ーー今から3ヶ月前、俺は菅野直海軍中将の呉訪問の護衛として、この街に来ていた。この歴史の見える丘から少し離れた所にある、煉瓦造りの役所のような大きな建物、呉鎮守府本館で、俺は『久しぶりに』菅野中将と会った。
身長にして俺の164センチとほぼ同格、体型も筋肉質な細マッチョで、その顔は漫画『ドリフターズ』で見た顔と雰囲気はまんま同じだった。
前世では飛行服姿の写真しか残っていなかったから、後世の俺からしてみれば大分新鮮な感じがある。
この世界の俺の記憶と、自我を持っているかもこの前世の俺の記憶が混ざっているから、説明するのがかなり面倒になる。そして、記憶を振り返って驚いた事といえば、この世界の俺は菅野直の教え子ということ。
この世界にも1953年に防衛大学校が設立され、世界でも類を見ない陸海空軍共同の士官学校として注目されていた。そして、この年から海軍の制服が前世の海自の物と同一になり、海軍の意匠を残す為に防大生の制服は帝国海軍の士官の軍服(前世の防大と同じ物)になった。
そして、そこで当時指導教官だった菅野直と出会っていたんだ。つまり、今から語る記憶は、先ほども言ったようにまだ自我がこの世界の俺のものだった頃の物だ。
〜〜〜
3ヶ月前……
その日の呉は広く晴れ渡り、冬にしては穏やかな陽気と、少し乾いた空気が肌に染みる。そんな天気だった。
前日降っていた雨が草木を濡らし、美しい反射を繰り返している。
九鬼「お久しぶりです!菅野中将!本日閣下にお供いたします!海軍憲兵中尉、九鬼駿斗です!お願いいたします!」
似合わない制服を見に纏い、3年前からなんら変わらないヤンチャな顔で答礼する彼は、防大で自分をシゴいた菅野教官そのものだった。
菅野 「フッ、中々に様になってんじゃねぇか、九鬼」ケイレイ
1年生で右も左も分からない当時の俺に、いきなり高圧的にものを言われ、気が滅入ったのを覚えている。しかし、段々と菅野教官とも打ち解けることができるようになり、軍隊の士官学校では考えられない程に親密な関係になったことは、2人だけの秘密。
堅苦しい敬礼を解き、俺は懐かしいその人に話しかける。
九鬼「…ふぅ、全くびっくりしましたよ〜、いきなり佐世保から呉に呼ばれたから来てみたら、鎮守府の長官から『今日は菅野大臣の護衛のために呼んだから、しっかりやってね』なんて言うんですもん!」
菅野「ハハ、そういうなよ。久々にこうして会えたじゃねぇか!」デコピン
九鬼「痛!ちょっと教官…」
菅野「ニシシ」
菅野「しかし、お前と会うのも2年ぶりになるな〜」
最後に会ったのは海軍兵学校を卒業し、その後遠洋航海から帰ってきた時に一度だけ横須賀で食事に行った時。それから菅野は海軍大臣に、そして九鬼は警務学校への入校を命じられ、各々の職場へと向かった。
九鬼「…それで、今日はまたどうして自分を呼んだんですか?ただのお供であれば、呉の憲兵でも良かったのに」
菅野「まぁ、今回はお前にも見ておいてほしいもんがあってな」
九鬼「?自分がですか?」
菅野「あぁ、お前、今年で異動が出る年だろ?」
なんで菅野教官がそれを知っているのか、少々驚いたが、彼のことだから俺の事はお見通しなのかもしれない。
九鬼「ええ、そうですが…」
菅野「…今日、お前の次の勤務先が決まるかもしれねぇ」
先程までの楽観的な表情から一転。海の方角を鋭い視線で見据える彼に、俺は直感的に事の重大さを感じた。彼は、どこに向かうつもりなんだ?
菅野「よし、まぁ挨拶はここら辺で、そろそろ行こうか」
九鬼「は!それで、どちらに?」
菅野「…呉鎮守府の『別館』だ」
九鬼「…!呉の、別館ですか…!?」キョウガク
呉鎮守府別館。かつては艦娘部隊で最大かつ最強の艦隊を備え持つ鎮守府だった。かつて、この菅野教官も15年間ここで長官を勤め、この期間に海軍大尉から一気に海軍少将までのし上がった。彼自身は『俺の手柄なんて、15年間で1つもねぇよ』とは言っていたものの、街でたまに艦娘と会おうものなら飛びつかれる程の人気ぶりだった。よほど良い指揮を取ったのだろう。
しかし、この菅野教官が海軍航空隊へ呼び戻され、新たな司令官が着任すると状況は一変。当初90人以上いた艦娘は、一気にその数を20前後まで減らした。
この時、海軍部内では菅野教官や山本五十六元帥海軍大将をはじめとする『艦娘共存主義』の将校達を次々と艦娘関連の要職から外す人事が執り行われていた。幸いにも横須賀鎮守府だけは山本元帥がその座を守り切ったが、それ以外の呉、舞鶴、佐世保は全員司令官が交代した。
九鬼「教官、かなり危険ですよ…あそこはかなりヤバい場所だと、憲兵達の間でも噂です。確か半年前、我々佐世保の憲兵3人が検査立入をした際、そのままその3人は失踪しています…いくら艦娘と仲が良かったとはいえ、危険極まりないです!」
そう、6年前まで彼がいた鎮守府とはもう違うのだ。組織図も、性格も何もかも。
菅野「ごちゃごちゃうるせぇ。もう決めた事だ。それに、ただの視察じゃあない。」
菅野教官は俺に『ついて来い』と言わんばかりに首を奥の車の方面へと振った。
そこには、黒いトヨタの海軍公用車が停まっていた。中には運転手の水兵と、後部座席に何やら長身の女性らしい人も乗っていた。
菅野「今回お前に来てもらったのは、あの呉の長官『赤井義明』の暗殺を手助けしてもらう為だ」
九鬼「!!」
信じられなかった。まさか自分が4時間かけて呉に来て、人殺しをやれというのだ。俺は全身を貫かれた感覚に陥り、菅野教官へ問う。
九鬼「暗殺って…どうやるんですか?!確かに赤井中将は指揮官の技量では御座いませんが、流石に軍法会議モノですよ!」
菅野「そこは安心しろ。俺の海軍大臣最後の仕事は、『赤井中将の艦娘多数損失による処罰』だ。それも極刑の死罪。方法は俺に一任するっていう程だ。だから、裁判沙汰になることはねぇ」
どうやら彼は本気らしい。その目には、今まで家族同然に可愛がってきた艦娘達を苦しめた、赤井へのドス黒い復讐心そのものを宿していた。
九鬼「…分かりました。協力します。ただ、何か勝算が?」
菅野「勿論ある。今回お前は、赤井を提督執務室から中庭へ引き摺り出してほしい。アイツを殺す実行役は、コイツだ」
そう言うと、菅野教官は車の後部座席のドアを開ける。そこには、憲兵隊の書類で見覚えのある1人の艦娘が乗っていた。
??「はじめまして、九鬼中尉。私は長門型戦艦1番艦の艦娘、『長門』だ」
そう、長身でロングヘア、麗しい顔立ちに好スタイル。写真で見たことのある長門そのものだった。
菅野「コイツは俺が呉で長官やってた時、ずっと秘書艦をやってたんだ。」
どうやらこの2人はかなり親密な関係らしい。俺はそんな長門さんに、まずは自己紹介をする。
九鬼「は、はじめまして!私は菅野中将に防衛大学校の学生時代にお世話になった、海軍憲兵中尉の九鬼駿斗です!宜しくお願いいたします!」ケイレイ
長門「フッ、直から聞いていた通り、誠実な男だな。君なら、信頼できそうだ」
菅野「ハハッ、だろ?まぁバカ真面目すぎて少し面倒なところもあるがな」ハハハ
九鬼「ちょ!教官!」
長門「2人とも、仲が良さそうだな」フフッ
長門は俺に穏やかに告げる。良かった、どうやら認めてもらえたらしい。
しかし、気になる点が何点かある。それは、まず長門の被服がボロボロになってしまっていること。それに伴って全身キズやアザだらけだ。かなりこっぴどくやられている。それに、口調からも疲労が見え見えだ。人の変化にはかなり鈍感な俺でも分かるほどに。
これはとても戦闘での傷とは思えない。明らかに殴打された痕だ。ここ最近、艦娘への暴行が問題視されつつある為、俺たち憲兵は何人もの虐待を受けた艦娘の傷を見てきたが、それと同じ特徴、そしてそれらよりもさらにひどい物だった。
菅野「…やっぱ、ダメだ。長門、一度本館の入渠室で体癒してこい。バケツ使ってもいい。そんな体で別館には向かわせられん」
長門「…先ほども言ったが、私だけ体を治すことなんてできない。向こうには沢山の者達が傷ついて…」
噂に聞いていた通り、仲間思いな艦娘だ。自分の傷よりもその他の艦娘達を心配するとは…でも、長門さんの傷は決して見過ごせるレベルではない。
九鬼「長門さん、自分も教官のご意見に賛成です。流石に、傷が多すぎるかと…」
長門「九鬼君まで…しかし…」
菅野「仲間を気遣うのはいい事だが、助ける前にまずお前がくたばっちまうぞ」
長門「私は死んでも構わない。だが、今ここで時間を食えば何人の者達があいつの暴行に苦しめられるか…」ギリッ
そう語る彼女の顔に余裕は見えない。精神的にもかなり切迫詰まっているのだろう。ここまでこの長門さんを追い詰められるのは、ある意味才能だと思う。
すると、隣の菅野教官が『しゃあねぇな…』とボソっと漏らし、座席に座る長門に顔を近づける。
長門「?直、何を……」
チュッ
九鬼「…え?」
なんと教官が長門にキスをした。俺は目の前の唐突すぎる展開に頭が追いつかない。
長門「……な、直…///えと、その、」オロオロ
長門は目をウロウロさせ、口をパクパクさせている。先程まで勇猛な戦士で顔付きは、既に消し飛んでいる。
彼女同様、突然の出来事すぎて俺も脳の処理が追いつかない。そもそもあの勇猛果敢な教官が、女の人にキスをしているという事実が、4年間防衛大で俺をシゴいた菅野教官の人物像と不一致すぎて俺の方が恥ずかしくなってもくる。
だいぶとガッツリなセクハラな気がするが、大丈夫なのか?俺は動揺を隠しきれないまま、恐る恐る教官に聞く。
九鬼「え、えっと、菅野教官と、長門さんはどういったご関係で…?」
菅野「あれ?お前に言ってなかったっけ?俺と長門、夫婦だぜ?ほら」
当たり前のことを言うように菅野教官は言い放ち、指輪を見せた。
この世界では、艦娘の練度向上のために.『ケッコンカッコカリ』と称した疑似結婚指輪を司令官と艦娘の指にはめる制度があるのだが、それとはまた少し違う。というのも、ガチの結婚指輪だからだ。
この世界では艦娘と人間の結婚は合法なので問題はないが、ガチ結婚している者を見るのは初めてだった。
九鬼「そ、そうだったんですか…!それは、存じていませんでした…」
そして、隣の長門さんに視線を移すと、右手を胸の前に置き、目をうるうるさせて菅野教官を見ていた。その顔は、緊張の糸が切れてやっと帰るべき場所に帰ることのできた、そんな感情が読み取れる顔に思える。
顔を紅くし、左手の指輪をさすりながら、必死に嗚咽を止めている。よく見れば、その指輪はもうボロボロになってしまっていた。おそらく赤井中将に何度も傷付けられ、外されかけたのだろう。でも必死に守り抜いた、そんなふうな想像が容易に出来てしまう。
長門「う、うぅ…あぁ…」ポロポロ
すると、長門さんはとうとう泣き出してしまった。
菅野「…長門、すまん。ここまで6年、本当に待たせたな。ありがとう、俺を信じてくれて」ギュッ
九鬼「…6年…?」ボソッ
菅野「…あぁ、俺は呉を6年前に離れてから、コイツとは会ってねえんだ。俺も激務、そして…コイツはコイツで後任のクソ野郎のせいで外出もできずじまいでな」
菅野教官も海軍では重要人物、愛する妻の身を案じることすらできないような激務の中で、毎日毎日心配だったろうな。まだ長門さんが生きているのか、心配でしょうがなかったに違いない。
長門「直……!直!会いたかった!会いたかったよぉ……!」ポロポロ
教官は座席に座る長門に目線を合わせる為に屈んだまま、そっと彼女を優しく抱きしめ続けた。菅野教官は長門の背中をさすりながら、『もう大丈夫だからな』と穏やかな口調で言い続けていたが、その顔は怒りを超えて殺意に満ちた顔だった。俺はその表情に背中が凍りつく感覚を覚え、さながら防大生だった頃の記憶がフラッシュバックした。
それから10分、ひとしきり泣いた長門は、菅野におぶられながら呉鎮守府の本館の入渠室へと向かっていった。
俺は1人残された車の前で考えを深める。
(長門さんは確か、艦娘の中でもかなり精神力の高い艦娘のはず。連合艦隊の旗艦も勤め、海外への表敬訪問なんかではいつもその名を連ねてる、誇り高き艦娘だ。その彼女があんなになるまで精神が崩れるって事は…)
(あの鎮守府はどんな運営をしていたんだ?)
ー15分後ー
本館の方から2人の人影が見えて来る。1人は教官、もう1人は長門さんだ。長門さんは入渠で傷が癒えたのだろう、傷はとうに消え、肌も綺麗になっている。真新しい制服を着て、俺の知る長門に変わっていた。
菅野「すまんな、九鬼!待たせた」ニカッ
九鬼「いえいえ、長門さんの傷も癒えたようで、良かったです」
長門「…///」ウツムキ
九鬼「?」
菅野「あぁ〜、すまん。どうやら、さっきの事が恥ずかしかったらしくてな…」ニガワライ
九鬼「あ〜…、なるほど…」サッシ
長門「…すれてくれ…」
九・菅「?」
ガシ(九鬼の肩を掴む)
長門「頼む九鬼中尉!!!わ、忘れてくれー!//」グワングワン
九鬼「う、うわぁ〜〜!!忘れる!忘れます〜!」グワングワン
ーーー
九鬼「ウッ、ウプ……」フラフラ
長門「す、すまない…大丈夫か??」アセアセ
九鬼「えぇ、なんとか…」
菅野「ドンマイ九鬼」ハハハ
長門「あ、改めて、長門型戦艦1番艦の長門だ。先程は見苦しい所を見せたな…すまない」テサシダシ
九鬼「いえいえ…傷が癒えて何よりです、長門さん。改めて、海軍憲兵中尉の九鬼です。よろしくおねがいします」アクシュ
長門さんはいつも通りの凛々しい表情に戻り、俺と握手を交わした。やっぱ、長門さん大きい…身長にして173はあるのか?菅野教官よりも、もちろん俺よりもデカい。まぁ、流石はビッグ7だな…
菅野「うし!じゃあそろそろ行きますか!2人とも、乗りな!」ニッ
俺たち3人はそこで水兵の運転の元、呉の別館に向かった。
ーー道中の車内では、先ほどの雰囲気とは打って変わって重苦しい空気が漂っていた。その中で、菅野教官が今回の作戦の説明を始める。
菅野「よし、そんじゃ今から改めて今回の作戦の説明するぞ」
俺と長門さんは同時に菅野教官の言葉にうなづく。
菅野「まず、今回の目標、赤井義明の殺すのは、長門。お前に頼む」
長門「あぁ、私にやらせてくれ。アイツの不届き極まりない行為で死んでしまった同胞、そして今も苦しみ続けている皆んなの思いを私がヤツにぶつける」
殺意に満ちた眼で長門さんは答える。
菅野「そして、九鬼。お前は実際に鎮守府に入って、現在の鎮守府の状態を把握し、赤井に処遇の書いたこの紙をやつに渡せ」サシダシ
その紙には、『呉鎮守府別館長官 赤井義明 を 艦娘への暴行、虐待 の罰として 死罪 に処す 海軍大臣 菅野直』
と書かれてあった。
菅野「まぁ、大臣直々の命令だ。軍ではコイツは絶対的な命令。合法だから、逆らったらその腰の軍刀でメッタメタにしても良い。ただし!お前は殺すなよ」ニヤ
菅野教官はそう言って俺が憲兵となってから腰に帯刀している軍刀を指差した。以前は反対の腰につけている拳銃のみだったが、2年前に教官からこの軍刀を戴いて以来、海軍の悪玉どもの逮捕には常に携帯している。
俺たち佐世保の憲兵隊は、全国の憲兵隊で見てもトップクラスに海軍内の検挙をバシバシ行っている。そのため、『海軍の番犬』なんて名前もつけられ、その名にあやかって、佐世保の憲兵達は左腕に狛犬をモデルとした部隊マークの入った腕章を身につけている。もちろん俺も付けている。
俺自身は元々特別体力があったわけでもないし、格闘経験があるわけでもなかった。筋力に関しては高校時代野球をしていたこともあり、人並み以上にはあるが、それくらいだった。
しかし、憲兵となってからは毎日格闘訓練に打ち込み、実際に悪さをした将兵なんかも何人も捕まえてきたから、それなりには戦闘能力がついている。今回の目標である赤井海軍中将も、写真では丸々と旨そうに太った豚のようなやつだから、一瞬で制圧が出来る。
菅野「具体的には、奴のいる提督執務室は、中庭に面した位置にあってだな。執務机の後ろの窓からその庭を眺める事ができる。」
菅野「だからお前には、その窓から奴を突き落としてほしいって訳だ」
長門「私は後でこの車から離れて海へと向かう。その海から私の41センチ砲で奴のいる中庭を吹き飛ばす。君は今回、そのアシストをして欲しい」
菅野「奴を突き落としたら、この無線通信のできるイヤホンで長門に連絡しろ。それでミッション終了だ」
そう言って俺に小型のイヤホンを手渡した。
九鬼「教官、今回、教官は何をされるんでしょうか?」
菅野「俺?俺はなぁ、ちと艦娘のやつらの顔を見に行ってくるぜ」ニッ
長門「ヤツは基本的に艦娘は寮で待機させてる。と言っても、その寮も本当に酷い有様だがな……」ギリッ
菅野「実際にアイツらの現状を目で見て、それを今度山本元帥に報告しなくちゃならねぇ。実際に新しい長官が呉に来た時に、そいつにどんな支援をするかを決める必要があるからな」
九鬼「なるほど…では、全員別行動ですね…」
菅野「まずはお前は赤井の制圧を先にやってくれ。もし、警備の野郎や艦娘が道を塞ぐようであれば、この証明書を見せろ。こいつは海軍大臣直々の証明書だ。それでも中に入れるのを拒むようなら、艦娘ならこの薬で眠らせ、兵隊なら気絶させろ。」
そう言って俺に薬を差し出す。恐らくは睡眠薬だが、使うような事態にならないことを願うばかりである。
菅野「それが終わったら、施設の中を、艦娘寮以外を見て視察をしてくれ。鎮守府全部だ。しっかり写真を撮って証拠も抑えておけよ」
九鬼「了解です」
長門「よし、2人とも、着いたぞ」
山道を車で走って約15分。周りを木々で囲んでいた光景が、急に開けてきた。いよいよ着くのだろう。
菅野「うし、じゃあここで降りよう。長門、ここから先に出撃ドックがあるはずだ。そこから海に出てくれ。九鬼、お前は俺と正門まで行くぞ」
九・長「了解」
そこで車を降りて、運転士の水兵に敬礼をして歩き出した。
この歩みを、艦娘達を救うための希望の一歩にせねばならない。俺はそう強く誓った。
回想編があと1.2話続きます。よろしくお願いいたします。読んでいただきありがとうございました。