誠達はいくつもの長テーブルと椅子が置かれた別の場所に移動した。
全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入って来た。男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドにクラスの男子達は凝視し、女子達の目線は氷河期もかくやという冷たさを宿している。
全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。
「さて、貴方方におかれましてはさぞ混乱されていることでしょう。一から説明させて頂きますので、まずは私の話をお聞き下され」
要約すると・・・
この世界はトータスと呼ばれ、トータスには大きく分けて三つの種族がある。北一帯には人間族。南一帯には魔人族が支配しており、東の巨大な樹海の中でひっそりと亜人族が暮らしている。
人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。数では人間族が優位だが魔人族は個人の持つ力が大きいらしく、戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないが、最近魔人族による魔物の使役が多発しているとのこと。
魔物とは通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく厄介で凶悪な害獣とのことだ。
今まで本能のままに活動する彼等を使役出来る者は殆ど居なかった。使役できても精々1,2匹程度だという。その常識が覆されたのである。これにより人間族の数のアドバンテージが崩れたということ。人間族は滅びの危機を迎えているのだ。
「貴方方を召喚したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教協会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。恐らくエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避する為に貴方方をよばれた。この世界よりも上位の世界の人間である貴方方は、この世界の人間よりも優れた力を有しているのです。貴方方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意思の下、魔人族を打倒し我等人間族を救って頂きたい」
(エヒト・・・。完全に繋がった。女神様が言っていたのはこの事だったんだな。なおの事慎重に動かないとな)
誠はトータス、エヒトの単語を聞き慎重に動くことを決めた。
「ふざけないで下さい!!」
イシュタルの言葉を聞いて猛抗議をあげる人物がいた。そう唯一の教師である愛子である。
愛子は元の世界に戻すように言うが、イシュタルは不可能と言うと生徒達が騒ぎ始めた。
「嘘だろ帰れないってなんだよ!」
「嫌よ!何でもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで・・・」
パニックになる生徒達をイシュタルの目には侮蔑が込められてた。
未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がってテーブルをバンッと叩いた。その音で光輝に注目する生徒達。注目が集まったのを確認すると光輝は話し始めた。
「皆ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。俺は戦おうと思う。人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。イシュタルさん?どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュっと握る拳を作り、そう宣言する光輝。光輝のカリスマが遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めた。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃあ心配だからな。俺もやるぜ?」
「龍太郎・・・」
「今の所それしかないわよね。気にくわないけど、私もやるわ」
「雫・・・」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織・・・」
何時ものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。
バンッ!
光輝が出した音よりさらに大きい机を叩いた音が響く。
「龍太郎と雫はまあいい。自分の意志で賛同したからな。だがお前達は現実逃避の為の賛同だ。そんな気持ちで戦えると思うなよ?」
叩いたのは誠で、誠は立ち上がりながら言う。
「イシュタルさん魔‶人〟族ということは人似ていると受けッとっていいですか?」
「は、はい・・・」
誠の嘘は許さないという目にイシュタルはどもりながら答えた。
「お前達に人を殺せるか?」
人を殺すと聞きクラスメイト達の顔は青くなっていく。
「龍波皆の不安を煽るな!」
「不安を煽るなだと?俺は事実を言っただけだ。俺達がいまからすることは戦争だぞ。戦争に死はつきものだ」
「俺がそうはさせない。誰も死なせないし、殺させやさせない!!」
「甘いんだよお前の考えは」
何時殴り合いになってもおかしくない雰囲気に周りは静まりかえる。
「・・・イシュタルさん、戦争に参加するにあたりいくつか条件がある」
「・・・なんでしょうか・・・?」
誠が光輝からイシュタルに目線をうつし言うと、イシュタルは躊躇いながら聞く。
「1つ目戦争への参加は強制参加ではなく志願制にすること。まあそちらのメンツもある事だし半数の参加で譲歩しましょう」
「・・・わかりました」
「2つ目訓練をつける事。如何に俺達に力があるっといっても訓練無しに戦えるとは思えないからな」
「もとよりその準備は整っております」
「3つ目この世界の滞在中は衣食住を提供する事」
「勿論です」
「この条件で契約してもらいます。口約束では心もとないので後で紙に書いて、破らないようお願いします」
「・・・わかりました」
「龍波勝手に進めるな!!」
「何が勝手に進めるな、だ。俺から言わせればお前の方が勝手に話を進めていると思うが?」
光輝がまた誠に突っかかってきて不穏な空気になるが、イシュタルがオズオズと時間が押していると言うと2人は引き、イシュタルについて行くため移動を開始した。