血を求める   作:ぺへ

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三夜

悪夢から戻ってきて一週間が過ぎた。しかし、殺した獣の数は分からない。あの夜から何十頭もの獣を狩っている。それでも血の臭いは消えない。それどころか日に日に増えているようにも感じる。

 

そんな事を思いつつ、一誠は目の前の獣に引導を渡した。地面に横たわった獣の頭を巨大な石槌で躊躇無く潰したのだ。様々な場所に血や肉片が飛び散りグロテスクという言葉以外何も見当たらない。

 

血と肉片に塗れた石槌を背負い帰路へつこうとすると紅の魔法陣が現れる。

 

「はぐれ悪魔の場所は・・・って、また、貴方なのね。」

 

「それはこちらの台詞だ。悪いが、獣は俺が狩った。」

 

二人の会話の通り、これが二度目の再開では無い。それどころか、一週間の内に3回は会っているのだ。残りの4日間は前回いた眼鏡の女性とバッタリ遭遇した。

 

「あ、あらあら・・・。随分と潰れていますわね。」

 

「・・・グロテスク。」

 

「あ、相変わらず惨たらしいね・・・」

 

一誠は特に反応を示す事も無く再び歩き始める。まだ、血の臭いがするのだ。

 

「ねえ、ちょっと待って。」

 

「なんだ?俺は次の場所に行く。」

 

「私と契約しないかしら?」

 

「・・・契約?」

 

曰く、彼女は神話に登場する悪魔だと言う。そして、今まで殺していたのははぐれ悪魔という異質の存在。情報とは常に武器になる。無知のままでいては何者にも喰われる。

 

「それでどうかしら?」

 

「・・・条件がある。契約するのは獣・・・いや、はぐれ悪魔とやらの時だけ。報酬はこちらで決める。それで手を打とう。」

 

「ええ。こちらも構わないわ。それで、貴方の事はなんと呼べば?」

 

「狩人でいい。名など今の俺には不必要だからな。」

 

「そう。今日もまた、助かったわ。ありがとう。」

 

「礼などいらん。」

 

こうして一誠は彼女達と別れ次の狩場へ向かう。次の場所は元は病院だったようで、辺りには病服を身にまとった死者が彷徨いている。一誠は見慣れている為なんとも思わないが、心霊スポットとしては些かホラー過ぎる場所なのは間違いない。

 

獣もといはぐれ悪魔を探すがどこにも見当たらない。病室、霊安室、通路。その全てを探すが何も無かった。残りは屋上のみ。屋上へ続く階段を見つけた時、突如として天井が崩れて来た。

 

一誠は身軽に躱すも屋上への道は閉ざされた。しかし、もう屋上へ行く必要も無い。何故なら、目の前に標的がいるからだ。全長5メートル程の丸い物体ではあるが無数に触手が生えており先端には手術などで使われるメスやハサミと言った医療道具からネジや鉄骨と言った物をはめ込んでいる。

 

「厄介だな・・・。まともに近付けば即死か。」

 

悪夢では死ぬ事など日常だった。しかし、夢だったからこそ何度も蘇る事が出来た。しかし、今は紛れもない現実だ。蘇るどころか一度死ねばそれで終わりだ。故に慎重に行動しなければならない。

 

はぐれ悪魔は一誠へ向かって無数の触手を高速で伸ばす。全て避けはしたが、避けた先の壁は粉々に砕け散っていた。貫通力と破壊力も一級品のようで、更に注意が必要だろう。

 

一誠は懐から何かの瓶を取り出しそのまま投げつけた。当然、はぐれ悪魔はその瓶を斬り裂くがその際中の液体が思いっきり降り掛かる。何かが降り掛かった事に違和感を覚えるはぐれ悪魔だが、一誠が壺を投げた事で突如として燃え盛る。

 

『「グルギュアァァァァァァ!!!!」』

 

突然の業火に驚き、その痛みから暴れ回るはぐれ悪魔だが一誠は構わず次々と瓶を投げつけ炎上させる。10本ほど投げ付けた所で瓶が底を尽いた頃には既に丸焦げの状態だった。背中に背負っていたハンマーの持ち手を握り、ボタンを押すと持ち手部分が外れ剣となる。

 

瀕死のはぐれ悪魔にゆっくりと近付き、剣で一刺しすれば動かなくなる。剣を引き抜いた所で後ろの方から光が差し込んだ。顔を少し後ろへ向けると今度は黒髪でメガネと眷属と思われる人ならざる者がいた。

 

「・・・また、貴方ですか。」

 

「悪かったな。狩りは終わった。」

 

「この焦げ臭さは・・・まさか、焼いたのですか?」

 

「ああ。触手が邪魔で斬り込め無かったからな。」

 

踵を返しこの場から去ろうとする一誠。もうじき夜が明ける。今夜の狩りは終わりだ。

 

「待ってください。」

 

「・・・なんだ?」

 

「私と契約を結びませんか?」

 

「契約なら赤髪と結んだ。」

 

「赤髪・・・リアスの事ですか。ええ、聞きました。しかし、この町にははぐれ悪魔が多い。それどころか引き寄せられる様に日に日に増えているのです。だからこそ、手伝って欲しいんです。」

 

「・・・条件は赤髪と同じだ。それでいいなら結ぼう。」

 

「ありがとうございます。」

 

「あ、あの・・・!せ、先日は助かった!」

 

一誠が以前助けた女性が頭を下げる。しかし、一誠の目は鋭く悲哀に満ちていた。

 

「単なる自己満足だ。礼を言われる筋合いは無い。」

 

「しかし、助けてもらったのは事実だ・・・!」

 

「・・・」

 

一誠は思い返す。悪夢で助けられなかった者達を。獣に喰われた少女、獣を産んだ娼婦、気が狂った聖職者。あの時の気持ちをぶり返したくが無いために助けただけだ。

 

「契約の件、忘れるなよ。」

 

一誠はそう言い残し家へ戻る。返り血で染まった狩装束を脱ぎ捨てベットへ横たわり眠りへ着いた。

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