とある自衛官が鎮守府復興してみた   作:うわぐつ24号

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こんにちは。いつも読んでいただきありがとうございます。では、どうぞ。


8話 再会

橋本「金剛…言われてみれば、確かにそう見えますが…」

 

橋本も前世で九鬼の影響から艦これを知っていたので、金剛のデフォルトも知っている。

しかしながら、入口前の彼女は彼の知っている金剛とはあまりにもかけ離れた成りをしていた。

 

九鬼「3ヶ月前と何ら変わりがない。やっぱ、あれ以降まともな支援物資は来てないみたいだな…」

九鬼は眉をしかめながらつぶやく。この場所が海軍から見放されているという事実を改めて痛感する。

 

橋本「…これ、大丈夫ですかね?」

九鬼「全く先が見えねぇな…」

 

 

2人はぼやきながらも車から降りる。そこで彼らは大量の弁当の存在に気づいた。

 

九鬼「これどうする…?」

橋本「流石に一度で全部は運べませんよね…早く執務室に行ってまた戻ってきましょう」

九鬼「よし、ならまずは金剛に挨拶だな」

 

 

2人はとりあえずの結論を出して庁舎へと足をすすめる。

庁舎の前に来ると、それまで微動だにしなかった金剛が2人の前に直立で立ち、無駄のない敬礼を送る。

 

身長にして166〜8センチほど。スラッとした体格であるが、女性らしさはしっかりとある。

 

しかし、その目に生気は宿っているようには感じられない。衣服はもちろんのこと、所々露出した肌は痣と切り傷の痕だらけで、美しさが損なわれている。敬礼する彼女からは誠実さというよりも、従属的なものを感じる。

 

実際、彼女は小刻みに震えていた。九鬼と橋本が着ている海軍士官の常装、これは金剛に赤井を彷彿とさせるには十分だった。

容姿は全く赤井とは異なるものの、同じ制服というだけで彼女には堪える。

 

金剛「はじめまして。着任おめでとうございます。私はこの鎮守府の艦娘の代表、金剛型戦艦1番艦の金剛です。ご不明な点は何なりとお申し付けください。」

震える唇からやっと出たそのセリフに、2人は彼女の背景を考えずにはいられなかった。

 

初対面の九鬼達でもわかるほどに、彼女の口調は人間らしさがないのだ。やはり、赤井の残した爪痕はあまりにも大きすぎたのだろう。

 

 

九鬼「…金剛さん、ご丁寧にありがとうございます。本日よりこの鎮守府を預かることになりました、海軍少佐、九鬼駿斗です」ケイレイ

橋本「少佐の右腕として、副官を務めます。海軍中尉、橋本勇です」ケイレイ

 

金剛「副官…?」

橋本「はい。海軍省からの方針転換で、今年から全国の鎮守府のトップが若年の下級将校2人の分業制になったんです」

金剛「そうだったんですね…存じ上げておりませんでした。すみません」

九鬼「えっと、金剛さん、とりあえず執務室までご案内お願いできますか?」

金剛「は、はい!申し訳ありません!すぐにご案内します!」

九・橋「?」

 

何を焦っているのだろうか?金剛に道案内を頼んだだけのはずだ。九鬼と橋本は揃ってハテナマークを浮かべる。

 

金剛「では、ご案内します!」アセアセ

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

鎮守府本館に足を踏み入れると、まずは埃臭さが2人の鼻をついた。ジメッとした空気と充満するカビの臭いが辺り一面に立ち込めていた。

正面玄関のの左右には40メートルほどの廊下が伸びている。左側は突き当たりすぐに「食堂」と書かれた表札が出ている。

右側は大会議室が3部屋ほど広がっている。

 

 

正面玄関に入ってすぐの階段を登った先に執務室はある。これは3ヶ月前に鎮守府を訪れていた九鬼はすでに知っていた。金剛の後ろをついていきながら、3ヶ月前の記憶と照らし合わせる。

 

九鬼(そこまで見た感じは変わってないな…)

九鬼(だけどこの先は…)

 

 

階段を登って左側に執務室はあるはず。しかし、そこに執務室はなかった。

執務室とその前の廊下が丸ごと吹き飛ばされ、そこらじゅうに瓦礫が散らばっていた。もちろん、執務室は跡形もなくなっていた。

 

橋本「…!これは…」

金剛「申し訳ありません…じつは、3ヶ月前に赤井提督が「テロ」によって殺害された際に執務室ごと吹き飛ばされてしまって…」

橋本「テロ?確かここは九鬼少佐が…」

九鬼「橋本、言わなくていい」

橋本「え?ですが…」

九鬼「」フルフル

橋本「…わかりました」

九鬼(テロか…正しく伝わっていないのか?でも、榛名がいるわけだし…)

九鬼(まぁ、まだ出会って間もないしな。とりあえずもう少し様子を見るか)

 

橋本「2尉、執務室が使えないとなると別の部屋を探す必要がありますが…どうしましょうか?」

九鬼「え?あぁ、そうだな……じゃあ、一階の大会議室を代わりに使うか」

橋本「そうですね。では、金剛さん、一階を使っても良いですか?」

金剛「え?あ、えと、大丈夫です。お任せいたします」

金剛(どうしていちいち許可を取るんデスカ…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九鬼「というわけで大会議室に来てみたが…」

橋本「まぁ、想定内ですって」アハハ…

金剛「…」

 

1番入り口に近い大会議室を代わりに使う事にしたものの、もちろん綺麗なはずはない。

学校の教室二つ分の大きさがあるこの部屋、所々に血の跡が付いている。そして、その血痕の場所は必ず損傷しているため、ここでも艦娘への激しい体罰が行われていたことは容易に想像できる。

 

九鬼「なんとも気味の悪い部屋だな…こんなんじゃ仕事どころではないんだけど…」

橋本「どこもかしこもそんな感じですよ。2尉が1番お分かりでは?」

九鬼「まぁな…特に艦娘寮の3階なんて…ウプ、思い出すだけで吐きそうになるわ…」

橋本「ならましですね。じゃあとりあえず弁当を…」

九鬼「その前に!まずは2人で掃除だろ?」

橋本「( ;∀;)」エ?

九鬼「たりめぇだろ?!こんな汚いところに飯なんて持ってこれねぇよ!?」

橋本「ですが、この部屋を2人でですか?」

九鬼「いやまぁ…とは言っても金剛さんにこんな状態で動いてもらうわけにもいかんし…」

 

その発言に金剛はすかさず飛び込む。

金剛「待ってください!!お2人はお休みください!我々でやりますので!」

九鬼「へ?いやいやそんなことできないですよ。自分達が使う部屋なんですから尚更です」

橋本「はい、少佐もおっしゃるように、今の貴方に無理に動いていただくことなんてさせられません。その証拠に、ずっと膝が笑っているでしょう?」ユビサシ

金剛「も、問題ございません!指揮官のお二人に掃除をさせるなど…赤井中将に顔向けが出来ません!」

 

九鬼(赤井の名を出したな…さっきのテロ発言といい、どこか赤井の野郎に執着しているような…)

所々金剛の言葉尻を取って彼女を分析する。今の金剛は誰が見ても分かるほどに余裕がない。

九鬼(仕方ない…このやり方は好きじゃないが…使うしかねぇな)

九鬼「ありがたいご提案ですが、金剛さんが危険です。今は休んでおいて下さい。これは、『上官命令』ってやつです」ニシシ

 

少々冗談混じりであったつもりであったが、その4文字を出されては金剛も何も言えない。おずおずと引き下がって行った。

金剛「も、申し訳ございません…」

 

流石にここまで深刻に捉えられるとは思っていなかった九鬼は少し後悔した。艦娘には丁寧に接したいと思っていた人間だったために、やはりこういった表情には彼は弱い。

 

 

そんな時、ある女性が彼の頭に降りてきた。

 

あの救出作戦の日に唯一心を開いてくれたあの戦艦娘。彼女ならばまずはこの鎮守府を知るには早いだろう。

 

九鬼「では1つ、お願いがあるのですが…良いでしょうか?」

金剛「は、はい…」

金剛は自信のない声で小さく答える。

 

九鬼「榛名さんを呼んでいただけませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛「………え?」

 

 

 

金剛「は、榛名を…ですか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどのまでの空気がいっぺん、ただでさえ無機質な口調だった金剛のトーンが明らかに落ちた。嫌な予感が2人を襲った。そして…それは予感から現実に変わっていく。

 

金剛の表情は見る見るうちに変わっていく。それまでのどこか怯えた表情は、完全に恐怖に支配された顔へと変わっていく。そして、膝はガタガタと震え歯をカチカチと震わせながら涙を流し始めた。

そして、あろう事その場に土下座をして叫んだ。

 

 

 

金剛「お、お願いしますお願いします!!榛名には…榛名には手を出さないで下さい!!!!!榛名は、榛名は悪くありません!!!私が、わたしがぁぁぁぁぁあ!!」

 

切り詰めた様子で激しく泣き叫ぶ。まるで、親兄弟を殺されて頭のおかしくなった人のように。

 

その様変わりした金剛の姿に、2人は激しく動揺をした。どうやら九鬼の推測はある意味で当たっていた。

彼女は赤井に大きなトラウマを植え付けられたのだ。

 

なぜここまでなってしまったのか、詳細は分からないが、大まかな事情としては想像に難くない。ただ、九鬼の放った言葉に何らかのトリガーがあったのだろう。

 

九鬼「こ、金剛さん!どうされたんですか!?大丈夫です!そんな変な事はしませんよ!?」

 

金剛「いやぁぁぁぁあ!やめてぇぇぇぇえ!!」

 

 

橋本「ま、不味いですよ…完全にパニック状態になってます!」アセアセ

九鬼「くそ…どうする?今何か言っても全部地雷だ!」

 

2人がパニックになった金剛への対応で困っていた時、突如として扉が開く。

 

そこには九鬼が求めていた人物がいた。

 

九鬼「…!、榛名さん!」

 

九鬼が発した声を無視して榛名は部屋に駆け込んできた。

 

 

榛名「こ、金剛お姉様!大丈夫ですか!?」ダッ

 

そう、戦艦榛名である。慌てて駆け込んできた彼女は、唯一九鬼が知り合った艦娘で、彼もすぐに榛名を識別できた。

 

九鬼「榛名さん!良かった!と、取り敢えず、金剛さん落ち着かせるの手伝ってくれ!」

榛名「はい!榛名に任せてください!」

 

榛名は金剛のそばに座り、背中をさすりながらゆっくりと話す。

 

榛名「お姉様、私です、榛名ですよ。大丈夫ですから。榛名はこの通り元気ですから」ニコッ

 

優しい、純情な笑みを浮かべて金剛を悟す。

 

金剛「は、るな…?」

榛名「」コクッ

金剛「は…るな………」

 

彼女の名前を呼ぶのを最後に、金剛は榛名の太ももに倒れ込んだ。それと同時に、金剛からは寝息のような呼吸音が聞こえだす。

 

橋本「寝た…んですか?」

榛名「はい…お姉様、赤井中将がいなくなってから、こんな感じでパニック症状を起こしては落ち着いて寝落ちちゃうんです。かなり今までの精神疲労のツケがきているのかなと…」

九鬼「…そうだったんですね」

 

苦虫を噛み潰したような顔で九鬼はつぶやく。顔に出ていないとはいえ、橋本も同じ感情だろう。金剛を通してこの鎮守府の素性が明らかになってしまったわけだ。

 

初めてこの鎮守府に触れた橋下はもちろんのこと、3ヶ月前に訪れた九鬼も、今は自我が前世、つまり自衛官の九鬼としてこの惨状を見るのは初めてだ。

 

曲がりなりにも最高指揮官として平静を保つよう努力しているが、どこまでメンタルが持つのか、全く持って分からない。

 

 

 

 

 

3人の間にしばし沈黙が流れる。それを切り開いたのは橋本だった。

 

橋本「えっと…榛名さん、ですね?九鬼少佐からお聞きしております。私は少佐の副官として着任した橋本です。階級は中尉です。お願いしたしますね」

榛名「自己紹介が遅れました。私は戦艦榛名。金剛型の3番艦です。どうぞ、よろしくお願いします。」ニコッ

橋本「少佐とは顔見知りだと伺っておりますが‥.」

榛名「はい。ただ、名前はまだ分からなくて…」ニガワライ

九鬼「あぁ、そっか!やってなかった!」┌(; ̄◇ ̄)

橋本「何やってるんですか…」ハァ

九鬼「えっと、海軍少佐、九鬼駿斗です。今日より司令長官を拝任しました。これからよろしくお願いいたします」ニカッ

榛名「九鬼さん…フフッ」

九鬼「?」

榛名「ああ、すみません。その、やっと知れたな、と思いまして…」

九鬼「そうですね…榛名さんとあの時会ってなかったら、ここにはいませんでしたよ」

 

ようやく再会した2人。血痕と錆だらけの鎮守府で、ここにきて九鬼と橋本の2人は初めて心が安らんだ。

 

橋本「その、榛名さんは我々を怖がったりはしないのですか?この制服も赤井をフラッシュバックさせてしまうかなとも思ったんですけど…」

 

榛名「私は3ヶ月前に九鬼さんにお会いして、彼が信頼できる人だと分かっているので大丈夫です。それに、九鬼さんが相棒として連れてきた方なのですから、大丈夫ですよ」

橋本「そうですか…」

九鬼「まあ、1人でも味方がいてくれるのは心強いなぁ。俺なんて、金剛さんに刺されることまで考えてたからさ」ニガワライ

榛名「…あらかた九鬼さんのおっしゃることは的を得ていますよ」

 

しんみりと榛名はつぶやく。暗く、悲しい顔で。

 

九鬼「…まぁ、そうだろうな」

橋本「報告書の文面からだけでも、むごさが伝わってきましたからね…人間のする所業じゃないですよ、あんなの」ギリッ

九鬼「逆にあんなことされて、海軍を恨まないはずがないからな…こりゃ、骨が折れるな…」

橋本「とはいえ、いつまでもこうしてはいられないですよ。そろそろ次のステップに移りましょう」

九鬼「だな。よし!作戦変更!掃除の前にあれやりますかぁ…」

榛名「何をされるんですか?」

 

榛名と橋本の視線が九鬼に集まる。九鬼は制帽をギュッと被り直して言い放つ。

 

 

九鬼「まずは、艦娘みんなに挨拶だ!」




読んでいただきありがとうございました。受験関係で投稿が不安定になりますが、引き続き投稿していくので今後もよろしくお願いします。
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