メンヘラ学園エヴァ 碇シンジ対メンヘラチルドレン   作:はっぽーしゅ

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許してください酒の勢いです(先制言い訳)




第1刺:綾波レイvsイナバウワー

 

 

「ほなまた明日なセンセ!誕生日おめでとさん!」

「じゃあな碇。明日のパーティ遅れるなよ?」

「うん、ありがとう!また明日!」

 

 気の置けない親友二人と分かれて、足取り軽く家路を進む。

 

「ふふっ」

 

 今日はほんとに良い1日だった。朝も授業中も放課後も楽しい出来事ばっかりで、1秒1秒がキラキラしてた。みんな僕の誕生日を温かく祝ってくれたし、カバンがパンパンになるくらいプレゼントももらっちゃった!生きていればどこでも天国、まさに母さんの口ぐせ通りだ!

 

「ふふふっ♪」

 

 何よりハッピーだったのは、"あの子"が珍しく学校を休んだことだ!いつもいつも僕にまとわりついて不可解な言動を繰り返してくるあの子がいないだけで、僕の人生はこんなにも明るく光り輝く!体調不良だか家庭の事情だか忘れたけど、願わくばこのまま暫く僕の前に現れないでほしい!僕、碇シンジの祝福に満ちた尊い毎日の為に!

 さあ、今日は母さんも父さんも仕事で留守だ。明日は土曜で学校もないし、トウジたちとのパーティは昼からだし、今夜は遅くまで好き放題楽しむぞー!

 

「ただいまー!」

「おかえりなさい」

「いってきまーす!」

 

 僕はノータイムでドアを閉めてその場を走り去った。僕の絶対不可侵領域である筈の我が家に、いる筈のないあの子(メンヘラ)が不法侵入していたからだ。なんでだよ。

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

「…ただいま、綾波」

 

 愛する我が家のリビングで、逃げ出した僕をあっさり捕縛して密室(僕んち)に監禁してきた理不尽のカタマリと対峙する。

 キラリと輝く万能包丁片手に氷の様な眼差しを僕に向けてくる青髪少女の名は、綾波レイ。綾波は僕のクラスメイトで、ひょんなことから僕につきまとう様になった思い込みの激しい女の子(メンヘラチルドレン)だ。

 

「どうして?」

「え?」

 

 どうして?それはむしろ僕のセリフだよ?

 

「さっき、逃げようとした。どうして?」

 

 あ、そういう事か。納得したよ。

 いや納得はしないよ。

 

「自分ちに他人が不法侵入してたら普通逃げるよ。っていうかむしろ通報するよ。しなかったのは僕の温情だよ?綾波」

「他人…?ふざけているの?碇くん」

「すごくこっちのセリフだよ綾波」

 

 どう考えてもふざけてるのは君だよ。包丁しまえよそれ僕んちのだろ。メンヘラキャラなら凶器くらい持参しとこうよ。

 

「とにかく今日は帰ってよ。通報はしないでおくから」

「碇くん、今日が何の日かわかる?」

「綾波は人と会話する気がないの?」

 

 なんなの?難聴なの?ミノフスキー粒子でも散布されてるの?

 

「答えて碇くん。何の日?」

「今日は僕の誕生日だよ」

「ちがうわ」

「えぇ…」

 

 誕生日消し飛んだ…

 

「忘れたの?今日は記念日。私と碇くんが恋人同士になってから、ちょうど一月のアニバーサリー。だからとても嬉しい日。楽しい日。祝うべき日」

「知らない記念日だ…」

 

 知らなかった。綾波は僕の恋人だったのか。ただのイカれたクラスメイトかと思ってた。わぁいわぁい彼女もちだぁ。

 …とでも言うと思った?ちがうちがう、絶対にちがう。

 

「綾波、もう何度も言ってるけど僕は君の恋人じゃないよ」

「照れ屋なのね。そこも好き」

「ダメだつよい」

 

 これだよ。綾波は僕の言動全てを自分に都合の良い様に解釈して完結させる無敵の人なんだ。こんなの勝てるわけがない。勝てるわけがないよ!

 

「そもそもだよ綾波」

 

 でも諦めたらそこで試合終了だ。父さんも言ってたじゃないか、やるなら早くしろって。心のどこかでやるべきだと思った事は、例え一見無意味に見える様な事でもやり通さなきゃいけないんだ。それが漢の戦いなんだ。

 

「恋人っていうのは両想いだから恋人なんだよ?綾波はどうか知らないけど、僕は綾波のこと好きじゃないよ?」

「意地悪なのね。そこも好き」

「ダメだつよい」

 

 勝てなかったよ。なんだよこのイモータルメンヘラ。言葉のナイフがまるで効かないよ?

 

「わかってるわ碇くん。せっかくの記念日なのに学校を休んだから、そんな意地悪を言うんでしょう?」

「そんなんじゃないよ」

 

 本当にそんなんじゃないよ綾波。むしろ褒めちぎりたいくらい感謝してるよ本当に。

 

「今日は準備をしていたの。私たちの記念日と碇くんの誕生日、ふたつをいっしょにお祝いする儀式の準備を…」

「僕ズル休みする子ってキライだなぁ」

「は?」

「うわ包丁ッ!?」

 

 あっぶな!?予備動作なしで包丁突き出してきたよ!?僕がイナバウワーの有段者じゃなかったら死んじゃってたよ綾波!?

 

「キライ…キライ…どうしてそんなひどいこと言うの…?私、そういう意地悪はイヤ…」

「そうだねごめんよ僕に非があったよ謝るよキライじゃないよ好きだよ好き好き」

「ウソ…ホントはキライなんでしょう…私、暗いしつまらないし、ブスだもの…」

 

 うわぁ…めんどくさい子のお手本みたいにめんどくさい…

 

「クールでストイックな美人さんで最高だよ綾波」

「そんなとってつけた様な言葉…」

「その包丁もすごく似合っててお母さんみたいだよ綾波」

「お母さん…?」

「そうだよ僕マザコンだから綾波みたいな家庭的な子大好きだよ好きだよ好き好き」

「そう…嬉しい…」

 

 すっ…と包丁が下ろされる。暴走モード解除だ。

 ふぅ、疲れた…どうして僕は中学二年にして命懸けの戦いをしているんだ…

 

「ほら、包丁返して?今日は僕が夕飯作ってあげるから。母さんが言ってたよ、刃物で人を幸せにできるのは料理だけだって。さあ…」

「ダメ」

「ゑ?」

 

 ジャキッ、と再び構えられる包丁。

 まさか、また暴走…!?

 

「今日は私がご馳走するわ。碇くんの好きなもの、たくさん作ってるの」

「へ…?」

 

 言われてみれば、なんだかすごくいい匂いが…これは、カレー…?

 

「待ってて」

 

 そう言ってトテテっとキッチンに消えた綾波。

 まさか綾波、本当に僕にお祝いを…?

 

「おまたせ」

 

 キッチンから戻った綾波が運んできたのは、とっても美味しそうなカレーライス。いつも母さんが作ってくれるのと同じ、野菜がゴロゴロでルーがトロトロな碇家のカレーそのものだ。ちょっと気味が悪いくらい本当にそのものだ。本当に。

 でも、そっか。不法侵入と殺人未遂については断じて許すつもりはないけど、綾波はちゃんと僕の誕生日を祝ってくれてるんだ。なんとかって記念日については知らないけど…

 …うん、これはけっこう、嬉しいかも。

 

「ありがとう、嬉しいよ綾波。食べてもいい?」

「えぇ。でもその前に」

 

 食卓テーブルに皿を置いた綾波が、鉄みたいな無表情をふっと緩めて微笑む。

 

「手、洗ってきなさい。シンジ」

「ッ!?」

 

 さっきまでのヘラり具合がウソだったみたいに、本当に母性に溢れた柔らかな微笑。僕の心臓は、バカみたいにドキッと大きく飛び跳ねた。

 

「ふふっ」

「うぅ…」

 

 あ、綾波め…さっき僕が言ったマザコン云々をさっそく活用してくるなんて…なんだよシンジっていきなり名前で呼ばないでよ好きになっちゃうだろ…!

 

(かわいい、かわいい…綾波…メンヘラだけどかわいい…!)

 

 母さん(錯乱中)の言いつけ通りに洗面所で手を洗いながら、僕はクラスメイトの蠱惑的な言動にドキドキと胸を高鳴らせた。

 

 

 

 

 

 

「それ、美味しい?」

「うん…カハッ…う、うん…」

 

 程よく丁寧に香辛料が混ぜ込まれたからあげを、むせながら食べる。

 

「それ、美味しい?」

「ウッ、ゲホッ…うん、うん…」

 

 シャキシャキの食感としっかりした味付けが嬉しいチンジャオロースーを、むせながら食べる。

 

「それ、美味しい?」

「カハッ、カハッカハッ!…うん…おいひい…」

 

 一番の大好物である肉厚のハンバーグを、やはりむせながら食べる、食べる、食べる…

 

(これさえ、なければなぁ…)

 

 げっそりした気分になりながら、肉汁あふれるハンバーグの断面を見る。

 

「どうかした?」

「いや肉汁すごいなーって」

 

 綾波バーグの中は、あきらかに意図的に混入させたとしか思えない尋常じゃない量の"青色の髪の毛"でパンパンになっていた。

 ハンバーグだけじゃない。綾波から出された数々の料理たち。その全てが綾波の頭髪混入フルコースだった。

 …はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……

 

「……」

「碇くん?」

「いや肉汁すごいなーって」

 

 死んだなぁ…思春期男子に芽生えかけた恋心、一瞬で死んだなぁ…

 

「あの…碇くん…?」

「カハッ…カハッ…うん…?」

 

 むせ込みながらヤケクソで箸を進めていると、綾波がちょっぴり赤い顔でもじもじと上目遣いを向けてきた。

 うん…かわいいけどもう無理だ…やっぱりメンヘラにはトキメけないや僕…

 

「こ、これ…」

 

 まるでマトモな乙女の様に恥じらいながら、おずおずと自分の顔の前に何かを出す綾波。

 …うん…うん…あぁ、そっかぁ…儀式ってそういう…

 

「ご飯の後は、コレ…ね?」

 

 いじらしく頬を赤らめながらも、どこか悪戯っぽく妖艶な笑みを浮かべる綾波。

 彼女が手に持つ紫色の"コンドーム"を眺めながら、僕は。

 

(………勃つかなぁ………)

 

 ぼんやりとした投げやりな気持ちで、残りの綾波バーグをただごくんと嚥下した。まだなんにもシてやいないのに、もうリビドーのリの字も湧いてこない。完全なる賢者モードだった。

 

「最高だ、オレって…」

 

 

 

 終劇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど う し て 勃 た な い の?」

「イナバウワーッ!!」

 

 

 

 終劇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イナバウワーの有段者とは。
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