血を求める   作:ぺへ

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二夜

着替えを終えた一誠は生まれ育った町である『駒王町』を歩いていた。たった一夜で何も変わるはずは無いが、一誠にとっては数年以上居なかった町。懐かしさしかないのだ。しかし・・・

 

「(臭うな・・・。まさか、現実にも獣が出たのか・・・?しかし、獣とは違う・・・。この感覚はなんだ・・・?)」

 

一誠は前までとは違う駒王町に戸惑いを隠せない。微かに香る血の臭い。ヤーナムに比べれば何とも思わない程度。しかし、時折すれ違う人の気配は人のそれでは無かった。

 

「(・・・調べてみるとしよう。まずはこの血の臭いからか。)」

 

その後、午前中は町を隙間なく見て周り、午後は狩りの準備を入念に行う。狩りでは考え付く全ての事、予想外の事全てが起こりうる可能性がある。だからこそ、どんな局面にも対応出来るように準備を怠ってはならない。

 

そして、真夜中。住民は寝静まり人通りも午前中に比べれば格段に減った時間。一誠は闇に溶け込むかのような全身真っ黒の服装をしていた。

 

腰には『クイーン・アン・ピストル』を大きく取り回し易い様に改造した獣の狩人専用の銃を腰に刺し背中には刃の部分が異様な程デカイ斧を背負う。

 

これこそが狩人の基本的な正装。狩人は化け物では無く人間。故に闇に紛れ獣を仕留める。だからこそ、あらゆる知識や技術が求められる。しかし、誰も教えてくれる者は居なかった。故に一誠は幾度もの死を通じあらゆる者達から技術を見て盗んだ。

 

血の臭いを辿る内に全く人気の無い建物へ辿り着く。建物には所々穴が空いているが、どう見ても人為的に開けられたもの。

 

「ここで間違いないな。・・・しかし、先客もいるな。」

 

一際大きな壁穴から顔を覗かせれば、複数名の人と巨大な醜い獣が戦っていた。否、人では無いと一誠の勘が告げる。少し様子見をしようと思った矢先、長身の蒼髪ボーイッシュの女の子が隙を見せ獣が巨大な口で食いちぎろうとしている。

 

獣の口が勢いよく閉じとてつもない轟音が鳴り響く。しかし、獣は何者も噛み切る事は出来なかった。

 

 

《由良翼妙side》

 

この世界には異形がいる。かくゆう私も『転生悪魔』だ。幼少期より悪霊に狙われやすかった私は自然と身を守る術を身に付けたが、ある時逃げられない境地に立たされた時、私の主であり私の通う学び舎の生徒会長でもある『ソーナ・シトリー』様に助けられ私も異形となった。

 

今回は主の元を逃げ出し好き勝手に暴れる『はぐれ悪魔』の討伐の為ここに来たが、今回はかなりの強敵という事でソーナ会長の幼なじみである『リアス・グレモリー』先輩とその眷属との共同討伐となった。

 

正直、私は油断していた。『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』という異名を持つリアス先輩と水を自在に操るソーナ会長が出るならすぐに終わると。

 

しかし、それは大きな間違いだった。リアス先輩の攻撃は主に『滅び』の性質を持った魔力であり()()()()格上だろうと致命傷は確実。それ以外にも雷を自在に操る『姫島朱乃』先輩に、とてつもない速さを武器に持つ騎士の『木場祐斗』、小柄な体格に似合わず高い攻撃力を持つ『塔城小猫』。

 

私の属するシトリー眷属は会長の右腕であり、反射の異能を持つ『神羅椿姫』副会長、刀剣を得意とする『巡巴柄』、優しい性格を持つ『花戒桃』。

 

しかし敵はあまりにも硬過ぎた。龍の様な鋭い鱗は武器を通さず、巨体ながらも素早く動き周り力任せの圧倒的な暴力を振るう。

 

私達は何時しか避けるので精一杯となっていた。なんとか打ち込める隙を見つける為に私は走り出したが、運悪く何かに躓いてしまう。その隙を取られはぐれ悪魔は私の目の前で大きく口を開けた。

 

この光景に私は一瞬固まってしまったのだ。目の前の口は既に閉じ掛けている。もう逃げる余裕も無い。その瞬間、私は今までのあらゆる記憶を見た。忘れていた幼少期の記憶から今日までの記憶を。これが走馬灯というやつなのだろう。

 

死を抗う時間も無くはぐれ悪魔の巨大な口が轟音と共に閉じたが、私の意識はまだあった。それどころか、目の前にははぐれ悪魔では無く黒い服に身を包んだ謎の人物がいる。

 

「・・・無事のようだな。」

 

声からして男。気配も普通の人間だが、あの絶望の一瞬から私を救い出した。只者では無い。ようやく思考が回復してきた頃、私は今の現状を把握した。抱き抱えられているのだ。この事に恥ずかしさを覚えるも一瞬で先程の死の恐怖に襲われ身体が強ばって震えてしまう。男はそんな私を見てかゆっくりと地面に下ろしはぐれ悪魔に向かい合う。その背中には歪な斧が背負われていた。

 

「先に詫びよう。お前達が誰かは知らないが、この『獣』は俺が狩らせてもらう。」

 

「あなた、何を言っているのよ!今すぐ逃げなさい!」

 

リアス先輩の言葉を無視し男は右手に斧を、左手に銃と思わしき物を手に取る。正直、私達は限界でありこのままでは全員が死ぬ。しかし、この男も加われば犠牲者を出す事にもなってしまう。

 

『グルギュア!コイツはいい!抱きごたえのある女が数人いるだけじゃなく、美味そうな人間まで!!』

 

「知性を持つ獣か。失っていれば幾許かは幸運だっただろうに。」

 

『何ゴチャゴチャ言ってんだ?まあいい。諦めて俺の餌になれよぉ!!』

 

はぐれ悪魔はこちらに向かってくる。私はその場を離れようとしたが、まだ身体が強ばり力が入らない。男は斧構えるとはぐれ悪魔に向かって横なぎに振るう。身体を逸らし、はぐれ悪魔もまたほんの数センチではあるが私から離れた所で落ちた。

 

「・・・硬い鱗だ。」

 

『グルギュア!俺を少しとはいえ動かしたか!だが、美味そうな餌の傍に来れただけだぁ!!』

 

はぐれ悪魔は再び私に突っ込んで来た。ようやく身体が動くようになったと言うのに避けるには時間が足りない。そう思っていると先程の男が斧の先ではぐれ悪魔の目玉を突き刺した。

 

『グルオォォォォ!!!!目が!!俺の目がァァァァァァ!!!!貴様ァ!!!!』

 

あの短い時間で素早い相手の目を潰すなど神業としか言えない。一体、何者なんだ。この男は・・・!!

 

《sideout》

 

 

 

一誠は目玉を潰した後、先程助けた少女を再び抱え人ならざる者達の方まで下がり少女を下ろす。

 

「由良!」

 

「会長!すみません、私・・・!」

 

「いいのです。あなたは生きているのですから・・・!あなたも、ありがとうございます・・・!」

 

「感謝をしている暇は無い。人ならざる者達よ、離れていろ。」

 

「ソーナ!伏せて!!」

 

紅髪の少女が叫んだ瞬間、獣は巨大な爪でソーナ達諸々を一誠ごと引き裂こうとするが、一誠は獣狩の斧でそれを防ぐ。しかし自力が違う為、壁へ大きく吹き飛ばされる。ソーナと呼ばれた少女は由良と呼ばれた少女と共に間一髪で攻撃を避けた。

 

「ガグッ・・・!」

 

『死ねぇぇぇぇ!!!!』

 

獣は壁に叩きつけられた一誠へ突進して行くが、一誠は巨体の下をローリングで通過し事なきを得た。

 

「あなた!大丈夫なの!?」

 

「黙って下がっていろ!!死にたいのか!!!」

 

一誠の怒号に紅髪の少女は怒りを露にしようとするも獣はその暇を与えない。紅髪の少女を横に蹴り飛ばし自身も横に飛んだ瞬間、地面に分厚く爪痕が刻まれる。

 

「狩りの邪魔だ!!今すぐここから消えろ!!この獣に集中させろ!!」

 

「っ!・・・みんな、一度離脱するわ!」

 

「私達もです!」

 

複数名が紅色、水色の魔法陣と思わしき物で姿を消していく。残ったのは狩人である一誠と獣だけだ。

 

『貴様のせいで俺の食事が減った!!タダでは殺さん!!最高の苦しみを与えてやる!!』

 

「丁度いい。俺も貴様を狩るのに集中出来る。」

 

一誠はようやく一人になれたことで存分の力を発揮できる。再び獣は爪で引き裂こうとするも、これをバックステップで避け、噛みつきにはローリングで対処し、突進は横飛びで回避する。獣の攻撃は只管に激しくなるが、一誠はその全てを避ける。

 

避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて唯ひたすらに避け続ける。この攻防が三十秒程続いた時、獣の怒りは限界点に達した。

 

『このクソ雑魚がァァァァァ!!!!』

 

獣は大きく口を開けて猛突進してくる。例え経験豊富な者でもほとんどが回避へと移行するだろうが一誠は違った。銃を投げ捨て斧の持ち手を思いっきり引くと持ち手が伸びたのだ。そのまま両手で持ち全体重を斧に乗せて()()から下顎を切断する。

 

『!?!?』

 

何が起きたか分からない獣はその場で固まってしまう。敵の目の前で固まるなど悪手以外の何者でもない。一誠は切断した下顎部分に斧の刃を入れそのまま縦に力一杯振り下ろす。強固な鱗ごと肉を切断し獣の返り血を全面に思いっきり浴びながらも手を伸ばして内臓を引きちぎった。

 

『グギャァァァァァァァ!!!!』

 

まさかの攻撃に獣は蹲る。獣は今まで様々な攻撃を受けてきただろう。それでも、内臓を引きちぎられる等思ってもみない。否、そもそも思い付く事すらない。獣は目の前の男に恐怖し逃げ出そうにも痛みがそれを超える。

 

一誠はそんな獣を見て先程投げ捨てた銃を手に取りゆっくりと近付く。その姿は正しく死神だ。怯える獣の頭に銃を突き付け無理矢理地面にひれ伏させる。

 

『だ、頼む!見逃じでぐれ!もう喰わない!頼』

 

命乞いする獣へ無慈悲にも引き金を引く。獣は頭を撃ち抜かれそのまま死へと誘われた。

 

「・・・ククク、クフフフフフ・・・」

 

廃屋に残された一誠は唯笑みを浮かべ笑いを零す。

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