キーンコーンカーンコーン
私が食器の片付けをしていると、給食の終わりを告げるチャイムが鳴った。
あっ、給食終わったっすね。
そんなことを考えながら、食器を片付け終え、席に着き、読みかけの本を開く。
その時――
「
名前を呼ばれた。
顔を上げるとそこには、髪が黒髪でミディアムロングの女の子がいた。
「校舎裏に来てほしいんだけど」
女の子は、静かにそう言いながら笑みを浮かべる。
普通の笑みとは違う。もっと……こう、含みがあるような笑みだ。
「……分かったっす」
私はそう言い、席を立った。
校舎裏に行くと、女の子が四人。
私を呼びに来た子を合わせて、五人いた。
「こんな所に呼び出して、一体何の用っすか?」
私は、女の子達を睨みつけながら聞く。
「フフッ、分かってる癖に。いつもの様に遊ぶのよ。」
クスクスクスッ
女の子達が嫌らしく笑う。
女の子達のそんな様子を見ていると、気分が悪くなる。
死ねばいいのに。
そんな事を思っていると――。
バシッ
何かの音がした。
次の瞬間――!
えっ?
視界がグルッと横向きになる。
一瞬理解出来無かった。
どうやら足を蹴られ、バランスを崩し、倒れたようだ。
完全に油断していた。
私は体を丸め、亀の様な体勢になる。
不格好だが、この体勢なら、顔やお腹を守れる。
ドカッガスッ、と私を踏みつける音や、蹴る音が聞こえる。
「なんでこんな事するんすか…?」
私は丸まったまま聞く。
「そんなの決まってるじゃない。友達だからよ。何回も言っているでしょう?」
ミディアムロングの女の子はニッコリと笑みを浮かべ私に言う。
「これが本当に友達なんすか…?」
言葉と共に涙が出てくる。
「そうよ。虐めたりものを取るのが友達。いつも言っているでしょう?」
いつもの流れ。
「とりあえずお菓子貰うわね」
ミディアムロングの女の子が私のスカートのポケットに手を突っ込み、校則上持ち込み禁止なので、隠し持っていたお菓子を取り出す。
「じゃあね。また遊びましょ」
見ての通り私――猫宮
「やっと終わったっす」
そう、私がつぶやいたのは、予鈴がなって、女の子達が去った後。
私の通う、私立四つ葉中学校は、昼休みが二十分しかないのだ。
大体の中学校が、昼休みは短いと思う。
『昼休みが短い』それが不幸中の幸いだったっすね。
そんな事を思いながら、私は教室へ戻る。
ガラッ
教室のドアを開けると、人が一人だけいた。
そう言えば、五校時目は移動教室だったっすね。
そう思っていると、
「白!」
いきなり声を掛けられた。
「うにゃあ!?」
私はびっくりして大きな声を出す。
相手は私の声にびっくりしたらしく、
「うおっ!!」
と、驚いた声を上げた。
私は、相手が誰なのか確認する。
ツヤのある黒髪に、キリッとした美形の顔が目に入る。
私に声を掛けた相手は、幼馴染の、山田
「か、翔っすか。い、いきなり声を掛けないでほしいっす」
私は右手を胸に当てながら、翔に言う。
心臓がまだバクバク鳴っている。
「わ、
翔が私に向かって、申し訳な顔をする。
「なぁ、白」
翔の顔が、申し訳なさそうな顔から、真剣な顔になる。
「何すか?」
「……その傷、いつも誰にやられてるんだ?」
翔は恐らく、女の子達につけられた傷のことを言っているんだろう。
腕や手は、長袖や萌え袖で隠せれても、足の傷は、靴下の短い私じゃ、隠すことが出来無い。
「これは……」
何故だかは分からない。けど、言葉に詰まってしまう。
「っいい加減教えてくれよ!!白をいじめてるのは誰なのか!!」
翔が真剣な顔で言う。
「……」
私はそんな翔を無視して、ロッカーにあるリュックサックを取る。
小学生の頃、お姉が買ってくれたリュックサックだ。
私は教科書などをリュックサックに詰めて、帰る準備をする。
「……おい!まさか、また帰るのか!?入学してからもう六回目だぞ?内申に響くから止めたほうがいいって!」
ガシッ
翔が私の腕を掴み、帰るのを引き止めようとする。
私は、そんなカケルの手を振り払い、リュックサックを背負い、教室のドアまで歩く。
私は、ドアまで歩いた所で立ち止まり、カケルに振り向く。
「傷のことも、内申のことも、心配しなくても大丈夫っすから」
私はそう言って、翔に微笑み、教室を出た。
「大丈夫かな。白」
俺は、白の出て行ったドアを見つめながら言った。
『大丈夫っすよ』
白はそう言って、悲しそうに、寂しそうに、助けを求める様に俺に微笑んだんだ。
ふと、俺は時計を見る。
「あっ、ヤベッ!授業遅れてる!!急げぇぇぇぇぇー!!」
俺は急いで教室から出た。
私は1人、少し、俯きながら下校していた。
「にゃあ」
猫の鳴き声が聞こえる。
声のする方に目をやると、そこには三毛猫が居た。
「ミケじゃないっすか。最近公園でみないと思ったら、こんな所に居たんすね」
私はそう言い、しゃがんて、ミケの頭や首を撫でる。
ミケは気持ちよさそうに目を閉じ、喉をグルグルと鳴らす。
「さてと、それじゃあ、私は帰るっすね。バイバイ」
私は立ち上がり、ミケに手を振ってあるき出す。
その横の道路を、ボンネットバスが通り過ぎた。
私は、高級住宅街へ入った。
大きな家が建ち並ぶ中、奥に一際大きな家がある。
私はその家に入る。
ガチャッ
私は、広い庭を通り、少し大きいと感じる玄関のドアを開け、家の中に入る。
「ただいまっす」
シーン
返事が無い。
メイドのパウはどうやら出掛けているようだ。
買い物にでも、言ってるんすかね?
そんな事を考えながら靴を脱ぐ。
すると、リビングの方から、テレビの音が聞こえてきた。
テレビがあるのはリビングだ。
リビングと玄関は離れている為、テレビの音は普通の人には聞こえない。
普通の人なら、ね。
私は、小さい頃から、身体能力が異常に高い。
聴力、嗅覚、視力も、異常に良いのだ。
だからテレビの音が聞こえるのだ。
テレビを見る家族は私以外だと、お兄とお父さんだけだ。
お兄は中学3年生で、私と一緒の学校に通ってる。
それにまだ、学校から帰ってないはずだ。
つまり、今、リビングでテレビを見ているのは……。
私は足音を立てず、気配を消してリビングに近づき中を覗く。
お父さんっす……!
中を覗くと、ソファーにお父さんが座って、テレビを見ていた。
ドクンッ
私の心臓が大きく鳴る。
大丈夫っす。落ち着け、落ち着け。
私はそう、自分に言い聞かせる。
クソ野r……じゃなかった。お父さんは幸い私に気付いていない。
今こっそり自分の部屋に入れば、安全なはずだ。
私はリビングを通り過ぎて階段を上がろうとする。
その時――!
「おい」
後ろで声がした。
クソy……お父さんの声だ。
気付かれたっす。こうなったら……、逃げるが勝ちっす!!
私は階段を駆け上がる。
でも、
「待てよ!!」
ガシッ
お父さんに後襟を掴まれ、後ろに飛ばされる。
ゴンッと、床に頭を打ち付け鈍い音がする。
「ウッ」
私は小さなうめき声を上げる。
力が入らない。吐き気がする。
逃げたいのに、逃げられない。
頭を打ったっすから、恐らく脳震盪を起こしたっすね。
こんな時に最悪っす。
あーあ、私ってほんっっと不幸体質っすね。
そんな事を考えていると、
ドスッっと、お父さんにお腹を踏まれる。
「あがっ!」
小さなうめき声が出る。
数十分後、お父さんは満足したらしく、リビングに戻って行った。
これが私の日常だ。
学校では虐められ、家では虐待される。
こんな日常、
「もう嫌だ……」