決して表舞台には立たず
裏の世界で
主人公たちの知りえぬところで
影に潜み、影のように敵を狩る。
僕はそんな存在に憧れた。
その憧れは留まるところを知らず、止まることを知らず、僕自身も留める気もないし、止まる気もない。
僕はあの日あの時、決めたんだ。
【陰の実力者】に、なってやるってーーー
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魔力求めて修行してたら車に轢かれて死んだ。
これが僕の前世。え?短い?うるさい。説明するのは得意じゃない。
なにはともあれ、そう、これが僕の前世なのだ。
つまり転生した。しかも魔力がパンパンに詰まってる理想郷、異世界へと転生した。
これはラッキーでは無い。僕の前世での日頃の修行が活きた結果である。
まあ転生したことなんて別にどうでもいいのだ。考えるべきはやはり魔力!!この魔力の扱い方で、僕が【陰の実力者】になれるかどうかが決まる。
とりあえず魔力のコントロールをできるようにして、それから僕独自の必殺技とかも考えちゃったり…っ!
あーー!!!夢が広がるぅぅーー!!
あ、うんこでる。
「おぎゃあああぁぁ!!!」
肛門もひろがるってか?はは!
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そんなこんなで僕は10歳になった。
魔力のコントロールはもう既に完璧だし、武術の方も、前世で影の実力者になるために死ぬほどやってたお陰で体に染み付いてるし、この世界に転生してからも己の武術を磨いた。
相手の気、呼吸を読み取り、次の一手2手先を予測することだって可能。
自分でも言うのもなんだが正直僕はもう達人レベルである。
しかし!こんなので満足しては行けない。
【陰の実力者】へと至るためには、この程度できて当然。まだまだ僕の理想には程遠い。
てことで盗賊狩り完了。
今日は僕オリジナルのスライムボディスーツの性能を確かめていたのだ。
さってとー、お宝お宝〜♪
……んー、余りめぼしいものはないかなぁ……はぁ、ハズレの盗賊だったな。
しょぼくれていた僕は、ある一点を見つめた。
布に覆われていて目には見えないが、なにかがある。
……魔力の波動を感じるのだ。莫大な量の。でもすんごい乱れてる。
僕はこの魔力の乱れを知っている。
魔力暴走だ。なぜ知ってるかって僕もなったことがあるから。その時はもうちょいちょいのちょいって感じで治したけど………
歩いて布を取り除いてみると、紫色のぬっちゃぬっちゃした化け物がいた。
………僕もあの時魔力暴走を放置していたらこうなってたのかな………治しといてよかった。グッジョブ過去の僕。
しかしこれ……………………使える!!!!!!!
どうせこんなん誰も欲しがらないんだから実験に使っちゃおーっと。
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あれから1ヶ月くらい。
なんとあのぬちゃぬちゃ紫物体が金髪美人エルフへと大変身しました。
before after なんてものじゃないよ。ライ○ップもびっくりだよ。
研究に集中しすぎてどんどん人の形になってたことにすら気づかなかったんだよね。
いやー人間ってすごいね。夢中になるとこんなにも周りが見えなくなるんだ。
まあとりあずそれは置いといて。
金髪エルフちゃん。君はもう故郷に帰りな、幸せな人生送りなって感じで見送ろうと思ったんだけど……
「故郷なんてものはないです……みんな、みんな、家族も友人もみんな、私の体の異変が起きてからというもの、罵り、蹴られ、出て行けと言われました……もう私に帰る場所はないんです……私は、あなたに救ってもらった恩を返したいっ」
いやおっも…えぇ?そんなちょっと体に異変起きたぐらいで村八分状態になるの…?同情はするけど、救ったって言っても偶然の産物だし…
「うーん……じゃあ僕が王都に送ってあげるからそこで幸せになりな」
「ぇ…?……い、いやぁ!!お願いです!あなたの隣にいさせてください!!!!」
すごい。涙で顔がぐちゃぐちゃだよ。そんな絶望する?
あー、どうしよっかなぁ、彼女このままにしといたらなんか自殺とかやりかねないし………あっ!!
「ーーー君、魔人ディアボロスを知っているかい?」
それから僕は、彼女に様々なことを話した。
君の体を蝕んでいたのは悪魔憑きと言われる、ディアボロスの呪いだということ。
悪魔憑きは英雄の証だが、ディアボロス教団がその事実をねじ曲げ、悪魔憑きを虐げられる存在に塗り替えたということ。
そして僕は、そんなディアボロス教団を壊滅させることを目論むものだということ。
ま、全部大嘘だけどね。
でもこの子すごい純粋だから命捧げるとかいってくるよ。すごいね。
とりあえず適当にアルファって名付けといた。名前が欲しいとか言ってたし。
そして最後の決めゼリフはーーーー
「我らはシャドウガーデン、影に潜み、影を狩るもの」
ーーー決まった
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あれからまた3年くらい経った。
僕とアルファたちは13歳、姉のクレア姉さんは15歳になった。
アルファ"達"というのも、アルファが子猫拾う感覚で悪魔憑き持ってくるからその度に治療してたら人数が増えてたのだ。
今の人数は僕を含めないで7人くらい。
僕たちはその7人を【七影】って呼んでる。
かっこいい………けどもうこのくらいの人数ではいいかな。まあどうせ増えるんだろうけど。
そんなことより、年齢だ。
僕達の13歳という年齢に特に意味は無いが、15歳という年齢には意味がある。
貴族は原則、15際になると王都の学園に通わなければならない。
つまるところ今日は、姉さんが王都へと旅立つ日だったのだが………
肝心の姉さんが攫われた。
いやー参ったよ。僕も盗賊狩りに言ってたから全然気づかなかった。
「俺が部屋に入った時には既にこの有様だ」
親父が言う。
「争った痕跡はないが、窓が外からこじ開けられている。クレアも俺も気づけなかった、相当な手練れだな」
「で?」
「相当な手練れだから仕方ない、そういうことかい?」
母さんが言う。
「そ、そういう訳じゃなくてね、ただ事実を述べたまでで……」
「このハゲェェェエエエーー!!!」
「ひぃ、すいません、すいません!!」
僕は隙を見て自室に戻り、椅子に座る。
「出てきていいよ」
「はい」
「ベータか」
何も無いところが突然、1人のエルフの少女が。
彼女はベータ。
【七影】の第2席だ。
「アルファはどうしたの?」
「クレア様の痕跡を追っています」
「行動早いね。姉さんまだ生きてる?」
「おそらく」
「そっか」
「直ぐに七影を動員させ、救出致します。調査の結果、クレア様はこの辺りに……」
ベータはなにやらよくわかんない地図を広げる。
「いや、それはいいよ」
「え?」
「姉さんはシドの姿のままで助けに行こうと思う。僕一人でだ」
「し、しかし!普段のお姿のままでは本来の力が発揮出来ないではありませんかっ!」
ベータの言わんとしてることは分かる。
僕はシドの姿ではモブを貫きたいため、シャドウの時のような力は出せない。姉さんとの訓練でも毎回力を抜いている。
しかし今回は、やりたいことがあるのだ。
1人の平凡な弟が攫われた姉を助けに行くがボロボロにやられ、そこに颯爽と現れる【陰の実力者】!
僕はこれがしたいのだ!
あともうひとつ、やりたいこともあるんだけど………まあそれは追い追い説明しよう。
「そうだね。シドの姿では本来の力は出せない」
「ですから…っ!」
「ーーベータよ」
「っ……!?……そう、ですよね。シャドウ様が何も考えずそのような行動をするわけが無いですよね……承知致しました。しかし、シャドウ様に何か危険が迫ってきた時はすぐ様駆けつけます」
まあなんも考えとかないけど。あっ…
「それについてなんだけど、僕が指を鳴らしたら出てきてくれない?」
指パッチンで配下が出てくるってなんかかっこいいし
「了解です。直ぐにアルファ様たちに報告致します」
「あとーー」
僕はベータが広げた地図にサッとある一点にナイフを投げる。適当に。
「ーー姉さんはそこにいる」
「ぇ?…こ、ここですか?しかし、ここには何も………!?ま、まさか!」
ベータは慌ててこれまたよく分からない資料を取り出す。
すごい演技力だ。アルファに鍛えられたのかな?
「し、資料と照らし合わせた結果、 シャドウ様の指摘されたポイントに隠しアジトがあると思われます…」
ノリがいいね。
「この膨大な資料を一瞬で読み取り、さらに隠されたポイントまで読み解くとは……流石です!」
「精進せよ。ベータ」
「はい!」
返事をしたベータは窓から飛び降りた。おそらくアルファ達のところに行ったのだろう。
「よし、やりますか」
▼
深夜。
僕はシド姿のまま、こっそりと姉が攫われたアジトへと赴き、気配を消したまま、天井に張り付きカサカサと、それはもうまるでGのように姉さんがいるであろう所へと向かった。
あ、いた。
なんか檻の中にいる。しかも寝てる。
僕は姉さんを起こさないように地面にそっと足をつけて降りた。
「お姉ちゃん!」
ひ弱な弟を演じるためお姉ちゃん呼びも忘れない。
「んぅ………っ!?し、シド!こんなところで何してるの!」
「助けに来たよ!」
「助けにきたって、あんた一体どうやって……外には警備も居たはずなのに」
「隙を見て、壁に隠れたりしながら来たんだ」
まあ実際は天井に張り付いてたんだけど、あながち間違ってはないでしょ。
「っ……もう、あんたったら…無茶しちゃって…」
姉さんはそう言ってなんだか嬉しそうにはにかんだ。
「待っててね、今この檻開けるから…」
僕が扉を開けようとしたその瞬間、姉さんの顔が驚愕に歪んだ。
「シド!後ろ!!」
「ぐっ……!」
カキンと甲高い音が鳴った。
僕の後ろから、おそらくこのアジトのボスと見られる人が、剣で斬ってきたのだ。
僕は間一髪でそれを防いだーーように見せた。実際は気配でで後ろに迫っていたのは分かりきってた。
でもそんな態度を見せたらモブではなくなるので、ギリギリを装う。
僕は一旦距離をとり、体制を整えた。重心をグラグラさせるのも忘れない。これによって一気に弱いやつ感が増すのだ。
「ほう……今のを防ぐか…」
歳は30代くらいかな。大柄で、灰色の髪をオールバックにまとめてる。
うん。いかにも。悪人だね。でも心から闇堕ちしてる訳ではなさそう。勘だけど。
「ぼ、僕は毎日お姉ちゃんと修行してるんだっ!お前なんかに負けたりしない!お姉ちゃんを返せ!」
「シド……」
「…姉を助けるためにここまで来るとは…なるほど、良い弟を持ったなクレア・カゲノー」
「っ…!だまれ!!お前、シドに何かしたら絶対に許さない!」
「残念ながら、お前の弟はここで死ぬ運命だ……しかしその勇気を称え、名前だけは聞いておこう」
「…シド・カゲノー」
「シド・カゲノー…覚えておこう」
「シド!!やめて!!今すぐ逃げて!!あんたが敵う相手じゃない!!!」
そんな姉さんの静止の声を無視し、僕は足を動かし走り出した。
「うおりゃあああぁ!!」
勢いよくジャンプし、剣を振り上げ、下ろす。
その瞬間、血しぶきが空中へと舞った。
僕は血を流しながら地面へと倒れる。
ちなみにこの血は偽物の血だ。僕は、それこそ光の速度でこの偽物の血が入った袋を破り、失血して死んだように見せた。
これこそが【モブ式奥義・血がブシャーってなるやつ!】だ!
決まった……今の僕、過去サイコーにモブってる!!
「ぇ……シ……ド…?」
そんな感傷に浸ってるいる中、クレア姉さんの絶望したような声が聞こえた。
あざした