秦・恋姫†無双   作:aly

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魏は曹洪に視点を移します。
来る呉・蜀との戦いに向けて彼女は日々頑張ります。


苦労人栄華の物語

 陳留城府の中でも一際大きな執務室。しかしそこは今や書簡や竹簡の山によって最も小さなスペースになってしまっている。

 部屋の主はというと、机にかじりついて黙々と竹簡に目を通しては筆を走らせている。このところ数週間はこの有り様だろうか。隣室の部下たちも青ざめながら、上司の様子を伺っている。

 

「ここと……たしかあっちにある書簡にまとめてある荷物は途中から一緒に載せられるわね。ふふ、また少し運送費を減らせたわ」

 

 ぶつぶつ。誰に聞かせるわけでもない。確かな成果をあげたことを確認して、次の作業へ心を奮い立たせているようにも見える。

 

「栄華ちゃん。ちょっといいかしら?」

 

 部屋の主の頭がぬっと起き上がる。ひどい顔だ、と陳珪は思った。少し痩せているし目の隈も目立つ。よく見れば化粧をしているようだが、それでも隠しきれていない。

 しかし彼女にはそのオーバーワークを止めることができなかった。むしろさらに働かせにここへ来たのだ。 

 

「何?」

「先に冀州と徐州の分だけでも兵糧として買い付けられる分量をまとめておいたわ。幽州はまだ時間が必要ね」

「そう。そこに置いておいてくださる? 第二の輜重隊として用意した馬車で足りるといいのですけれど」

 

 彼女の関心はまた手元の資料に戻る。積み重なったタスクは膨大で、よほど緊急でない限りは眼の前の仕事を地道にこなすのがよい。

 戦にもっとも重要な兵站については、すでに運ぶ手段と保管先までは手配を済ませている。あとは荷物を各担当者が手配するのを待つだけだ。

 冀州牧でもある陳珪を前にしてこの態度とは、彼女らしくもない。

 いかにして彼女――曹洪が破滅的な職務に追われるようになったのか。全ては三ヶ月前の主君曹操の一言まで遡る。

 

 

***

 

  

 「私はここで劉玄徳、孫伯符双方を討つわ」と曹操が次なる会戦を宣言したのは襄陽を攻めるよりも前のことだった。

 曹洪はすぐさま重労働がやってくることを確信した。主要な家臣を集めての会議だと聞いていたときから嫌な予感はしていたのだ。劉備のみならず孫策とも戦うとなれば、戦場は川。今までのように兵馬や武器、兵糧だけを集めればいいというわけではない。船が必要だ。

 しかも兵站はかなり間延びする。主君の曹操がどこまで前線基地を確保するのかは曹洪には分からない。それを理解できるのは軍師たちと曹操本人だけだろう。

 

「まずは襄陽を落とすわ。春蘭、秋蘭、凱羽。あなた達に任せましょう」

「御意」

 

 襄陽が手中に入る。となれば烏羽はもう目と鼻の先だ。そこまで物資を運び込みさえすれば、不足分は宛に貯蔵すれば物資が滞ることはないだろう。しかし魏の食糧生産地である河北から襄陽までは相当な距離がある。既に襄陽は落ちたものと考えて動くくらいでちょうどよいだろう。曹洪の頭脳の中で地図とそろばんが展開される。

 

「次に華侖。あなた、たしか凱羽の下で道路を敷設したことがあったわね?」

「へ? 西涼のこと?」

「ええ、そうよ。また同じことができるかしら」

「うーん。あたしの隊の皆なら出来ると思う。でもそれだけじゃあそんなに長い道路は作れないっすよ?」

 

 曹仁が道路工事に初めて携わったのは、潼関の戦いの折にガイウスが建設したカストラから伸びる大型兵器運搬用の道路のときだ。ガイウスの工兵に混じって作業をした曹仁は、穴を掘り、砂利を敷き詰めてローマンコンクリートを流し込む作業をなんとなくではあるが覚えていた。

 

「それでいいわ。凱羽、襄陽へ行く前にこの子にもう一度作業を叩きこんであげなさい。そして華侖、あなたには兵一万を与える。まずは官渡港から陳留まで、陳留から宛までの道を大秦式になさい」

「はいっす!」

 

 曹操の頭脳は戦に必用な全てが整理されている。曹洪の心配する兵站のことも万事理解しているのだ。

 

「騎兵の調練は柳琳、歩兵の調練は凪、沙和に任せるわ。そして真桜――あなたには船の建造を行ってもらう。鄴の近くに造船所を作らせてあるからそこに行きなさい。一刀、あなたが連絡係をなさい。もちろん街の警羅も凪たちとやるのよ

 

 その後、呉の監視に張遼が割り当てられ、蜀の監視に徐晃が配置された。残るは軍師たちと曹洪である。

 

「桂花と稟は烏林の戦に向けた試算を速やかに行い、策を献じなさい。手配は栄華、頼むわよ」

「もちろんです、華琳様」

 

 それから襄陽が落とされ、大秦から使節団が訪れるなど華々しい日々が魏に訪れた。

 その間の曹洪はと言えば、破竹の勢いで書類を処理していた。まず、曹仁に任された道路建設に関わる経費の計算から始まる。既に涼州では金城から長安、長安から陳留まで2本の街道が敷設されている。

 雍州刺史・張既はとても優れた人物で、長安から金城までに必要とした人材や工材を細かく帳簿に残している。それを新たな道に換算すればよい。

 さらに必要な工材を手配し、随時曹仁のもとへ届ける差配も忘れない。

 続いて重要なのは兵糧である。昨秋の麦の収穫は各州から報告が上がっている。既に兵糧として買い付けた分以外は、生活に支障のない分をさらに買い付ければ今用意できる兵糧となる。あとは今年の収穫分だが……。

 

「桂花、稟。ちょっといいかしら」

「何よ、今は水軍をどう調練するか良い議論になってるんだけど」

「何を言うのです。あなたが無難な案をひけらかしているだけではありませんか。もっと大胆に行かねば孫呉の水軍には勝てませんよ」

 

 どうやら水軍の方針で荀彧と郭嘉の間でトラブルが生じているようだ。一つの机を挟んで向き合っている二人は今にも掴みかからんばかりの様子だ。しかし曹洪はそれには触れずに己の用件だけを端的に述べることにした。

 

「実際のところ、戦はいつ始まる予定なのでしょう。用意できる兵糧にかなり差が出てしまいますわ」

「そうね。収穫は南の方が先だから、冬から春とみていいでしょうね」

「華琳様ほど拙速な方なら秋の早い時期なのでは?」

「あん?」

「なんです?」

 

 再び始まる軍師たちの戦いを後目に、曹洪は新たに増える兵糧の手配について陳珪を訪ねなくてはならなくなったことにため息をついた。

 その後の三か月、曹洪の疲労は日に日に増していった。 書簡と竹簡の山が部屋の隅々まで積み上げられ、彼女が歩くたびに埃が舞い、崩れかけた竹簡を押さえながら指示を出す日々。

 

「曹手簿様、あまりご無理は……」

 

 と部下に窘められても、「無理なんてしていなくてよ。それよりもあたな、随分顔色が悪いじゃありませんの。今日はお休みなさい」と逆に窘める始末だ。自身は睡眠もまともに取れず、目の下には深い隈が濃くなっていった。

 小さな物音で肩に力が走り、書類を落とすとつい声を荒げてしまうこともあった。

 それでも軍船建造の進捗を確認し、部下を気遣いながら指揮を執るその姿は、疲弊と威厳が交錯するものだった。 

 しかし真の問題はそれではない。兵や武具の手配が着々と進んでいく中、一行に報告がほとんどない部門がある。曹洪は苛立っていた。ただでさえ道路敷設の進捗が悪いというのに、あの問題児といえば何をしているのか。ほとんんど中身のない報告書の唯一の報告といえば金の無心だけだ。

 

「あー!! もうっ、誰か真桜さんをお呼びなさいっ!!」

 

 その部門とは軍船部門。今回の戦の要であった。ついにキレた曹洪は髪を振り乱して部下に李典召喚を命じた。

 

 

***

 

 

 呼び出しから四日後。ようやく李典が現れたと思えば、そこには一刀とガイウス、そして程昱の三人が付いてきていた。なぜこの三人がと思えば、曹操からの命令で大秦の技術を用いた新型の船を開発しているらしい。

 

「なるほど。真桜さん? さてはあなたその新型船計画に加わっていますわね? ()()()()()()はなんでした?」

「ひえぇぇっ。楼船ほか軍船の建造ですーっ!」

 

 この数か月の激務で目の下に濃い隈を作った曹洪の凄みは恐ろしいもので、李典は思わず床に這いつくばりそうになった。一刀も一歩引いてしまっている。程昱でさえ「おおぅ」と口に出して、しまったとばかりに扇で口元を隠した。

 

「とにかく、建造の時期が分からなければ運搬の試算もできませんわ。ただでさえ道路のほうが問題になっておりますのに……」

「道路? 何か問題ですか?」

 

 ずい、とガイウスが一歩前に出る。

 

「ええ、進捗がよろしくないのは凪さんにも担当してもらうよう華琳様に打診するとして、長安から陳留までで大型荷物を運ぶ運用をしてみたところ、船の輸送に相当な時間がかかってしまいますの。それだというのに……」

「えーん。堪忍してください栄華様ー」

 

 曹洪の試算では、本来半年かかるところだったものが、ローマ式の街道に整備することで3ヵ月まで短縮できる。しかしこれは楼船一隻の話で、大量の船を運ぶとなれば人夫や丸太の往復のためにさらに日数がかかるだろう。秋の開戦となれば間に合わない可能性がある。

 

「うぅう……」

 

 進退窮まった曹洪がついて椅子にもたれかかって動かなくなる。これはいよいよ大変だ。ガイウスはちらりと隣の程昱を見た。彼女がこくりと頷くや否や、ガイウスは部屋を飛び出た。

 数刻の間、曹洪は眠りについていた。その間にガイウスたちは実にうまく事を運んだ。

 

「あら、私は……?」

 

 ぱちりと瞼をゆっくりと開いた曹洪は身体の疲れが少し取れていることに気が付き、起き上がろうとしていつもと違う寝台に寝ていたことに気が付いた。

 

「ここは――」

 

 どたばたと何人もの人が走り回る音が遠くから聞こえる。怒鳴り声や金属を打つ甲高い音さえ聞こえる始末で、明らかに陳留城ではない。

 

「ここはどこですのー!?」

 

 曹洪が心の底から叫び声をあげたとき、部屋の隅でびくりと布が飛び上がった。

 

「おおぅ。いきなり大きな声を出すなんてひどいですね~、栄華さま」

「風!? ということはここは鄴!?」

「正確には鄴の近くの造船所です。華琳様にお願いしてお休みをもらってきましたよ~。栄華様の仕事は今頃桂花ちゃんがやってくれてます」

 

 ガイウスと程昱がアイコンタクトを交わした後、ガイウスはまず荀彧の下に向かった。酒祭軍師である彼女は曹操に次ぐ権限を持っているからだ。全ての物と金の流れを司る曹洪が倒れたと聞いて、荀彧は事態の深刻さを真摯に受け止めた。

 まずは何が曹洪を疲弊せしめたのか判明させねばならない。そう言うと荀彧は自らが曹洪の代わりに任に就き調査をするという。

 

「栄華には休暇を与えるわ。そうね――あんたんとこで面倒見なさい」

 

 という彼女の一言で曹洪の行先が決まった。

 あとは曹洪を起こさないように馬車に乗せ、そっと船着き場まで移動してここまで運んできた次第である。

 すべてを聞いて曹洪はまず男たちに寝顔(というか気絶した顔)を見られたことに憤慨したが、階下から聞こえてくる声や音に次第に関心が寄って行った。

 

「真桜さん、何もしていないのかと思えばちゃんと船を作ってらしたのね」

「そうですねー」

「どれ、私も確認しましょう」

 

 程昱が止める間もなく、曹洪は扉を開けて木造の階段を降りていく。階段までには同じような扉が並んでいたからどうやら今までいた部屋は休憩所だったらしい。

 階段を降りるとそこは造船スペースだった。

 曹洪は造船所の端の通路をゆっくりと歩きながら、周囲を見渡した。鉄の匂いが鼻腔を満たし、赤く燃える炉の熱が背中をじりじりと焦がす。槌の音、鋸の音、作業員たちの掛け声や怒声が渦のように響き、まるで別世界に迷い込んだかのようだった。

 通路沿いには完成したばかりの先登や艨衝が整然と並び、黒光りする船体が光を反射している。その隣では、まだ組み立て途中の楼船がそびえ立ち、骨組みに絡む縄や木材の山、波を打つように並べられた櫓の部品が、工房の熱気と雑音に溶け込んでいた。

 さて、通路の先には開け放たれた扉があり、見覚えのある三人が何かを前にして何やら話し合っている。あいにくと背丈のあるガイウスのせいでそれが何かは見えない。

 

「おはようございます、皆さん。何をしてらっしゃいますの?」

「お、栄華様おはよーさん。うちの寝台でよー眠れた?」

 

 いくつも並んでいた部屋には作業員のものもある。李典の配慮がなければと思い男嫌いの曹洪はぞっとした。

 

「え、えぇ……。ところでそれは……車輪?」

 

 曹洪の目がぎらりと光る。

 

「真桜さん? 船に車輪は必要ありませんわよね? 何を作っているのかしら?」

「ちゃ、ちゃうねん! これはな……その、栄華様のためにぃ」

 

 怒られ過ぎて委縮してしまう李典。そこから先は一刀が引き継いだ。

 

「ほら、執務室で船の運搬が間に合わないって言ってただろう? だから丸太を使わない、船を運搬できるトレーラーを作ろうってことになったんだ。あ、トレーラーっていうのは天の国の大きな荷物を運ぶ荷車のことなんだけどさ」

「しかし天の国のものは技術的に再現できません。ですから大秦の技術で補おうと議論していたところです」

 

 一刀たちの説明を受けてから回りを見てみると、車輪の向こうには長大な台がある。小型の船ならば容易に乗る大きさだ。車輪も四つではない。一つの荷台に12の車輪が装着されている。

 

「これで船の重さに耐えられますの?」

 

 曹洪は懐疑的だ。約4500石(50トン)以上はする船をこのようなもので運べるとは思わなかったからだ。もちろん、船は分解して運ぶから一つの荷台に乗せる重量はもっと軽くなるだろう。

 

「今はまだ耐えられないかな。車軸と車軸受けの強化が必要だ。でもそれができたらいける……んだよな? 真桜」

「そら天と大秦とウチの技術にかかればいける! と、思う!」

「だってさ。だから栄華はもう少し休んでてよ。これが完成したらあとは真桜がぱぱっと船を作るから」

 

 一応作業員たちは指定された船を現在も建造中である。あくまで李典だけがこのトレーラーの製作に携わっている。

 

「分かりましたわ。大人しく今日はお休みさせていただきますわね」

 

 曹洪は上品に礼をすると身を翻して階段のほうへ向かい――

 

「そうそう凱羽さん。華琳様から命じられたアレをこのような場所で作るのは如何なものでしょうか。風さんと話をしておくので、その作業が終わったらすぐに移動なさい」

 

 にっこりと微笑んで姿を消した。さすがに将軍西王秀も背筋が伸びる思いだった。

 

 

***

 

 すでに半ば完成している荷車の何が問題なのか。この発明品は既に恐るべき進化をとげているのに。

 曹洪はただの車輪をつけた台車だと思っていただろう。しかしこれはローマの技術を駆使して作られた台車である。まず、木製の車輪の外側が青銅で覆われている。本来ローマでは鉄が用いられているが、後漢ではまだそこまで技術が発達していない。その他車軸にも幾つかの青銅が巻き付けられていて強化が施されている。それを一台の荷車に複数取り付けるのが古代ローマの知恵だった。

 実はガイウスはこの台車以外にも造船所に役立つ装置をいくつか李典に伝えている。それは滑車を用いた巻き上げ機である。

 しかしこれほど足元を強化した台車にある問題とは何か。それは曲がれないことだ。そもそもローマは用途に合わせて道を作るので曲がる必要がほとんどない。傾斜すら土木工事で解決してしまう。しかし漢の場合はそうはいかない。

 

「盲点でした……」

「うーん。トレーラーは曲がれるのになんでコイツは曲がれないんだ?」

 

 一刀が不思議そうに台車の周りをぐるりと回って首をひねった。

 

「どうせたいちょーが知らんだけでお宝もんの技術が使われてるんやって」

「そうかもな」

 

 そもそもこの台車は一刀の知る大型の10トントラックよりさらに巨大なのだ。海外に見るトレーラーに近い。しかし一刀は長大な貨物車と考えてふとある物に思い至った。

 

「そうか、列車だ。貨物列車だ。荷台をこんなに大きくするから曲がれないんだよ。もっと細かく分けて、鎖か何かで繋いだら曲がれるって。天の国にもそういうのがあるんだ。一番前は大量の馬に曳かせたらなんとかならないか?」

 

 わっとあふれ出た思いついたアイデアを一刀が語り出す。

 李典もガイウスも始めはぽかんとしていたが、やがて頭の中でイメージが湧いたのか、急いで工具を取りに走り出した。

 

「真桜! とりあえず三分割でいいですか!?」

「かまへん! いっくでー!!」

 

 一気に荷台が三つに分割されていく。言い出した一刀を置いてけぼりにして、二人は車軸の位置を調整し、まずは各台車に四輪が設置された。李典の槍でぷすりと荷台に穴が開けられると、ガイウスが手早く鎖を通していく。溶接は李典の仕事だ。

 あっという間に連結型陸上運搬車が完成した。

 

「よし。ほんなら皆で引っ張って曲がれるか試してみよか」

「上手くいくといいんですが」

「えぇ……。俺これを引っ張れる自信ないけど」

 

 三者三様の意気込みで、一番先頭の台車に括りつけられた鎖を持つ。

 李典の掛け声で三人はそれを綱引きの要領で引く。荷物は何も乗っていないので、最初の車輪が転がり出せばあとは容易だった。

 

「右やー! 右に引っ張るでー!」

 

 広い造船所とはいえ、この運搬車用の区画は狭い。三人は通路にまで飛び出して、無理やり台車の方向を変えた。

 そのとき、再び階段から降りてきた曹洪が、廊下に屯している三人を見て顔を顰めた。

 

「なんですの? 騒々しい」

「あ、栄華様! 見てください、ほら! 運搬車が完成したんです!」

「え!?」

 

 思わぬ報告に曹洪はぎょっとして部屋を覗き込んだ。さきほどとは異なり裁断された荷台と車輪。鎖によってつながったそれらがカーブを描いて部屋の中に鎮座している。

 

「あとは車輪を追加すれば重量のある物も、現地で組み上げる形にすれば運搬できますよ。栄華さん」

「凱羽さん。それにあなたたちも……」

 

 曹洪はさっと顔を背けると静かに零れ落ちた涙をぬぐう。

 

「さーて、じゃあウチは仕事に戻りますわー」

「お、俺も!」

「では私は風さんのところに今後の相談に行きましょう」

 

 この魏では問題児こそ可愛いのだ。

 そのことを思い出した曹洪は、まだ乾かぬ頬を緩ませて微笑んだ。




いよいよ各勢力準備が整ってきました。
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