お昼休憩になると居眠りしていたハジメは体を起こし、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出すと、何となしに教室を見渡す。
「おう起きたか」
ぼうっとしているハジメに誠が声をかけハジメの前の席に座り、弁当を広げる。
それをみたハジメは、じゅるるる、きゅぽん!と午後のエネルギーをチャージし、もう一眠りしようと机に突っ伏そうとしたが、ハジメ以外には女神。ハジメにはある意味悪魔が近づいてくる。
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」
ハジメに話しかけてきた女子生徒。
「あ~誘ってくれてありがとう、白崎さん。でももう食べ終わったから天之河くん達と食べたらどうかな?」
ハジメが言った天之河とは、香織の幼馴染である
一応誠は全員と面識あるが主に龍太郎とは組手をしたり、雫とは彼女の実家の八重樫流という剣術を偶に指南を受けに行く事と、お互い苦労人という事で愚痴り合う仲である。
「えっ!お昼それだけなの?駄目だよちゃんと食べないと!私のお弁当分けてあげるね!」
(もう勘弁して下さい!気づいて!周りの空気に気づいて!そして何事もないように弁当食べないでよ誠!!)
刻一刻と増していく圧力に、ハジメが冷や汗を流していると救世主が現れる。
「香織こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。折角の香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながら気障なセリフを言う光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果ない。
「え?何で、光輝くんの許しがいるの?」
「「ブフッ」」
素で聞き返す香織に思わず誠と雫が同時に吹き出した。
ハジメがお茶を濁して退散するかと腰を上げた所で凍り付いた。
光輝の足元に白銀に輝く魔法陣が現れたのだ。
魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
未だ教室にいた社会科担当である
数秒か数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
この事件は、白昼の高校で起こった集団神隠しとし大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。
誠が目を開くとまず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
周囲を見て見ると、誠達は巨大な広場にいた。あの時教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。
「に、兄さん・・・」
「なあ誠、これって・・・」
「ああ。2人が考えている通りだと思うぞ。まさの二次創作の異世界転移だ」
幸利と恵理が不安げに誠に話しかけ、誠はそう言った。
誠達が話終わったタイミングで、台座の周囲を取り囲む者達の中で特に豪奢で煌びやかな衣装を纏った70代位の老人が進み出てきた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教協会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
(トータスだと!?女神様が言っていたのはこの世界の事か!!?)
イシュタルからトータスと聞き誠はこの世界を警戒することにした。