転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜 作:黒片大豆
「デリカシーの欠片もないのね」
「そういうお前は……力加減ってのを知らねーのか……」
軽い脳震盪になりながらも、なんとか意識を持ちこたえた俺。
しかしホンキのビンタを受けたため、頬は腫れ、口内は切れ、口と鼻から出血していた。
いやぁしかし、まさかエルフェイの長様が、自分の身体つきにコンプレックスを持っているとはねぇ。
彼女の額には青筋が見えていた。結構キレてる。
なんなら、今までで一番の精神的ダメージを与えたのかもしれぬ。
「興が、削がれましたわ」
シトリスが俺から離れ、そして部屋の外に手を掲げた。すると、遠くに落ちていた衣服が滑るように近づいてきて、まるで生き物のように彼女にまとわりついた。
そして服は勝手に彼女の腕に袖を通し、腰紐を締める。俺が瞬きをする一瞬の間に、彼女は着替えを終えていた。
「すげー便利だな、それ」
「……」
「おーい、無視かい」
俺の言葉に、彼女は無反応だった。ただ、不機嫌な顔は変わらなかった。
「……仕方ありませんわね。ここまで趣味嗜好がズレているのであれば、私の手にも余るということ」
大きなため息の後、彼女はかぶりを振った。
多くの異性を手籠めにしていたであろうエルフェイの長。そのプライドは今、俺の手によって砕かれたのだ。ざまみろ。
「あ、そうね、良いことをを思いつきました」
瞬間、彼女の顔がパっと晴れ渡った。何か良いアイデアが浮かんだらしい。願わくば俺にとって悪いアイデアではありませんように──。
「カルマンダと、結ばせましょう。彼女なら、あなた好みではありませんこと?」
「はっ! そうは問屋が卸さないぜ。
吐き捨てるように俺は返した。
あの大剣を振り回していた女と結ばせるだと?! バカも休み休み言え!
確かに、あのカルマンダという女は他のエルフェイと比べて、しっかりした筋肉がついた健康的な身体つきに、豊満な胸。もちろん容貌も、エルフェイの例に漏れず整っており、そして戦士という職業柄か、精悍な顔立ちでもあった。背丈も、なんならナツと同じくらいだ。
好みか好みじゃないとなれば……そりゃぁ……。
……。
まあ、好みなほうでは……ある……かも……。
「……」
「……」
なるほど、悔しいながら、カルマンダのナイスボディには反応してしまう……か?
いやいや、たぶん彼女に似ているから、魅力的に感じているんだ。顔や性格は全く違うけど、身長も体つきも、カルマンダは彼女にソックリだ。
あの時、あの夜。
偶然に入ってしまった怪しい宿屋の、軋むベッドで抱き合った、
「……」
「……顔に出てるわよアル=パタルー」
「くそっ、お前が盛った媚薬のせいだろ」
ナツとのまぐわいを思い出したタイミングで、顔が蕩けていたらしい。
「ふふっ。所詮、アル=パタルーも人間のオスなのね」
そんな事情など露知らず。シトリスはクスクスと笑いながら部屋を出ていった。カルマンダを呼びに向かったのだろう。
「おーいっ! 俺の格好はそのままなのかよ!」
手首足首は木の根に縛られて、足は開脚させられ、上着は乱暴に脱がされて、下半身に至っては丸出しだった。この姿での放置は羞恥プレイに等しい。
必死の呼びかけも、シトリスの耳に届いていないのか。それとも完全無視なのか。彼女が戻ってくる様子はなかった。
「おいおい、流石に恥ずいぞ」
誰もいない地下牢としてもだ。俺に露出癖は無い。
あと、体の節々が痛い。ずっと同じ格好を強制させられ、しかも慣れない体勢は、普段使わない筋肉に悲鳴を上げさせた。体を伸ばしたくとも伸ばせないもどかしさは、精神的にも心体的にも俺を疲弊させていた。
「おーい……せめて外してくれないかー……」
俺は僅かな希望を頼りに、シトリスへ懇願の言葉を投げた。が、只々虚しく、洞窟内をこだまするだけだった。
「……」
そこからしばらく沈黙が続いた。地下の洞窟では時間の感覚が掴めず、いったいどれだけの時間が過ぎたのか分からなかった。体内時計が完全に麻痺している。
さらに、ずっと同じ格好では体が凝り固まってしっていた。時々体をねじり、伸ばせる所だけで伸びをするも、そのたびに、手や足首に強く締められた根が擦れ、ヒリついた痛みが伴った。
「……ウェルテは……無事なのだろうか」
彼女は、カルマンダに拿捕されたまま別のところに連れて行かれていた。エルフェイたちの様子から、ウェルテは世界樹が祀られていた祭壇に招かれたようだ。
もちろんそれは、彼女──世界樹の種を、発芽させるため。
「そんなバカなことあるか」
彼女は一人の……個を持つ
「無事だといいんだが。何されてるかまったくわからん」
もしかして……。
もしかして、俺と同じような屈辱的なことをされているのか……?
手は蔦で縛られ、足も自由を奪われて、虚ろな目のエルフェイどもに、衣服を裂かれ、抵抗虚しく、彼女の秘部が露わに……。
……。
「……って! いやいや! 何を考えているんだ俺は!」
ブンブンと頭を振り、一瞬だけ浮かんだ
恐らく、盛られた媚薬かテンプテーションによる影響だと思うが、こんな状況でそんな妄想などしてる自分をぶん殴りたくなった。
あまりに情けなさすぎて、また、少しでも妄想を振り払おうとして、さらに頭を左右に振り続け、目眩すら覚え始めた。
「頭振りすぎた……。クラクラする……やべ気持ち悪。地面が揺れるぅ……ぅ……ん?」
それは、目眩ではなかった。地面が本当に揺れたのだ。
そして、その刹那。
耳を