カッツェ平野を効率良く活用したいNPCの物語 作:ユウキング
そのエルダーリッチはカッツェ平野で顕現した、カッツェ平野では特に珍しい事ではなかったが様々な環境とタイミングにより普通のエルダーリッチとは違っていた。
(どこだここは…私はなんの為に…なにをすれば…人間…そうだ、人間を殺させねば…)
まず顕現したエルダーリッチは濃霧のカッツェ平野をアンデッドに残る本能のままひたすら彷徨い続け冒険者やワーカー達と会わず生き延びていた、そして年に1度リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国が戦争を行う日だけ晴れエルダーリッチは初めて空と人間を視認した。
(なんだ?空が明るく…霧が晴れたのか…?それにあれは、人間の群れ…!そうだ人間を殺さなければ!)
顕現してから人間を見ていなかったエルダーリッチは初めて見る人間達に殺人衝動を抑えきれず人間達の軍に向かおうとしたが、そこでもエルダーリッチは運が良かった。初めて見る存在がリ・エスティーゼ王国の切り札である男、自分より格上の存在だったからだ。
エルダーリッチは魔法系アンデッドで多少の知能があり、自我のないアンデッドとは違い彼我の力の差が分かる為勝てない戦いを無闇矢鱈に挑むことはなかった。
(あの奥にいる男…我より強い。今の我じゃ、あの人間には勝てぬ…もっと、もっと力を蓄えねば…)
人間の上澄みを知った事で無闇矢鱈に人間達を襲う事をせず、己の力を研鑽する事を覚えたエルダーリッチは更に自分達の力の根源を目撃する事が出来た、ゾンビの群れから新たなゾンビが顕現したのである。
(なんだ…!?瘴気が集まりゾンビが出現した…!それにここの瘴気が濃い…何故だか身体の調子が良い気がする、瘴気…そうか瘴気によって我々が存在し瘴気によって力が漲るのか…!ならば────)
自らの根源と力の付け方に気付いたエルダーリッチはゾンビの群れを上手く誘導し、ひたすら一点に留まらせることを繰り返していた。その群れにどこからともなくスケルトンやゾンビが合流し、更に大きな群れとなり瘴気が濃くなりエルダーリッチは力を付けていく。そしてある日濃い瘴気が集まり新たなエルダーリッチが顕現した
「なんだここは…」
「我と同種が出現するとは…なるほど我も同じ様に生まれ目的もなく彷徨っていたのか、感慨深いな。」
「お前は誰だ?」
「我はエルダーリッチ、お前と同じ種族だ。」
「そうか、それでここで何をしている。」
「力を蓄えているんだ、我らアンデッドが一定数集まると周囲の瘴気が濃くなり我らにとって居心地の良い環境になる。それに新たなアンデッドが生まれどんどん瘴気が濃くなっていくのだ」
「それでどうなる、人間を殺さないのか?」
「ほう、もう既に人間を殺す事を考えているとは。」
「それはそうだろう、我々は人間を殺す為に生まれてきたのだから。さぁ人間どもを殺しに行こうではないか」
生まれたばかりのエルダーリッチに誘われ力を蓄え続けていたエルダーリッチは誘いに乗ろうとしたが、かつて見た男の姿を見て思いとどまる。
「すまない、私じゃまだ人間に勝つ想像がつかない。まだここで力をつけなければならない」
「そうか、では我だけで行くとしよう。そこのゾンビ共よ!我は今から人間共を殺しに行く!ついて来たい奴は来るが良い!!」
生まれたてのエルダーリッチがそういうと群れの中から幾許かのゾンビが生まれたてのエルダーリッチに着いて行く、ゾンビなど低級アンデッドは高度な知性はないが言葉自体は聞き取れる為『人間を殺す』という簡単な文言につられて動いたのだった。
そして力を蓄えているエルダーリッチはそんな様子を見て『勝手にゾンビ達を連れていかないでほしい…』と切実に思いながら群れから離れていく一行を眺めていた
それから数日が経った頃、ゾンビの群れの瘴気がかなり濃くなり新たなアンデッドが生まれた。
「───────ッ!!」
恐ろしい叫び声と共に姿を現したのは大きな体躯を誇り、魔法に対する耐性を持つスケリトルドラゴンだった。それを見てエルダーリッチは思わず感動する
「おぉ…なんと力強い!お前の力が欲しい!我の配下になれ!」
そういうと共にエルダーリッチは『
「─────!?ガァッ!!」
ビュンッ─バキバキバキ
だがスケリトルドラゴンは抵抗し-そもそも第6位階以下の魔法は効かないが-自らの尾でエルダーリッチとゾンビを複数なぎ払いどこかに歩き去ってしまった。
「ぐふっ!くそっ強力な駒を逃してしまった…!やはり我はまだ力が足りない…!!」
己の非力さを思い知ったエルダーリッチは更に力に執着するようになった。それからさらに日が経ったある日、遠くで覚えのある気配と人間の気配を感じ取った。
この気配は…あの時生まれたエルダーリッチか、それにその近くに人間の気配…戦闘中か。
人間と戦う事に未だ挑戦していないエルダーリッチは戦いに近ずこうとせず気配だけを感じ取っていた、そして暫くしてエルダーリッチの気配が消える。
(エルダーリッチ、消滅したか…やはり人間を殺すにはまだ早かったようだな。さて我も人間共に気づかれる前に離れるk…ん?)
同族を殺されたことによる感傷などなく、ただ冷静に分析しその場を離れようとしていたエルダーリッチは人間達の生命力がかなり少なくなっていることに気付く。
(あのエルダーリッチとの戦闘であそこまで生命力が減っている今なら我でも…いやだがしかし危険が…!だがこのチャンス…1発だけ攻撃して様子を見てみるか…?)
エルダーリッチは自分が持てる最大の攻撃魔法『
(そうだ、1発だけお見舞いしてやろう。それで生命力に変化がなければ即時撤退すればいい…!一撃で仕留める為には…複数人いる人間全員に魔法を与えるには広く、さらに広く魔法の範囲を…)
『
「『
エルダーリッチは今身につけたばかりの魔法を組み合わせた『
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〜一方その頃〜
「がっ!くそ…人間共ぉぉお!!」
1体のエルダーリッチが消滅し4人の人間、ワーカーと呼ばれる者たちは歓喜していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…よっっっしゃぁぁあ!!」
「やったぁぁー!私達だけで初めてエルダーリッチを倒せたわ!」
「って事は俺達ミスリル級冒険者くらいの力はあるって事だよな!?」
「はぁ…つっっっかれたぁ〜もうー動けない。」
4人の男女混じったワーカーはエルダーリッチとの戦闘に全集中と使い切り気が緩み思い思いに言葉を話していた
「おいおい、全力を使ったのは分かるがここはまだカッツェ平野だぞ。早く立って街まで戻ろう、そしていつもの店で声高らかに言ってやろう!『俺達はエルダーリッチを倒したぞ!』ってn…」
ドォォォン!!
リーダーらしき男が仲間に喝を入れようとしていた時だった、どこからともなく飛んできた火の玉が爆発しワーカー達を纏めて燃やし尽くす。そんな中爆風により吹き飛ばされた女の魔法詠唱者が息も絶え絶えになりながら状況が飲み込めずパニックになる
「うぅ…!え…今のは『
突然の状況と仲間達がもがきながら火だるまになっていく様子を見て女は冷静になる事は出来なかった。そんな女に近づく足音が聞こえる
「ふむ…1人生き残ってしまったか、やはり我はまだまだ未熟…念の為ゾンビ共を連れてきていて良かった。『
自分の魔法が上手く当たり人間達の生命力がほぼ尽きてるのを確認し人間に接近したエルダーリッチは生き残りにも油断せず自らトドメは刺さずゾンビ共をけしかける
「もう1体のエルダーリッチ!?いや…そんなのありえ…いやぁぁあ!来ないでっ!来ないでぇぇぇ!!」
攻撃してきた存在に気付いた女魔法詠唱者は絶望しながら近付いてくるゾンビに絶叫し生きたまま絶命する、そんな様子を一瞥していたエルダーリッチは己の力に認識を向ける
(俺でも人間を殺す事が出来た…!素晴らしい!力を蓄えていた成果が出たぞ!それになんだ…?力が湧いてくる…もっと人間を殺せばもっと力を付けられる…いや、過信しては駄目だ。あの男にはまだ勝てない…)
エルダーリッチは初めて人間を殺した事による経験値取得で自分の力に溺れそうになっていたが、また初めて見た人間を思い出し冷静になる。そして周りに散らばっているワーカー達の武器や防具を拾い、女魔法詠唱者を食い散らかしているゾンビの1体に与えてみる。
「この剣を持ってみろ、そうそう─この胸当てはどう付けるんだ…?むぅ、難しい…お前達そろそろ喰うのをやめて武具を拾ってみろ。」
エルダーリッチがそう言うとゾンビ達は喰うのを止めいそいそと戦士だった者や斥候だった者の武器や防具を拾い、まるで最初から知っているかの様に協力しながら装備していく。するとゾンビの格が変わった気がした。
「ほう、雰囲気が変わったな。お前達はただのゾンビから進化したのか?面白い─そうだな名付けるなら『
そんな事を話しながらエルダーリッチは女魔法詠唱者の杖とローブ、そして消滅させられたエルダーリッチの残骸を拾う
「お前達の物は有効に使わせて頂く、更なる高みのためにな。」
そしてその場から離れたエルダーリッチはゾンビの群れに戻り、エルダーリッチの残骸と女魔法詠唱者の死体を分解し研究材料にして己の力を研鑽し続けた結果─年に1度霧が晴れる頃王国と帝国の軍が相対している様子を1体のナイトリッチが見つめていた。
「さぁ、お前に勝つ為力を研鑽してきたぞ!待っていろ─」
ナイトリッチは王国軍と帝国軍がぶつかっている平野に向かって飛び出していく、まるで想い人に会うかのような足取りで…
~完~
読んで頂きありがとうございました!書き始めるまでが億劫でしたが、やっぱ書き始めると楽しいですね!でも語彙力が全然出ない…
今回書いたのは最近思い付いたものなので初期のプロットとは違ったんですが…これはこれで面白そうだなって!本編の方もほぼ毎日頭の中では物語が進んでは戻っているので書き出したいんですけど、書き始めるまでの億劫感が…!今年中に更新できたら良いなと思います!
それでは次回も是非よしなに!