仕事でも神凪ナルデザイン以外をしていないため、一切が謎に包まれた存在だ。

 一般人の牙太ではどうやって連絡を取るのかすらわからない。

 

「た、頼めるんですか……!?」

「はい、すでに了承済みです」

「う、うおぉぉ……」

 

 憧れのイラストレーターさんと仕事をすることが決まった牙太は、感無量で漢泣きをしてしまっていた。

 涙が紙にポタリと落ち、そこで気が付いた。

 

「や”べぇ”……俺”の”下”手”な”絵”が見”ら”れ”じゃ”う”……」

「牙太……鼻水も出てきた……気持ち悪いぞ……」

 

 今はイセルのツッコミなんて耳に入らない。

 

「Aはユニークなものが好きなので平気です」

「あ”り”がどう”……! あ”り”がどう”……!」

 

 感謝の漢泣きを続ける牙太に対して、イセルは面倒臭そうな顔をしながらもティッシュで鼻を拭いてやるのであった。

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