転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜   作:黒片大豆

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07.サバイバル生活開始

 さて。

 今後、誰も助けが来ないと想定して、言葉通りの生き残り(サバイバル)がスタートである。

 

 廃墟といえど、屋根は有る(穴も有るが)。うまく位置取りすれば、雨風は防げるだろう。

 そこに火をくべて、焚き火を設えよう。

 もちろん火事にならないよう、細心の注意を払って……。

 

 候補の一つ、炊事場っぽい場所は、天井が落ちていた。

 

 いろいろ検討したが、結局、建物のエントランス部分のど真ん中で焚き火をすることになった。

 床の一部は抜け、地面まで到達していた。そこを起点として周囲の床材を崩し、剥き出しの地面をつかって焚き火を起こすことにした。

 

「ええと……」

 適当に、落ち葉と木材、枯れ木を焚べて、俺はそこに手をかざす。

 

「確か……。『発炎は(Setingi)火精の(Red-las)嘲り(elucidir)』……ファイアっ!」

 

 ぼっ! 

 

 ライターほどの小さな火種が、俺の手から生じた。それは焚べた枯れ草に落ち、引火し、燃え上がった。

 

「おー、着火剤いらず。魔法とはかくも便利なものだなぁ」

 ランジェは、何も出来ないわけではない。特出して出来が良いものが無いだけだ。

 

 例えば『野球が得意』という男の子がいるとする。周囲からも、その子は野球が上手いと褒められた。

 しかし、その『上手』は、どのレベルなのか。

 

 国を代表するバッター? 

 プロの野球選手? 

 甲子園出場? 

 

 結局、その少年の実力は、少年野球団の内輪で褒められるだけで、それ以上に伸びることはなかった。

 

 

 例えば、『歌がうまい』子がいたとする。じゃあその子は将来、歌手になるのか。そうではない。ただ、歌がうまいだけだ。その上手さも、プロには敵うわけがない。

 

 

 ランジェは、そんな感じの『上手い』の寄せ集めであったのだ。

 

 ちょっと学んだだけで、四大元素術の基礎を理解し、地水火風の初期術を扱えた。

 初めて発動した治癒術では、いきなり擦り傷を癒した。

 剣術の基本の型は、他の年代に比べて習得が早かった。

 

 しかしいずれも、それだけだった。

 

「……ランジェ、お前は『俺』と一緒なんだ。ただ、出生のせいで、俺よりもプレッシャーが酷かったんだな」

 

 そう考えると、生前の俺は、幸運だったのかも知れないな。

 

 などと、ちょっとアンニュイな気持ちになってしまった。

 

 俺は首を振った。いけない。まずは目の前の問題を解決しないと。

 

 持ってきた荷物は全て盗られている。

 それは使者個人の思惑か、それとも、誰かの命令か……などと思慮するが、その答えはいくら考えても出てこない。だったらそれは二の次だ。

 

 まずはこのサバイバルを生き残る。それには、最低限の食料と水の確保が必要だ。これが最優先事項である。

 

 

 ……しかしまあ。

 天啓の儀まで行って、ド派手演出で授かったこの『花の咲く時期がわかるスキル』。

 ホント、意味ないなぁ……せっかく、『本当の使い方がわかってきた』のになぁ。

 

「……ん? いや……そうか、今ならこういう使い方もあるな」

 

 そーかそーかと、自分で勝手に納得しながら、俺は裏庭に向かったのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 というわけで。現状はこんな感じになった。

 

 水については、近くに沢が流れていた。これで飲水その他には困らない。恵みの沢である。神様ありがとう。

 

 天井が落ちた炊事場であったが、そこから、かろうじて使える器をみつけた。それを使って水を汲み置きすることにした。

 

 鉄製のフライパンも、錆びてはいるが穴は空いていない。錆は、細かい砂利を使って磨き、ギリギリ使える程度まで落とすことができた。

 

 そして、今宵の食事を今しがた準備した。

 

 フライパンで茹でられるは……草だ。これは裏庭に生えていたもの。

 もちろん、ちゃんと食べられるものを選定した。

 

「うん、やっぱこれ、菜の花だな」

 黄色く咲く花は、日本でも見られる『菜の花』と寸分違わなかった。

 春に花咲くそれは、湯がけば柔らかくなり、食すことができる。多少の苦味が逆に食欲をそそる。

 

「天ぷらにできれば最高なのになー」

 しかし、油がない。無いものをねだってもしょうがない。

 

 そして、花びらのサラダ。

 この花は勿論、食用花である。ちゃんと食べられる花を吟味した。

 食用花は通常、彩りとして用いられる事が多いけど、実は栄養価は高い。

 

「いただきますっ」

 枝を折り揃えた箸を使って、茹でた菜の花を冷水で締め、水気を絞り、かぶりついた。

 

 うん、味気ねぇ。塩がほしい。

 

 しかし、これに醤油があれば、白米もイケるレベルのものだった。

 採れたての菜の花は柔らかく、苦味の中に仄かに甘みと、鼻に抜ける菜の花の匂いが爽やかだ。絶対うまいやつ。醤油があれば。

 

 そして花びらのサラダを、もっしゃもっしゃと口に入れた。

 こちらも案外甘い風味があり、自分が採ったものなのに驚かされた。

 

 

「……しかし、コレが続くのはまずい。今後をどうするかだな」

 

 

 食事を終えた俺は、刈った雑草を敷き詰めたベッドで、眠りにつくこととした。

 

 

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