転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜   作:黒片大豆

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53.こすちーむぷれい

「お似合いですよ」

 なに笑ろてんねん、トッシュ。

「お似合いですよ」

 なに笑ろてんねん、トモエさん。

 

 つい先程まで否定的だったトモエさんも、何だかんだでノリノリになっていた。

 俺の衣装を眺めて、さっき鼻血を拭いていた気もする。

 

 今日、トモエさんには苦労をかけっぱなしだったからな。疲れが出たのだろう。そう信じたい。

 

 部下二人に好評な俺の衣装は、ズバリ猫。

 ホワッとした布地のパーカーであるが、模様はミケネコのそれだった。

 服にはフードが縫い付けてあり、それを被ると頭には猫耳が現れる仕様。

 ズボンはゆったり目だが分厚い生地で、所々にワザと穴を開けていた。いわゆるダメージジーンズみたいなファッションである。

 

 そして俺の頬には、猫の特徴である三本ヒゲ。

 しっかりテープで貼られていた。

 

「くっそ恥ずいぞ」

「そんなことありませんよランジェ様。ご自分の容姿に自信を持ってください」

 トモエさんが更にグイッと俺に近づき、励ましてくれた。

 いやどういう励まし方やねん。

 

 しかし確かに、パーカーとズボンだけ見れば、奇抜な──先鋭的なデザインの服飾店(ブティック)が扱いそうなものである。

 タオレンが言った『本職は服飾職人』という言葉は、真意なのだろう。

 

「タオレンの店は、呉服屋としても人気みたいですね」

「いろんな文化が交わる、領境の街です。これくらい斬新なモノのほうが受け入れられるのかもしれませんね」

「いやいや裏工房を構えてるなら、もっと厳かに粛々と密やかに営めや!」

 

 どうりで、店が表の通りに面しているわけだ。あくまで裏工房は『裏のお仕事』に徹しているというわけか。

 

「なんだかなぁ」

「おまたせしましたぁ」

 いろいろ拍子抜けしてしまった俺。そのとき女性店員に連れられて、ウェルテが撮影場所に戻ってきた。

 

「どうですランジェ様! すごいかわいい衣装です!」

「ちょ! おま!」

 

 彼女も、俺とおそろいの猫コスチューム。

 頭には黒猫耳カチューシャで、頬には俺と同じように、三本ヒゲが貼られていた。

 しかし問題は、服装の方だ。その姿は大きく異なっていた。

 

 ボディラインがビッチリ見える、黒色タイツだったのだ。

 生地は表面ツヤッツヤ。暗影も相まって、体の凹凸は浮き彫りになっていた。

 踊りで引き締まったウェルテの健康的な体の形が、何も隠すものなく露わになっていた。

 ぶっちゃけ俺には非常に刺激的な──官能的なものであった。

 

「ひょっひょ、どうですワシの新作ですじゃ」

「おまえぇぇぇぇ! これのどこが『服』なんだ!」

 

 怒号を発し、ウェルチを指差し抗議する俺。

 俺の従者にこんな破廉恥なことさせてんじゃねぇぞ! 

 

「ウェルテ! それにトッシュとトモエさん! お前たちもなにか言ってやれ!」

 

「ランジェ様! これすごい布地が伸びて動きやすいんですよ〜! 踊るのに最適です!」

「この生地、良いですね。保温性も通気性も高い。重装(アーマー)用の下に着たいです」

「魔法耐性の文様を、透かし刺繍してあるわね……魔法防御もかなり高いわよこれ」

 

 みんなノリノリだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 かくして始まった撮影会。

 

「ほれ! もっと近づいて!」

「ランジェ様! ほら、にゃ〜です!」

「に……にゃ〜」

 

 ひきつる笑顔。しかしウェルテは信じられないくらい乗っていた。

 

「エルフェイの嬢ちゃん、いい笑顔だ! ほれもう一枚!」

 それ以上にノリノリだった、タオレン工匠。かなりの速度でシャッターを切っていく。

 

「……」

「それにひきかえ領主様! 笑顔が足りませんぞ!」

「に、にゃ〜」

「まだまだ表情が硬いですぞい! ほれほれ!」

 

 炊かれるフラッシュ。響くシャッター音。

 俺は心を虚無にして、ただ時が過ぎることに身を委ねた。

 

「楽しいです! ランジェ様!」

 そんな苦痛でしか無い撮影中、ウェルテが発した言葉。

 彼女の表情を覗くと、今まで見たこと無いほど眩しい笑顔だった。

 

(あ、そうか)

 彼女は本当に、今が楽しいんだ。

 

 記憶を失い、見知らぬ大地に放り出され、同族が居るかどうかもわからない状態で、体目当ての奴隷商人に捕まって。

 

 今の今まで楽しいことなど一個もなかったのだろう。記憶とともに失われた笑顔を、彼女は今、思い出していた。

 

「──そうだな、楽しいな」

「おっ! 領主様やっと良い笑顔になりましたよ!」

 

 カメラマンのタオレンに言われて、今まで俺がどれだけ硬い表情だったのかを理解した。

 いま大切なのは、ウェルテが最高に楽しんでいるということだ。

 思いを改めて、俺は笑顔でカメラに向かうことにした──。

 

「よし次は、こちらの衣装ですじゃい!」

 

 え、また着替えるんすか?? 

 

 タオレンが指差す先には、なんかどっかで見たことある衣装。赤い帽子に青オーバーオール。茶色の革靴なそれはまるで、どこかの配管工をイメージさせる。

 

 え、あれ着るんすか? 版権的に大丈夫すか? 

 てかなんであんなものがあるんですか??? 

 

 なおウェルテには、ピンクな姫衣装か、俺の緑版かのどとちらかがオススメされていた。

 

「じゃあ、ランジェ様とお揃いで!」

 

 いやそこはピンク姫にしておこうや。

 

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