ありふれた動物能力者   作:マスターM

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吸血姫

(ハジメ無事でいてくれよ)

誠は奈落に飛び降りて誰も目視出来ないのを、見聞色で確認してから龍の姿になって下っていた。

そして地面に降り立つと人型に戻り前日に作ったハジメのビブルカードを取り出した。

 

「ハジメは更に下か・・・」

ビブルカードは下を向いており、見聞色でも迷宮の全容が掴めず悩む誠。

 

「考えても仕方ない。力ずくで行かせてもらう」

誠が人獣型になり真下の地面に六王銃の構えをとった。

 

「ふぅ~。六王銃!!」

覇王色も纏った六王銃は地面を貫き、大穴が続く。

 

「取り敢えず穴の先まで行くか」

穴に飛び降り剃刀で進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・」

飛び降りた先は大きな空間が広がっていた。中は聖教教会の大聖堂でみた大理石のように艶やかな石で出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。部屋の中央付近には巨大な立方体の石が置かれており、なにかうっすらと光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気が付く誠。

 

「・・・だれ?」

掠れた、弱弱しい女の子の声がその中央から聞こえてきた。

先程の生えてる何かは人だった。首辺りから下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そしてその髪の隙間から月を思わせる紅色の瞳が覗いている。歳は12、3歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪で分かりづらいが、それでも美しい容姿をしているのがよくわかる。

 

「お願い!・・・助けて・・・何でもする・・・だから・・・」

掠れた声で助けを請う女の子。

 

「君みたいな子が、むやみやたらに何でもするなんて言うんじゃない」

誠が女の子を捕らえる立方体に手を置く。

 

「あっ」

女の子がその意味に気付いたのか大きく目を見開く。

 

「なんでこんな所にいるかは、そこから出してから聞くとしよう」

誠は内部破壊の覇気で女の子を封じている部分を破壊していく。

ものの数分で破壊し、女の子をお姫様抱っこで受け止める。

女の子は誠の腕をギュっとフルフルと震えながら握る。

 

「・・・ありがとう」

顔は無表情だが、しっかりと告げた。

 

「さて話の前に」

誠は一度女の子を下ろしてから、今自分がきている上着を女の子にかけた。

そう女の子はすっ裸だったのだ。極力見ない様にいていた誠だが不可抗力だ。

 

「・・・エッチ」

女の子の言葉を甘んじて受ける誠であった。

 

「・・・名前、なに?」

女の子が囁くような声で誠に尋ねる。

 

「そう言えばお互い名乗ってなかったな。誠、龍波誠だ。君は?」

「誠、誠」

誠が言えば女の子は、さも大事なものを刻み込むように繰り返し呟いた。

 

「・・・名前、付けて」

「え?記憶喪失なのか?」

「違う。もう、前の名前はいらない。・・・誠の付けた名前がいい」

女の子が名前を付けてほしいと言うと、誠は記憶喪失か聞くが、女の子は新しい名前が欲しいと言う。

 

「その理由を聞いてもいいか?」

「私、祖先返りの吸血鬼・・・凄い力持っている。ある日おじ様に裏切られた。殺せないから・・・封印するって・・・それで、ここに・・・」

「もしかして王族だったのか?それと殺せないとは?」

「ん、王族。怪我しても直ぐ治る。首落されてもその内に治る。それと魔力、直接操れる・・・陣もいらない」

「成程な。不老不死に魔力操作だから封印されていたわけか。それで過去と決別する為に新しい名前を付けてほしいと?」

「そう」

名前が欲しい理由を聞いて納得した誠は考える。

 

「‶ユエ〟なんてどうだ?名前の由来は俺の故郷で‶月〟を現す。その金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月見たい見えたからな・・・どうだ?」

「・・・んっ。今日からユエ。ありがとう」

由来を聞き、相変わらず無表情であるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせて言う。

 

「誠はどうしてここに?」

「ああ、それはっ!!?」

ユエに何故ここにいるか聞かれ答えようとした瞬間、見聞色で未来をみてその場を離れる。

その瞬間天井からサソリのような魔物が降りてきた。体長は五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

「むこうはヤル気だな。ユエしっかり掴まって、って封印されてたから力なんかないよな」

誠はユエを背中に回し、生命帰還で髪を動かしユエを固定した。

 

「誠・・・いったい」

「説明はあのサソリモドキを倒してからだ。ユエ喋るなよ舌を噛む」

「ん」

誠はユエに忠告して臨戦態勢に入る。

初手はサソリモドキ。一瞬肥大化した尻尾の針から紫色の液体を凄まじい勢いで噴射した。禍々しい液体に誠は嵐脚を繰り出し、液体を消し飛ばしサソリモドキのハサミに当たるが、ダメージはないようだ。

 

「生半可な攻撃は効かないみたいだな。なら内部から破壊するか。ユエすまんが少し負荷がかかるが大丈夫か?」

「大丈夫・・・誠を信じてる」

「ふっ。その信用に答えないとな」

誠は深呼吸をして人獣型になる。ユエからの驚愕が伝わってくる。

誠は金棒を構え走る。サソリモドキはもう一本の尻尾の先端が肥大化したかと思うと凄まじい速度で針が打ち出された。それは誠はユエの負担を最小限の剃を使い、サソリモドキの真上をとる。

 

「潰れぞ。雷鳴八卦(らいめいはっけ)!!!!

確実に倒す為に覇王色と内部破壊の覇気を纏った雷鳴八卦にサソリモドキは耐えられず、地面に叩きつけられ、ぐちゃぐちゃ潰れた。

 

「はぁはぁはぁ・・・」

この短時間に覇気の多用は流石に疲れたのか座り込む誠。ユエは誠が座り込む前に固定を解いた。

 

「はぁはぁはぁ、武装色は、はぁ、兎も角覇王色は、当分使えそうにはぁ、ないな・・・」

「誠大丈夫?」

「ああ・・・はぁ、数分休めば大丈夫だ」

座り込む誠にユエが近づき、誠の右手を両手で握りながら聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、事で俺はハジメを探しに飛び降りて、今に至るという事だ」

「・・・誠凄い。生きてるか分からない友達救うために、行動できる」

「ハジメなら生きてるぞ。ホレ」

落ち着いた誠はユエに何故ここに着いたのか説明すると、ユエは誠の行動を称賛する。誠はハジメが生きてる証にハジメのビブルカードを出した。

 

「誠これは?」

「これはビブルカード。別名命の紙と言い、紙の元の人の髪や爪などで作れる。生きてる間はその人物の方に向く。今も動いているという事は生きてる証だ」

ユエにビブルカードの説明をし、カードは上を向いていた。

 

「しかしこの迷宮はどうなっているんだ?オルクス大迷宮は百層からなるって聞いていたがここは150層みたいだが?」

「・・・ここの迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

誠が迷宮の事で考えていると、ユエが反逆者と言うと、誠が聞き返した。

 

「反逆者・・・神代に神に挑んだ神の眷属の事。・・・世界を滅ぼそうとしたと伝わってる。中心人物は7人いて、行動に出る前に目論みを神に破られ、世界の果てに逃走して現在の七大迷宮と言われている。・・・もしかしたら、反逆者の住処まで行けば、地上への道があるかも・・・」

「成程な・・・ハジメと合流した後龍になって飛ぼうと思ったが、反逆者の住処に行く方が色々と情報が得られそうだな」

「それと、誠のさっきの姿は何?」

ユエの説明を聞き、ハジメと合流した後龍になって飛ぶより、反逆者の住処に行く方が情報を得られそうだと言うと、ユエが人獣型を聞いてきた。

 

「ああ、あれは・・・」

誠は女神によって転生したこと、悪魔の実と覇気、六式の事を話した。

 

「誠が強いのはその女神様のおかげ?」

「まぁそうだな。よし、ハジメを迎えに行くか」

ユエが納得し、誠がハジメを迎えに行く為に立ち上がる。

立ち上がった誠をユエは沈んだ表情で見上げる。

 

「ユエも一緒に行くか?」

「え?」

「それに帰る場所がないなら、俺達の世界に来るか?」

「・・・いいの?」

「ああ。戸籍なら父さんがなんとかしてくるだろうし」

誠がそう言うと、無表情が嘘のように、ユエは花が咲いたように微笑む。

誠もユエにつられ微笑みユエの頭を撫ぜる。

 

「まだ体に力入らないだろ?」

ユエの前に後ろ向きに座り、背中に乗るよう促すとユエは背中に乗る。

 

「よし、行くぞ」

「うん」

ハジメがいる所に向かって2人は行く。

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