大東亜戦争
それは、当時の大日本帝国海軍の主力空母6隻からなる機動部隊が米国領真珠湾を奇襲した事から始まる。
当時、世界の列強国海軍はより多くの戦艦を有する海軍が海戦を有利に進めることができるという、「大艦巨砲主義」を信じていた。だからこそ、航空機によって、それも水深の浅い真珠湾で戦艦部隊を日本の雷撃隊、爆撃隊が壊滅させることなどだれもが信じがたいことだっただろう。
この奇襲攻撃は世界に驚きを持って報じられた。日本海軍が海軍史をこの攻撃によって変えたのは紛れもない事実だろう。その後、帝国陸海軍は破竹の勢いでアジア地域に進撃。「大東亜共栄圏」は完成するかに思われた。
しかし、予想だにしない連勝は人を慢心させる。これは、数千年の人類の歴史が証明しており、日本海軍もその歴史の節理には抗えなかった。
ミッドウェー海戦 空母 赤城、加賀、飛龍、蒼龍 沈没
ソロモン諸島の戦い 戦艦 比叡、霧島 沈没
マリアナ沖海戦 空母 翔鶴、大鳳 沈没(機動部隊壊滅)
レイテ沖海戦 主力艦 多数沈没 (聯合艦隊壊滅)
菊水作戦.、坊ノ岬沖海戦 神風特別攻撃隊 多数出撃
戦艦 大和 沈没
そして、昭和20年、8月15日 日本の長い長い戦争は、
終わった。
終戦後、日本の陸海軍は解体。国としてのシステムもほぼ1から変えられることになる。
世界を二分する大戦に敗北した国がどんな歴史を辿るか…それは、一次大戦後のドイツを見れば一目瞭然だろう。当時の日本も例外ではない。21世紀となった今でもその歴史の深い傷跡は完全には癒えたとは言えない。
例えば、日本の最高法規である明治憲法は、「日本国憲法」というGHQの原案に沿った方針の物に変えられた。当時、とにかく日本を無力化したかった連合国にとってはまさに理想通りの国家に日本はなってくれた。
しかし、人類は戦争という愚行を繰り返し続ける。朝鮮戦争の勃発である。第二次世界大戦終結からわずか5年で、米国の日本無力化計画は崩れ去った。
そして、この瞬間を持って、再び日本は動乱の渦へと巻き込まれていく。
その戦後日本を、時には国民から心無い言葉を浴びせられ、時には国会議員から叩かれながら、日々祖国の平和を最前線で守る者達がいた。
彼等の名は、「自衛隊」。
憲法に定められた戦力には該当せず、専守防衛を掲げながらも世界トップクラスの実力を持つその組織は、今日も祖国の笑顔を護っている。
今回のお話は、そんな自衛隊の、とある海上自衛官の「奇跡」とも言える物語である。
2032年、4月6日 海上自衛隊佐世保基地
満開の桜が、まるでイルミネーションの如く咲き誇る。その桜達の眼下には、休日を謳歌する家族たちが、カップルたちが、ショッピング中の外国人達が無尽に行き交っていた。
今日もここ、佐世保は平和だ。俺が今いる海自護衛艦「はぐろ」の艦橋からは少なくともそう映る。4月初旬のこの時期特有のバタバタした雰囲気に覆われる世間にも、休日というものはあるらしい。
ブォォォーーーン……
外から軍艦特有の重厚感溢れる汽笛が聞こえる。どうやら、米海軍もしくは海自の艦が佐世保港に入港したようだ。やはり何度聞いてもこの力強い汽笛音には胸が踊る。
汽笛の鳴る先に見えるのは、我が海上自衛隊の第4護衛隊群旗艦の、航空機搭載型護衛艦「かが」だ。護衛艦といってもその中身は空母そのものである。やはり、いつ見てもかがはまさに浮かべる城だ。
「お、2尉、かがが入港しましたよ。」
ふと後ろから声がした。振り返って見ると、そこには俺の部下の橋本3等海曹が2人分のコーヒーを持って立っていた。
こいつとも長い仲になる。背丈は170後半、スラリとした体格で、それでいてかなりのイケメン。
護衛艦の一般公開イベントでは、常に女性の人だかりができていて、海上自衛隊の広告としてもよく掲載される。それでいて23歳。海曹に任官し俺の部下となってこの方3年目。性格も欠点らしい欠点がない。そりゃあ人気も出るわな。チキショーめ。
おっと。まだ自己紹介をしていなかったな。
俺の名は九鬼駿斗。海上自衛官だ。階級は2等海尉。一応これでも幹部だ。まぁ軽い経歴を話すと、大分県出身で、26歳、防大73期で今は佐世保の護衛艦はぐろで砲術長として勤務してる。
そうだなぁ…あとはぁ…容姿について触れとくか。身長は164センチで、体重は66キロ。お世辞にも良いスタイルとは言えないな(笑)
顔面偏差値は自分では57くらいかな。これでも高校時代彼女はいたんで。ん??隣のイケメンに早く代われって?シビアなこと言うねぇ…
「ハァ………」ドヨーン
橋本「どうしたんですか?九鬼二尉?」
九鬼 「…お前、腕立て150な。」
橋本「えぇ!!?なんでですか?!」
完全な八つ当たりだ。許せ橋本。
橋本「てか2尉、どうして今日はそんなに不機嫌なんですか?」
流石は橋本。俺と長い間過ごしてるだけはある。
そう、俺が不機嫌なのは実は先程の意味不な自己紹介前からなのだ。橋本への愚痴(?)はそのついでに出てしまった。
俺が不機嫌な要因。
それは、日曜の今日に当直を任されている事だ。
そんなこと?いや、違う。それが今日なのがいけないのだ。今日は俺にとって、任務と同じくらい大切な用事がある日なんだ。そんな日に限って当直。くそやろーめ。
九鬼 「お前、今日なんの日か分かる?」
橋本「今日ですか?うーーーん…………」カンガエ
橋本は完全に長考の構えに入ってしまった。その仕草までイケメンって……どーなってんねんこの世界は。
橋本「…思い付かないですね…」
どうやらわからなかったようだ。その橋本に俺は正解の印として、俺が日常的にしているとあるソシャゲの画面を見せた。
そのゲームの名は、「艦これ」。
旧帝国海軍を始めとした、第二次世界大戦頃の艦艇を美女、美少女に擬人化したゲームだ。2013年にサービスが始まってから、今年で19年目。まさにロングヒットと言えるだろう。それでいて未だに管理元のDMMGamesでは売り上げトップ3を維持しているのだから、まじで人気ゲームだ。ちなみに俺も、ゲームセンターでこちらも稼働中の、「艦これアーケード」も含めて10年目の中堅提督だ。
ちなみにこの艦これは、プレイヤーのことを、艦隊の司令官に習って「提督」と読んでいる。
俺はこのゲーム10年間ドハマリしているのだ。もう、これが飯同様に生活の一部なのだから今更辞めろと言われてもムリだ。
それに、このゲームがここまでのロングヒットを記録できたのにはもう一つ理由がある。
実は、艦これはミリタリーのジャンルにも含まれることから、我々自衛隊やかつての帝国海軍の主要都市などとも定期的にコラボし、大きな経済効果を生んでいる。その主要都市には、今俺がいる佐世保市も含まれているんだ。
そして、今日4月6日こそ、年に一度の艦これコラボの日なのである。二日前に突然決まってしまった当直。あの時の目は俺史上一番だったなぁ…
橋本「あぁ……そういえば、今日二尉の好きな艦これのコラボ日でしたねぇ…」ニガワライ
九鬼「お前にゃ分からんよ…この俺の心なんてよ…」ナミダメ
橋本 「あはは…」ニガワライ
今日、佐世保がかなりの賑わいを見せているのもこのコラボが原因でもある。はぁ……良いなぁ…
そう思うと、この窓から見える佐世保市中心街が余計にキラキラ見える。
橋本「んん…?」
九鬼「なんだぁ…橋本、そんな声出して」
たそがれていると、急に橋本が抜けたような声を出した。
橋本「二尉、あそこの桟橋見てください!」
俺は、橋本が指さした方を見た。その指先には、海自基地の護衛艦が係留されている桟橋に向かって大勢の人だかりが走ってきていた。
九鬼「お、おい…なんだよあれ…」
橋本「いや、自分もなんのことがさっぱりで…」
よく見ると、彼らは全員俺達と同じ自衛官のようだった。しかし、今日は日曜、ほぼ皆外出しているはずだ。時間もまだ門限の1900には満たない1035。余計に分からない。
橋本「二尉、これは一体…?」
九鬼「わからん。だが、何かあったんだろう。橋本、念の為、俺達も乗組員を迎え入れる準備を『バタン!!』「九鬼、橋本、至急戦闘服に着替えろ!!!」
九鬼、橋本「…え??」
とりあえず、彼等を迎え入れる準備をしようとした瞬間、はぐろ副長の美山二等海佐が押し入ってきた。それも、血相を変えて。
九鬼、橋本「副長、お疲れ様です!」<(`・ω・´)
美山「うむ。二人共、事情は後ほど話す。今は命令に従ってくれ。戦闘服へ着替えた後、CICに来るように。」
九鬼、橋本「は!!」
いきなりの招集命令に、戦闘服への着替え…間違いない。確実に何かあったんだろう。こんなことは初めてだ。
ーそれから2分後、はぐろCIC内にてー
美山「よし、二人共来たな。事情を話そう。まだ知らないのは君達だけだしな。」
ザワザワザワ……
やけに騒がしい。これで、先程の推理は完全に確信に変わった。
美山「単刀直入に言おう。我が国の海上保安庁の巡視船が、対馬沖にて『撃沈』された。」
九鬼、橋本「!!?」
言っている意味が分からない。撃沈?それも、海保の巡視船が??
九鬼「申し訳ありません、副長。おっしゃっていることの意味が理解できないんですが……」コンワク
美山「無理もない。私だって、未だに信じられん。わかった。詳細を話そう。」
ー50分前、対馬沖を航行中の巡視船「きたかみ」艦橋内にてー
船長「いいか?しっかり見張れよ。ここ最近、この海域において中国海軍の艦艇が異様なまでにうろうろしている。例え何も見えなくとも、常に何処かにいると思って監視しろ。」
遡ること一か月前、佐世保所属の護衛艦あきづきが中国海軍艦艇からのレーダー照射を浴びた。事実上の攻撃目標とされたこの事件以来、海保は佐賀、長崎、沖縄の巡視船の総力を挙げて当海域の警戒監視にあたっていた。しかし、流石にそれは杞憂なのでは、といった声も日本国内から多く上がっており、それは海保側でも同様であった。
そして、その慢心が、きたかみに悲劇として降り掛かる。
乗員「はぁ……、御上も面倒くせぇな…こんな事、30年近くザラに行われているじゃねぇか。」
乗員「そう言うなよ。御上はそれだけお隣の侵略が怖いんだよ。それに、今回はちと変な感じがある。」
乗員「なんだそりゃ(笑)お前まで怖いのか?あきづきを照射したのだって、フリゲートクラスだって聞いたぞ。あくまでも挑発だよ、挑発。」
乗員「全く…まぁ、今は勤務中だ。この話はまた後で……ん?」
刹那、彼等は自らの死を悟る。海中からの伏兵によって。
乗員「お、お、おい!!魚雷だ!魚雷だぞ!!!報告しろ!!」
乗員「わっ分かってる!こちら、右舷見張り員!!右舷より魚雷接近!!!回避を」ドォォォォォン…………
ー再びはぐろCICー
美山「これが、きたかみの最後だ。」
九鬼、橋本「………」
俺達二人は、立ち尽くすことしかできなかった。
目の前に、「戦争」というかつてのものと思っていた化け物が姿を表した。それも、このような形で。かつて帝都を業火で包み、多くの純粋な日本人が血と涙を流した戦争。そいつは、どうやら日本にまだ住み着いていたようだ。
それを退治せねばならぬ。自衛隊が訓練だけをする、その呑気な時代がたった今終結した。俺達は、祖国の防波堤として、血を、涙を命を大海へと解き放たねばならない。
いずれは来るだろう。それは、俺のいない時代なんだろうな。
さっきまではゆらゆらそんな事を思っていた。だが、俺はどうやらハズレくじと言うべきか、当たりくじと言うべきか、そいつを引き当てちまった。
やらねばならぬ。そうでないと、この国がやられる。
そうだろう?橋本。
美山「?橋本3曹、何故笑っている?」
俺の隣には、ぬらぬらした眼光を放つ、橋本がいた。いや、獲物を見つけた獣といったほうが正しいのか?かつて、RIMPACにて参加艦艇トップの射撃精度をはぐろは誇ったことがある。
その時の砲術長が俺で、実際に引き金を引く砲術員がコイツだった。こいつはその時、
ー「いつか、ホンモノの海戦に参加したいものです。」ー
そう言っていた。側から見れば不謹慎。しかし、軍人の性と言うべきか、平和を守る俺たちでさえも、戦闘となれば、血が騒ぐものなのだ。
橋本「副長、やりましょう。この国を今守れるのは我々だけです。」
美山「…もうじき出航する。ただし、まだ海上警備行動の範疇だ。あくまでも専守防衛を徹底し、任務を果たす。2人とも、自衛官としてそれだけは忘れるな。」
九鬼、橋本「は!!」
直後、ラッパが鳴り響く。出港用意のラッパだ。
艦長「総員、出港用意!!」
はぐろ艦長の松永一等海佐がはっきりそう言った。
ついさっきまでの団欒としていた雰囲気はすでにない。もう俺たちの表情は、祖国の防人の顔になっているだろう。
さぁ、いこう。
この国を守りに。
これから少しずつ訂正加えます。