ギフテッドなウマ娘   作:ハヤモ

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前書き
新規投稿にするか迷うも、こちらにしました。
作者は文才が無く、他作者様の作品等を参考にする場合もありますが、違和感がある事もあるかもです。 ご容赦ください。

オカルト要素が存在するウマ娘の世界。
だからと、例えばこんな妄想。
レース知識はガバガバなので避けてます(殴
それでも間違いがあるかも。

ウマ娘としてのアヤベさんは、こちらの世界で生まれなかった胎の子の可能性を唱える方もいましたね。

ストーリーの印象的に、妹は姉より感情豊かで明るいイメージ。


魂 はんぶんこ。

 

 

「運命は私が持っていくね、お姉ちゃん」

 

 

闇の中に轟くは、言の葉の祈りだった。

祈るほどに眩い光が視界に広がる。

 

 

「これからは思うままに生きて。 それで、めいいっぱい幸せになって!」

 

 

この世に生まれる事が叶わなかった自分。

けれど魂と運命は姉と有り続けてきた。

だからこそ、この瞬間が堪らなく辛かった。

体は無くても共に走り続けた、ポニーカップの後も私の為にと走りを捧げた、もう1人の自分である姉に別れを告げるのが。

 

39回目の悪夢の果て。

姉を呪縛から解放する為に。

私は、"半分の魂"は消える。

 

 

『そんな事言わないで! あなたが消える事なんてない! 代わりに私が消えるから!』

「ふふっ、だーめ」

 

 

沢山の思い出を貰って、こんな時まで想ってくれるお姉ちゃんを持てて良かった。

 

 

「元気でね、お姉ちゃん」

 

 

本当に、良かった。

 

 

「愛してる」

 

 

正直に言うと心残りはある。

姉とずっと一緒にいたかった。

 

それでも後悔はない。

 

大好きなお姉ちゃんを守れたんだから。

 

これからは真昼の光の中でも笑って欲しい。

 

こうしてアドマイヤベガの妹は去った。

華々しいレースの陰にて光っていた星、双子の妹は己の犠牲と引き換えに、姉に希望を分け与えて芝の上から消えたのだった。

 

 

 

 

 

その筈だったが。

 

 

「……うん?」

 

 

気付けば何処かの芝の上に寝転んでいた。

橋が視界にあるので、河川敷の様だ。

 

 

「天国……じゃないよね?」

 

 

依然として魂の状態、けれど姉の心ではなく現世にいる状態らしい。

通行人に話しかけても、目の前で手を振っても反応が無いし、触れようとしても擦り抜けてしまう。 しかも人の身長くらいまでなら地上から浮けるとなれば、いよいよだ。

 

 

「こんなに自由だったの初めて。 運命は持ち去った筈だけど……お姉ちゃんと別れたから、取り敢えず大丈夫かな」

 

 

新鮮な感覚に困惑しつつも、自由に動き回れるなら、やる事は決まっている。

 

 

「お姉ちゃん、今行くからね!」

 

 

姉に会いたい。

ずっと苦楽を共にした半身との再会、それは当然の感情だったし、姉も認識出来れば喜ぶだろう。

取り敢えず周囲を見渡して、現在地の把握に努める。 トレセン関係者の作業服を見つけると、背後霊の様に後を憑いていった。

若い男の人だったがレース上の芝やダートを整備する職員らしい。 中央の学生服かジャージを着たウマ娘かトレーナーバッジを着けた人が1番分かり易いが、この際どうでも良い。 トレセンまで行ければ問題ない。

暫く「ついてく ついてく」したアヤベ妹は、自分の望み通りトレセン前までやってきた。 気を良くして思わず声を出す。

 

 

「よしよし、トレセンに戻って来れた!」

「……えっ?」

「えっ?」

 

 

驚いた声に惹かれるまま、そっちを見やった。

 

そしたらなんと、憑いた男と目があったのだ。

 

男は暫し硬直後、プルプルと震え出す。

その様は自由に事象を観測出来るようになったアヤベ妹からすれば、とても面白いモノに見えて堪らない。

 

 

「私の事、視えてる?」

 

 

他の人は見えず、この人は見えるとは如何に。

妹ちゃんから見ると、男は理性と恐怖の鬩ぎ合いの最中である。

やがて男は首を横に振って見せた。 口では否定しても体は肯定している。

 

 

「視エマセン視エマセン」

 

 

その差と反応にゾクゾクの妹ちゃん。

動物観察の様に莞爾として見つめていると、男は真っ青な顔を引き摺り学内へと溶け込む様に逃げていく。

それを見て、妹ちゃんは目を輝かせた。

 

 

「ヘイタクシー♪」

 

 

この日、トレセンで発狂した職員が取り押さえられたとか。

 

以後、姉に会いたい妹ちゃんと不幸にも憑かれた男との奇妙な関係が続いていくのである。

 

 

 

 

 

「やっぱり貴方にしか見えないんだね」

 

 

周囲のウマ娘に取り押さえられ、医務室に担ぎ込まれた後、理事長室に呼ばれる程の騒動も収まり、やっと解放されて帰路に着く男の人。

学園は門限の時刻を過ぎており、すっかり夜の闇が支配する。 昼間はウマ娘で活気に溢れているトレセンも、こうなると不気味だった。

 

東京府中の夜空の下を独占し闊歩する男に申し訳ないと思いつつも、妹ちゃんは彼と会話する。

ここまで来ると男も流石に慣れたのか、普通に合わせてくれている。

 

 

「そうらしい。 理事長も無反応だったからな」

「むー、ひょっとして貴方、霊感強い方?」

「たぶん。 子供の頃から山や路地裏でヤバいモノが見えた事がある」

 

 

両方に手を乗せつつ何気なく聞く妹ちゃん。

男に触れられた感覚は無いが、妹ちゃんは意識すれば彼には触れるらしい。 こうすると移動が楽で、エスカレーターに乗っていると表現された。

心霊写真の話に、肩に謎の手が載っているというのがあるが、多分"この手"なのだろう。 迷惑な話である。 視える分、タチが悪い。

 

 

「そっか。 大変そうだね」

「お陰様でな」

「貴方の体質は私の所為じゃない。 けれど、こうして会話出来る事には感謝かな」

「……そうかい」

 

 

気不味くもあり、同時に感謝もある妹ちゃん。

彼がいなくても姉には会えるだろうが、こうして姉以外と話せる機会なんてなかった。 そんな新鮮な経験をさせてくれた彼は既に特別な存在だ。

 

 

「ところでずっと気になってたんだが、君はアドマイヤベガなのか?」

 

 

今更な質問。

錯乱時は逃げの一手だったが、冷静になり、漸く疑問に辿り着いた。

 

 

「お姉ちゃんを知ってるの?」

「お姉ちゃん? 君は本人じゃ……ないよな、G1、クラシック……ダービーと、そんな凄いウマ娘の身に何かあれば騒ぎになるし。 というかお姉ちゃん? アヤベさんに妹がいたのか?」

「うん、双子だったの。 私は生まれなかったけれどね」

「おおぅ」

 

 

あっけからんと話すが、内容は重バ場である。

 

 

「君も大変だったんだな」

「何も無かったよ。 生まれなかったもの」

 

 

姉から離れた事で、少し負の感情も出やすくなったのか。 妹ちゃんは暗い影を落とす。

それに気付けない程、男は鈍感ではない。 失言に対して謝罪した。

 

 

「すまん」

 

 

その言葉に、姉とのやり取りを思い出してか。

消えた事に後悔なんて無いのに、こんな未練を吐いた自分に叱咤し訂正した。

 

 

「謝らないで。 私はこれまでお姉ちゃんと一緒だったから寂しくなんて無かったの。 だからかな、離れたら急に弱気になっちゃった。 あははは……」

「じゃあ」

 

 

男は真剣な眼差しで妹ちゃんを見て言った。

 

 

「アヤベさんに会いに行こう。 明日にでも」

 

 

妹ちゃんは驚いた。

それは元々の予定だったけれど、良くも悪くも赤の他人が、そこまで協力してくれるとは思わなかったから。

 

 

「いいの?」

「こうして出会ったのも何かの縁。 それに、他の人達が君を認知出来ないなら、アヤベさんも同じかも知れない。 最悪は俺の口を貸してやる」

「じゃ、身体も貸して?」

「ああ……あ?」

 

 

妙にねちっこい眼差しを向け始める妹ちゃん。

冷汗がダラリと落ちる。

他者の魂を許す行為は、時に危険だった。

 

 

「だってギュッてしたいし。 それに他の経験もしたいよ?」

「他の経験ってナニ? まさか薄い本みたいに俺の身体を酷い事に使う気!? てかギュッてアウトだよ、アイドルな立場でもある彼女達に男が抱き付いたら事案なんだよ犯罪だよ!?」

 

 

危惧すべき事態である。

妹ちゃんは単なる守護霊や地縛霊でなく、呪縛霊の様な悪霊か或いは変態にジョブチェンジしようとしている。 なんなら乗っ取ろうとしている。

 

 

「生きてるって、どんな感覚なのかな? 教えてくれる?」

 

 

どろり、と。

光を瞳より落とした彼女が攻めぎ寄る。

両手を伸ばして"背中から抱き締める"。

 

 

「トイレ! トイレ行ってから!」

「大丈夫、怖がらないで。 直ぐ返してあげるから。 やり方、分からないけど」

「駄目じゃんそれ! うわ、ナニするやめ」

 

 

スッと入る得体の知れないナニか。

その異物に体は拒否反応を示したか、ショートしたように男は目を閉じ意識を闇の中へと手放した。

 

 

「…………ふぅ」

 

 

息をすって、吐く。

次に目を開けた時は、男ではない。

男に憑依した、アヤベ妹であった。

手を見つめ、グッパーして感傷に浸る。

 

 

「わぁ、これが生きてるって感覚なんだね。 これでお姉ちゃんと触れ合って話せれば良いな!」

 

 

息をして、地面に足付き空気を感じる。

この生者にとって当たり前の行為が、生まれる事を許されなかったウマ娘に、どれほどの衝撃を与えた事か。

魂が姉と共にいた時も、姉と共有してある程度の感覚と知識はあったつもりだが、やはり生者は違うものだ。

 

 

「そういやトイレにって……あっ」

 

 

と、ここで内股になり急に赤らめる。

股間のムズムズ。 ウマ娘に無いナマモノ。

脚力、腕力、聴力など、人耳を圧倒するウマ娘だが、唯一彼女達が持てないモノ。

男と女。 種族と別、根本的な違いがソコにある。

男という未知の感覚を意識すればするほど、男の体、精神に引っ張られて性者の欲求不満が、知的好奇心が湧いて来る。

 

 

「し、仕方ないよね。 今は仮にも私の体なんだし、私が代わりに色々しないと……」

 

 

体を返せば良いのに、言い訳して彼女は長めのトイレQKを過ごすのだった。

 

翌日。

妙な倦怠感と共に、トイレで目が覚めた男。

この状況を生み出したアヤベ妹に困惑と恐怖を覚えさせられたのだった。

 

 

「何をした? 俺の体で何をしたんだ!?」

「女の子に聞く? セクハラだよ」

「どの口が言う!?」

 

 

魂が解放され、仮初の肉体をも手にしハッチャけた妹ちゃん。

対し振り回される男側。 彼等の明日はどっちだ。




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